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番外編

女官長と先王※(女官長視点)

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 先日、女王陛下が女官ごっこを計画されたので、私は慌てて皆に周知をした。気付かないふりをして、相手をしてやれと。
 それなのに、私の話を聞いていなかった愚か者が、あろう事か女王陛下に触れ、無礼を働いた。


 まったく……何という事を……。



 第一、女王陛下は嫁いできて11年が経つというのに、今だにあの頃と一切変わらない容姿を持つ不思議な方だ。まあ、フランチェスコのせいらしいけれど……。


 低身長のせいか、何処から見ても子供だ。とても4人の御子を持つ母君とは思えない。特に陛下と並ぶとそれが顕著だ。
 そして、女王陛下は気付いていないのだ。己が持つ独特な雰囲気に。決して下々の者に混じれぬような神秘的な雰囲気を己が持っている事を……。



 今まで、色々な人間を見ていたけれど、さすが神に祝福された家と名高いだけがある。普通の人間とは違う雰囲気を持っているのだ。

 


 そして、女王陛下により女官や侍女だけでなく城に仕える者は、やる気や実力により評価し、適材適所に配置せよとお達しが下った。
 まあ元々、女王陛下付きの女官はそこまで家柄を重視されていない。そんなものではなく、全て女王陛下と気が合うか、女王陛下が健やかに過ごせるかで、国王陛下により選ばれているからだ。なので、アニェッラも下級貴族だ。



 まさか……あの可哀想な姫が女王に登りつめるとは……。あの時、誰が思っただろうか……。
 あの国王陛下を夢中にさせ、己の地位と権力を盤石なものにしていくところは、さすがだと称賛せざるを得ない。



 まさかあの国王フランチェスコに意見をしなかった王子が、あの姫に骨抜きにされ、フランチェスコを……先代の国王陛下を廃位してしまうなど、あの時誰が思っただろう。


 私はあのフランチェスコの狡猾で残忍なところが好きだった。強い戦士だったあの男の戦場での姿が好きだったのだ。




 フランチェスコと出逢ったのは42年前……私がまだ17だった頃だ。あの当時、フランチェスコは32で、王になった後、小競り合いを続け、領地を拡大するのを楽しんでいた頃だ。
 当時の私は己の容姿に自信があった。自分で言うのも何だが美しい部類に入っていたと思う。



 そして、私はあの戦に辟易していた。当時、私は盗賊をしていて、この戦況の中では未来への見通しも立たず、焦っていた。
 そんな時、近くでエトルリアの国王が野営していると聞いて、私はすぐさま興味を持ったのだ。



 私は閨房術にも自信があったし、それで国王を骨抜きにしてやれば、愛妾になって一生贅沢に暮らせるかもしれないという打算もあり、私はフランチェスコに近づくことにした。



 夜、気配を消して野営地に忍び込んだ私は、それが愚かな考えだったという事に、すぐ気付かされた。



「がはっ……!」
「気配を消して近づかれるのは好かぬな」




 突如、体が浮き上がったと思ったら、息が出来なかった。筋肉質で、とても大柄というのが初めて見た印象だった。
 テラコッタ色の髪をオールバックにし、肩まで伸ばし顎髭を生やしている大男は、私の首を絞めながら片手で私の体を持ち上げていた。首を絞めた状態で持ち上げられているので、とても苦しくて生理的な涙が自然と出てきた。




「陛下、そのような者は即刻斬り捨てて下さい」
「ふむ。だが、この娘……体つきは中々のものだ。一度遊んでから殺すのも悪くはないな……」



 そう言って、フランチェスコは私の首を絞めたまま、私の胸を鷲掴んだ。



「陛下、寝首を掻かれたらどうするのです!」
「誰に言っておる? ……ふん、余はそろそろ溜まっているのだ。慰み者を欲して何が悪い」



 フランチェスコが騎士を睨む目には底冷えした。騎士も、それ以上何も言わなかった。いや、言えなかったのだろう。


 そうして、私は野営地の玉座に連れて行かれ、そこでようやく、首を絞めている手から解放され、私は空気を探して必死で息をした。



「ごほっ……ごほっ……くっ、はっ……げほっ」
「其方、余を満足させてみるが良い。つまらぬと感じた時点で、其方の首が胴から離れていると思え」



 その時の私は顔が真っ青だったと思う。その後、私に口でさせながら、平気な顔で戦略会議をしているフランチェスコに最初はドン引きだった。
 寝所に連れて行ってもらえると思っていたのに、フランチェスコは人前でも平気で、私を裸にし奉仕させた。



 だが、私も必死だった。つまらないと思われた瞬間が己の死だからだ。




「口はもう良い。そろそろ上に乗れ」
「え?」


 私は愕然とした……。戦略会議の真っ最中なのに、最後までするつもりなのかと……。



「ですが……皆様が……」
「そのような事は気にするな。其方は余のおもちゃだ。余の事だけを考えておれば良い。さぁ、上に跨り、踊れ」
「はい……」



 フランチェスコは私の顔を痛いくらいに掴んで、そう命じたけど、私は恐怖でイヤとは言えなかった……。まあ、言ってしまったら死んでいたのだろうけど。




 私は玉座に座っているフランチェスコの上に乗り、己で挿入したけれど、濡れていないソコに挿れるには大きすぎるソレは、私を手間取らせた。
 閨房術を学んでいるのに、私は恐怖で実際何も出来なかった。



「早くしろ」
「で、でも……大きすぎて入らなっ……ああっ! 痛……っう!」



 言い終わる前に、フランチェスコは無理矢理突き入れたから、私は息が出来ないほどの衝撃と痛みで、必死で空気を吸った。




「はッ、ハァッ……ッ……」
「では、さっさと動け。退屈をさせるなよ」



 私はゆっくりと動いた。痛みと羞恥でどうにかなりそうだったけれど、満足させなければ殺される。その異常な空間に、私は次第に訳が分からなくなってきた。



 フランチェスコは私が動いているのを意に介さず、臣下の者たちと次の戦略について平然と話し合っている。




 っ……ヤバイ……コレ……良いトコロにあたる……。



 最初は痛くて恥ずかしかったのに、徐々に私は刺激を求め、必死で腰を振っていた。




「あっ……はっ、んっ……っ」



 ヤバイ……ヤバイ……このままじゃ、イッちゃう……。


「ああっ、ダメ……あっ、あ、イッ……ク……ああっ! あ、あ、あっ」



 私は戦略会議の真っ最中なのに、フランチェスコの上でしがみつきながらイッてしまった。ゼーハーと息を乱しながら、フランチェスコの肩に頭を乗せてしまっていた。



「ハァ……ハッ……ッ……いっ」



 その瞬間、思いっきりお尻を叩かれ、私はその痛みで体を仰け反らせてしまった。



「痛っ……」
「愚か者。勝手に気をやって休むな。ほら、さっさと動け」
「は、はい」


 私はまたフランチェスコの上で動き、その後何度か気をやってしまった後、ようやく解放されたけど、フランチェスコは満足したら早々に何処かへ行ってしまった。



 私が力が入らない体と回らない頭で玉座の上で裸のまま呆然としていると、フランチェスコが戻ってきた。その手に焼印を持って。




「其方、名を何という?」
「私……私はイデア……」
「では、イデア。今宵より、其方は余の物だ」



 そう言ってフランチェスコは私の胸に焼印を押し付けた。私は尋常じゃない熱さと痛みで、泣き叫びもがいたけれど、フランチェスコは私の抵抗なんてあってないようなもののように、愉快に笑いながら、私の体に己の所有の証を刻んだ。




「余の名はフランチェスコ。其方はこれより、余の命にだけ従え……」
「フランチェスコ……?」



 その後、私は王宮に連れ帰られ、女官の職を与えられた。フランチェスコは、王宮にも沢山の愛人や側室がいて、王宮内でお呼びがかかる事は稀だった。
 それでも戦が始まれば、連れて行ってもらえたし、戦っている時以外は、基本的に私はフランチェスコの上に乗っていた。勿論、彼のモノを挿れた状態でだ。



 戦の時も、私の盗賊としての手腕を買ってくれたし、私はどんどんフランチェスコに夢中になった。
 彼は私を気に入ってはいるけれど、飽きたらポイだろう。でも、私もこれは愛ではないけど、私もとてもフランチェスコを気に入っていた。



 私は残忍なフランチェスコを気に入っている。強い男は好きだ。強さこそ、全てなのだから。彼の狡猾さや残忍さ、戦で見せる力強さが、好きだった。



 そんな中、戦が終わり、平時となってしまい、私が戦に連れて行って貰える事はなくなってしまった。
 それでも、女官の仕事に励んでいると、たまに物陰に引っ張りこまれ、行為を命ぜられる事もあった。



 出会ってから14年の歳月が経った頃、私は女官長に登りつめ、忙しい毎日を送っていた。女官長になってからは、お手がつくことは更に稀になっていた。



「女官長、陛下がお呼びです。本日の報告が聞きたいと仰せです」
「ええ、すぐ行くと伝えて頂戴」



 と思っていたら、お呼びがかかったわ。
 だけど、私頑張っているのよ。それなのに、フランチェスコは好き放題に色んな女とやりたい放題、好色の限りを尽くしている。


 だから私は、そんなフランチェスコを少し試してみたくなった。魔がさしたのだ。何かをねだって、それを貰えれば、私もまだまだ捨てたもんじゃないかなって。



「フランチェスコ……、私忙しいの。貴方が私を女官長になんてするから」
「ならば、さっさと余を満足させて仕事に戻れば良いだろう」
「もう。仕方がない王様ね。ねぇ、私……貴方の期待に応えられてる?」



 私がフランチェスコの膝に乗りながら、首に腕を回し、意地悪っぽく微笑むと、フランチェスコは愉快そうに笑った。



「期待以上だ。余は其方を気に入っている。これからも、其方は余の物だ、イデア」
「なら、ご褒美をくださいな。異国には七色なないろに輝くとても珍しい宝石があると盗賊時代に聞いたことがあるの。貴方の物だという証は胸にもあるけど、私はその宝石で作ったアクセサリーも欲しいわ」



 すると、フランチェスコは私をベッドに沈め、今宵の其方次第だと言った。






「んぅ……ああっ、あああ、待っ……あひっ……イッ……イ、ック、~ああ!!! あ、あ……ハッ、ハァ……ッ」
「ほら、気を抜くな」
「ひっ! いっ、あああぁぁぁ!」



 フランチェスコはイッたあと息を整えている私の背中を鞭で打った。後背位でしているから打ちやすいのだろう。
 フランチェスコは痛みと快楽を与えるバランスが、とても上手かった。文字通り、調教されたのだと思う。



 そしてその情事のあと、フランチェスコは5歳になったばかりの第8王子を王太子候補として教育する事になったと教えてくれた。



 そして、その王子がいずれ、己を殺す事になるだろうとも……。



「ならば、何故今のうちに処分しないの?」
「王は力のある者がなるものだ。余を力で抑え付けられるようになるのなら上等だ。面白いではないか」



 そう愉快そうに笑ったフランチェスコに、私は言い知れぬ不安を感じた。





「………………」



 あの時に不安を感じたけれど……国王陛下はフランチェスコを殺す事はなさらなかった……。それどころか、ちょいちょい様子を見るようにと、私をフランチェスコのところへ送ってくれる。



 女王陛下が、私とフランチェスコの事を勘繰ると嫌な顔をされているようだが、彼なりに配慮をしてくれているのだろう。
 フランチェスコは王でなくなり、砦に籠もっても、気にしている素振りもなく、元気に楽しく生きている。



 まあ、あの人は戦っていたり体を動かしている方が、良いのだろう。国王である時より、イキイキしているようにも感じる……。
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