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濃密な夜②

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(ちょっと怖くなってきちゃったかも……)

「侑奈」

 余裕のない声が侑奈を呼ぶ。隆文を不安げに見ると、また彼の顔が近づいてきた。

「隆文……私……」
「大丈夫だから……」
「ん……っ」

 侑奈は隆文の胸を軽く押して起き上がろうとした。しかし、隆文の両腕に抱き竦められ、そのまま唇が奪われてしまう。体を硬くし、ぎゅっと目を瞑った侑奈の腰を彼の手が辿る。

「んぅ」

 隆文の舌が侑奈の口内を這い回る。尖らせた舌先で口蓋をなぞられて、背筋にゾクゾクしたものが走り体が震えた。


「ん、んんぅ……はっ、ぁう」
「侑奈、好きだ。ずっと好きだったんだ」

 隆文は侑奈が酸欠にならないように、たまに唇を離してくれる。その合間に愛を囁いてくれる隆文の甘く切ない声が、侑奈の心に沁み込んでいった。

(隆文……)

 返事をしたいのに、またすぐに唇を奪われてしまう。

 侑奈はやまないキスに翻弄されながら、隆文の腕の中で悶えた。脚の間に陣取っている彼は、侑奈の下唇を甘噛みして離れていった。そして体を起こすと自分のシャツを脱ぎはじめる。

(気持ちいい……)

 キスの余韻に浸っていると、しんとした室内にシャツが落ちる音が響いて、ハッと我に返る。


「あっ……た、隆文……ちょっと待って、ください」

 普段見ることのない彼の体が、羞恥心を刺激する。鎖骨、胸筋、腹直筋がえがく美しいライン。それに逞しい腕。当たり前だが大人の男性の体に、侑奈は目のやり場に困って視線を逸らした。

「侑奈、好きだ。絶対に大切にする。二度と傷つけないと誓うから、どうか俺のものになってくれ」
「隆文」

 まるで祈るように侑奈の額や頬、鎖骨に慈しむようなキスを落とす隆文に、侑奈は震える声で彼の名前を呼んだ。隆文の唇がとても熱くて、触れられたところから熱を帯びていくのが分かる。

(あ、わ……私……)

 侑奈が高鳴る胸を押さえたとき、体を下のほうにずらした隆文の唇が侑奈の足の甲に触れてきた。

「ひゃっ!」

 ぬるっとした感触に舐められたのだと分かり、侑奈の足がピクッと震えると、隆文が嬉しそうに笑った。


「……っ、待って!」
「何?」

 思わず制すると、隆文の動きが一瞬だけ止まる。侑奈が戸惑いの視線を向けると、隆文がフッと笑って右足を持ち上げた。そして緩やかに手を滑らせる。

「あ、足は……嫌です」

 侑奈が首を横に振ると、隆文の長い指が足の裏をなぞった。瞬間、背中にゾクゾクしたものが駆け巡って、反応しないように体に力を入れ耐える。

「なんで? 風呂に入ったんだから問題ないだろ。石鹸のいい香りだよ」
「やめて。嗅がないで」

(信じられない……!)

 隆文が足の甲に鼻先を当てたので、侑奈は両足をばたつかせた。いっそ蹴ってやろうと思ったのに、彼は侑奈の両足首を掴んで余裕の表情を浮かべている。


「そんなに暴れるとスカートが捲れて丸見えになるぞ」
「やっ……!」

 気がつくと脚が大きく開いてスカートがずり上がり、ガーターストッキングどころかショーツが丸見えの状態になっていた。その状況に一気に血の気が引いていく。

「やばいな、すごくいい眺めだ。絹のストッキングまで履いてくれて嬉しいよ。最高だ」
「へ、変態……」
「なんとでもどうぞ」

 隆文は掴んだ侑奈の右足首に頬擦りしながら、何度もキスを降らしてくる。

(た、隆文の馬鹿……)

「えっ? ひゃ、ひゃう」

 スカートを押さえて呆れた目で見ていると、突然隆文が足の親指に噛みついた。そして舌を巻きつけて舐る。

(な、何……)

 その途端言いようのない感覚が体を走って、意図せず体が跳ねた。自分の体の変化を理解できないでいると、隆文が侑奈の指をしゃぶりながらニヤリと笑った。

「へぇ。足の指舐められるの好きなんだ?」
「ち、違っ、やぁっ!」

 反論したいのに、隆文は侑奈の反応を楽しみながら莞爾として足の指に舌を這わせてくる。
 ちゅぱっと音を立てながら、一本一本丁寧に口に含まれ舐られると、なんともいえない感覚が体を走って、侑奈は身を捩って彼から逃げようとした。が、咎めるように指を甘噛みされると、抵抗する力が体から抜けていく。

「はうぅっ」
「甘噛みしたほうが反応いいとか、侑奈ってMだったんだな」
「は? ち、違います!」

 意地悪な表情で許容しがたいことを言ってくる隆文に、カッとなる。侑奈はジタバタと暴れて、彼から逃げようと試みた。

「こら、逃げるなって」
「馬鹿。隆文の意地悪……ひゃあっ」

 隆文は次は左足を捕まえて、また丁寧に舐り、そして歯を立てた。侑奈の体が跳ねた隙にスカートを押さえている手を外し、太ももを撫でてくる。ガーターのベルトに繋がれたストッキングと素肌の間を楽しみながら、隆文が嬉しそうに熱い息を吐いた。


「さて、どうしようか?」
「意地悪しないで……」

 侑奈が涙目で訴えると、隆文は目を細めて笑いながら、侑奈のエプロンの紐をするりと解いた。そしてメイド服のボタンを一つずつ外していく。震える手で彼の手を掴んだが、結局すべて外されてしまった。

 前が全開になって、ブラに包まれた胸が露わになる。

(恥ずかしい……)

 ますます顔が熱くなっていく。恥ずかしさで死にそうな侑奈とは違い、隆文はすごく楽しそうだ。


「へぇ、これってこうなってたんだ。てっきり背中にファスナーあると思ってた。でも前にボタンがあるほうが着衣エッチしやすそうだもんな」
「ちゃ、着衣エッチ……!?」

 ギョッとすると、隆文の手が無遠慮に乳房を鷲掴みにしてきた。

「っ、ば、馬鹿。そのために作られてませんから。玲子さんに言いつけますよ」
「言えば? そうしたら俺とセックスしたことがバレて、速攻で結婚だけど」

(う……)

 侑奈が言葉を詰まらせると、隆文がブラをずり上げた。

「きゃっ」
「ちゃんと付き合って、お互いの相性を確認してから俺と結婚したいんだろ? なら、無粋なこと言うなよ」
「あっ……!」

 ぷるんとまろび出た乳房に、隆文がむしゃぶりつく。右胸の先端を強く吸い上げられ、その熱さにきつく目を瞑った。隆文は口に含んだ乳首に舌を巻きつけながら、反対の先端を親指と人差し指で摘まんでくる。

「はぅ、んっ……あ、たかふ、み……」
「侑奈がMじゃないか、確認してみようか?」
「え……」

 彼はニヤリと笑い、侑奈の胸を揉む。胸の先端を人差し指と中指で挟み、つんと主張したそこをねっとりと舐め上げてくる。言われた言葉を理解するより早く、そのまま甘噛みされた。

「ひゃあぁんっ」
「いい反応」

 背中が弓なりにしなると、隆文が喉の奥で軽快に笑う。彼は歯を立てながら尖らせた舌先で先端をぐりぐりと嬲ってくる。そうされると腰が浮いた。

「可愛い。認めろよ、俺に虐められるのが好きだって」
「ひゃぅ……あっ、は……んっ、ぜ、絶対、いやっ」

 きつい眼差しで隆文を睨みつける。だが、隆文は楽しそうに笑うだけだ。

(も、もうやだ……)

 何度も何度も胸の先端を虐められると、お腹の奥がうずうずしてきて変な感じだ。否応なく体が勝手に反応して、声が勝手に出てしまう。侑奈は恥ずかしさから唇をきゅっと引き結んだ。

「本当に可愛い。そういう反応が俺のこと煽るって分かってる?」
「やっ」

 そう囁きながら、両胸の先端を捏ね、侑奈の耳の縁をひと舐めし、耳の中に舌を差し込んできた。いやらしい水音が鼓膜を揺らす。

「それだめぇ、やだ……やあんっ」

 気持ちよすぎて体に力が入らない。
 隆文は侑奈の耳の中を犯しながら、胸の先端を少しきつめに摘んだ。

「ひゃっ……待っ、ん、んんぅ」

 嬌声を押し殺しながら太腿をすり寄せる。すると隆文の手が、腰を通って太腿へと伸びてきた。スカートをたくし上げられ、ビクッと緊張が走る。ストッキングと繋がった白レースのガーターベルトまであらわになって、侑奈は慌ててスカートを押さえた。

「だ、駄目っ!」

 すると、今まで耳を舐めながら胸を嬲っていた隆文が、ゆっくりと顔を上げた。

「悪いがやめてやれない。俺が何年待ったと思ってるんだ」

 彼はツンと立ち上がっている侑奈の胸の先端を捏ね回しながら、恨み言のように呟いた。

「ずっと好きだって言っただろ。子供の頃からお前への気持ちを拗らせてるんだ。今さら止まれるわけねぇだろ」
「なにそれ」
「侑奈だって今止められると困るくせに。感じてないとは言わせないぞ」
「~~~~っ!」

 図星を指されて心臓がバクバクと音を立てる。侑奈は自分の胸元を押さえて、隆文を見つめた。そういえば自分を見るこの目を――ずっと前から知っている。隆文が侑奈を虐めるときはいつもこんな目をしていた。

 獲物を必ず手に入れてやるという捕食者のような瞳。そこに最初から男の欲が混じっていたのだと気がついて、体温が急激に上がった。

「絶対後悔させないから、大人しく俺のものになれ」

 侑奈が何も言わないのを観念したと受け取ったのか、隆文が胸の谷間に顔をうずめて頬ずりをしてきた。そしてスカートをたくし上げ、お尻を撫で回す。
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