27 / 61
第二章 樹海の森編
第26話 魔神
しおりを挟む
「おっと……これは失礼。久しぶりに愉快な気持ちにさせて頂いた物で、つい挨拶が遅れました。私には名前等ありませんが……この辺では魔神とか呼ばれているみたいですね」
「「魔神!?」」
「…………」
楓とウォルフが一斉に反応した。確かに予想外の風貌だ。
俺は黙って男の話の続きを待った。
「勿論、私は魔神なんかじゃありませんよ? 勝手にそう呼ばれているだけです」
ほう。ウォルフの言っていた魔神はこいつで間違いない無さそうだが、実際は本物の魔神では無いらしい。じゃあ、こいつは何者なんだ?
「で、その魔神もどきが一体何の用だ?」
「これは手厳しいですねぇ。魔神ではありませんが、魔神並には強いですよ? 私は」
そいつはニヤニヤと笑いながら答えると続けて話を続けた。
「私はしがない悪魔です。更成る力を求めてこの森で研鑽を重ねておりました。しかし私に挑んで来るのは不甲斐無い連中ばかりで……私は退屈していました。しかし突然、凄まじい力を感じたのです。私はすぐに、それが貴方だとわかりました。そこで、失礼ながら試させて頂いたのですが……この様な雑魚では試金石にもならなかった様ですね」
そう言うと、その魔神──いや悪魔はクククッと嬉しそうに、咳払いする様な仕草で口に手を当てて笑い始めた。どうやら、さっきの魔物はこいつの仕業みたいだ。
「え、A級が雑魚……」
楓は自分の常識外の力に戸惑っている。
「真人殿、今度こそ逃げた方がいい。あの魔神……いや悪魔は普通じゃない」
傍に来たウォルフが額に汗を浮かべながら小声で呟いて来た。
「何言ってんだウォルフ。折角お目当てが向こうからやって来てくれたって言うのに。まあ、魔神じゃ無かったけどな。ハハハッ」
どうやらこの悪魔は好戦的なタイプらしい。予想が当たってたみたいだ。俺も相手の出方次第では、腕試しくらいはするつもりだったし……丁度いい。ウォルフは心配してくれているみたいだか……安心しろ。実は俺も普通じゃないんだ。
「つまり俺の力を試しに来たって事だな?」
「フフフッ。言ってしまえば、そう言う事です」
その悪魔は嬉しそうに笑みを浮かべて答えた。
「ま、真人殿……」
「真人様……」
「んじゃあ、戦るか──」
『──来ます!』
キイィィィィィィィィィンッ!!
呆然とする楓達を他所目に戦いを始めようとしていると、悪魔はいきなり襲い掛かってきた。
早いっ!
俺は悪魔の伸びた爪での斬撃を刀で受け止めた。
加速した時間軸だから苦もなく反応する事が出来たけど、逆に言えば加速していなければとんでもない早さだったと言う事だ。こいつ、魔神とか言われるだけの事はある。俺じゃなければ反応する事すら難しかったはずだ。
「……のやろぉ」
「まさかっ!? これに反応しますかっ!!」
悪魔の奴、言ってる割にめちゃくちゃ嬉しそうだ。全身が喜びて打ち震えている。よっぽど相手が居なかったんだろうな。俺の能力もチートだから、気持ちは分かる様な気がする。残念ながら俺の方は全力で行けそうに無いけど。
「安心して全力でかかって来い。これくらいなら何の問題もない。この程度じゃ俺の能力は試せんぞ?」
「クッ……クハハハハハッ!! 最高ですっ! 私は貴方の様な方を待ち焦がれていたっ!」
悪魔は堪え切れなくなった様に満面の笑みを浮かべながら笑った。両手を広げ、仰々しく嬉しさを表現している。
「そりゃあ良かった。俺も色々試したいんだ……死ぬなよ?」
「死ぬなんて、そんな勿体無い事出来ませんよっ!」
悪魔は羽根をバタつかせて俺から離れると、少し距離を置いた宙で静止した。
「では遠慮なく……全力を出させて頂きます──」
そう言った悪魔の顔から笑みが消え、真剣な表情になると全身を薄い光が包み始めた。頭から二本の羊の様な角が生え、鋭い爪が更に鋭く伸びて、細く長い尻尾が現れ垂れ下がった。まさに悪魔という風貌なのだが、何故かそこまで禍々しくは無い。気品すら感じられる雰囲気だ。
「【地獄の爆炎】」
「なっ! じょ、上級魔法っ!?」
俺の足下が爆発する様に弾けると、一気に爆炎が俺を取り囲んだ。炎がうねりを上げながらグルグルと捻れる様にして俺を包み込み、立ち昇って行く。まるで炎の竜巻が生きているみたいだ。
楓は上級魔法を見るのは初めてらしく、腰を抜かしそうな程驚いている。まあ、俺も見るのは初めてだけど……そもそも魔法自体、初めて見た。
「これが魔法か……」
俺は別の意味でも驚いていた。【荷重力世界】の能力で身体能力が爆発的な力を発揮するのは知っている。それは防御力においても例外では無い。実際、これまで怪我らしい怪我等した事も無かった。そして、どうやらそれは魔法に対しても適用されるらしい。
──そう。全く熱くない。
チートにも程がある。何か、この悪魔の悩みが自分の事と重なり始めた。明らかに凄い魔法なのに、何だか申し訳ない気持ちにすらなって来た。
炎は俺の周りの全てを焼き尽くし、一瞬で消えた。地面は窪んで真っ黒な煤塵と化し、焦げ臭い匂いと硝煙が辺りに立ち込めている。とんでもない威力だ。そう、とんでもない威力なんだが……
(…………)
『…………』
「なっ!? む、無傷……」
悪魔は顎が外れんばかりに驚愕の表情で固まっている。うん。わかる。そりゃそうだよな……
『相変わらずですね。さすがです』
(…………言うな)
「「「…………」」」
俺は遠い目で雪に答えた。
楓やウォルフ達は何が起こったのかすらわかっていないみたいだ。三人共、無言で固まっている。
「くっ! 【悪魔の爪】!」
悪魔が先程よりも黒く鋭い爪で斬り掛かってきた。俺は刀で受けずにスッと躱すと、後に跳ねて距離をとった。
「ぐぐっ……!! 【火矢】!! 【火球】!!」
悪魔が火の球と火の矢を乱れ打ちして来た。半ば、やけくその様にも見える。俺は避ける事なく魔法の爆煙に包まれたまま刀を振るった。
「【死神の刃】」
「ぐっ!!」
爆煙を掻き分け、死神の刃が悪魔の右肩を掠めた。どうやら咄嗟に反応して躱したようだ。しかし悪魔の右腕は肩から先が無くなっていた。
「くくっ……ここ迄とは……」
悪魔は驚きながらもその表情はどこか嬉しそうだ。
「今のを避けれるだけでもたいしたもんだ」
「フフフッ。どうやら貴方を試すなんて、おこがましい考えだった様です……私では貴方のお相手は務まらない様だ」
「いや、たまたま相性が悪かっただけだろ。お前は結構、強いと思うぞ?」
この悪魔が強いのは本当だ。実際、俺の動きにも反応してたし、俺は加速しなければ危なかった。それに、この悪魔が長い間強さを求めて来た事に対して、何だか悪い様な気がした。何せ俺、チートだし。気が付けば俺は悪魔を労う様な言葉を口にしていた。
「フフッ、お戯れを。私の……完敗です」
そう言った悪魔は悔しそうではあるが、やはりどこか嬉しそうでもあった。意外に晴れやかな表情で薄く笑みを浮かべている。そして、そのまま話を始めた。
「私は……慢心しておりました。自分は強さを極めたのだと。少なくとも、簡単に負ける様な事は無いと驕っておりました。しかし、どうやら私は自分で強さの限界を決め付けてしまっていた様です。そして強さにはまだまだ上がある事を知りました。私にはまだ、目指すべき上がある。もっと強くなれる。それは私にとって何よりも喜ばしい事です。そして、それを教えて下さった貴方様には感謝の意が絶えません」
悪魔は自らの想いを吐き出すように話し終えると、俺の前で片膝を付いて頭を垂れ、敬意を示した。
どこまでも紳士的な悪魔だ。本当に強さにしか興味がないのかも知れない。悪魔はひと呼吸おくと、跪いたまま更に続けた。
「悪魔は強き者には忠誠を誓い、仕えるもの。私は魔界で仕えるべき主に出会う事が叶いませんでした。ですが、ようやくここに仕えるべき主を見出だす事が出来た様です。どうか、この私を貴方様の配下にお加え下さい」
何っ!?
は、配下?
いきなり何を言い出すんだ、この悪魔は。完全に油断していた。俺は自分の悪人面は自覚しているんだ。この上、本物の悪魔を連れて歩いてどうする!?
『いいんじゃないですか?』
雪が少し笑っている様な声で割り込んで来た。
(どう言う事だ?)
『この悪魔が配下に加われば、この樹海での暮らしはずっと楽になります。それに、この悪魔の真人さんに対する敬意……見所があります』
(いや、見所って……)
雪の変な暴走はさておき、確かに樹海での生活にはメリットがあるな。一応、魔神だと思われてるし。いろいろと樹海の事情にも詳しいかも知れない。うん。配下って何だか偉そうだけど、一人くらいはいてもいいか──
「わかった。俺に仕える事を許そう。俺は真人、瀬上真人だ。今日からお前は俺の唯一の配下になる。お前には今後、腹心としての働きに期待するっ」
やっぱ最初は肝心だからな。ちょっと偉そうだけどこれくらい威厳があった方がいいだろう。
「ははっ! 有難き幸せっ!」
うん。やっぱりこれくらい大げさで丁度いいみたいだ。しかし悪魔とかお前とか、名前が無いと不便だな。
「なあ、お前……名前とか無いのか? なんて呼べばいいか困るんだけど」
「私はただのはぐれ悪魔です。名前の様な物はございません」
「あ、そう……」
悪魔ってそういう物なのか?
だったら勝手に付けてしまおう。名前が無いのは不便過ぎる。
「じゃあ俺が勝手に付けても問題ないか?」
「主より名を頂戴出来るなど、感激の極みにございます」
んー……名前か。どうしよう。悪魔……魔神……マジン……
「よし。今日からお前は『ジン』だ」
適当すぎるかな……
「はっ! このジン。身命を賭して真人様にお使え致します」
まあ、よしとしよう。
『フフフ。これであの女と二人ではなくなりましたね』
(………………)
こうして悪魔『ジン』が俺の配下に加わった。
「「魔神!?」」
「…………」
楓とウォルフが一斉に反応した。確かに予想外の風貌だ。
俺は黙って男の話の続きを待った。
「勿論、私は魔神なんかじゃありませんよ? 勝手にそう呼ばれているだけです」
ほう。ウォルフの言っていた魔神はこいつで間違いない無さそうだが、実際は本物の魔神では無いらしい。じゃあ、こいつは何者なんだ?
「で、その魔神もどきが一体何の用だ?」
「これは手厳しいですねぇ。魔神ではありませんが、魔神並には強いですよ? 私は」
そいつはニヤニヤと笑いながら答えると続けて話を続けた。
「私はしがない悪魔です。更成る力を求めてこの森で研鑽を重ねておりました。しかし私に挑んで来るのは不甲斐無い連中ばかりで……私は退屈していました。しかし突然、凄まじい力を感じたのです。私はすぐに、それが貴方だとわかりました。そこで、失礼ながら試させて頂いたのですが……この様な雑魚では試金石にもならなかった様ですね」
そう言うと、その魔神──いや悪魔はクククッと嬉しそうに、咳払いする様な仕草で口に手を当てて笑い始めた。どうやら、さっきの魔物はこいつの仕業みたいだ。
「え、A級が雑魚……」
楓は自分の常識外の力に戸惑っている。
「真人殿、今度こそ逃げた方がいい。あの魔神……いや悪魔は普通じゃない」
傍に来たウォルフが額に汗を浮かべながら小声で呟いて来た。
「何言ってんだウォルフ。折角お目当てが向こうからやって来てくれたって言うのに。まあ、魔神じゃ無かったけどな。ハハハッ」
どうやらこの悪魔は好戦的なタイプらしい。予想が当たってたみたいだ。俺も相手の出方次第では、腕試しくらいはするつもりだったし……丁度いい。ウォルフは心配してくれているみたいだか……安心しろ。実は俺も普通じゃないんだ。
「つまり俺の力を試しに来たって事だな?」
「フフフッ。言ってしまえば、そう言う事です」
その悪魔は嬉しそうに笑みを浮かべて答えた。
「ま、真人殿……」
「真人様……」
「んじゃあ、戦るか──」
『──来ます!』
キイィィィィィィィィィンッ!!
呆然とする楓達を他所目に戦いを始めようとしていると、悪魔はいきなり襲い掛かってきた。
早いっ!
俺は悪魔の伸びた爪での斬撃を刀で受け止めた。
加速した時間軸だから苦もなく反応する事が出来たけど、逆に言えば加速していなければとんでもない早さだったと言う事だ。こいつ、魔神とか言われるだけの事はある。俺じゃなければ反応する事すら難しかったはずだ。
「……のやろぉ」
「まさかっ!? これに反応しますかっ!!」
悪魔の奴、言ってる割にめちゃくちゃ嬉しそうだ。全身が喜びて打ち震えている。よっぽど相手が居なかったんだろうな。俺の能力もチートだから、気持ちは分かる様な気がする。残念ながら俺の方は全力で行けそうに無いけど。
「安心して全力でかかって来い。これくらいなら何の問題もない。この程度じゃ俺の能力は試せんぞ?」
「クッ……クハハハハハッ!! 最高ですっ! 私は貴方の様な方を待ち焦がれていたっ!」
悪魔は堪え切れなくなった様に満面の笑みを浮かべながら笑った。両手を広げ、仰々しく嬉しさを表現している。
「そりゃあ良かった。俺も色々試したいんだ……死ぬなよ?」
「死ぬなんて、そんな勿体無い事出来ませんよっ!」
悪魔は羽根をバタつかせて俺から離れると、少し距離を置いた宙で静止した。
「では遠慮なく……全力を出させて頂きます──」
そう言った悪魔の顔から笑みが消え、真剣な表情になると全身を薄い光が包み始めた。頭から二本の羊の様な角が生え、鋭い爪が更に鋭く伸びて、細く長い尻尾が現れ垂れ下がった。まさに悪魔という風貌なのだが、何故かそこまで禍々しくは無い。気品すら感じられる雰囲気だ。
「【地獄の爆炎】」
「なっ! じょ、上級魔法っ!?」
俺の足下が爆発する様に弾けると、一気に爆炎が俺を取り囲んだ。炎がうねりを上げながらグルグルと捻れる様にして俺を包み込み、立ち昇って行く。まるで炎の竜巻が生きているみたいだ。
楓は上級魔法を見るのは初めてらしく、腰を抜かしそうな程驚いている。まあ、俺も見るのは初めてだけど……そもそも魔法自体、初めて見た。
「これが魔法か……」
俺は別の意味でも驚いていた。【荷重力世界】の能力で身体能力が爆発的な力を発揮するのは知っている。それは防御力においても例外では無い。実際、これまで怪我らしい怪我等した事も無かった。そして、どうやらそれは魔法に対しても適用されるらしい。
──そう。全く熱くない。
チートにも程がある。何か、この悪魔の悩みが自分の事と重なり始めた。明らかに凄い魔法なのに、何だか申し訳ない気持ちにすらなって来た。
炎は俺の周りの全てを焼き尽くし、一瞬で消えた。地面は窪んで真っ黒な煤塵と化し、焦げ臭い匂いと硝煙が辺りに立ち込めている。とんでもない威力だ。そう、とんでもない威力なんだが……
(…………)
『…………』
「なっ!? む、無傷……」
悪魔は顎が外れんばかりに驚愕の表情で固まっている。うん。わかる。そりゃそうだよな……
『相変わらずですね。さすがです』
(…………言うな)
「「「…………」」」
俺は遠い目で雪に答えた。
楓やウォルフ達は何が起こったのかすらわかっていないみたいだ。三人共、無言で固まっている。
「くっ! 【悪魔の爪】!」
悪魔が先程よりも黒く鋭い爪で斬り掛かってきた。俺は刀で受けずにスッと躱すと、後に跳ねて距離をとった。
「ぐぐっ……!! 【火矢】!! 【火球】!!」
悪魔が火の球と火の矢を乱れ打ちして来た。半ば、やけくその様にも見える。俺は避ける事なく魔法の爆煙に包まれたまま刀を振るった。
「【死神の刃】」
「ぐっ!!」
爆煙を掻き分け、死神の刃が悪魔の右肩を掠めた。どうやら咄嗟に反応して躱したようだ。しかし悪魔の右腕は肩から先が無くなっていた。
「くくっ……ここ迄とは……」
悪魔は驚きながらもその表情はどこか嬉しそうだ。
「今のを避けれるだけでもたいしたもんだ」
「フフフッ。どうやら貴方を試すなんて、おこがましい考えだった様です……私では貴方のお相手は務まらない様だ」
「いや、たまたま相性が悪かっただけだろ。お前は結構、強いと思うぞ?」
この悪魔が強いのは本当だ。実際、俺の動きにも反応してたし、俺は加速しなければ危なかった。それに、この悪魔が長い間強さを求めて来た事に対して、何だか悪い様な気がした。何せ俺、チートだし。気が付けば俺は悪魔を労う様な言葉を口にしていた。
「フフッ、お戯れを。私の……完敗です」
そう言った悪魔は悔しそうではあるが、やはりどこか嬉しそうでもあった。意外に晴れやかな表情で薄く笑みを浮かべている。そして、そのまま話を始めた。
「私は……慢心しておりました。自分は強さを極めたのだと。少なくとも、簡単に負ける様な事は無いと驕っておりました。しかし、どうやら私は自分で強さの限界を決め付けてしまっていた様です。そして強さにはまだまだ上がある事を知りました。私にはまだ、目指すべき上がある。もっと強くなれる。それは私にとって何よりも喜ばしい事です。そして、それを教えて下さった貴方様には感謝の意が絶えません」
悪魔は自らの想いを吐き出すように話し終えると、俺の前で片膝を付いて頭を垂れ、敬意を示した。
どこまでも紳士的な悪魔だ。本当に強さにしか興味がないのかも知れない。悪魔はひと呼吸おくと、跪いたまま更に続けた。
「悪魔は強き者には忠誠を誓い、仕えるもの。私は魔界で仕えるべき主に出会う事が叶いませんでした。ですが、ようやくここに仕えるべき主を見出だす事が出来た様です。どうか、この私を貴方様の配下にお加え下さい」
何っ!?
は、配下?
いきなり何を言い出すんだ、この悪魔は。完全に油断していた。俺は自分の悪人面は自覚しているんだ。この上、本物の悪魔を連れて歩いてどうする!?
『いいんじゃないですか?』
雪が少し笑っている様な声で割り込んで来た。
(どう言う事だ?)
『この悪魔が配下に加われば、この樹海での暮らしはずっと楽になります。それに、この悪魔の真人さんに対する敬意……見所があります』
(いや、見所って……)
雪の変な暴走はさておき、確かに樹海での生活にはメリットがあるな。一応、魔神だと思われてるし。いろいろと樹海の事情にも詳しいかも知れない。うん。配下って何だか偉そうだけど、一人くらいはいてもいいか──
「わかった。俺に仕える事を許そう。俺は真人、瀬上真人だ。今日からお前は俺の唯一の配下になる。お前には今後、腹心としての働きに期待するっ」
やっぱ最初は肝心だからな。ちょっと偉そうだけどこれくらい威厳があった方がいいだろう。
「ははっ! 有難き幸せっ!」
うん。やっぱりこれくらい大げさで丁度いいみたいだ。しかし悪魔とかお前とか、名前が無いと不便だな。
「なあ、お前……名前とか無いのか? なんて呼べばいいか困るんだけど」
「私はただのはぐれ悪魔です。名前の様な物はございません」
「あ、そう……」
悪魔ってそういう物なのか?
だったら勝手に付けてしまおう。名前が無いのは不便過ぎる。
「じゃあ俺が勝手に付けても問題ないか?」
「主より名を頂戴出来るなど、感激の極みにございます」
んー……名前か。どうしよう。悪魔……魔神……マジン……
「よし。今日からお前は『ジン』だ」
適当すぎるかな……
「はっ! このジン。身命を賭して真人様にお使え致します」
まあ、よしとしよう。
『フフフ。これであの女と二人ではなくなりましたね』
(………………)
こうして悪魔『ジン』が俺の配下に加わった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる