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しみったれたうらないばぁさん。

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    眠れない夜が続いたせいで、深夜徘徊が趣味になった。今日も誰もいない真夜中のシャッター街を歩く。
    風よけとなる建物と少しの明かり。何より家が近いのがいい。そして何故かいつも体を這い回っていたざわつきがなくなるのが特に。 
見慣れた光景のせいか、このシャッターだらけのアーケードを歩いていると落ち着いてくる。

「肌寒さもなくて...ここはいいな。」

    冬の知らせが街を吹きすさぶ中、ここだけはそれがないのだ。まるで街の中に別の世界でも出来たみたいに。

「落ち着ていいけど、寒すぎだな。自販機でもないか...」
「深夜徘徊がお好きとは。今時の子だね...」

    急に左から滑り込んできたしゃがれた声に反応して漫画みたいに飛び上がった。まだ声を出さなかっただけ、見上げた根性だとセルフヨシヨシをしておく。偉いぞ俺。
    恐る恐る左に顔を向けると、シャッターを背に向けて地面に座るどこにでもいるようなおばぁさんがいた。

「ど、どちらさま?」

   ここ2週間あるいているがこの老婆は見た事がない。だが俺の趣味を知っていると言う事は、何度か俺の事を見ていた、となるのだろう。

「あら。今まで気づかなかったのかい?」
「まぁ...」

    返事を聞いた老婆は途端に俯いて低く、とても低く唸っている。
    途端に起きた事に驚く。だが今回は心配が勝っている。何か持病の発作かと思ったからだ。
  
「あの!大丈夫ですか...」

    駆け寄るほどでも無い距離感だが、素早く老婆に近寄った。唸り声じゃない。これは笑い声だ。

「それはそれは。お悔やみ申し上げるぞ。」

   頭上から降り注ぐ照明のせいで、表を上げた婆さんの顔は陰っていた。

「結構です。」 

   だからその場をすぐにでも去ろうとした。俺ルールその5「不審な関わりは直ぐに逃げろ。」が発動。自衛隊よりも綺麗な回れ右を繰り出して、家路を辿る。

「まてまてまてまてまてまてまて」
「待たないから。怖いから。俺はかえるからよ。」
「本当にこわいの?めっちゃ韻踏んだツッコミいれてるよね怖い対象に。わし絶対怖くなくなったよね。」
「急にお悔やみ申し上げるとか怖くて無理ですね。帰りますよ」
「あぁァァァムードのないやっちゃ!えぇい_____お前さん、最近悪夢ばかりみるじゃろ?!」

    唐突な叫びに足が止まった。

「しかも、その夢を覚えてないと来てる。どうじゃ?」

    ゆっくりと振り返って見てみると、にやり顔が
張り付いている。なんかムカつくが今は仕方ない。俺ルールを破るときだ。

「その通りだ。」
「なるほど。眠る以上に夢を見るには体力を使う。それが悪夢となると魂の力【生気】を吸われとるのだ。」

    急に胡散臭い。だが頑張って耳を傾けてみるか。

「吸われるとどうなるんだ。」
「死に近づく。わしを見ることが出来たということはそういう事じゃ。」
「ん?____んん?」

   どういうことか分からなくなった。というか喉元を通り過ぎるが訳の分からない味すぎて吐き出した。そんな感じだ。

「わしは死んでるのだ。役割を持つ死者とでも言うのか、ここは霊道が通る場所。その案内人をして_______まてまてまてまてまて!!」

    さすがに胡散臭いレベルを超えたので、綺麗でたんせつな周り右を披露する。
   
「よいか!近々わしの知り合いがお前のうちに行く!ソイツを頼るのだ!でないとこの街のバランスが_____」

    不意に言葉が切れたので振り向くと、そこには何も無かった。おばあさんがいた気配も無く、風に押された落ち葉が1枚だけ転がっていただけだった。
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