上 下
19 / 124
探求編

ぷち逃避行

しおりを挟む
  小屋から走って一時間の所に小さな洞窟があった。出口にモノの側近ゴリラ·カシスが立っていて俺に向かって4回胸を叩いた。

「俺はいらないだろ?」

普通は2回胸を叩かないとカシスに殺されるが、僕はいつだって顔パスだ。カシスは鼻をならす。手土産のバナナをトスして洞窟にすすんだ。




「みんな!」
「大輔!」

俺の顔見るなり、母さんが抱きついてきた。

「心配したわ…」
「俺はしてない。殺したくても殺せないだろう。」

髪をくしゃくしゃっとかきみだしてきた。

「生きてたな大輔。」
「ユーリスさん。俺はあんたに言わないと、いけない事がある。っておいおいおい何やってんだよ!」

  硬い石の上には頭を開かれ、脳が剥き出しになった少女がいた。手から袖口にかけて血で赤くなったドクターが側にいるが、絵面は最強にゴアだ。
  彼は俺に気づくと何かパソコンのユニットのような物を摘まんで、それと一緒に手を振ってきた。

「お帰り大輔くん。お母さんすごいよね、まるで逃げることになれてるみたい。」

大きい図体。ずっと被っているガスマスクのせいで表情はわからないが、優しい声色から笑顔になったいることだけは伝わった。
スコープと呼ばれていた少女の頭を開いているのにも関わらず。

「ん?ああこれね。今ユニット外してる所なんだ。僕は元医者だからこんなの朝飯前なんだよね。」
「…ユニット?」
「スコープはブレインが出来る前からドーベルマンにいた。障害で言葉を喋られなかった彼女は、バイオコープの臨床試験に志願し、思考向上装置をとりつけた。おかげで正確なシミュレートと思考性能の向上した。とてつもなくな。」
「ボスの言う通り。それでマスターにこの[思考向上装置]を利用され、マインドコントロールされたんだ。いまリセットした所。縫合するからボスが続けて。」
「俺らのことは話した。俺の事もだ。後はお前らの事だ。話せ。」

ユーリスは怒りでつり上がった目を向ける。

「すまない。おれ、実はニートで」

返事はバナナの皮だった。顔面にぶつかって飛び散る果肉が濃厚で甘い匂いが鼻に漂う。

「嘘は突くな。逃げようとして弓を使っても無駄だ。俺に反応できないアクションはない。」

超反応と彼は言っていた。視覚ないに起きた刺激はすべて脳内に処理されて行動に移せる力。その上に身体能力もいじられており、ちょっとしたヒーローのようだ。

母さんがバナナ皮を取り、ユーリスに投げ返した。

「大輔は知らないこと、誘おうと思ったけど色々あって…その…ニートになったから。」
「だがあの弓の技術はなんだ?」
「元々集中力は人の何百倍も持ってる子だった。一つの事に集中すれば、足にナイフが刺さっても気づかない。それに弓に関しては才能があったのよ。」
「番犬さん…あんたはなんだ?」
「私は日本にある諜報機関よ。」
「何て名前?」
「諜報機関。」
「何て言った?」
「諜報機関よ。"諜報機関"って名前の諜報機関。」

  あまりの突飛な話しに置いてきぼりを食らった。思考停止する俺とユーリス。スコープの頭を縫いながら肩を揺らして笑うドクター。少し間の抜けた雰囲気が俺たちを囲む。

「なに?」
「わかったもういいよ。その話を信じる。諜報機関も信じるし、その力は疑いようもない。バイオスコープを出し抜いて、俺らにたどり着いたんだからな。」
「気づいてたの…」
「もちろんな。まぁなんにしても俺らも同じことしようとしたしな。いけよ。」
「母さん。どういうこと?」

いきなり真に迫った言葉を話した。俺は母さんの肩を持って目を合わせる。母さんも同じように合わせるが、目の色が真剣さに満ちていた。

「私に計画がある。それを実行に移すのよ。」
「なぁ待ってくれ。2ヶ月間会えなかった、でも奇跡みたいな事が起きてやっと会えたんだ。親孝行もしたい。俺は変わったんだ。だから一緒にいたいよ母さん。」

今まで親の脛かじりだった俺は、この島で思い直し、考えを改め、生き直した。そして、失う恐怖も、やらない後悔の救えなさも知った。だからその思いを不器用な言葉にした。
  母さんには伝わったようで、目に涙を浮かべるがそれをすぐに拭った。

「いまの言葉が最高の親孝行よ。」
「母さん…」
「実は言うと…あなたを救うためにこの島に来たわけじゃない。バイオコープの企みを追っているうちに、ユーリスダグラスに行き着いたの。家族の力を合わせてね。」
「家族って…父さんも?」
「お金は出してくれたけど父さんは関係ない。伸一よ。」
「兄貴が母さんと同じ…」
「時間がない、もういくわ。」

お母さんは額にキスをして洞窟を出ていった。

「それでなんだ?俺に言わなきゃならないコトって。」








さっきまでのマスターとのやり取りを話すと、ユーリスは黙り込んだ。

「ボス…この島の事ってなにか知ってるの?」
「わからん。遺言とメッセージ、それと日記でこの島とこの時期を探り当てたんだ。だがまぁアイツに聞いた方がいいな。」
「話は終わったか?」

背後からモノが現れた。ホコリまみれの姿で彼が仲間ゴリラを引き連れていた。

「終わったみたいだな。ならついてきてくれ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

6年生になっても

ryo
大衆娯楽
おもらしが治らない女の子が集団生活に苦戦するお話です。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

処理中です...