1 / 5
黒豹の騎士団長
しおりを挟む
「クリスティアーナ様、それ返してもらいますよ」
「は、はい、どうぞ!」
クリスティアーナが、庭で大きな黒豹と昼寝をしていると、突然騎士に肩を揺さぶられた。クリスティアーナがハッとして寝ぼけ眼を擦りながら起き上がると、黒豹――リグニスも怪訝そうに体を起こす。
「愚か者。それとはなんだ、それとは」
「仕事を抜け出して女性に会いにきている貴方には『それ』で充分です」
その言葉にリグニスが不満げに眉根を寄せる。長い間一緒にいるせいか、豹の姿でも彼の表情は読み取りやすい。
二人の会話につい笑ってしまうと、リグニスが甘えるようにすり寄ってきたので、慰めるように彼の頭を撫でてあげる。彼はお礼とばかりに頬にキスをくれた。
「行ってくる、クリスティアーナ」
「ええ、いってらっしゃい」
リグニスの言葉に頷き、名残惜しさを隠して微笑む。そして彼が迎えにきた騎士と一緒に去っていくのを見送った。
「任務に戻るのだから人の姿に戻ればいいのに」
クリスティアーナは独り言ちた。
彼の本当の姿は――この国の王宮騎士団の団長リグニス・オルトラーニだ。我が国は獣人が建国して以来、人間と獣人が手を取り合って国を治めている。
「リグニス様はお帰りになったのですか?」
「ええ。仕事中だったそうよ。まさかサボりにきていたなんて騎士団長様のくせに困ったものだわ」
クリスティアーナは背後から声をかけた侍女ソフィアの言葉に頷いて立ち上がる。そして軽くドレスの裾を払った。
いつからだっただろう。彼は昼寝をしたくなると、我がモスカート伯爵邸に来るようになった。
そうあれは……
「は、はい、どうぞ!」
クリスティアーナが、庭で大きな黒豹と昼寝をしていると、突然騎士に肩を揺さぶられた。クリスティアーナがハッとして寝ぼけ眼を擦りながら起き上がると、黒豹――リグニスも怪訝そうに体を起こす。
「愚か者。それとはなんだ、それとは」
「仕事を抜け出して女性に会いにきている貴方には『それ』で充分です」
その言葉にリグニスが不満げに眉根を寄せる。長い間一緒にいるせいか、豹の姿でも彼の表情は読み取りやすい。
二人の会話につい笑ってしまうと、リグニスが甘えるようにすり寄ってきたので、慰めるように彼の頭を撫でてあげる。彼はお礼とばかりに頬にキスをくれた。
「行ってくる、クリスティアーナ」
「ええ、いってらっしゃい」
リグニスの言葉に頷き、名残惜しさを隠して微笑む。そして彼が迎えにきた騎士と一緒に去っていくのを見送った。
「任務に戻るのだから人の姿に戻ればいいのに」
クリスティアーナは独り言ちた。
彼の本当の姿は――この国の王宮騎士団の団長リグニス・オルトラーニだ。我が国は獣人が建国して以来、人間と獣人が手を取り合って国を治めている。
「リグニス様はお帰りになったのですか?」
「ええ。仕事中だったそうよ。まさかサボりにきていたなんて騎士団長様のくせに困ったものだわ」
クリスティアーナは背後から声をかけた侍女ソフィアの言葉に頷いて立ち上がる。そして軽くドレスの裾を払った。
いつからだっただろう。彼は昼寝をしたくなると、我がモスカート伯爵邸に来るようになった。
そうあれは……
11
お気に入りに追加
522
あなたにおすすめの小説
ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
婚前レスの王子に真実の姿をさらけ出す薬を飲ませたら――オオカミだったんですか?
梅乃なごみ
恋愛
犬国の第二王子・グレッグとの結婚目前。
猫国の姫・メアリーは進展しない関係に不安を抱えていた。
――妃に相応しくないのであれば、せめてはっきりと婚約破棄を告げて欲しい。
手に入れた『真の姿をさらけ出す薬』をこっそり王子に飲ませ、本音を聞こうとしたところ……
まさか王子がオオカミだったなんて――。
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
他サイトからの転載です。
絶倫獣人は溺愛幼なじみを懐柔したい
なかな悠桃
恋愛
前作、“静かな獣は柔い幼なじみに熱情を注ぐ”のヒーロー視点になってます。そちらも読んで頂けるとわかりやすいかもしれません。
※誤字脱字等確認しておりますが見落としなどあると思います。ご了承ください。
オオカミの旦那様、もう一度抱いていただけませんか
梅乃なごみ
恋愛
犬族(オオカミ)の第二王子・グレッグと結婚し3年。
猫族のメアリーは可愛い息子を出産した際に獣人から《ヒト》となった。
耳と尻尾以外がなくなって以来、夫はメアリーに触れず、結婚前と同様キス止まりに。
募った想いを胸にひとりでシていたメアリーの元に現れたのは、遠征中で帰ってくるはずのない夫で……!?
《婚前レスの王子に真実の姿をさらけ出す薬を飲ませたら――オオカミだったんですか?》の番外編です。
この話単体でも読めます。
ひたすららぶらぶいちゃいちゃえっちする話。9割えっちしてます。
全8話の完結投稿です。
色々と疲れた乙女は最強の騎士様の甘い攻撃に陥落しました
灰兎
恋愛
「ルイーズ、もう少し脚を開けますか?」優しく聞いてくれるマチアスは、多分、もう待ちきれないのを必死に我慢してくれている。
恋愛経験も無いままに婚約破棄まで経験して、色々と疲れているお年頃の女の子、ルイーズ。優秀で容姿端麗なのに恋愛初心者のルイーズ相手には四苦八苦、でもやっぱり最後には絶対無敵の最強だった騎士、マチアス。二人の両片思いは色んな意味でもう我慢出来なくなった騎士様によってぶち壊されました。めでたしめでたし。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。
石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。
雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。
一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。
ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。
その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。
愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。
R18 優秀な騎士だけが全裸に見える私が、国を救った英雄の氷の騎士団長を着ぐるみを着て溺愛する理由。
シェルビビ
恋愛
シャルロッテは幼い時から優秀な騎士たちが全裸に見える。騎士団の凱旋を見た時に何で全裸でお馬さんに乗っているのだろうと疑問に思っていたが、月日が経つと優秀な騎士たちは全裸に見えるものだと納得した。
時は流れ18歳になると優秀な騎士を見分けられることと騎士学校のサポート学科で優秀な成績を残したことから、騎士団の事務員として採用された。給料も良くて一生独身でも生きて行けるくらい充実している就職先は最高の環境。リストラの権限も持つようになった時、国の砦を守った英雄エリオスが全裸に見えなくなる瞬間が多くなっていった。どうやら長年付き合っていた婚約者が、貢物を散々貰ったくせにダメ男の子を妊娠して婚約破棄したらしい。
国の希望であるエリオスはこのままだと騎士団を辞めないといけなくなってしまう。
シャルロッテは、騎士団のファンクラブに入ってエリオスの事を調べていた。
ところがエリオスにストーカーと勘違いされて好かれてしまった。元婚約者の婚約破棄以降、何かがおかしい。
クマのぬいぐるみが好きだと言っていたから、やる気を出させるためにクマの着ぐるみで出勤したら違う方向に元気になってしまった。溺愛することが好きだと聞いていたから、溺愛し返したらなんだか様子がおかしい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる