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1巻
1-3
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あははと笑われて、引いたはずの血の気が戻り、次はどんどん熱くなっていく。体中の血が沸騰しそうなくらい、私今顔も全身も茹で蛸な気がする。でも逃げないで、ちゃんと話をしないと。そう思い、おそるおそる顔を上げて彼を見つめる。
「ふ、副社長はご迷惑じゃないんですか? 来る縁談をすべて断っていると聞きましたが」
「うん、そうだね。だって、僕は学生の時からずっと君が好きだったんだ。ほかの女性とは結婚するつもりなんてないからね」
「あ、そうなんですね……」
……
「えぇっ⁉」
私が驚いて飛び退くと、彼はクスクスと笑った。
「君は覚えていないかもしれないけど、中等部と高等部の合同練習試合。僕、そこにいたんだよね。これでも、高等部の部長だったんだよ」
「お、覚えております! とても素敵でしたから!」
「ふふ、ありがとう。嬉しいなぁ。僕も君を素敵だと思ったよ。弓を握った途端に雰囲気が変わって、一瞬で目を奪われた。とても五歳も年下とは思えない大人びた表情と雰囲気。艶やかな黒髪をポニーテールにして綺麗に纏めている姿がなんとも言えず扇情的で……君を取り巻く独特な雰囲気すべてに興奮したよ。君の適度に引き締まったしなやかな肢体、それに触れてみたいとずっと思っていた……」
私は唖然とした。予想もしない言葉の数々に口をポカンと開けて、硬直する。宗雅さんは目を細めて、私の頬に触れた。
「それなのに、君は突然弓道部をやめてしまっただろう? もう会えないのだし忘れようと思っても忘れられなくて……。もう十一年も経つのに、自分でも頭がおかしいと思ったよ。本当にどうしようかと考えあぐねていた時に、君との縁談が持ち上がったんだ。いつも僕が断るものだから父達は僕に隠して、先に会わせて断れないようにするつもりだったみたいだけど、バカだなぁ。今回ばかりは断ったりしないのに。だから、分かった? 僕は君が好きなんだ。僕と結婚してくれる?」
「え……? は、はい。で、でも、本当に?」
「本当だよ、もう絶対に離さない。二度と僕の側から消えちゃいけないよ。君はあの時から、ずっと僕のものなんだよ」
彼の言葉にえも言われぬ拘束力のようなものを感じて、私はこくっと頷いた。すると、「いい子だね」と抱き締められる。そして、ゆっくりと唇が重なった。その唇の感触と確かに感じた体温に、私はそっと目を閉じて、そのキスを受けとめた。
「んっ、ふぁっ……っ」
顔の角度を変えて、深く唇が重なる。そのまま唇を吸われ、口の中が宗雅さんの舌でいっぱいになる。彼の舌が上顎をなぞるだけで、ゾクゾクする。縋るように彼の背中に手を回した。
貪るように求められると、気持ち良さ以上に、嬉しくて体が高揚していく。ずっと好きだった人が自分に触れている。キスしている。それどころか、自分も好きだと言ってくれる。それが、泣きそうなくらい嬉しい。
「可愛い。ねぇ、しずくって呼んでいい?」
「はい。嬉しいです……」
「ずっと好きだったけど、僕みたいな男が君に相応しいか分からなかった。だけど、君が自ら僕の手に堕ちてくるなら、もう二度と離さないよ。しずく、愛している」
「わ、私も愛しています!」
私だって、ずっと好きだった。十一年間、ずっと秘めていたこの想いを受け入れてもらえる日が来るなんて……。彼の言葉に、「私こそ、宗雅さんに相応しくあれるように頑張りますね」と微笑むと、彼の手が私の瞼を覆った。閉じなさいって意味だと思い、目を閉じると、ゆっくりと唇が重なる。先程のような舌を絡ませ合うような激しいキスじゃなく、触れあうだけのキスなのに、胸がドキドキと高鳴っているのが分かった。
「しずく……」
唇が一瞬だけ離れて、吐息混じりに名を呼ばれて、また重なる。二人の間に距離がなくなったんじゃないかと思うくらい、ぴったりと唇が合わさって、抱き締められる手に力が込められると、クラクラと眩暈がした。
「可愛いね、しずく。キスだけでもうとろとろだ」
「っあ、あっ、む、宗雅さんっ」
宗雅さんは体勢を変え、私に被さるような形でソファーに片膝を乗せた。その片膝が脚の間に触れると、ショーツ越しだけれど体が強張ってしまう。普段は甘やかな顔が、今は意地悪そうに私を見つめる。彼のこんな顔を見られる特別感に酔いそうだ。
「あの……私、初めてなんです。だから、その……どうしていいか分からなくて、優しくしてくださると嬉しいです」
私が懇願するようにジッと見つめると、彼の手が私の腰にまわる。その手の想像以上の熱さに、体が震えた。
宗雅さんなら、ちゃんと分かってくれるはず。そう想いを込めて、彼を見つめる。すると、安心させるように微笑んでくれた。
「そんなに不安そうにしなくても大丈夫だよ、ちゃんと分かっている。ずっと僕だけを見ていてくれたんでしょう?」
「はい! ずっと、ずっと好きでした!」
「嬉しいなぁ。あ……でも、ここを自分で慰めてはいたのかな? 僕のことを考えて」
「⁉」
シャツ越しに下腹部をツーッと指でなぞりながら問われて、恥ずかしさに目をそらすと、「あは、図星?」と揶揄うように笑われた。
「もちろん、僕を想って……だよね?」
「いえ、あの……宗雅さんのことをずっと想ってはいましたが、そんなことは恥ずかしくてできなかったです。ごめんなさい……。でも、したほうがいいなら、頑張ります」
「やだな、謝らなくていいし一人で頑張らなくてもいいよ。本当にしずくは真面目で何事にも一生懸命だね。そこがとても可愛くもあり好ましくもあるよ。なにも知らないなら全部僕が教えてあげるから、身を任せてくれるね?」
「っんぅ、は、はい。嬉しいです」
囁かれながら、耳朶を食まれ、ツーッと耳の縁をなぞられると、息が上がった。「しずく」と名を呼びながら、彼の手が私の胸の膨らみをなぞる。そして、シャツのボタンをゆっくりと外した。空気が肌に触れ、肩を揺らすと、「大丈夫、怖くないよ」と宥めるように額にチュッとキスを落とされる。
優しい……
「あぁ、可愛いな。可愛すぎるよ。十一年分の想いをぶつけてしまいそう……」
「ぶつけてください……」
嬉しい。むしろぶつけてほしい。一度受け入れてもらえると、どんどん欲張りになっていく。すると、私の返事に、彼は困ったように眉根を寄せた。
「ダメだよ。しずくは世間知らずのお嬢様だから分からないかもしれないけど、男はオオカミなんだよ。そんなふうに煽ったら、食べつくされちゃうよ」
「……食べつくされたらダメなんですか?」
「…………」
よく分からないけれど、食べちゃいたいくらい好きってことよね、多分。
私の言葉に、宗雅さんは一瞬言葉を失ったように固まって、そのあとあはっと吹き出すように笑った。
「む、宗雅さん? 私、変なこと言いましたか? こういうことは不慣れで、正しい答え方が分からなくて……」
「いや、大丈夫だよ。でも、しずくからお許しが出たんだし、遠慮なく美味しくいただいちゃおうかな。あーあ、しずくは処女なのに。僕みたいな男に捕まって、抱き潰されるなんて可哀想に。でもいいよね? 君は僕を愛しているんだもんね」
「え? は、はい……」
途中から宗雅さんの声が低くなって、よく聞こえなかったけれど、反射的に頷く。彼が嬉しそうに笑ってくれたので、正解だったのだろう。宗雅さんの愛を受けたい方は、きっとたくさんいて……私もその内の一人だ。彼の愛を乞えるなら、きっとそれが酷いことでも耐えられると思う。
彼はシャツの上からゆっくりと胸を揉むと、「可愛いね」と言ってまた唇を合わせてきた。シャツ越しでも胸の先端を指の腹で擦られると、服一枚隔てているのになんか変だ。甘い刺激が触れられていないお腹の奥を疼かせる。
「あっ……ふ、ぁ、んぅ」
重なる唇の隙間から、甘い声が漏れた。その声をさらに引き出すように、口の中を彼の舌が蹂躙する。まるで、口から全身を侵食されているかのようで、なにも考えられなくなってしまう。私が彼の服をぎゅっと掴むと、キスをしている唇が離れて、彼の唇が一瞬弧を描いた。その表情に目を奪われた瞬間、先程ボタンを外されたシャツの隙間から手が入ってくる。
「あ……っ」
シャツの隙間から入ってきた手がブラの中に入りこみ、両方の胸を揉む。痛いくらいに立ち上がった胸の先端を彼の指が掠める刺激に体を震わせると、彼は左右同時にきゅっと胸の先端を摘み上げた。
「ひうっ」
突然の刺激に思わず大きな声が出てしまって恥ずかしい。慌てて自分の口を手で覆うと、彼が胸の先端をクリクリと弄りはじめた。
「しずくの可愛い胸の飾り、両方同時に触られて気持ちがいいね。でも、いけないよ。声、我慢しちゃ。ほら、聞かせて?」
「でも、恥ずかしくて……」
「じゃあ、恥ずかしがり屋なしずくに課題を出そうかな」
課題……?
よく分からなくて口を手で覆ったまま、首を傾げると、宗雅さんが嗜虐的に笑った。
「そう。恥ずかしいことに慣れるように、しずくの体が今どうなっているか言えるようになるまで練習しよう。大丈夫、すぐにできるようになるよ。言えないと、どうなるか体にちゃんと教えこんであげるから」
「えっ?」
私の体が今どうなっているか?
予想もしなかった言葉に目を大きく見開く。その瞬間思わず、ふるふると首を横に振っていた。
「んぅっ」
すると、宗雅さんが咎めるように胸の先端をきつめに摘んだので、私は背中をわななかせた。
「ダメだよ。ほら、教えて。しずくはいい子だからできるでしょう?」
そんな……。大きな声が出てしまったことが恥ずかしくて口を押さえただけなのに、こんなことになるなんて。でも、なんだか逆らえない。逆らってはいけない不思議な拘束力を感じて、私は俯きながら心を決めた。
「ほら、言ってみようか? しずくは僕に両方の胸を触られて感じているんだ」
「~~~っ、わ、私は両方の胸を触って、いただいて……か、感じています……」
「感じてどうなっていると思う? プックリと立ち上がって、僕に触られて悦んでいると思わない?」
「っ、は、はい。プックリと立ち上がって……む、宗雅さんに、触っていただけて悦んでいます」
~~~っ。は、恥ずかしい。
「悦んでいるんだ?」
「は、はい……」
「ふぅん。なら、もっと僕に触ってほしい?」
焦らすように彼の指が私の身体をなぞる。自分の口で言うようにと無言の圧を感じて、私は恥ずかしさで泣きそうになりながら頷いた。
「はい、お願いします。もっと触ってください……」
私今茹で蛸のように真っ赤だと思う。恥ずかしさで死ねるなら、私もう死んでる。
おそるおそる彼を見上げると、楽しそうに私のことを見ていた。彼の表情はまさしく私を求める男性の顔だった。彼のそんな表情を見た瞬間、ドクンと心臓が跳ねる。
「宗雅さん……」
私が揺れる目で彼を見つめると、「いい子」と短く言った彼の手が私の頬を撫でた。私を褒める手にどうしようもなく下腹部が疼いた私は、もう彼の手の内に堕ちているのだと思う。
「可愛いよ、しずく」
宗雅さんに唇が触れそうなくらい近い距離で、彼に与えられる刺激に感じいる顔を見られている。熱い眼差しにすべて見られているのが恥ずかしくて、私はぎゅっと目を瞑った。
「しずく、目を閉じちゃいけないよ。ちゃんと僕のことを見て? 僕になにをされているのか目を開けて、ちゃんと見るんだ」
「っはい、ひあっ、あっ、あ……っ」
耳元で、吐息混じりに囁かれる。彼の低くて腰に響くような重い声が鼓膜を揺らして、それがまた体を跳ねさせる。彼が私の反応を楽しむように、胸の先端を少し引っ張って指の腹で捏ねる。その絶妙な加減に甘い声が止まらない。
恥ずかしいけれど、声は我慢しちゃダメ。我慢すると、また恥ずかしいことを言わされちゃう……。私はぎゅっと宗雅さんの服を掴んだ。
「んんぅ、あっ……は、っ、ふあ、あっ」
「可愛いね、しずく。胸、気持ちいいんだ?」
「ふあ、あっ……」
「返事」
「ひゃんっ」
宗雅さんは短くそう言うと、少し強めにぎゅっと摘み上げた。その強い刺激に体を仰け反らせ、目を大きく見開くと、彼はもう一度「しずく、返事は?」と囁いて、耳の中に舌を差し入れた。
「き、気持ちいっ、です……ひゃう、っぅ、んんっ」
「いい子だね。じゃあ、もっと気持ち良くしてあげるね」
彼は私の返事に満足そうに笑って、両方の胸の先端を捏ね回しながら私の唇を舐めた。ひっきりなしに甘い声を上げている私は口がだらしなく開いたままで、その口に舌を差しこまれ搦めとられる。胸を触る彼の手も、口内を蹂躙する彼の舌も熱い。すべてがどうしようもなく気持ちいい。
「しずくは快感に素直で、いやらしい子だね。僕、そういうところ大好きだよ」
いやらしいと言われて恥ずかしい反面、そういうところが大好きと言われて喜んでいる自分がいる……。ちょっと複雑だけれど、嬉しい気持ちが勝ってしまう。私は宗雅さんになら、いやらしいと思われてもいいのかもしれない。
ひっきりなしに与えられる快感に翻弄されながら、ぼんやりとそんなことを思った。
私が「嬉しい」と言うと、彼は「いい子だね」と言いながら、熱のこもった目で私を見つめ、足元に膝をつく。
「ああ、しずくの胸は柔らかいな……」
宗雅さんはソファーに座っている私の脚の間で膝立ちになり、胸を下から持ち上げるように揉んだ。その快感に彼の頭を抱えるように縋ると、柔らかな髪が頬をくすぐった。
ずっと触ってみたかった。やや癖のある茶髪。
彼の髪に撫でるように触れると、柔らかくて指通りのいい髪が気持ち良かった。その手触りのいい髪を梳くように指を通すと、彼がくすぐったそうに笑う。
「僕の髪、気に入った?」
「はい。とても柔らかくて触っていて気持ちいいです」
「そう? 僕もしずくの髪好きだよ。黒くて艶々していてサラサラで……。僕のシャツにその黒髪がよく映える。着せてみて正解だったな」
彼の褒め言葉に照れて視線をそらすと、彼が耳元で「ねぇ、その髪を乱している君が見たいな」と言った。
「~~~っ」
その言葉に体温が著しく上がった気がして、戸惑いながら宗雅さんを見ると、彼は悪戯っぽく口角を上げた。
「ああっ!」
そして、「可愛い」と言いながら、さんざん弄った胸の先端を口に含む。私がその刺激に体を震わせると、舌で包みこむように舐めて扱かれた。
「ひう、あっ……やぁ、待っ、んんぅ」
私はソファーの背凭れに体を預け、私の反応を楽しそうに見ながら胸に吸いつく彼の肩あたりをぎゅっと掴んだ。
これダメッ、気持ちいいの……
「あっ……あんっ、んぅ」
まるで誘うように上目遣いで胸の先端を弄ぶように舐められて、恥ずかしいのに目を逸らせない。
「舐めていないほうの胸、寂しいよね。ここも弄ってあげるね」
「ぁあっ、んんぅ……む、宗雅さっ」
宗雅さんは舐めていないほうの胸を揉み、指の腹で胸の先端を捏ねた。それも気持ち良くて、反射的に目を瞑ると、彼の手が太ももを撫ではじめる。最初は外側を撫でていた手が、スルッと内側を滑る。段々と脚のつけ根に迫ってくる手に、私は少しの怖さと、それ以上の期待感で体が震えた。
「しずく。僕が触りやすいように、自分で脚を開いてごらん」
「っ……」
そ、そんな……。そんなこと、できない……
恥ずかしくて、中途半端に脱げているシャツの裾を掴んで動かないでいると、彼に「しずく」と低い声で咎めるように呼ばれて、胸の先端に歯を立てられた。
「痛っ……」
痛くて身を竦めると、宗雅さんが「分かっているよね?」と視線で訴えてくる。その目がまるで私を捕食するようで、蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。
「しずくはいい子だから、できるよね? それとも、しずくは僕に触ってほしくないの?」
「っ、さ、触ってほしいです……」
「なら、どうすればいいの?」
「っ」
声音は優しいのに命じられているようで私は、ソファーに両脚を乗せておずおずと脚を開いた。
うう、恥ずかしい。恥ずかしくて死んじゃいそう。
宗雅さんはしばらくなにも言わずに私をジッと見つめる。その視線にまるで犯されているような気分になり、恥ずかしくてたまらなくて、彼の目から逃れるようにぎゅっと目を瞑った。
「しずく。目をちゃんと開けて、現状と向きあわないといけないよ。今、しずくは僕に見られて恥ずかしいのに感じているんだよね? ほら、触っていないのにとろとろとあふれてくるよ」
「~~~っ!」
その言葉に慌てて脚を閉じようとすると、宗雅さんは脚のつけ根をぐっと押さえて、さらに開かせた。そして、身を屈めて脚の間に顔を近づける。
「やっ」
宗雅さんの息遣いが分かってしまうくらい近い。
恥ずかしいところを至近距離で見られて私は泣きそうだった。いえ、もう泣いてる。だって目尻に涙が溜まっているもの。
「おねがい……します。そんなに見ないで……」
「違うでしょう? 見てくださいだよ、しずく。ほら、言ってみて……」
そ、そんな……
まるで間違いを正すような優しい声音で訂正される。見ないでほしいのに、えも言われぬ拘束力を感じる。
許して、と見つめても許してくれそうにない。宗雅さんはとても優しそうな笑みを浮かべているが、私が彼の望む言葉を口にするのを待っている。そんな彼に、私は彼の望む言葉を口にした。
「み、見て、っ……。やだぁ。どうして……そんなに辱めるようなことばかり言うんですか? わ、私は普通がいいのに、初めてで怖いのに、恥ずかしいのに……私……私……」
声が震える。覚悟を決めたはずなのに、実際はそんなことなくて、恥ずかしくてたまらない。彼の恥ずかしい言葉の数々に目尻に溜まっていた涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。そんな私を見て、彼は私の隣に座ってぎゅっと抱きしめてくれる。
「ごめんね。ちょっとやりすぎちゃった。そうだよね……初めては優しくがいいよね。ごめん、しずく。泣かないで? 僕、君に好きだと言ってもらえて、こうやって触れあえて、嬉しくて……余裕を失ってしまったみたい」
何度も謝りながら私の背中を優しくさすってくれる宗雅さんに、私はホッと息を吐いた。
「む、宗雅さんも、余裕を失うこと……あるんですか?」
私が目をぐしぐし擦りながら問いかけると、彼は目を擦っている私の手を掴んで優しく唇で涙を吸い上げた。
「当たり前でしょう。僕は君に溺れた、ただの男だよ。それに僕、ちょっとSの気があるんだ。でも良くないね。もっとゆっくりじゃないと」
「S……?」
Sってなにかしら?
「しずくを困らせたいわけでも怖がらせたいわけでもないから、気にしなくていいよ。追々受け入れてもらうけどね」
彼の言葉の意味が分からなくて首を傾げていると、彼は優しく私の頭を撫でてくれる。でも、「それって、どういう意味ですか?」とは聞けない。なんとなく、そんな雰囲気ではない気がして、私はあとで調べてみようと決めてただ頷いた。
「今日はしずくが怖くないようにしようね。それと痛くならないように、ゆっくり慣らそう」
「え? な、なに……?」
宗雅さんはそう言うと、またソファーから降りて私の脚の間に陣取る。彼の行動の意図をはかりかねていると、彼の顔が近づいてきて私の濡れた花弁を舌で割り開くように舐め上げた。
「やっ、そ、そんなところ……やぁっ、待って、ああっ」
驚きのあまり、慌てて逃れようと身を捩る。でも、がっしりと押さえられているせいで、腰をくねらせることしかできなかった。彼は震えるように開いて愛液を垂らしている蜜口のまわりを焦らすように舐めてから、ジュルッと愛液を啜る。
「あっ……」
彼は少しの快感も取りこぼすのを許さないとばかりに、跳ねる腰を押さえながら花芽に吸いつくので、私は腰を突き出すように体を仰け反らせてしまう。
やだ。こんなの、おかしくなっちゃう。
宗雅さんは薄皮を剥いて、集中的に花芽をコリコリと舌で包むように舐めて転がす。
「ひあぁっ、あっ……宗雅さんっ、宗雅さんっ……やっ、それダメッ、ふああっ」
味わったことのない強烈な刺激に髪を乱しながら、快感に溺れた。彼は「痛くならないように、ゆっくり慣らそう」と言ったけれど、こんな恥ずかしいことが慣らすことに繋がるのか、よく分からなかった。
中からどんどん、はしたないものがあふれてこぼれて……やだやだ、止まらない。どうしよう。
「すごいね。しずくのここ、とても甘いよ。それにすごくいい香りがする。あふれてくる蜜も甘くて美味しいから、もっと飲みたいな。ほら、出して?」
「ふああぁっ」
出す? 出すって、出すって……
彼は、そんなことを言いながら、中に舌を差しこんだ。私は彼の行為と気持ち良さと恥ずかしさで、もうパニックだ。けれど、彼が出してと促さなくても、私のそこは勝手にあふれて止まりそうにない。
「こんなのやだぁっ……舌挿れちゃ、ひああっ」
「しっかり濡らしてほぐしておかないと、あとでつらいのはしずくなんだよ。もうちょっと我慢しようね」
そんなところで喋らないでっ!
私は自分では処理しきれない感覚を持てあまし、大きく見開いたままの目から大粒の涙をこぼした。
熱くて気持ちが良くて、でも恥ずかしくて甘く苦しい。彼の手や舌は甘い神経毒のように、私の体に染みこんでいく。
「えっ、やぁっ、変っ、なにかきちゃうの! やだやだ、ああ――――っ‼」
たとえようのない強い快感が自分の体を走って、一気に積み重なっていた快感から解放された。私がぐったりと弛緩した体をソファーに預けて肩で息をしていると、彼は唇についた愛液をぺろっと舐めて微笑んだ。
「上手にイケたね。とても可愛かったよ」
褒めるように額にキスが落ちてきて、それが温かくて、私はそっと目を閉じて彼の優しいキスを受けた。
今のがイク……?
「慣らすために少し指を挿れるよ。痛かったら言ってね」
その言葉と共につーっと花弁の割れ目をなぞられ、中に指が一本入ってくる。そのまま、中を探るように指が動いた。たくさん濡れているせいか痛くなかったことにちょっとホッとする。
「やっぱりきついな。痛くない?」
「んっ、はぁっ……い、痛くない、ですっ」
「そう? ならいいんだけど……。ちゃんと痛かったら痛いって言ってね。我慢はダメだよ」
「ふ、副社長はご迷惑じゃないんですか? 来る縁談をすべて断っていると聞きましたが」
「うん、そうだね。だって、僕は学生の時からずっと君が好きだったんだ。ほかの女性とは結婚するつもりなんてないからね」
「あ、そうなんですね……」
……
「えぇっ⁉」
私が驚いて飛び退くと、彼はクスクスと笑った。
「君は覚えていないかもしれないけど、中等部と高等部の合同練習試合。僕、そこにいたんだよね。これでも、高等部の部長だったんだよ」
「お、覚えております! とても素敵でしたから!」
「ふふ、ありがとう。嬉しいなぁ。僕も君を素敵だと思ったよ。弓を握った途端に雰囲気が変わって、一瞬で目を奪われた。とても五歳も年下とは思えない大人びた表情と雰囲気。艶やかな黒髪をポニーテールにして綺麗に纏めている姿がなんとも言えず扇情的で……君を取り巻く独特な雰囲気すべてに興奮したよ。君の適度に引き締まったしなやかな肢体、それに触れてみたいとずっと思っていた……」
私は唖然とした。予想もしない言葉の数々に口をポカンと開けて、硬直する。宗雅さんは目を細めて、私の頬に触れた。
「それなのに、君は突然弓道部をやめてしまっただろう? もう会えないのだし忘れようと思っても忘れられなくて……。もう十一年も経つのに、自分でも頭がおかしいと思ったよ。本当にどうしようかと考えあぐねていた時に、君との縁談が持ち上がったんだ。いつも僕が断るものだから父達は僕に隠して、先に会わせて断れないようにするつもりだったみたいだけど、バカだなぁ。今回ばかりは断ったりしないのに。だから、分かった? 僕は君が好きなんだ。僕と結婚してくれる?」
「え……? は、はい。で、でも、本当に?」
「本当だよ、もう絶対に離さない。二度と僕の側から消えちゃいけないよ。君はあの時から、ずっと僕のものなんだよ」
彼の言葉にえも言われぬ拘束力のようなものを感じて、私はこくっと頷いた。すると、「いい子だね」と抱き締められる。そして、ゆっくりと唇が重なった。その唇の感触と確かに感じた体温に、私はそっと目を閉じて、そのキスを受けとめた。
「んっ、ふぁっ……っ」
顔の角度を変えて、深く唇が重なる。そのまま唇を吸われ、口の中が宗雅さんの舌でいっぱいになる。彼の舌が上顎をなぞるだけで、ゾクゾクする。縋るように彼の背中に手を回した。
貪るように求められると、気持ち良さ以上に、嬉しくて体が高揚していく。ずっと好きだった人が自分に触れている。キスしている。それどころか、自分も好きだと言ってくれる。それが、泣きそうなくらい嬉しい。
「可愛い。ねぇ、しずくって呼んでいい?」
「はい。嬉しいです……」
「ずっと好きだったけど、僕みたいな男が君に相応しいか分からなかった。だけど、君が自ら僕の手に堕ちてくるなら、もう二度と離さないよ。しずく、愛している」
「わ、私も愛しています!」
私だって、ずっと好きだった。十一年間、ずっと秘めていたこの想いを受け入れてもらえる日が来るなんて……。彼の言葉に、「私こそ、宗雅さんに相応しくあれるように頑張りますね」と微笑むと、彼の手が私の瞼を覆った。閉じなさいって意味だと思い、目を閉じると、ゆっくりと唇が重なる。先程のような舌を絡ませ合うような激しいキスじゃなく、触れあうだけのキスなのに、胸がドキドキと高鳴っているのが分かった。
「しずく……」
唇が一瞬だけ離れて、吐息混じりに名を呼ばれて、また重なる。二人の間に距離がなくなったんじゃないかと思うくらい、ぴったりと唇が合わさって、抱き締められる手に力が込められると、クラクラと眩暈がした。
「可愛いね、しずく。キスだけでもうとろとろだ」
「っあ、あっ、む、宗雅さんっ」
宗雅さんは体勢を変え、私に被さるような形でソファーに片膝を乗せた。その片膝が脚の間に触れると、ショーツ越しだけれど体が強張ってしまう。普段は甘やかな顔が、今は意地悪そうに私を見つめる。彼のこんな顔を見られる特別感に酔いそうだ。
「あの……私、初めてなんです。だから、その……どうしていいか分からなくて、優しくしてくださると嬉しいです」
私が懇願するようにジッと見つめると、彼の手が私の腰にまわる。その手の想像以上の熱さに、体が震えた。
宗雅さんなら、ちゃんと分かってくれるはず。そう想いを込めて、彼を見つめる。すると、安心させるように微笑んでくれた。
「そんなに不安そうにしなくても大丈夫だよ、ちゃんと分かっている。ずっと僕だけを見ていてくれたんでしょう?」
「はい! ずっと、ずっと好きでした!」
「嬉しいなぁ。あ……でも、ここを自分で慰めてはいたのかな? 僕のことを考えて」
「⁉」
シャツ越しに下腹部をツーッと指でなぞりながら問われて、恥ずかしさに目をそらすと、「あは、図星?」と揶揄うように笑われた。
「もちろん、僕を想って……だよね?」
「いえ、あの……宗雅さんのことをずっと想ってはいましたが、そんなことは恥ずかしくてできなかったです。ごめんなさい……。でも、したほうがいいなら、頑張ります」
「やだな、謝らなくていいし一人で頑張らなくてもいいよ。本当にしずくは真面目で何事にも一生懸命だね。そこがとても可愛くもあり好ましくもあるよ。なにも知らないなら全部僕が教えてあげるから、身を任せてくれるね?」
「っんぅ、は、はい。嬉しいです」
囁かれながら、耳朶を食まれ、ツーッと耳の縁をなぞられると、息が上がった。「しずく」と名を呼びながら、彼の手が私の胸の膨らみをなぞる。そして、シャツのボタンをゆっくりと外した。空気が肌に触れ、肩を揺らすと、「大丈夫、怖くないよ」と宥めるように額にチュッとキスを落とされる。
優しい……
「あぁ、可愛いな。可愛すぎるよ。十一年分の想いをぶつけてしまいそう……」
「ぶつけてください……」
嬉しい。むしろぶつけてほしい。一度受け入れてもらえると、どんどん欲張りになっていく。すると、私の返事に、彼は困ったように眉根を寄せた。
「ダメだよ。しずくは世間知らずのお嬢様だから分からないかもしれないけど、男はオオカミなんだよ。そんなふうに煽ったら、食べつくされちゃうよ」
「……食べつくされたらダメなんですか?」
「…………」
よく分からないけれど、食べちゃいたいくらい好きってことよね、多分。
私の言葉に、宗雅さんは一瞬言葉を失ったように固まって、そのあとあはっと吹き出すように笑った。
「む、宗雅さん? 私、変なこと言いましたか? こういうことは不慣れで、正しい答え方が分からなくて……」
「いや、大丈夫だよ。でも、しずくからお許しが出たんだし、遠慮なく美味しくいただいちゃおうかな。あーあ、しずくは処女なのに。僕みたいな男に捕まって、抱き潰されるなんて可哀想に。でもいいよね? 君は僕を愛しているんだもんね」
「え? は、はい……」
途中から宗雅さんの声が低くなって、よく聞こえなかったけれど、反射的に頷く。彼が嬉しそうに笑ってくれたので、正解だったのだろう。宗雅さんの愛を受けたい方は、きっとたくさんいて……私もその内の一人だ。彼の愛を乞えるなら、きっとそれが酷いことでも耐えられると思う。
彼はシャツの上からゆっくりと胸を揉むと、「可愛いね」と言ってまた唇を合わせてきた。シャツ越しでも胸の先端を指の腹で擦られると、服一枚隔てているのになんか変だ。甘い刺激が触れられていないお腹の奥を疼かせる。
「あっ……ふ、ぁ、んぅ」
重なる唇の隙間から、甘い声が漏れた。その声をさらに引き出すように、口の中を彼の舌が蹂躙する。まるで、口から全身を侵食されているかのようで、なにも考えられなくなってしまう。私が彼の服をぎゅっと掴むと、キスをしている唇が離れて、彼の唇が一瞬弧を描いた。その表情に目を奪われた瞬間、先程ボタンを外されたシャツの隙間から手が入ってくる。
「あ……っ」
シャツの隙間から入ってきた手がブラの中に入りこみ、両方の胸を揉む。痛いくらいに立ち上がった胸の先端を彼の指が掠める刺激に体を震わせると、彼は左右同時にきゅっと胸の先端を摘み上げた。
「ひうっ」
突然の刺激に思わず大きな声が出てしまって恥ずかしい。慌てて自分の口を手で覆うと、彼が胸の先端をクリクリと弄りはじめた。
「しずくの可愛い胸の飾り、両方同時に触られて気持ちがいいね。でも、いけないよ。声、我慢しちゃ。ほら、聞かせて?」
「でも、恥ずかしくて……」
「じゃあ、恥ずかしがり屋なしずくに課題を出そうかな」
課題……?
よく分からなくて口を手で覆ったまま、首を傾げると、宗雅さんが嗜虐的に笑った。
「そう。恥ずかしいことに慣れるように、しずくの体が今どうなっているか言えるようになるまで練習しよう。大丈夫、すぐにできるようになるよ。言えないと、どうなるか体にちゃんと教えこんであげるから」
「えっ?」
私の体が今どうなっているか?
予想もしなかった言葉に目を大きく見開く。その瞬間思わず、ふるふると首を横に振っていた。
「んぅっ」
すると、宗雅さんが咎めるように胸の先端をきつめに摘んだので、私は背中をわななかせた。
「ダメだよ。ほら、教えて。しずくはいい子だからできるでしょう?」
そんな……。大きな声が出てしまったことが恥ずかしくて口を押さえただけなのに、こんなことになるなんて。でも、なんだか逆らえない。逆らってはいけない不思議な拘束力を感じて、私は俯きながら心を決めた。
「ほら、言ってみようか? しずくは僕に両方の胸を触られて感じているんだ」
「~~~っ、わ、私は両方の胸を触って、いただいて……か、感じています……」
「感じてどうなっていると思う? プックリと立ち上がって、僕に触られて悦んでいると思わない?」
「っ、は、はい。プックリと立ち上がって……む、宗雅さんに、触っていただけて悦んでいます」
~~~っ。は、恥ずかしい。
「悦んでいるんだ?」
「は、はい……」
「ふぅん。なら、もっと僕に触ってほしい?」
焦らすように彼の指が私の身体をなぞる。自分の口で言うようにと無言の圧を感じて、私は恥ずかしさで泣きそうになりながら頷いた。
「はい、お願いします。もっと触ってください……」
私今茹で蛸のように真っ赤だと思う。恥ずかしさで死ねるなら、私もう死んでる。
おそるおそる彼を見上げると、楽しそうに私のことを見ていた。彼の表情はまさしく私を求める男性の顔だった。彼のそんな表情を見た瞬間、ドクンと心臓が跳ねる。
「宗雅さん……」
私が揺れる目で彼を見つめると、「いい子」と短く言った彼の手が私の頬を撫でた。私を褒める手にどうしようもなく下腹部が疼いた私は、もう彼の手の内に堕ちているのだと思う。
「可愛いよ、しずく」
宗雅さんに唇が触れそうなくらい近い距離で、彼に与えられる刺激に感じいる顔を見られている。熱い眼差しにすべて見られているのが恥ずかしくて、私はぎゅっと目を瞑った。
「しずく、目を閉じちゃいけないよ。ちゃんと僕のことを見て? 僕になにをされているのか目を開けて、ちゃんと見るんだ」
「っはい、ひあっ、あっ、あ……っ」
耳元で、吐息混じりに囁かれる。彼の低くて腰に響くような重い声が鼓膜を揺らして、それがまた体を跳ねさせる。彼が私の反応を楽しむように、胸の先端を少し引っ張って指の腹で捏ねる。その絶妙な加減に甘い声が止まらない。
恥ずかしいけれど、声は我慢しちゃダメ。我慢すると、また恥ずかしいことを言わされちゃう……。私はぎゅっと宗雅さんの服を掴んだ。
「んんぅ、あっ……は、っ、ふあ、あっ」
「可愛いね、しずく。胸、気持ちいいんだ?」
「ふあ、あっ……」
「返事」
「ひゃんっ」
宗雅さんは短くそう言うと、少し強めにぎゅっと摘み上げた。その強い刺激に体を仰け反らせ、目を大きく見開くと、彼はもう一度「しずく、返事は?」と囁いて、耳の中に舌を差し入れた。
「き、気持ちいっ、です……ひゃう、っぅ、んんっ」
「いい子だね。じゃあ、もっと気持ち良くしてあげるね」
彼は私の返事に満足そうに笑って、両方の胸の先端を捏ね回しながら私の唇を舐めた。ひっきりなしに甘い声を上げている私は口がだらしなく開いたままで、その口に舌を差しこまれ搦めとられる。胸を触る彼の手も、口内を蹂躙する彼の舌も熱い。すべてがどうしようもなく気持ちいい。
「しずくは快感に素直で、いやらしい子だね。僕、そういうところ大好きだよ」
いやらしいと言われて恥ずかしい反面、そういうところが大好きと言われて喜んでいる自分がいる……。ちょっと複雑だけれど、嬉しい気持ちが勝ってしまう。私は宗雅さんになら、いやらしいと思われてもいいのかもしれない。
ひっきりなしに与えられる快感に翻弄されながら、ぼんやりとそんなことを思った。
私が「嬉しい」と言うと、彼は「いい子だね」と言いながら、熱のこもった目で私を見つめ、足元に膝をつく。
「ああ、しずくの胸は柔らかいな……」
宗雅さんはソファーに座っている私の脚の間で膝立ちになり、胸を下から持ち上げるように揉んだ。その快感に彼の頭を抱えるように縋ると、柔らかな髪が頬をくすぐった。
ずっと触ってみたかった。やや癖のある茶髪。
彼の髪に撫でるように触れると、柔らかくて指通りのいい髪が気持ち良かった。その手触りのいい髪を梳くように指を通すと、彼がくすぐったそうに笑う。
「僕の髪、気に入った?」
「はい。とても柔らかくて触っていて気持ちいいです」
「そう? 僕もしずくの髪好きだよ。黒くて艶々していてサラサラで……。僕のシャツにその黒髪がよく映える。着せてみて正解だったな」
彼の褒め言葉に照れて視線をそらすと、彼が耳元で「ねぇ、その髪を乱している君が見たいな」と言った。
「~~~っ」
その言葉に体温が著しく上がった気がして、戸惑いながら宗雅さんを見ると、彼は悪戯っぽく口角を上げた。
「ああっ!」
そして、「可愛い」と言いながら、さんざん弄った胸の先端を口に含む。私がその刺激に体を震わせると、舌で包みこむように舐めて扱かれた。
「ひう、あっ……やぁ、待っ、んんぅ」
私はソファーの背凭れに体を預け、私の反応を楽しそうに見ながら胸に吸いつく彼の肩あたりをぎゅっと掴んだ。
これダメッ、気持ちいいの……
「あっ……あんっ、んぅ」
まるで誘うように上目遣いで胸の先端を弄ぶように舐められて、恥ずかしいのに目を逸らせない。
「舐めていないほうの胸、寂しいよね。ここも弄ってあげるね」
「ぁあっ、んんぅ……む、宗雅さっ」
宗雅さんは舐めていないほうの胸を揉み、指の腹で胸の先端を捏ねた。それも気持ち良くて、反射的に目を瞑ると、彼の手が太ももを撫ではじめる。最初は外側を撫でていた手が、スルッと内側を滑る。段々と脚のつけ根に迫ってくる手に、私は少しの怖さと、それ以上の期待感で体が震えた。
「しずく。僕が触りやすいように、自分で脚を開いてごらん」
「っ……」
そ、そんな……。そんなこと、できない……
恥ずかしくて、中途半端に脱げているシャツの裾を掴んで動かないでいると、彼に「しずく」と低い声で咎めるように呼ばれて、胸の先端に歯を立てられた。
「痛っ……」
痛くて身を竦めると、宗雅さんが「分かっているよね?」と視線で訴えてくる。その目がまるで私を捕食するようで、蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。
「しずくはいい子だから、できるよね? それとも、しずくは僕に触ってほしくないの?」
「っ、さ、触ってほしいです……」
「なら、どうすればいいの?」
「っ」
声音は優しいのに命じられているようで私は、ソファーに両脚を乗せておずおずと脚を開いた。
うう、恥ずかしい。恥ずかしくて死んじゃいそう。
宗雅さんはしばらくなにも言わずに私をジッと見つめる。その視線にまるで犯されているような気分になり、恥ずかしくてたまらなくて、彼の目から逃れるようにぎゅっと目を瞑った。
「しずく。目をちゃんと開けて、現状と向きあわないといけないよ。今、しずくは僕に見られて恥ずかしいのに感じているんだよね? ほら、触っていないのにとろとろとあふれてくるよ」
「~~~っ!」
その言葉に慌てて脚を閉じようとすると、宗雅さんは脚のつけ根をぐっと押さえて、さらに開かせた。そして、身を屈めて脚の間に顔を近づける。
「やっ」
宗雅さんの息遣いが分かってしまうくらい近い。
恥ずかしいところを至近距離で見られて私は泣きそうだった。いえ、もう泣いてる。だって目尻に涙が溜まっているもの。
「おねがい……します。そんなに見ないで……」
「違うでしょう? 見てくださいだよ、しずく。ほら、言ってみて……」
そ、そんな……
まるで間違いを正すような優しい声音で訂正される。見ないでほしいのに、えも言われぬ拘束力を感じる。
許して、と見つめても許してくれそうにない。宗雅さんはとても優しそうな笑みを浮かべているが、私が彼の望む言葉を口にするのを待っている。そんな彼に、私は彼の望む言葉を口にした。
「み、見て、っ……。やだぁ。どうして……そんなに辱めるようなことばかり言うんですか? わ、私は普通がいいのに、初めてで怖いのに、恥ずかしいのに……私……私……」
声が震える。覚悟を決めたはずなのに、実際はそんなことなくて、恥ずかしくてたまらない。彼の恥ずかしい言葉の数々に目尻に溜まっていた涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。そんな私を見て、彼は私の隣に座ってぎゅっと抱きしめてくれる。
「ごめんね。ちょっとやりすぎちゃった。そうだよね……初めては優しくがいいよね。ごめん、しずく。泣かないで? 僕、君に好きだと言ってもらえて、こうやって触れあえて、嬉しくて……余裕を失ってしまったみたい」
何度も謝りながら私の背中を優しくさすってくれる宗雅さんに、私はホッと息を吐いた。
「む、宗雅さんも、余裕を失うこと……あるんですか?」
私が目をぐしぐし擦りながら問いかけると、彼は目を擦っている私の手を掴んで優しく唇で涙を吸い上げた。
「当たり前でしょう。僕は君に溺れた、ただの男だよ。それに僕、ちょっとSの気があるんだ。でも良くないね。もっとゆっくりじゃないと」
「S……?」
Sってなにかしら?
「しずくを困らせたいわけでも怖がらせたいわけでもないから、気にしなくていいよ。追々受け入れてもらうけどね」
彼の言葉の意味が分からなくて首を傾げていると、彼は優しく私の頭を撫でてくれる。でも、「それって、どういう意味ですか?」とは聞けない。なんとなく、そんな雰囲気ではない気がして、私はあとで調べてみようと決めてただ頷いた。
「今日はしずくが怖くないようにしようね。それと痛くならないように、ゆっくり慣らそう」
「え? な、なに……?」
宗雅さんはそう言うと、またソファーから降りて私の脚の間に陣取る。彼の行動の意図をはかりかねていると、彼の顔が近づいてきて私の濡れた花弁を舌で割り開くように舐め上げた。
「やっ、そ、そんなところ……やぁっ、待って、ああっ」
驚きのあまり、慌てて逃れようと身を捩る。でも、がっしりと押さえられているせいで、腰をくねらせることしかできなかった。彼は震えるように開いて愛液を垂らしている蜜口のまわりを焦らすように舐めてから、ジュルッと愛液を啜る。
「あっ……」
彼は少しの快感も取りこぼすのを許さないとばかりに、跳ねる腰を押さえながら花芽に吸いつくので、私は腰を突き出すように体を仰け反らせてしまう。
やだ。こんなの、おかしくなっちゃう。
宗雅さんは薄皮を剥いて、集中的に花芽をコリコリと舌で包むように舐めて転がす。
「ひあぁっ、あっ……宗雅さんっ、宗雅さんっ……やっ、それダメッ、ふああっ」
味わったことのない強烈な刺激に髪を乱しながら、快感に溺れた。彼は「痛くならないように、ゆっくり慣らそう」と言ったけれど、こんな恥ずかしいことが慣らすことに繋がるのか、よく分からなかった。
中からどんどん、はしたないものがあふれてこぼれて……やだやだ、止まらない。どうしよう。
「すごいね。しずくのここ、とても甘いよ。それにすごくいい香りがする。あふれてくる蜜も甘くて美味しいから、もっと飲みたいな。ほら、出して?」
「ふああぁっ」
出す? 出すって、出すって……
彼は、そんなことを言いながら、中に舌を差しこんだ。私は彼の行為と気持ち良さと恥ずかしさで、もうパニックだ。けれど、彼が出してと促さなくても、私のそこは勝手にあふれて止まりそうにない。
「こんなのやだぁっ……舌挿れちゃ、ひああっ」
「しっかり濡らしてほぐしておかないと、あとでつらいのはしずくなんだよ。もうちょっと我慢しようね」
そんなところで喋らないでっ!
私は自分では処理しきれない感覚を持てあまし、大きく見開いたままの目から大粒の涙をこぼした。
熱くて気持ちが良くて、でも恥ずかしくて甘く苦しい。彼の手や舌は甘い神経毒のように、私の体に染みこんでいく。
「えっ、やぁっ、変っ、なにかきちゃうの! やだやだ、ああ――――っ‼」
たとえようのない強い快感が自分の体を走って、一気に積み重なっていた快感から解放された。私がぐったりと弛緩した体をソファーに預けて肩で息をしていると、彼は唇についた愛液をぺろっと舐めて微笑んだ。
「上手にイケたね。とても可愛かったよ」
褒めるように額にキスが落ちてきて、それが温かくて、私はそっと目を閉じて彼の優しいキスを受けた。
今のがイク……?
「慣らすために少し指を挿れるよ。痛かったら言ってね」
その言葉と共につーっと花弁の割れ目をなぞられ、中に指が一本入ってくる。そのまま、中を探るように指が動いた。たくさん濡れているせいか痛くなかったことにちょっとホッとする。
「やっぱりきついな。痛くない?」
「んっ、はぁっ……い、痛くない、ですっ」
「そう? ならいいんだけど……。ちゃんと痛かったら痛いって言ってね。我慢はダメだよ」
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