鬼畜皇子と建国の魔女

Adria

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After Story

2.再会

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 ハッ!
 私、今……心の声がつい口をついて……。


 慌てて己の口を手で覆ったが、怖くてルキウスの顔が見れなかった。



「で、殿下……じゃなかった陛下……それでは失礼致し、ました」


 やばいぞ。動揺しすぎだ……。
 ルキウスは何も言わずに固まっているが、多分バレたよな……?


 取り敢えず、私はルキウスの隣を擦り抜けて部屋を出て行こうとした……出て行こうとしたのだが、ルキウスに手首を掴まれ、それは叶わなかった。



 嗚呼、やはりバレてしまった!!



「あの……へ、陛下? っ!!」



 突然、抱き締められて、私は心臓が止まりそうだった。


 うう……手の行き場が困る……私も抱きついても良いのだろうか……いやでも、それでは完全に認める事に……。




「戻ってくるのが遅いぞ、ルドヴィカ」
「……ああ……すまぬ」



 もう良いか……。
 今のルキウスを見れば、とても心配してくれていたのが十二分に伝わってくる……。



 変な意地を張っていてはイレーニアの言う通り未練を解消など出来ぬ。



 私はひとつ息を吐いた後、ルキウスの背中に手を回し、ルドヴィカへと姿を変え、気まずそうに笑いながらルキウスを見つめた。すると、ルキウスが私の顎を掴み、口付けてきたから、私は久しぶりのルキウスの口付けを受けた。






「っ! んっ……んんぅ!! んんーっ!!」



 どれほどの時間、口付けているつもりだ。
 それに口付けている間に服の中をまさぐるのはやめろ。



 私が、何とかルキウスを押しのけると、ルキウスがまた私に口付けようとしたので、私は何とかルキウスの胸を押した。



「待て! 待ってくれ! 急にさかるな! その前に色々と聞きたい話があるのだ!」
「だが、20年だぞ。20年も其方がいなかったのだ。先程の口付けだけでは埋められぬ」
「そのような顔をしても駄目だ。まずは話をしてからだ」
「…………分かった」




 おお! ルキウスが私の言う事を聞いた!
 以前のルキウスなら、絶対に最中に話せとか無茶苦茶な事を言っていたのに、ルキウスが大人しく私の言う事を聞いた!



 感動だ! やはり反省していると言う事だろうか?




「……今までずっと何処にいたのだ? 心配していたのだぞ」


 私が些細な事に感動していると、ルキウスが私の頬に手を添えながら、そう問いかけて来たので、私たちはソファーに腰掛け、今までの話をする事にした。


 私はルキウスと行ったあのイストリアで、従属の魔法陣とルチアの呪縛から解き放ってくれる者と出会った事などを話した。
 本来ならば、その手を取るつもりはなかったが、ルキウスとバルバラの事がショック過ぎた事や死産をしてしまったと勘違いした事で、色々と精神に限界を来たし、その手を取る事を決めたと話した。



「死んで、腹の子のところへ逝きたいと思ったのだ……でも、まさか無事に産まれているとは思わなかった……。あの目覚めた時、側に寝かせておいてくれれば、変な勘違いなどしなかったのだぞ」



 せめて、腹の子がいてくれたら、私はあのままでもきっと逃げずに頑張れて、成長を見届ける事が出来たかもしれないと、口を尖らせながら言うと、ルキウスはすまぬと小さく謝った……。



「産まれるには産まれたが、あの時ルドヴィクは本当に危ない状態だったのだ。正産期を迎えずに産まれた為に、未熟児であったし……。産まれた状況も良くはなかったせいでもあったのだと思う」



 私の容体も芳しくはなかったが、ルドヴィクの様子が心配であった為に、ずっとルドヴィクの側についていたと、ルキウスは語った。



「だが、やっと落ち着いて、其方にルドヴィクを見せようと部屋に行った時には、もう其方はいなかったのだ……」
「………………」



 私は愚か者だ。あの時……目覚めた時にルキウスがいない事に絶望し、勝手に死産したと思い込み、全てを放棄して逃げてしまった……。



 私が自分の事しか考えていない時、ルキウスとルドヴィクは頑張ってくれていたのに……。


「すまぬ……本当にすまぬ……。私は自分の事ばかりで……」
「いや、宮廷侍医も例えようのない精神的負担がかかってしまったと言っていた……それは全て私のせいだ。其方は何も悪くはない」



 そして、ルキウスはバルバラを構う度に、私の顔が辛そうに歪むのに興奮していたと話してくれた。



「は? やはり私を虐げ、気を引きたいだけだったのか……」
「ああ、アレに性欲処理でもさせれば、身重の其方の負担を減らせると共に、其方を悲しませ、虐げる事も可能だと思ったのだ。だが、それがどれ程に愚かな事か……。本当にすまなかった」




 はぁ。やはり、そうだったのか……。
 何というか……此奴の愛情は歪み過ぎている……。



「私たちの部屋でもあるこの部屋にバルバラを引き入れ、声を聞かせたのも、それが理由か……?」
「あれは、そろそろ其方が泣きながら私に突っかかってくるのを見たいという身勝手な理由からだ。苦悶の表情で耐えている其方も良いが、そろそろ本音が聞きたくなったのだ……」



 本当に何と言うか……呆れを通り越して、言葉を失うレベルだ。クズ過ぎる……。



 だが、今のルキウスは、とても申し訳なさそうにしている……ふむ。この20年、私がいなかった事が余程辛かったのだろうな……。




「……ルキウスは今、本当に側室はいないのか? バルバラは?」
「其方を失って苛々している時に鬱陶しかったので、つい殺してしまった」


 そして、私がいなくなった後は、誰にも手を出していないとも教えてくれた。




「いつ戻ってくるかも分からぬ私を、ずっと待っていたのか? 私などさっさと死んだ事にして、新しく正妃を迎えれば良かったのに……」
「私が興味を持つのも愛するのも其方だけだ。他の女などいらぬ。其方を失って、心底それを痛感した。私は、其方でなければ駄目なのだ」



 ルキウスが私を抱き締めながら、震える声でそう言った……。
 もう大丈夫だ。このルキウスとなら、やり直せる……。帰って来れて良かった……今、素直にそう思える……。


 私もルキウスにギュッと抱きつき、久しぶりのルキウスを堪能した。


「ルドヴィカ……その先程の女官の姿は、ルイーザの来世という事になるのか?」
「ああ、ミアという名の侯爵令嬢だそうだ」



 私がルキウスの胸に擦り寄り堪能していると、そう問われたので、私はミアの姿に戻り、記憶が戻った経緯やルドヴィカとしての力を取り戻したきっかけについても話した。




「望むならミアの姿でいるが、どうする?」



 私がヘラヘラと笑うと、ルキウスが絶対に駄目だと言ったので、私は首を傾げた。



「何故だ?」
「その娘の姿では側室にするしか道はない。ルドヴィカの姿でなければ、皇后として私の隣には立てぬ」
「……成る程」



 まあ、単純にルキウスを揶揄からかう為に、そう言っただけで、私も己の息子より若い姿でルキウスの隣にいるつもりはない。
 母親とも名乗れないのは、やはり寂しいしな……。



「だが、その娘が城内で失踪するのは困るな……」
「では、こうするのはどうだ?」


 
 私はルドヴィカの姿へと戻り、ミアを側室として召し上げる提案をした。


「だが……」
「それならば、ミアが此処に留まる理由が出来るし、失踪した事にもならぬ。親に会う時や必要に迫られた時はミアに戻れば良い訳だし……」



 行儀見習いの為に女官をさせているなら、その内下がらせて、嫁がせるつもりに決まっている。それは私自身も困るし、侯爵家の娘が城で行方不明では更に不都合だ。



「どちらも私なのだ。気にする事もあるまい」
「ふむ。仕方がない……そうするか……だが、私は小娘を抱く趣味はない。寝所の中ではその娘になる事は許さぬ」
「それは構わぬが、その娘ではない。ミアだ。ミア。興味がなくとも、側室に召し上げる娘の名くらい覚えておけ」



 私がそう言うと、ルキウスが私を抱き上げ、ベッドへと運んだので、私は久しぶり過ぎて慌ててしまった。



「ちょ、ちょっと待て。其方、政務は?」
「20年待ったのだぞ。もう待てぬ。それに、側室に召し上げるのだろう? では、手をつけておかねばな……」
「うっ、それはそうだが……っ! 待っ、あっ、ちょっ、待て、ひゃっ!」
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