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閑話休題
Ninja vs Cyborg Gorilla The way to hell 6 染み抜き編
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畳の上に長方形で足の短いモダンな色合いの机、何か不躾な日本語を書かれている掛け軸、取手のない紙製の扉。
私は仕事で東京まで赴き、有名で口利きが有効な高級和食料理店にある人物を招いている。
何やら忙しい御仁、少しばかり遅れるらしく、一人寂しく和室で待ちぼうけを食らっているのだ。侘び寂びの効いた部屋だけに孤独が顕著になっている。たまになる鹿威しの音が、口数の少ない友達のように感じ始めるほどだ。
私が感じている憂いはそれだけではない。今から出てくる和食に対してもだ
「ジャパニーズフード…ヘルシーで頂きやすいのだが…フェイクミートは口に合わない。はぁ…目玉焼きとステーキが恋しい…」
今朝息子と食べていた朝食を思い出すと、これから出されるコース料理が疎ましく思えてきた。和食は旨い。ただ口に合わないのだ。妻は好きなようだが、やはり米国人たるもの哺乳類の肉に限る。クローン培養だとしても。
一人で呪詛を垂れていると襖が物静かに開いた。視線をそこへ向けるとスーツを来たツーブロックの男。まるでセールスマンだ。そのセールスマンに先導される形で、和服を羽織り丸刈りで小柄な老人がいる。
(あれが。)
老人の歩く速度は遅い。だからわかる。周りの人間が放つ、違和感と呼ぶに相応しい空気。
まるで白地に筆を一線引くように、周りの世界を分断するようなオーラを纏っている。
プレッシャーに負けていると、セールスマンは部屋に入るなり、深々と頭を下げる
「ミスターマイク。約束の時間を大幅に遅れ、誠に申し訳ありません。」
「ノープロブレム、ですよ。お忙しい中でお呼びしているのはこちらの方で__」
有効の証、そして怒っていないことを知らしめる為に座布団から立ち上がろうとすると、後続していた和服を着た老人が掌を向けた。
「ここは日本です。米国式の挨拶は些かこちらには合いませんので、わざわざ立上がる必要などはありません。田中、もういい…お前はさがれ。」
強気な老人だ。外国人だからと王様気分でいらっしゃる。
老人の言葉は強く、田中は何を言うこともなく廊下に下がり、襖をしめる。
居心地の悪い空気を引き連れて机を挟んだ対面に老人が座った。
「ミスターマイク。火球の用事という事ですが、一体どんなご要件で、わざわざ日本に要らしたのですか?」
「火球と言えば、ミスター斉藤。今日の今頃我が国では火事が起きております。そこで発見されたのは忍者。」
「ほぉ…仮装した狂人の反抗ですかな。まぁ外人は忍者が好きですからな…はっはっはっ。あいや失礼。これは差別用語ではありませんので悪しからず。」
敵意むき出しの言葉を羅列し、まるで友好の意がない老人斉藤。彼はこの国において表立つ役職は上場企業の社長だ。それは仮面、彼の本業は裏の顔だ。
「お気にされず。それもあながち間違いではありませんしね。うちの息子も忍者が大好きで、よくアニメも見ています。 」
「それはそれは…で何が言いたいので?」
「下がらせろ。」
老人の動きが止まった。私の動きも合わせて止まり、お互いの視線が火花を散らしていると鹿威しが寂しく喚いている。
「待ってください…一介の企業社長である私が、米国でテロ活動などする理由がない。」
「ここで議論する時間もないし、わざわざ証拠を突付けて、米国に連れ帰ったりもしない。しないかわりに言ってやる。兵を引け。」
「だから言っているでしょう。私はしがない単なる企業社長。なんですか?わしがコンテナで運んだとでも?」
「身の程を知れ老人。これは命令なんだよ。」
老人は眉間にシワを寄せている。私はそれでも口撃をやめたりなどしない。先制口撃、奇襲、追撃はお手の物だ。
「貴様がやっている事を、私より上の方々は快く思っていない。兵を引けばそれでよし、そうしないなら撃滅。貴様ら諸共な。」
「…だから」
「貿易商を営んでいるが、その裏はヤクザ。伊賀直系の金松組の始祖は忍者だ。今でもアンダーグラウンドで幅をきかせてるのは知ってるし見逃しすらしている。ジャパニーズアサシンクラブのリーダー「頭目」よ。だが今回はやりすぎだ。忍者達が向けている切っ先は、私達すらも狙っている。」
斉藤は腕を組み少し考え込んでから口を開いた。
「では聞くがお前達アメリカは何故、あのケダモノを庇い立てする。」
ごもっともな返事を聞いた。私は頭の中にしたためたテンプレートを出力する。
「彼らは我が国の庇護下にある。責任がある。それを狙うものから守ると約束して、アメリカの土をふませているのだ。大事なときにたかるハエほど鬱陶しいだろう。」
「懐柔したいのか…」
「炙り出したいんだ。お前たちのように闇に隠れ、武力を持つ者たちを。あることに備えてな。」
「やってみるがいい。」
老人の雰囲気が男に襲いかかった。今までなぜ大人しくしていのか分からなくなるほどに、獰猛な何かが、老人の眼光から飛び出して襲いかかってきた。
「化学、兵器、魔法。この世界にある物全てが我らに襲いかかろうとも、この体が朽ちて果てるとしても、わしは辞めんよ。耐え忍ぶ者であるから。」
「結構結構!!!だったら付き合ってやる!お前が何度でも立つのなら、その末代に至るまで叩き潰す。それが私たちアメリカであるからだ。」
言葉の刃が鍔迫り合う。会話劇はまだ終わらない。
私は仕事で東京まで赴き、有名で口利きが有効な高級和食料理店にある人物を招いている。
何やら忙しい御仁、少しばかり遅れるらしく、一人寂しく和室で待ちぼうけを食らっているのだ。侘び寂びの効いた部屋だけに孤独が顕著になっている。たまになる鹿威しの音が、口数の少ない友達のように感じ始めるほどだ。
私が感じている憂いはそれだけではない。今から出てくる和食に対してもだ
「ジャパニーズフード…ヘルシーで頂きやすいのだが…フェイクミートは口に合わない。はぁ…目玉焼きとステーキが恋しい…」
今朝息子と食べていた朝食を思い出すと、これから出されるコース料理が疎ましく思えてきた。和食は旨い。ただ口に合わないのだ。妻は好きなようだが、やはり米国人たるもの哺乳類の肉に限る。クローン培養だとしても。
一人で呪詛を垂れていると襖が物静かに開いた。視線をそこへ向けるとスーツを来たツーブロックの男。まるでセールスマンだ。そのセールスマンに先導される形で、和服を羽織り丸刈りで小柄な老人がいる。
(あれが。)
老人の歩く速度は遅い。だからわかる。周りの人間が放つ、違和感と呼ぶに相応しい空気。
まるで白地に筆を一線引くように、周りの世界を分断するようなオーラを纏っている。
プレッシャーに負けていると、セールスマンは部屋に入るなり、深々と頭を下げる
「ミスターマイク。約束の時間を大幅に遅れ、誠に申し訳ありません。」
「ノープロブレム、ですよ。お忙しい中でお呼びしているのはこちらの方で__」
有効の証、そして怒っていないことを知らしめる為に座布団から立ち上がろうとすると、後続していた和服を着た老人が掌を向けた。
「ここは日本です。米国式の挨拶は些かこちらには合いませんので、わざわざ立上がる必要などはありません。田中、もういい…お前はさがれ。」
強気な老人だ。外国人だからと王様気分でいらっしゃる。
老人の言葉は強く、田中は何を言うこともなく廊下に下がり、襖をしめる。
居心地の悪い空気を引き連れて机を挟んだ対面に老人が座った。
「ミスターマイク。火球の用事という事ですが、一体どんなご要件で、わざわざ日本に要らしたのですか?」
「火球と言えば、ミスター斉藤。今日の今頃我が国では火事が起きております。そこで発見されたのは忍者。」
「ほぉ…仮装した狂人の反抗ですかな。まぁ外人は忍者が好きですからな…はっはっはっ。あいや失礼。これは差別用語ではありませんので悪しからず。」
敵意むき出しの言葉を羅列し、まるで友好の意がない老人斉藤。彼はこの国において表立つ役職は上場企業の社長だ。それは仮面、彼の本業は裏の顔だ。
「お気にされず。それもあながち間違いではありませんしね。うちの息子も忍者が大好きで、よくアニメも見ています。 」
「それはそれは…で何が言いたいので?」
「下がらせろ。」
老人の動きが止まった。私の動きも合わせて止まり、お互いの視線が火花を散らしていると鹿威しが寂しく喚いている。
「待ってください…一介の企業社長である私が、米国でテロ活動などする理由がない。」
「ここで議論する時間もないし、わざわざ証拠を突付けて、米国に連れ帰ったりもしない。しないかわりに言ってやる。兵を引け。」
「だから言っているでしょう。私はしがない単なる企業社長。なんですか?わしがコンテナで運んだとでも?」
「身の程を知れ老人。これは命令なんだよ。」
老人は眉間にシワを寄せている。私はそれでも口撃をやめたりなどしない。先制口撃、奇襲、追撃はお手の物だ。
「貴様がやっている事を、私より上の方々は快く思っていない。兵を引けばそれでよし、そうしないなら撃滅。貴様ら諸共な。」
「…だから」
「貿易商を営んでいるが、その裏はヤクザ。伊賀直系の金松組の始祖は忍者だ。今でもアンダーグラウンドで幅をきかせてるのは知ってるし見逃しすらしている。ジャパニーズアサシンクラブのリーダー「頭目」よ。だが今回はやりすぎだ。忍者達が向けている切っ先は、私達すらも狙っている。」
斉藤は腕を組み少し考え込んでから口を開いた。
「では聞くがお前達アメリカは何故、あのケダモノを庇い立てする。」
ごもっともな返事を聞いた。私は頭の中にしたためたテンプレートを出力する。
「彼らは我が国の庇護下にある。責任がある。それを狙うものから守ると約束して、アメリカの土をふませているのだ。大事なときにたかるハエほど鬱陶しいだろう。」
「懐柔したいのか…」
「炙り出したいんだ。お前たちのように闇に隠れ、武力を持つ者たちを。あることに備えてな。」
「やってみるがいい。」
老人の雰囲気が男に襲いかかった。今までなぜ大人しくしていのか分からなくなるほどに、獰猛な何かが、老人の眼光から飛び出して襲いかかってきた。
「化学、兵器、魔法。この世界にある物全てが我らに襲いかかろうとも、この体が朽ちて果てるとしても、わしは辞めんよ。耐え忍ぶ者であるから。」
「結構結構!!!だったら付き合ってやる!お前が何度でも立つのなら、その末代に至るまで叩き潰す。それが私たちアメリカであるからだ。」
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