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強行突破
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カーゴのハッチは開いていた。突風が吹き込んでくるので、髪型が荒れる。グシャグシャになった髪を右手で後ろに流すと、いつものオールバックが完成した。
「オールバックって生え際から禿げやすいって言うわよね。」
「うるせぇだまってろ。」
後ろには、何故かついてきた内務調査部の女性がいる。彼女はパイロット用のヘルメットを被り、小綺麗なスーツがスレンダーなボディラインを魅せている。
そうして細い両腕を腕組みし、俺を見て嫌みを言ってくる。ムカツクが相手をしてはいけないと思い、軽く流す。
眼下に広がる青い海。その上に浮かんでいるのは、名もなき無人島だ。昔ここでお祖父様が研究してたという、俺はその知的財産を受取にここまできたのだが…状況は大分変わっていた。
カーゴ内のスピーカーから幼い少女のような声が出力される。それはスコープの声だった。
<ボス、目標降下地点に集団を発見した。>
脇に抱えていたヘルメットを被る。するとシールドの内面には色んな情報が視野の邪魔をしない配置で流れている。高度、風速、心拍数のようなメディカルランゲージ。その中でもシールドの右上にワイプされた降下ポイント拡大映像が流れていた。そのワイプに触れるように手を添えると、シールドの中央に映像が移動する。
「なんだこれは…」
あまりのよくわからなさに眉間に皺がよる。
周りが木々に覆われているが、そこは大きく開けた場所。そこに集っているのは猿と、身体が大きく全身が黒色の体毛に覆われた動物がたくさんいた。動物達は輪を作り、その中心に上半身裸の男が倒れている。男の向かい側には項垂れ膝まずいた黒い動物が一匹と、簡素な高台が煙の中に建っていた。
この状況も理解しがたいが、謎の動物が映像の八割を占めていて、その数とよくわからなさに恐怖を感じる。
人間によくにたフォルムだが、全体的なバランスが片寄っている。胴長短足。全身の長さをカバーできる程に長く太い筋肉質な豪腕、そこから延びた強靭で巨大な拳を地面に着けている。
[ダグラスさん、これはゴリラよ。]
「なんだって?」
ヘルメットの耳に当たる部分にはスピーカーがついており、現在は番犬さんとスコープと繋がっている。今話したのは番犬さんだ。
ゴリラ、とはなんだ。あまり聞いた事のない名前に、なんだが無償にイラつく。それに気づいたのかスコープが割ってはいる。
[絶滅した霊長類だよ。ボスはしらないの?]
「高校でならったか?」
[うん。]
「まじか…」
素因数分解とか学校でならったことはたいして覚えていないので、ゴリラなんて言葉は初耳に近い感覚だ。
[徐々に数を減らして、大分前には消えてしまった動物。ボスは行かないだろうけど、博物館には剥製とホログラム、教科書や動画でしかその姿を確認できません。]
[そんな動物がこんなちんけな島で生きてたなんて…]
「そもそもだ。ここはお祖父様の実験場だったって言うじゃねぇか。なんかヤバそうなことになってんな。…まぁいい。あの倒れた野郎は誰だ。」
[少しまってねぇ…]
するとワイプ映像が倒れた男の顔をアップする。延びた髪と髭をみるに、どうやら島に漂流したと言った様相だ。
映像の真横に画像が現れた。それは若い青年の写真で、その下に探し人と文字が書かれている。
[鼻筋やらなにや、顔のパーツで検索したらこれが出ました。佐藤大輔。23歳。商船企業の御曹司ですね、悠々自適なクルージング中の海難事故で遭難、現在も捜索が続いているようです。こんなとこにいるなんて、わかりませんよね…]
ボンボンか。大人の意地汚い算段が、まるで天恵のように沸いてくる。大人ってのは打算的な生き物。それにこれは善行だし、見返りを期待するのは当然の権利だ。
「よし。とりあえず先に佐藤大輔を確保する。スコープはこの高度で待機。ホバリングした状態から地上に向けて支援射撃してくれ。実弾は使うなよ。ドクターは手筈通り、陸路から着地地点に向けて、煙幕を投射と伝えてくれ。」
[了解。]
「番犬さんは俺についてこい。船に乗ってるんだ。船長の命令にしたがってもらう。」
[…]
「おい。どうした」
[あ!ごめんなさい、少し気取られていたわ。命令を受諾しました、作戦行動を許可します。…それでどうするの?」
「こうすんだよ!」
俺は細くて脆そうで、力一杯握りしめたら崩れそうな女性の手を取り、空に放りこんだ。悲鳴がヘルメットのスピーカーから漏れ聞こえる。
[ボス…絶対に後で撃たれるよ。]
「撃たれる前に押し倒してやる。」
スコープはため息をした。そんなことは気にもかけず、まるで水泳の競技のように空へと飛び込んだ
「オールバックって生え際から禿げやすいって言うわよね。」
「うるせぇだまってろ。」
後ろには、何故かついてきた内務調査部の女性がいる。彼女はパイロット用のヘルメットを被り、小綺麗なスーツがスレンダーなボディラインを魅せている。
そうして細い両腕を腕組みし、俺を見て嫌みを言ってくる。ムカツクが相手をしてはいけないと思い、軽く流す。
眼下に広がる青い海。その上に浮かんでいるのは、名もなき無人島だ。昔ここでお祖父様が研究してたという、俺はその知的財産を受取にここまできたのだが…状況は大分変わっていた。
カーゴ内のスピーカーから幼い少女のような声が出力される。それはスコープの声だった。
<ボス、目標降下地点に集団を発見した。>
脇に抱えていたヘルメットを被る。するとシールドの内面には色んな情報が視野の邪魔をしない配置で流れている。高度、風速、心拍数のようなメディカルランゲージ。その中でもシールドの右上にワイプされた降下ポイント拡大映像が流れていた。そのワイプに触れるように手を添えると、シールドの中央に映像が移動する。
「なんだこれは…」
あまりのよくわからなさに眉間に皺がよる。
周りが木々に覆われているが、そこは大きく開けた場所。そこに集っているのは猿と、身体が大きく全身が黒色の体毛に覆われた動物がたくさんいた。動物達は輪を作り、その中心に上半身裸の男が倒れている。男の向かい側には項垂れ膝まずいた黒い動物が一匹と、簡素な高台が煙の中に建っていた。
この状況も理解しがたいが、謎の動物が映像の八割を占めていて、その数とよくわからなさに恐怖を感じる。
人間によくにたフォルムだが、全体的なバランスが片寄っている。胴長短足。全身の長さをカバーできる程に長く太い筋肉質な豪腕、そこから延びた強靭で巨大な拳を地面に着けている。
[ダグラスさん、これはゴリラよ。]
「なんだって?」
ヘルメットの耳に当たる部分にはスピーカーがついており、現在は番犬さんとスコープと繋がっている。今話したのは番犬さんだ。
ゴリラ、とはなんだ。あまり聞いた事のない名前に、なんだが無償にイラつく。それに気づいたのかスコープが割ってはいる。
[絶滅した霊長類だよ。ボスはしらないの?]
「高校でならったか?」
[うん。]
「まじか…」
素因数分解とか学校でならったことはたいして覚えていないので、ゴリラなんて言葉は初耳に近い感覚だ。
[徐々に数を減らして、大分前には消えてしまった動物。ボスは行かないだろうけど、博物館には剥製とホログラム、教科書や動画でしかその姿を確認できません。]
[そんな動物がこんなちんけな島で生きてたなんて…]
「そもそもだ。ここはお祖父様の実験場だったって言うじゃねぇか。なんかヤバそうなことになってんな。…まぁいい。あの倒れた野郎は誰だ。」
[少しまってねぇ…]
するとワイプ映像が倒れた男の顔をアップする。延びた髪と髭をみるに、どうやら島に漂流したと言った様相だ。
映像の真横に画像が現れた。それは若い青年の写真で、その下に探し人と文字が書かれている。
[鼻筋やらなにや、顔のパーツで検索したらこれが出ました。佐藤大輔。23歳。商船企業の御曹司ですね、悠々自適なクルージング中の海難事故で遭難、現在も捜索が続いているようです。こんなとこにいるなんて、わかりませんよね…]
ボンボンか。大人の意地汚い算段が、まるで天恵のように沸いてくる。大人ってのは打算的な生き物。それにこれは善行だし、見返りを期待するのは当然の権利だ。
「よし。とりあえず先に佐藤大輔を確保する。スコープはこの高度で待機。ホバリングした状態から地上に向けて支援射撃してくれ。実弾は使うなよ。ドクターは手筈通り、陸路から着地地点に向けて、煙幕を投射と伝えてくれ。」
[了解。]
「番犬さんは俺についてこい。船に乗ってるんだ。船長の命令にしたがってもらう。」
[…]
「おい。どうした」
[あ!ごめんなさい、少し気取られていたわ。命令を受諾しました、作戦行動を許可します。…それでどうするの?」
「こうすんだよ!」
俺は細くて脆そうで、力一杯握りしめたら崩れそうな女性の手を取り、空に放りこんだ。悲鳴がヘルメットのスピーカーから漏れ聞こえる。
[ボス…絶対に後で撃たれるよ。]
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