上 下
21 / 40

日曜日の夜明け前

しおりを挟む
ふと目が覚めると、最早見慣れた感のあるホテルのベッドの上だった。
部屋の主照明は暗く落とされ、壁の間接照明が辺りを柔らかく照らしていた。

薄暗闇の中、時間を確認したくて身じろぎすると、今回は 横から抱きつく感じのホールドスタイルであることに気がついた。

しかし今となってはそれも既に通常運転だ。今さらなにを言うこともない・・・くはないけど一旦保留だ。
ほ~、今回は奴も入れっぱなしにはせず、ちゃんと自分のモノを仕舞ったようで 感心感心、じゃねぇわ。

とにかく、俺は風呂に入りたかった。20代成人男性が1週間以上もの間 風呂無しだったのだ。自分では分からなくても匂っているだろうし、いい加減さっぱりしたい。あと、奴と俺のあれやこれやにまみれた寝具に横になるのも限界だった。
あと各方面への連絡と謝罪・・・非常に気が重くなる。

とりあえず風呂が先だと、奴の腕に手を掛けて解除しようとしたら、逆に奴のホールドがきつくなる。
そちらを見やると俺を見ている京極と目が合った。

「・・・」
どこに行くんだと、奴の目が言っていたので、
「風呂入るんだよ。お互い鼻が麻痺してて分からないかもしれないけど、さすがに体とか臭ってるはずだ。」

「・・・匂いが・・・」
「あん?」
「消えてしまう。私だけのΩの・・・せっかくの濃い匂い・・・。」
そう言うと 俺の耳の下辺りに頭を突っ込んで来て、フンスフンスと鼻息を荒くしている。

一目で極上クラスと分かる程の男のはずが、今はマタタビにじゃれつく大型の猫にしか見えなかった。

しかし忘れてはいけない。猫は猫でもこいつは猛獣だと、俺はこの1週間 実地じっちで学んだのだ。

・・・でも。すぐそこにある色素の薄い毛髪が俺を誘惑してくる。
長毛種の茶色い猫毛のように柔らかそうで、いい匂いもして・・・
気がついたら、京極の髪を手ぐしの要領で撫でてしまっていた。その感触につい夢中になっていたが、
肩口で頭をグリグリしていた奴から、くぐもった声が聞こえてきた。

「・・・あなたに非道いことをしました。
許されないと、自分でも分かっていたのに 止まれなかった。」

「・・・そうか。」
ようやく、まともに話せるらしい。まずは謝罪からか。

「これまでずっと、あなたに嫌われるのが怖いとは思ってきたけれど、やったことを後悔したことはない。」

「・・・? ・・・・・・そうなのか。」

「だから私は謝らない。謝るくらいなら初めからこんなことをするべきではなかったし、でも そうする事なしに あなたとこんな風になることはなかった。」

「・・・!? ・・・、・・・、・・・・・・・・・・・そうか。」

「これからは守と、呼びたい。」
何で今それ。



このお話は、順番を繰り上げての投稿です。
なんとなく日曜日に投稿したくなってしまいました☆
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

ヤンデレ蠱毒

まいど
BL
王道学園の生徒会が全員ヤンデレ。四面楚歌ならぬ四面ヤンデレの今頼れるのは幼馴染しかいない!幼馴染は普通に見えるが…………?

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

片桐くんはただの幼馴染

ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。 藤白侑希 バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。 右成夕陽 バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。 片桐秀司 バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。 佐伯浩平 こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

王道学園のハニートラップ兎

もものみ
BL
【王道?学園もの創作BL小説です】 タグには王道学園、非王道とつけましたがタイトルからも分かる通り癖が強いです。 王道学園に主人公がスパイとして潜入し王道キャラ達にハニートラップ(健全)して情報を集めるお話です。 キャラは基本みんなヤンデレです。いろんなタイプのヤンデレが出てきます。 地雷の方はお気をつけて。 以下あらすじです。 俺、幸人(ゆきと)はある人物の命令で金持ちの息子が集う男子校に大きな会社や財閥、組などの弱味を握るために潜入させられることになった高校一年生。ハニートラップを仕掛け部屋に潜り込んだり夜中に忍び込んだり、あの手この手で情報収集に奔走する、はずが…この学園に季節外れの転校生がやって来て学園内はかき乱され、邪魔が入りなかなか上手くいかず時にはバレそうになったりもして…? さらにさらに、ただのスパイとして潜入しただけのはずなのにターゲットたちに本気で恋されちゃって―――――って、あれ?このターゲットたち、なにかがおかしい… 「ゆきとは、俺の光。」 「ふふ、逃げられると思ってるの?」 (怖い!あいつら笑ってるけど目が笑ってない!!やばい、逃げられない!) こんな感じで、かなり癖のあるターゲット達に好かれてトラブルに巻き込まれます。ほんと大変。まあ、そんな感じで俺が終始いろいろ奮闘するお話です。本当に大変。行事ごとにいろんなハプニングとかも…おっと、これ以上はネタバレになりますね。 さて、そもそも俺にそんなことを命じたのは誰なのか、俺に"幸せ"は訪れるのか…まあ、とにかく謎が多い話ですけど、是非読んでみてくださいね! …ふう、台本読んだだけだけど、宣伝ってこんな感じでいいのか? …………あれ……え、これ―――――盗聴器?もしかしてこの会話、盗聴されて… ーーーーーーーーーー 主人公、幸人くんの紹介にあったように、執着、束縛、依存、盗撮、盗聴、何でもありのヤンデレ学園で、計算高い主人公がハニートラップかましてセレブたちの秘密を探ろうとするお話です。ヤンデレターゲットVS計算高いスパイの主人公!! 登場人物みんなヤンデレでいろんなタイプのヤンデレがいますので、あなたの推しヤンデレもきっと見つかる!

処理中です...