大嫌いな幼馴染みはどうやら私のことが好きらしい

Adria

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愛している(隆文視点)

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 ふと目を覚ますと、すべてが夢なんじゃないかと怖くなるときがある――

 隆文は夜中に不意に目が覚めて、そっと体を起こした。隣では侑奈が規則正しい寝息を立てて、よく眠っている。

 その隣を抜けだして侑奈が隆文のために作ってくれているフレーバーウォーターを飲みにキッチンへ向かった。そしてそれを飲んだあと、侑奈の体を拭くための濡れタオルを用意する。
 行為後、二人して眠ってしまったので、二人とも汗やら愛液やらでべとべとだ。

 隆文は物音を立てないように気をつけて寝室へ戻り、よく眠る侑奈の顔を覗き込んだ。
 珠の汗が浮かんだ肌はまるで輝いているように見えて、すごく美しい。その汗を濡れタオルでそっと拭った隆文は、自然と頬が緩んだ。

 今日は屋敷で祖母たちと散々隆文に女装をさせはしゃいだあとに、横浜のマンションまで来たので、疲れきっているようだ。そのせいか、隆文が侑奈の体を拭いても身動ぎひとつしない。起きているときなら恥ずかしがるだろう体勢でも気にせずに、すうすうと規則正しい寝息を立てて大人しく拭かせてくれている。


(嗚呼。侑奈の制服姿、めちゃくちゃ可愛かったな)

 隆文は侑奈の体を清めながら、女装した褒美にと――高校時代の制服を着てくれた侑奈を思い出して一気に口元が緩み締まりのない顔になった。

 もう脱がしてしまい床に散らばっている彼女の制服を拾い上げ感動を噛み締める。

 昔、遠目に見ていたときも思ったが、夏服を着た侑奈はめちゃくちゃ可愛い。丸襟ブラウスに紺色のジャンパースカート。胸元のさりげない校章。左側で片結びしてある共布のベルト。組み合わせが絶妙で、キュートアグレッションを呼び起こしてしまうくらい可愛さと優雅さが突出している。

 本当は当時面と向かって、何度も可愛いと伝えて褒め倒したかった。七、八年の時を経て叶うのは嬉しくはあるが、同時に複雑でもある。

(過去を取り戻せているようで嬉しいけど、やっぱり仲良く同じ時間を過ごしたかったよな……)

 悔やんでも悔やみきれない。
 自分さえ間違えなければ、ずっと側で侑奈の成長を見られたのにと、こういうときにどうしても後悔してしまう。


 隆文は侑奈の可愛い寝顔をスマートフォンのカメラでパシャリと撮影した。悠斗から侑奈に内緒で彼女の写真をよくもらっているが、やはり自分で撮れる感動には変えられない。

(はぁ、可愛い……)

 やっと面と向かって「その制服、よく似合っていてすごく可愛い」と伝えられ、高校の制服を着た侑奈を抱けたのだ。過去を後悔して感傷に浸るなど愚かなことだと、隆文は侑奈の制服を綺麗にたたんで棚の上に置いた。

(こんなにも甘美な褒美をもらえるなら、女装姿をさらして、侑奈に好き放題写真を撮られるくらい何でもないな)

 隆文は同じように床に散らばっている自身が着たセーラー服を見て苦笑した。祖母のせいでせっかくの長いスカートが短くなってしまったが、ミニスカートのおかげか着たままセックスしても邪魔にならなかったので、何が功を奏するか分からない。まあ侑奈には「笑っちゃって集中できないから脱いで!」と言われたが……


「侑奈、愛してる」

 眠っている愛しい人の手を握り、想いを告げる。それは懇願に近い。

 今さら嫌われていた昔になんて戻れない。侑奈を失うなんて耐えられない。

 一度でも懐に入れた者を無碍に扱えない優しく真面目な性格の侑奈が、ここまできて隆文を捨てるようなことはないと頭では分かっているが、たまにものすごく不安になる。

 どうしようもないくらい彼女にハマっているのだ。こんな自分の側にいてくれる侑奈を誰よりも誠実に愛し大切にするし、どんな我が儘だって叶えてやる。それが自分にはできると自負している。


「だからもっと俺のこと好きになってよ」

 寝返りを打ち隆文にすり寄ってきた侑奈をぎゅっと抱きしめる。

 隆文の反省と愛情、執着が伝わっているおかげか、正直なところ好かれているとは思う。恋人として特別扱いもしてくれているだろう。
 おそらく淡い恋心を持ってくれているみたいだが、まだ自覚はしていないように思う。

(恋愛というものがよく分からないと言っていたし、俺への恋心を自覚させるにはまだまだ時間が必要だろうな)

 できれば気づいてほしいし、いずれは自分と同じ強さで愛してほしい。

 侑奈の髪を撫でて小さく息をつく。
 そうは言っても正式に婚約も交わしたし、三ヵ月後のパーティーがうまくいけば、完全に侑奈は俺のものだと世間に周知できる。そうなれば医療業界に流れている『花秋家のご令嬢と四條家の御曹司は不仲』なんて不名誉な噂も払拭できるはずだ。

(まあ焦る必要はないよな。侑奈はもう俺のものだし)

 隆文は侑奈の想いが追いつくよりも早く、彼女を囲っていっている自分や祖母に苦笑して、侑奈を抱き枕に眠りについた。
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