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タイムトラベルの悪夢 編

悪魔みたいな蜥蜴

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  死体を憲兵に引き渡して、また地下の研究所にもどってきた。

「蜥蜴男にあった?」

薄暗く資料やビーカーが散らかった部屋でハーメルンはコーヒーを啜っていた。コーヒーカップを積み上げられた本の山の天辺におくと、悩ましげに言葉を連ねた。

「話の途中で飛び出したと思えば、夕方まで帰ってこないし。帰ってきたかと思えば喋る蜥蜴男に会ったなんて…」
「そ、そうだよな。冷静に考えればそんなこと言って信じられるはずもないよな…」
「信じる。」
「なんやねん。もっとはよいえよ…変に落胆したやんけ…。」
「心の声、漏れてるぞ。」
「博士も人が悪いです。」

  部屋のどこからか声が沸いた。辺りを見回すと部屋の隅っこは灯りが届いておらず、暗がりになっていた。そこから光の中に入っていくように坊主頭の美少女が現れた。
  きめ細かい白い肌。強風でも折れそうな程に華奢な体。整った顔に似合わない坊主頭とメイド服が特徴的な女の子が、コーヒーカップを博士に手渡した。
なんにでもめんどくさそうに対応する博士が柔和な笑顔になっている。

「ありがとうソリシア。大輔よ、この子がカフェで話していた…」
「覚えてるよ。はじめましてソリシア。佐藤大輔だ。」
「…。はじめましてソリシア·ソチュードです。」

  ペコリと坊主頭を下げるので俺も会釈した。というかなんでこんな薄汚い研究室で、メイド服なんてものを着こんでいるのか理解に苦しむ。

「私はよく街へ買い出しに出掛けます。ですので、よく噂を耳にしていました。"蜥蜴の男""人喰い蜥蜴""影に潜む蜥蜴"など、どれもこれもが人を喰う蜥蜴にちなんだ噂です。」
「やっぱり蜥蜴なんだ。いつからその噂が?」
「ずっと昔です…パン屋の店主様曰く50年前前からだそうで。」

そんな昔からいたと言うのだろうか。系譜を繰り返し、生きてきたと考えるべきか。なんにせよ、情報だけではなんとも言えない。
すると、ハーメルンが口を開いた。

「私もその話自体は知っている。子供の頃に聞いていたから、母親の言うことを聞かせる為の作り話だと思っていたよ。」
「死体はみた。刺し傷から考えると上顎下顎に発達した牙を持っている。創部も相当にズタズタだった。なんと言うか何度も噛みついたような…」
「あぁ忘れてた!君が居ぬ間に憲兵が便りを寄越してきたんだ。私は明日死体を確認しにいくので留守にする。君の興味深い見解も伝えておく」
「あんた次元学者なんだろう?なんで死体なんか…」
「副業だよ。」

  やはりハーメルンはよくわからない。次元学者としての腕は確かのかもしれないけどそれ以外の事はよくわからない。
気になることが多すぎる。少し時間をおいて、色々と考えなければならないな。

すると何故かメイド服に目がついてしまった。ソリシアの服を観察していると、彼女は抑揚もなく言葉をなげつけてきた。

「あまりまじまじと見られてしまうと、恥ずかしいのですが…」
「あ、ああごめん。その…なんで白衣とかじゃなくてはメイド服なんか…」
「この研究所の衣類でサイズが合うのがこの服しかありませんでしたので。不本意でありますが着用しています。」

何でじゃ。服ぐらい買ってやれよ。と思いハーメルンを見ると、ニヤニヤしながらソリシアを見つめている。どうやらお気持ちの悪いご趣味の一環のようだ。

「…なんて冷たい目で見てくるんだ。」
「いやいや。大変なご趣味だなっておもって。」
「服を買う余裕も、誂える事もできない。この時代は、服は贅沢品で、どの家庭も自分で服を作るんだが、できる人間はこの研究所にいないからな。」

ハーメルンは何かに気づくと、ドタドタと壁際の棚を漁った。するとそこから小さな布袋を取り出して俺に投げた。中を開くと、金貨15枚が収まっていた。

「なんだこれ?」
「金だ。街に出て、それを使い、ソリシアの服を買ってやれ。お使いのついでだ。」
「いいのかよ。多分大金なんだろ?」
「どうせ明日には収入が入る。それに君もいく当てなんてないだろう、しばらくはここで働くといい。」

一応責任感はあるようで、俺の面倒を見てくれるつもりらしい。布袋を握りこんだ。

「わかった。ありがとうご主人さま。」
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