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決戦編
開戦!!ゴリラ対人間
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ジャングルは沸き立っていた。至るところからアサルトライフルの銃声が鳴っている。ゴリラ達の慟哭が響いている。悲鳴と怒声が交わっている。
木陰に隠れながら、遠くのゴリラ達を眺めるのは訓練を積んだ俺たち兵士だ。ゴリラ共はある一定の距離から全く動かず、俺達に石をなげたり叫んだりするのみだ。
「くそなんだよ!あのゴリラ共、銃が効かないのか?」
彼らは銀色のプレート、まるで中世ヨーロッパにあるメイルのような鎧を着込んでいた。そのプレートは銃弾を弾き返す程に強固だ。
「猿の惑星みたいだな。」
「…あれもジョナサンダグラスの宝なのか…」
隣に座っていた部隊長が呟く。
「よくみてみろ。プレートが波うっているのがわかるか。」
ゴリラの体をつつむプレートが、時折流動的に動いていた。電磁式ナノプレート。現在の科学装備には遠く及ばない技術だ。
「あんな未来の武器を使っているとはな…」
「部隊長、あ、あれみてください…」
目の前にいた敵勢力の反対側。我等の後ろには幾多の眼光がこちらを見ていた。
「挟まれた…挟撃作戦とは恐れ入った…」
たかがゴリラだとたかをくくっていた兵士達。後悔の念にさいなまれ、視界の最後に見えたのは巨大な石が飛んでくる所だった。
森の中に小屋がひっそりとしたところに建っている。
その扉の前に、ドクターと俺が立っていた。
ドクターは腕に巻き付けた電子デバイスを触る。スクリーンに触れると、この島の地図を下地に、ゴリラ達の居場所が赤い点で表示された。
「流石モノの統制力、敵を確実に殲滅している。ジョナサンのナノプレートも上手く作動しているね。」
島を守るため、何より島に住む者たちを守るためにジョナサンダグラスが作った研究データとバイオコープが作った発明品を、彼らに使ったのだ。
強化ゴリラ兵となった彼らは、どうやら優勢に立ち回れているようだ。
思案を巡らせていると頭上から銃声がした。三発、間をおいて放った音はそれに答えるように遠くで悲鳴になって帰ってくる。
「スコープ。敵が来たのか。」
[もうさっきから来てんの!何人か行くから、頼んだよ!]
イヤホンから声が響いて切れる。
ドクターは足元においていたアサルトライフルを持って構える。俺も、背負っていた弓を構えた。
「ダイスケは銃は使わないの?」
「ゲームではよく使ってたけど、こう現実に触るとなんか…落ち着かなくて」
「ふぅーん。まぁいざって時は使いなよ。」
思いやりとなげやりが相席した言葉を聞くと、お互い口を閉じた。臭い、音、自然の中に紛れる違和感を感じとる。
「ユーリス... 頼むぜ。俺の背中を支えてくれ。」
頭の中にいる、ユーリスダグラスの知識。ドーベルマン達のタクティカルな動きがイメージとして脳裏に現れた。彼は今も俺達の味方で、助けてくれている。
「まぁやることやるだけだ____なっと!!!」
闇に動く何かに向かって、1本の矢を放つ。
「うっ!」
「すご…」
斥候として現れた敵兵士の喉を矢が貫く。生い茂った草の中に音もなく沈んで消えた。後続する敵兵士は気づかない。
「波みたいに来るぞ。ドクター」
「ハイハイ…」
ドクターの銃口が火を吹いた。闇の中に潜んでいた兵士達に注ぐ銃弾の嵐。断末魔と地面に沈む音だけが聞こえる。
普 通なら暗すぎて1メートルも見えない。だが俺は夜目がきく、加えて自然の中にいる不自然なものを違和感として感じられるようになった。これはブレインによる脳力強化によるものだろう。
「みつけた。」
だから、兵士のピンをぬく音が聴こえて、微かに漏れる爆薬の臭いを感じとった。そこに向かって矢を放つ。
風を切り、暗闇に飛び込んで行った矢は見えはしないが当たった筈だ。
森の中からざわめきが漏れている。
「掛かったぞ!!」
兵士の誰かが叫ぶと同時に光が花のように咲いた。手榴弾だと思っていたが閃光弾だった。
刺激が襲う。
視界は光で満たされて、地面が揺れ始めた。膝から崩れて立ち上がれない。止めどなく喉をかけ上る熱いなにかを止める事ができず、吐き出した。
そこに何かが手元に転がってきて、煙を吐き出した。鼻につく刺激臭が平衡感覚と思考回路を吹き飛ばす。みえていたものが、あるがままにみえなくなった。
白紙化する頭の中で、ドクターの言葉が木霊する。
聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚。今俺の脳は、感覚に敏感な状態になっているため、刺激に弱くなっている。普通ならナノマシンによる抑制でここまでの症状はでない筈だが、どうやらまだ上手く作用してないらしい。
不意に意識を取り戻した。地に足を着けて立ち上がる。
「ダイスケ!」
ドクターの声に手を上げて返事をする。
脳が受けた刺激に対するインプットアウトプットの狭間で動くナノマシンが正常に作動したようだ。
いつの間にか落ちていた弓矢を取り上げて矢を構えた。まだまだ敵は残っている。
木陰に隠れながら、遠くのゴリラ達を眺めるのは訓練を積んだ俺たち兵士だ。ゴリラ共はある一定の距離から全く動かず、俺達に石をなげたり叫んだりするのみだ。
「くそなんだよ!あのゴリラ共、銃が効かないのか?」
彼らは銀色のプレート、まるで中世ヨーロッパにあるメイルのような鎧を着込んでいた。そのプレートは銃弾を弾き返す程に強固だ。
「猿の惑星みたいだな。」
「…あれもジョナサンダグラスの宝なのか…」
隣に座っていた部隊長が呟く。
「よくみてみろ。プレートが波うっているのがわかるか。」
ゴリラの体をつつむプレートが、時折流動的に動いていた。電磁式ナノプレート。現在の科学装備には遠く及ばない技術だ。
「あんな未来の武器を使っているとはな…」
「部隊長、あ、あれみてください…」
目の前にいた敵勢力の反対側。我等の後ろには幾多の眼光がこちらを見ていた。
「挟まれた…挟撃作戦とは恐れ入った…」
たかがゴリラだとたかをくくっていた兵士達。後悔の念にさいなまれ、視界の最後に見えたのは巨大な石が飛んでくる所だった。
森の中に小屋がひっそりとしたところに建っている。
その扉の前に、ドクターと俺が立っていた。
ドクターは腕に巻き付けた電子デバイスを触る。スクリーンに触れると、この島の地図を下地に、ゴリラ達の居場所が赤い点で表示された。
「流石モノの統制力、敵を確実に殲滅している。ジョナサンのナノプレートも上手く作動しているね。」
島を守るため、何より島に住む者たちを守るためにジョナサンダグラスが作った研究データとバイオコープが作った発明品を、彼らに使ったのだ。
強化ゴリラ兵となった彼らは、どうやら優勢に立ち回れているようだ。
思案を巡らせていると頭上から銃声がした。三発、間をおいて放った音はそれに答えるように遠くで悲鳴になって帰ってくる。
「スコープ。敵が来たのか。」
[もうさっきから来てんの!何人か行くから、頼んだよ!]
イヤホンから声が響いて切れる。
ドクターは足元においていたアサルトライフルを持って構える。俺も、背負っていた弓を構えた。
「ダイスケは銃は使わないの?」
「ゲームではよく使ってたけど、こう現実に触るとなんか…落ち着かなくて」
「ふぅーん。まぁいざって時は使いなよ。」
思いやりとなげやりが相席した言葉を聞くと、お互い口を閉じた。臭い、音、自然の中に紛れる違和感を感じとる。
「ユーリス... 頼むぜ。俺の背中を支えてくれ。」
頭の中にいる、ユーリスダグラスの知識。ドーベルマン達のタクティカルな動きがイメージとして脳裏に現れた。彼は今も俺達の味方で、助けてくれている。
「まぁやることやるだけだ____なっと!!!」
闇に動く何かに向かって、1本の矢を放つ。
「うっ!」
「すご…」
斥候として現れた敵兵士の喉を矢が貫く。生い茂った草の中に音もなく沈んで消えた。後続する敵兵士は気づかない。
「波みたいに来るぞ。ドクター」
「ハイハイ…」
ドクターの銃口が火を吹いた。闇の中に潜んでいた兵士達に注ぐ銃弾の嵐。断末魔と地面に沈む音だけが聞こえる。
普 通なら暗すぎて1メートルも見えない。だが俺は夜目がきく、加えて自然の中にいる不自然なものを違和感として感じられるようになった。これはブレインによる脳力強化によるものだろう。
「みつけた。」
だから、兵士のピンをぬく音が聴こえて、微かに漏れる爆薬の臭いを感じとった。そこに向かって矢を放つ。
風を切り、暗闇に飛び込んで行った矢は見えはしないが当たった筈だ。
森の中からざわめきが漏れている。
「掛かったぞ!!」
兵士の誰かが叫ぶと同時に光が花のように咲いた。手榴弾だと思っていたが閃光弾だった。
刺激が襲う。
視界は光で満たされて、地面が揺れ始めた。膝から崩れて立ち上がれない。止めどなく喉をかけ上る熱いなにかを止める事ができず、吐き出した。
そこに何かが手元に転がってきて、煙を吐き出した。鼻につく刺激臭が平衡感覚と思考回路を吹き飛ばす。みえていたものが、あるがままにみえなくなった。
白紙化する頭の中で、ドクターの言葉が木霊する。
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