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第一章 宿屋をやると決意する俺
4、それから8年後
しおりを挟む月日は流れ、8年が経った。
俺、バン・ダインはまだこのダンジョンで生活をしていた。
「あぁ、モフモフと一緒に眠るハンモックは最高だ……」
「マスター、モフモフ好き?」
俺の腕の中にいる綿毛型のモンスターは、俺の腕の中で嬉しそうに聞いてくる。
「フラフ、君ほど可愛いモンスターはいない!」
「マスター!!」
俺はギュッとその綿毛を抱きしめる。
モフモフが気持ちいい。
俺が何故こんなモフモフライフをしているかといえば、どうもあの日俺はここのダンジョンマスターと認定されたらしい。
つまり俺はここのモンスターに攻撃される事はなくなり、そのためこうしてモンスターと仲良く暮らしているわけだ。
「あぁ、ここは癒しのモフモフ天国だ!!」
そして俺がここにいるもう一つの理由は、俺を蹴落として置き去りにしたあの憎き女剣士、アンナに復讐するためだった。
次にこのダンジョンに来たときに、あの女を罠に嵌める準備は出来ているからな!
そう思って、ここに住み着いてすでに8年……。
あの女ここに全く来ないんだけど!!?
そんな訳で、俺はいまだにこのダンジョンでモンスターに囲まれて幸せに暮らしていた。
そう、このときまでは……。
「マスターー!!」
俺を呼ぶ声に振り向くと、そこにはフォグウルフであるフォグが四足歩行形態でこちらに走ってきていた。
「おぉ、フォグじゃないかそんな急いでどうした?」
「大変だ、森エリアで女の子が倒れているぜ!」
「女の子が!? それは急いで確認に向かわないと!!」
本当にダンジョンの真ん中で女の子が倒れていたのなら、すぐにモンスターに襲われてしまう。
俺は急いでフォグの背に乗り、女の子のいる場所に向かう事にした。
とりあえず走りながらフォグに状況を確認する。
「えっと、それで今の状況はどんな感じなんだ?」
「俺が見た感じじゃ、女の子はモンスターじゃなくて、人に攻撃されたような傷があるみたいだぜ!」
「まじか、ファミリー内の揉め事ならあまり手を出したくはないが……俺のダンジョンで好き勝手されるのも困るからな」
「先にマリーが見てくれているようだが心配だ。飛ばすからしっかり捕まっててくれよマスター!」
丁度フォグが速度を上げたそのタイミングで、俺の脳裏に雑音が聞こえてきた。
どうやらマリーから通信が入ったらしい。
「フォグ、丁度マリーから通信がきたから俺はそっちに集中する」
「わかったぜ。もし何かあったら話しかけてくれ!」
俺は通信に集中するために目を閉じる。
ランクの弱い俺では通信するのも一苦労なのだ。
『……ター! マスター!』
『マリー、俺だ。聞こえている』
『マスター、遅いと言いたいところじゃが、今はそれどころではない!』
『倒れている女の子に何かあったのか?』
『いや、女の子はまだ無事じゃ! だが、周りに冒険者が集まって来ておる。フォグに頼んですぐに霧を発生させてくれんか?』
『わかった、すぐに対応する!』
フォグは名前の通り霧の狼である。
そのため自分自身を霧のように隠すことも、霧を発生させて視界を悪くする事もできる万能狼だ。
「フォグ、辺りに霧を発生させてくれ!」
「おう、わかったぜマスター。魔力で目をやられないように目を瞑ってるといいぜ!」
「わかった」
言われた通り目を瞑るとフォグから高魔力が放たれたのがわかった。
俺はランク4で、フォグはランク8なのだ。
流石にそのランク差だと魔力を浴びるだけで、フォグから落ちかねない。
俺はしっかりフォグを掴んで、マリーに話しかける。
『マリー、霧を発生したが確認できたか?』
『そうじゃな、こちらまでしっかりと霧がかかっておる! それとこっちにはフォグとマスター以外ここに辿り着けぬよう、モンスターを配置したのじゃ』
『でかした! それにどうやらもう見えてきたみたいだ』
ようやく目を開けると視線の先には、空色の髪をふたつに結ぶ10歳にも満たない女の子が、空色の瞳でこちらを見つめて立っていた。
彼女はマリー、本来の姿はスライムであるが可愛い自分が大好きなので、無理矢理その姿を維持しているらしい。
「マリー!」
俺はフォグから飛び降りると、マリーの足下に倒れている女の子に駆け寄った。
大した怪我は無さそうだけど、その体はだいぶ痩せ細って見えた。
「マスター、この子をどうするつもりじゃ?」
「一度家に連れ帰る」
「マスター、いいのか? あそこは誰にも知られないようにマスターが今まで隠してきたのに……」
確かにその通りだ。
俺がここで生きている事がバレないように、隠れてるための本拠地だ。
「だけど、俺はこの子を放っておけない」
何故かこの女の子の姿は、どうしてもあのときパーティーに置き去りにされた俺の姿とダブって見えてしまったのだ。
そんな子を放って置けるわけがない。
「まあ、マスターが決めたことだぜ。俺達に否定はできねぇよ」
「そうじゃな。ワシ達はマスターに付き従うだけなのじゃから……。そうと決まれば早くここを離脱するべきじゃな!」
「わかってる。ここから家まで距離があるから、俺が結界を張る。だからフォグ、後は頼む」
俺は女の子を抱えると、フォグの上に再び飛び乗った。後ろにはちゃっかりマリーも乗っていたけど、気にしていられない。
そして今の俺にはやる事がある。
俺がただ一つ使えるスキル。あの日俺を助けてくれたそのスキルを発動するために、魔力を前に突き出した。
「プロテクト・ゾーンを前方に展開!!」
俺が叫ぶと、薄っすらと光の道のように結界が前方に伸びていく。
あの日から俺はプロテクト・ゾーンを磨きに磨いた。
その結果、俺は動いてる物にもプロテクト・ゾーンを展開できるようになり、形も自由自在に変形できるようになったのだ。
ただやはり結界中では俺以外、魔法とスキルを使えないという性能は変わらなかったけど……でも守るだけなら最強のスキルと言えるはずだ。
「あとは真っ直ぐ帰るだけだから、家に着くまで少しゆっくりさせてもらおうかな……」
「全く、緊張感のない男じゃの」
「そこが、マスターの良いところだぜ!」
そんな会話が聞こえてきたが、俺は気にせずフォグのモフモフに顔を埋めることにした。
でも今の俺には何よりも腕に抱えている女の子が気になってしまう。
俺はこの子をどうしたいのだろうか……?
事情を聞き出したい訳じゃない。でも、もしこの子が酷い目にあっていたのなら、俺は手助けしてあげたかった。
そんな事を考えてしまうのはきっと、誰にも救って貰えなかった俺と同じ様な人間になって欲しくなかったからだろう。
こうして俺は倒れていた女の子をつれて、ダンジョン内にある俺の家へと帰って来たのだった。
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