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はじめての騎乗位

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「詩音。今夜は君が上に乗ってみようか」
「え? 上に、乗る……?」

 ベッドに降ろされながら言われた言葉の意味が分からず素で聞き返す。すると、稀一が楽しそうに笑ってベッドのヘッドボードに凭れた。

(稀一さん……?)

 先ほど詩音をいたわってくれた表情とは違う――何かを企んでいるような笑みに、詩音はごくりと息を呑んで稀一の前に正座をした。

「えっと……どういうことですか?」
「正常位だと、どうしても俺のペースになってしまうだろう。今の君の体調から考量するに、俺が動くよりも自分のペースで動いたほうが楽だと思うんだ」

(……! そ、それって……)

 彼の言いたいことを理解すると、途端に恥ずかしさが襲ってくる。詩音が顔を俯けると、稀一が詩音の目の前に手を差し出してきた。

 その手を訝しげに見つめる。

「……あ、あの。私を気遣うふりをして恥ずかしいことをさせようとしてませんか?」

 おずおずとその手を取ると、ぐいっと引き寄せられ、彼が笑う。

「バレたか」

(やっぱり!)

 悪びれもせずに笑いながら詩音を抱き締める彼を睨むと、稀一が詩音の頬に手を滑らせた。

 そして色気たっぷりの目で見つめてくる。

「……っ!」
「だって、詩音は最後までしたいんだろう? なら、自分から俺を受け入れて、気持ちのいいところにあたるように動くべきだとは思わないか?」

 幼な子に言い聞かせるように優しくそう言う稀一に、心臓がドクンと大きく脈打つ。心臓に一気に血液が流れ込んでくるような感覚に、詩音は胸元を押さえた。

 普段のリズムを乱した心音を聞かれたくなくて、そっと体を離そうと試みる。が、抱き込まれて許してもらえなかった。稀一の手がお風呂上がりで何もつけていない詩音のお尻を撫でる。思わず体が跳ねると、彼の唇が弧を描いた。


(た、確かに最後までしてってねだったけど。自分でだなんて……)

 どうしたらいいか分からず、稀一の胸に顔をうずめて隠す。


「き、稀一さん。お願いします。いつものように……」
「ダメだ。詩音ができないなら、今日はこれでおしまいだ。のぼせたんだし、ゆっくり休むといい」
「……!」

 稀一の言葉に目を見張る。
 稀一の胸から顔を上げて、彼を見ると挑発的な視線と絡み合った。

 結局、稀一にとってはどちらでもいいのだ。要求を呑めないなら休ませることもできるし、詩音が応じれば恥ずかしい姿を楽しむことができる。

 そのことに気がつくと、頭に血がのぼっていくのが分かった。

(稀一さんのバカ!)

 詩音は出来るということを示すために自分から稀一の唇を吸った。彼は一瞬驚いた顔をしたが、詩音がちゅっちゅっと何度もキスを繰り返すと、口を開いて下唇を挟み込むように食んできた。

 キスに応えてくれたことが嬉しくて彼の首に手を回すと、稀一の舌が口の中に入ってきて上顎をぐるりと舐める。


「んっ……は、っ」

 詩音も負けじと舌を伸ばすと搦め捕られ吸われる。それが気持ちよくて、徐々に夢中になってキスに酔狂していくと、稀一の手が詩音の背中をなぞった。巻かれていたバスタオルがシーツの上に落ちる音で一瞬我に返りそうになるが、ぐっとこらえた。


「あ、んぅ……ふ、ぁっ」

 目を瞑ってキスに没頭していると、すぐに恥ずかしさなんてどこかにいってしまう。

 絡み合うお互いの舌。密着している肌と肌。さすられている背中――触れ合っているすべての部位から熱がじんわりと染み込んできて熱い。

 まるで先ほどの熱がぶり返してきたみたいに、思考を奪っていった。


「はっ、き、稀一さん……っ、き、いち……んんっ」

 彼を求めるように名を呼ぶと舌が絡んで、さらにキスが深くなる。舌のつけ根を舐られて少し苦しいのに、気持ちがよくてやめてほしくなかった。

 詩音がねだるように舌を突き出した時、背中を撫でていた彼の手が滑らかに動き、お尻から太もも――内股へとすべった。

 彼の手に、恥ずかしさよりもこの先を期待してぞくりと震えた。

「あっ!」

 期待感からとろりと蜜がこぼれた瞬間、稀一の指が蜜口に触れる。そして秘裂にそって上下に動いた。ゆるやかな動きなのに、それだけで部屋の中に濡れて湿った音が響く。


「すごいな。ぐちょぐちょだ」

 唇をわずかに離してそう言う稀一に体温がぶわっと上がる。詩音はゆっくりと目を開けて彼を見た。

「だ、だって稀一さんが好きなんだもの。私、骨折した時に言いましたよね。ずっと貴方のものになりたいと思っていたって。その想いに偽りはありません。そのためなら、どんな恥ずかしいことだってやってみせます」

 真剣な眼差しで自分の覚悟を伝える。

 そう。ずっと頑張ってきたのだ。稀一のものにしてほしくて下着も肌の手入れも頑張ってきたのだ。

 あの日――大辻から聞いた噂で二人の関係は大きく前進して、今では毎晩抱いてもらえている。彼との触れ合いは詩音が今まで知らなかった彼自身を知る機会でもあった。


「優しい稀一さんも意地悪な稀一さんも好きです。どんな貴方だって好きだから。私、どんなに恥ずかしくても頑張るから、お願い。最後まで抱いて」

 縋るようにぎゅっと抱きつくと稀一の体が大きく揺れる。彼は詩音の頭を撫でながら、かぶりを振った。


「っ! ああもう無理だ」
「え?」

 稀一がそう言ったのと同時に唇が深く重なる。お互いの舌が絡んだ瞬間、稀一の指が動きはじめた。愛液を纏わせた指で花芽を擦られると、鼻から抜けるような喘ぎが漏れ出てしまう。


「ぁっ、ああ……んっ」

 稀一は花芽を転がしながら、もう片方の手で濡れそぼった蜜口に触れた。潤いのもとを辿るように浅く指が沈められる。その感覚に、詩音はぶるっと体を震わせた。

「はうっ!」
「可愛い。ほら、聞こえるか。詩音のここ、ぐちゅぐちゅと良い音を鳴らしてる。お望みどおり、今夜は詩音のすべてを奪って曝け出させてやるよ」

 喉の奥で笑いながら、わざと音を立てるように指を動かす。お風呂から上がってそう時間が経っていないのに、いつの間にこんなに濡れていたんだろうか。

 稀一が指を動かすたびに、まだ触れられていないお腹の奥がジンジンと痺れていく。

「あっ、ふぁ、っ……ああっ」

 稀一にしがみついて体を震わせると、ぷっくりと立った胸の先端が不意に彼の胸に擦れて、びりびりとした快感が体を走った。

(やっ、もうダメ……)

 体の中がずくずくと疼いてどうしようもない。もっと大きな刺激が欲しい。

 詩音は中を掻き回している彼の手にそっと触れた。


「き、きいち、さっ……おねがっ、もう我慢できないのっ。欲しいのっ」

 奥を突かれたい。指では届かないところをいつもみたいにたくさん突いて、イカせてほしい。

 どんどん淫らな欲望が高まっていって、詩音は稀一に懇願した。

「あうっ!」

 詩音がそう乞うた途端、稀一がずぼっと指を引く。そして腰に巻いていたバスタオルを取り払い、ベッドサイドの棚に置かれている避妊具を手に取った。

 それを見た瞬間、心臓が大きく跳ねる。

(どうしましょう。緊張してきたわ……)

 覚悟はあるといったが、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしい。今から彼のものを自分で挿れて動くのだ。そう思うと、緊張で汗がぶわっとふきだしてきた。

 稀一の手の動きから目を離せない。
 すると、準備を終えた彼が詩音の背中をさする。まるで「おいで」と言われているようで、彼にぎゅっと抱きついた。

「詩音、ちゃんとできるか?」
「は、はい……頑張ります」

 ごくりと息を呑んで、熱を持った彼の硬い屹立に手を伸ばす。はじめて触れる彼のものは想像以上に大きかった。お臍につきそうなくらい聳り勃っていて雄々しい。

(嘘……大きい。これ、入るの? でもいつも入っているのよね?)

 初めて交わった日から今日までずっと――この雄々しくて猛々しいものに中を犯されて悦んでいる。今だって欲しくてたまらないのだ。
 詩音は息を呑んで熱く昂った彼の屹立を蜜口に押しあてた。すると、稀一の手が伸びてきて詩音の動きを止める。


「詩音。急に挿れるんじゃなくて、ゆっくりするんだ。まずは愛液を纏わせるように上下に擦ってみようか」
「え、えっと……こう?」

 言われたとおりに愛液を塗りつけるように腰を動かして擦りつけると、敏感なところを掠めて体が震える。

「んっ……ふ、ぅっ」
「充分なくらいぬるぬるになったと思ったら、ゆっくり腰を落としてみろ。いいか? ゆっくりだぞ。恥ずかしいからって一気にするんじゃないぞ」
「は、い……っ」

 詩音は稀一に教えられるままに彼の胸に手をつきながら、ゆっくりと腰を落としていった。視線を下に向けて盗み見てみると、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てて彼のものを呑み込んでいくのが見えた。

 中を押し開くように入っていく淫らな光景から目が離せない。
 自分ではない熱が体の中に染み込んでいく感覚がたまらなく気持ちよかった。


 隙間なくみっちりと彼のものを奥深く呑み込んだ時、詩音は小さく息をついた。

「嬉しい……」

 ふにゃっと笑うと、稀一の目がギラついたものに変わる。え? と思った時には、彼が詩音の腰をがしっと掴んだ。

「無理だ。我慢できない」
「え? ひっ、あっ! ああっ!」

 そう言った稀一は詩音の最奥を突き上げた。馴染む間もなくガツガツと穿たれて、体が仰け反る。

(わ、私が動くんじゃなかったの!?)
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