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初めての夜①
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(ほ、本当にするの……? 本気?)
シャワーを浴びて出てくると寝室で待っているように言われてしまい、ドキドキがおさまらない。
瑞希はジッとクイーンサイズのベッドを見つめた。二人が寝ても余裕の広さが余計に緊張を煽る。
(はぁ、本当にどうしよう)
ごろんとベッドに倒れ込み大きな溜息をつく。いつのまにか酔いがどこかにいってしまい、今は悲しいくらいに頭がハッキリしている。
(康弘さん……私のこと気に入ってくれているみたいだけど……)
愛を育もうと言った言葉どおり二人はまだ愛し合えていない。今はお互いをよく知るための時間だ……。それなのにセックスなんてしていいのだろうか。
「一応婚約中だから……問題はないんだろうけど……」
でも、だって、というような言い訳が、先ほどから頭の中に浮かんでは消えていく。
瑞希は頭をかかえてベッドの上をごろごろと転がった。
「ああもう。わけ分かんない」
見合いをすることを決めたのも自分。一年の試用期間を置くことを決めたのも、一緒に住むことを決めたのも自分だ。
それなのに今日までの間、康弘という荒波に押し流されている気分で戸惑いのほうが大きい。
(往生際が悪いわよ、私。頑張らなきゃ……!)
そうは言っても怖いものは怖いのだ。正直、怖気づいているし心臓が口から出てきそうなくらい緊張もしている。
「このままじゃ緊張で死んじゃいそう……。そもそも体からスタートさせるのが悪いのよ。そういうのはお互いをもっと知ってから……」
「体から? いいえ、違います。俺たちは見合いをし結婚を前提に付き合っている正式な婚約者です」
「康弘さん!?」
上半身裸で部屋に入ってきて瑞希の独り言に答える康弘に飛び上がる。瑞希がベッドの上をずりずりと後退すると、彼はベッドに腰かけ咎めるように見てきた。そんな彼の強い視線に心臓が落ち着かない。
「ちょ、ちょっと……服を着てください。目のやり場に困ります」
「見合いの日から今日に至るまで挨拶を交わし色々な話をしたことを忘れたとは言わせません。俺は充分なくらい瑞希さんを見てきたつもりです。……貴方は、今日の昼に俺とした話を覚えていないんですか?」
「もちろん覚えています……」
瑞希の言葉を無視し畳み掛けてくる彼に慌てて首を横に振ると、康弘の手が伸びてきて瑞希の手に重なった。不安げに彼を見ると、ゆっくりと顔が近づいてくる。
「……っ」
身構えた瞬間、康弘が瑞希の唇を食んだ。逃がさないとばかりにベッドに押し倒し、上からのし掛かってくる彼に体が強張る。すると、瑞希の心中を察したのか、康弘が唇を少し離してくれた。
「俺はこういうのも大切だと考えています。この一年、心だけじゃなく体でも触れ合いたい。そう思うのはいけないことですか?」
「~~~っ。わ、分からないです。でも貴方にキスをされると頭の中がふわふわしてきて……つい受け入れてしまいそうになるから嫌ではないんだと思います。け、けど、まだ出会ってそんなに時間経ってないのに……。康弘さん、お願いだからキスしないでください。冷静に考えられなくなっちゃう……」
「嫌じゃないなら今は俺のキスを理由にして流されてください。時間なんて関係ありません。俺は瑞希さんが気に入りました。貴方となら共に生きていくのも悪くないと思えたんです。瑞希さん、もちろんベッドの中以外でも……どんな時でも貴方に尽くすと約束します。だから、怖がらないで」
返事をする間もなくまた唇が重なり合った。抱き締められて距離が狭まると彼の体温をリアルに感じ取ってしまい、くらくらした。
(眩暈がしそう……)
二人とも湯上がりなせいか同じ匂いがする。康弘のを借りたのだから当たり前だが、それが余計に鼓動を加速させた。瑞希は彼の香りに包まれて、きつく目を閉じた。
「……んっ、ふぁっ」
口の中に入ってきた康弘の舌が瑞希の口内をうごめく。舌のつけ根から先までを舐め上げ、軽く吸われると思考が濁ってくる。
二人の唾液が混ざり合う淫らな水音が鼓膜を揺らして、瑞希は彼の二の腕をぎゅっと掴んだ。
「んんっ……!」
唇が離れたと思ったら、また深く重なる。瑞希が身を捩っても離してくれない。上顎を舐り、口内を蹂躙してくる彼の噛みつくようなキスに息が上がった。
婚約者とはいえ、まだ好きでもない男の人にキスをされているのに、彼の舌や手を気持ちいいと思ってしまう。そんな淫らな自分がいたことに驚きつつ、瑞希は覚悟を決めて彼の背中に手を回した。交わす二人の吐息がやけに熱い。
「ん……ぁっ」
瑞希が観念したのが分かったのか、彼はようやく瑞希の唇を解放してくれた。うまく息ができなくて荒い呼吸を繰り返していると、康弘がコツンと額をあわせてくる。
「さて、どうしますか? 無理強いはしません。貴方が決めてください」
「……っ、きょ、今日は康弘さんに流されてあげます……」
今さらその聞き方はずるい。
もう嫌だと言えるわけがないのにと、瑞希は困ったように彼を見つめた。
「いい子ですね。では、今宵は共に溺れましょうか」
「……っ」
耳元で甘く囁かれ、一気に脈が上がる。自分に触れる彼の手の感触と熱い息を感じて、お腹の奥がゾクゾクした。
(わ、私……)
「瑞希」
彼は囁くように名を呼ぶと、またキスをしてきた。くちゅりと重ねた唇を吸い、また口内に舌が入ってくる。まだ二人の気持ちは育っていないのに、彼の優しいキスに確かな慈しみを感じて、瑞希は彼とのキスに夢中になった。
没頭していると、康弘の手が瑞希の脚を這ってパジャマ越しにお尻を撫で回した。ビクッと体が震えると、彼が唇を離してニコリと笑う。
「怖いですか?」
「きゃあっ!」
そう問いかけながら、パジャマのパンツを引きずりおろした彼に小さく悲鳴を上げる。掴もうとしたが、脱がされるほうが早かったようで容易く奪われてしまった。
「急に何するんですか? 怖いかって聞いた人間のすることじゃないですよ!」
「瑞希さんはそういう顔をしているほうがいいですよ。怖いことも痛いことも絶対にしないので、そんなに怯えないでください」
康弘をくわっと睨むと、彼がくすくす笑う。その笑みになんだか力が抜けて、瑞希は唇を尖らせた。
(何よ、それ……)
「康弘さんの馬鹿……。私、これでも真剣なんですよ。茶化すなんてひどいです」
「すみませんでした。どんな顔をしたらいいか分からないというような表情をしていたので、つい揶揄ってしまいました。瑞希さん……、余計なことは何も考えなくていい。貴方はただ身を任せてくれればいいんです」
「分かってはいるんですけど、緊張のせいか怖気づいちゃって……」
「分かりました。なら、何も考えられなくしてあげます」
そう囁きながらショーツのクロッチを撫で上げる。そして花芽を指で引っ掻いた。
「え……あ、ああっ!」
てっきり次は胸を触られると思っていた瑞希はいきなりそこを触られて、反射的に脚を寄せた。が、彼は瑞希の反応なんて気にもとめず余裕の表情で花芽をぎゅっと摘み上げる。
「ひゃうっ!!」
思わぬ強い刺激に腰が跳ね首筋を仰け反らせると、彼は露わになった瑞希の白い肌に吸いついた。ちりりとした痛みが走って、赤い痕が散る。
「瑞希。過去を忘れさせるなんて言わないと言いましたが撤回します。あのような愚か者のことなんて忘れなさい。俺が辛い過去をすべて塗りかえてやる」
そう言った彼の目が獲物を前にした虎のようで、背筋にゾクリとしたものが走り一瞬息が止まる。
康弘は、震える瑞希を見下ろしながら蠱惑的に笑った。
シャワーを浴びて出てくると寝室で待っているように言われてしまい、ドキドキがおさまらない。
瑞希はジッとクイーンサイズのベッドを見つめた。二人が寝ても余裕の広さが余計に緊張を煽る。
(はぁ、本当にどうしよう)
ごろんとベッドに倒れ込み大きな溜息をつく。いつのまにか酔いがどこかにいってしまい、今は悲しいくらいに頭がハッキリしている。
(康弘さん……私のこと気に入ってくれているみたいだけど……)
愛を育もうと言った言葉どおり二人はまだ愛し合えていない。今はお互いをよく知るための時間だ……。それなのにセックスなんてしていいのだろうか。
「一応婚約中だから……問題はないんだろうけど……」
でも、だって、というような言い訳が、先ほどから頭の中に浮かんでは消えていく。
瑞希は頭をかかえてベッドの上をごろごろと転がった。
「ああもう。わけ分かんない」
見合いをすることを決めたのも自分。一年の試用期間を置くことを決めたのも、一緒に住むことを決めたのも自分だ。
それなのに今日までの間、康弘という荒波に押し流されている気分で戸惑いのほうが大きい。
(往生際が悪いわよ、私。頑張らなきゃ……!)
そうは言っても怖いものは怖いのだ。正直、怖気づいているし心臓が口から出てきそうなくらい緊張もしている。
「このままじゃ緊張で死んじゃいそう……。そもそも体からスタートさせるのが悪いのよ。そういうのはお互いをもっと知ってから……」
「体から? いいえ、違います。俺たちは見合いをし結婚を前提に付き合っている正式な婚約者です」
「康弘さん!?」
上半身裸で部屋に入ってきて瑞希の独り言に答える康弘に飛び上がる。瑞希がベッドの上をずりずりと後退すると、彼はベッドに腰かけ咎めるように見てきた。そんな彼の強い視線に心臓が落ち着かない。
「ちょ、ちょっと……服を着てください。目のやり場に困ります」
「見合いの日から今日に至るまで挨拶を交わし色々な話をしたことを忘れたとは言わせません。俺は充分なくらい瑞希さんを見てきたつもりです。……貴方は、今日の昼に俺とした話を覚えていないんですか?」
「もちろん覚えています……」
瑞希の言葉を無視し畳み掛けてくる彼に慌てて首を横に振ると、康弘の手が伸びてきて瑞希の手に重なった。不安げに彼を見ると、ゆっくりと顔が近づいてくる。
「……っ」
身構えた瞬間、康弘が瑞希の唇を食んだ。逃がさないとばかりにベッドに押し倒し、上からのし掛かってくる彼に体が強張る。すると、瑞希の心中を察したのか、康弘が唇を少し離してくれた。
「俺はこういうのも大切だと考えています。この一年、心だけじゃなく体でも触れ合いたい。そう思うのはいけないことですか?」
「~~~っ。わ、分からないです。でも貴方にキスをされると頭の中がふわふわしてきて……つい受け入れてしまいそうになるから嫌ではないんだと思います。け、けど、まだ出会ってそんなに時間経ってないのに……。康弘さん、お願いだからキスしないでください。冷静に考えられなくなっちゃう……」
「嫌じゃないなら今は俺のキスを理由にして流されてください。時間なんて関係ありません。俺は瑞希さんが気に入りました。貴方となら共に生きていくのも悪くないと思えたんです。瑞希さん、もちろんベッドの中以外でも……どんな時でも貴方に尽くすと約束します。だから、怖がらないで」
返事をする間もなくまた唇が重なり合った。抱き締められて距離が狭まると彼の体温をリアルに感じ取ってしまい、くらくらした。
(眩暈がしそう……)
二人とも湯上がりなせいか同じ匂いがする。康弘のを借りたのだから当たり前だが、それが余計に鼓動を加速させた。瑞希は彼の香りに包まれて、きつく目を閉じた。
「……んっ、ふぁっ」
口の中に入ってきた康弘の舌が瑞希の口内をうごめく。舌のつけ根から先までを舐め上げ、軽く吸われると思考が濁ってくる。
二人の唾液が混ざり合う淫らな水音が鼓膜を揺らして、瑞希は彼の二の腕をぎゅっと掴んだ。
「んんっ……!」
唇が離れたと思ったら、また深く重なる。瑞希が身を捩っても離してくれない。上顎を舐り、口内を蹂躙してくる彼の噛みつくようなキスに息が上がった。
婚約者とはいえ、まだ好きでもない男の人にキスをされているのに、彼の舌や手を気持ちいいと思ってしまう。そんな淫らな自分がいたことに驚きつつ、瑞希は覚悟を決めて彼の背中に手を回した。交わす二人の吐息がやけに熱い。
「ん……ぁっ」
瑞希が観念したのが分かったのか、彼はようやく瑞希の唇を解放してくれた。うまく息ができなくて荒い呼吸を繰り返していると、康弘がコツンと額をあわせてくる。
「さて、どうしますか? 無理強いはしません。貴方が決めてください」
「……っ、きょ、今日は康弘さんに流されてあげます……」
今さらその聞き方はずるい。
もう嫌だと言えるわけがないのにと、瑞希は困ったように彼を見つめた。
「いい子ですね。では、今宵は共に溺れましょうか」
「……っ」
耳元で甘く囁かれ、一気に脈が上がる。自分に触れる彼の手の感触と熱い息を感じて、お腹の奥がゾクゾクした。
(わ、私……)
「瑞希」
彼は囁くように名を呼ぶと、またキスをしてきた。くちゅりと重ねた唇を吸い、また口内に舌が入ってくる。まだ二人の気持ちは育っていないのに、彼の優しいキスに確かな慈しみを感じて、瑞希は彼とのキスに夢中になった。
没頭していると、康弘の手が瑞希の脚を這ってパジャマ越しにお尻を撫で回した。ビクッと体が震えると、彼が唇を離してニコリと笑う。
「怖いですか?」
「きゃあっ!」
そう問いかけながら、パジャマのパンツを引きずりおろした彼に小さく悲鳴を上げる。掴もうとしたが、脱がされるほうが早かったようで容易く奪われてしまった。
「急に何するんですか? 怖いかって聞いた人間のすることじゃないですよ!」
「瑞希さんはそういう顔をしているほうがいいですよ。怖いことも痛いことも絶対にしないので、そんなに怯えないでください」
康弘をくわっと睨むと、彼がくすくす笑う。その笑みになんだか力が抜けて、瑞希は唇を尖らせた。
(何よ、それ……)
「康弘さんの馬鹿……。私、これでも真剣なんですよ。茶化すなんてひどいです」
「すみませんでした。どんな顔をしたらいいか分からないというような表情をしていたので、つい揶揄ってしまいました。瑞希さん……、余計なことは何も考えなくていい。貴方はただ身を任せてくれればいいんです」
「分かってはいるんですけど、緊張のせいか怖気づいちゃって……」
「分かりました。なら、何も考えられなくしてあげます」
そう囁きながらショーツのクロッチを撫で上げる。そして花芽を指で引っ掻いた。
「え……あ、ああっ!」
てっきり次は胸を触られると思っていた瑞希はいきなりそこを触られて、反射的に脚を寄せた。が、彼は瑞希の反応なんて気にもとめず余裕の表情で花芽をぎゅっと摘み上げる。
「ひゃうっ!!」
思わぬ強い刺激に腰が跳ね首筋を仰け反らせると、彼は露わになった瑞希の白い肌に吸いついた。ちりりとした痛みが走って、赤い痕が散る。
「瑞希。過去を忘れさせるなんて言わないと言いましたが撤回します。あのような愚か者のことなんて忘れなさい。俺が辛い過去をすべて塗りかえてやる」
そう言った彼の目が獲物を前にした虎のようで、背筋にゾクリとしたものが走り一瞬息が止まる。
康弘は、震える瑞希を見下ろしながら蠱惑的に笑った。
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