44 / 44
第二章 人間の国
第44話 スミス親子
しおりを挟む
「──そう。儂も固有持ち……混血者なんだ」
真剣な表情でそう告白し、スミスは更に続けた。
「儂は、人間の母と亜人の父との間に生まれたんだよ」
ドワーフ!
スミスは、ドワーフの血を引いていたのか。鍛冶職人にはピッタリのイメージだ。そんなスミスが、自らの生い立ちについて語り始めた。
「親父は優秀な鍛冶職人だった。儂の技術は、親父から叩き込まれた物なんだよ」
親父も鍛冶職人だったのか……。スミスの風貌と言い、妙に説得力がある。
「亜人は人間程、混血者に対する差別は酷く無いからな。優しい男だった親父は、自然と、混血だった母とも愛し会う様になった。そして、俺が生まれたんだ。だが、この世界は、そんな親父達には厳し過ぎた……」
少し悔しそうな表情を浮かべ、スミスは拳を握り締めた。相当、辛い思い出がある様だ。
「幾ら人間程は酷く無いとは言え、亜人の国でも差別はある。相手が人間なら、尚更だ。母にとって亜人の国は、暮らしやすい国では無かった」
なるほど。亜人の国は、混血者に対して人間の国よりは差別が少ないのか……。だが、人間に対する差別はあるみたいだ。混血への差別も、ゼロと言う訳では無いだろう。確かに、人間の女が暮らすには、少し辛い環境なのかも知れない。
「そこで、親父は母の為……そして、生まれたばかりの儂の為に、人間の国で暮らす決意をしたんだ。母との関係や、俺が混血である事を隠してな……」
家族と一緒に暮らせない。愛する妻と子供に父親として接する事が出来ないと言うのは、相当辛い事だったろう。どれ程の決意でスミスの親父がその決断をしたのか、容易に想像が付く。それもこれも、全ては愛する妻と子供の為。どうやら、立派な男だったみたいだな……スミスの親父は。だが、その息子の顔は暗く沈んでいた。そして、口惜しそうに続きを語る。
「だが、そんな生活も長くは続かなかった。親父と母の関係は、すぐにバレた。そして、勿論、俺が二人の間に出来た子供……混血である事もな」
一層、表情を曇らせるスミス。その顔には、怒りすら滲み出している。
「母は知らなかったんだ。親父が、亜人であるが故に町の奴等から酷い差別を受けていた事を。そして、それを知った母は全てを話した。町の人間達に、理解を求めて。親父は亜人だが、自分の愛する大切な人なんだと。他の人間と、同じ様に接して欲しいんだと……」
「それで……どうなったの?」
珍しく、アスカが口を挟んだ。もしかすると、他人事だと思えなかったのかも知れない。
「最初は厳しかった。だが、それでも少しずつだが理解を示す人間も現れ始めてたんだ。しかし、そんな風潮に異を唱える奴等が現れた……」
「まさか……」
思わず、声が漏れた。嫌な予感がする。そして、その予感は的中した。
「……そう。教会だ」
やはりか。この世界の教会と言うのは、本当に禄な事をしない。アスカ達への弾圧と言い、スミスの両親の話と言い……。
「教会は、亜人や混血者の平等な権利を訴える母が邪魔だったんだろう。教会は、徹底的に俺達親子を弾圧した。もう誰も、俺達には関わりたく無くなるくらいにな……」
「酷い……」
口元を抑え、ビビが呟く。しかし、スミスの告白は終わらない。
「町で暮らせなくなった俺達は、人目を避けて暮らす様になった。。亜人だった親父は、名もなき村に行けば迷惑をかけると考えたのかも知れない。とにかく、その日から俺達は山奥でひっそりと暮らした。親父に、鍛冶職人の技術を叩き込まれたのもこの頃だ」
「え? 鍛冶職人の技術は固有能力では無いんですか? 魔法剣なんて物を造れるくらいなのに……」
他のどの職人も、真似出来ない程の超技術。てっきり、生まれ持った能力だとばかり思っていたのだが…。
「何バカな事を言ってるんだ。そんな都合の良い能力がある訳ないだろ。それに、魔法剣を打てる様になったのも、つい最近の話だ」
「最近? つまり、レベルが上がったから打てる様になったと……そう言う事ですか?」
思わず、尋ねた。何か、俺が考えていた状況と少し違う。すると、スミスは驚く様な答えを口にした。
「──あ? ああ、その通りだ。この歳になって、ようやく固有能力のレベルが上がったんだよ……レベル『四』にな」
真剣な表情でそう告白し、スミスは更に続けた。
「儂は、人間の母と亜人の父との間に生まれたんだよ」
ドワーフ!
スミスは、ドワーフの血を引いていたのか。鍛冶職人にはピッタリのイメージだ。そんなスミスが、自らの生い立ちについて語り始めた。
「親父は優秀な鍛冶職人だった。儂の技術は、親父から叩き込まれた物なんだよ」
親父も鍛冶職人だったのか……。スミスの風貌と言い、妙に説得力がある。
「亜人は人間程、混血者に対する差別は酷く無いからな。優しい男だった親父は、自然と、混血だった母とも愛し会う様になった。そして、俺が生まれたんだ。だが、この世界は、そんな親父達には厳し過ぎた……」
少し悔しそうな表情を浮かべ、スミスは拳を握り締めた。相当、辛い思い出がある様だ。
「幾ら人間程は酷く無いとは言え、亜人の国でも差別はある。相手が人間なら、尚更だ。母にとって亜人の国は、暮らしやすい国では無かった」
なるほど。亜人の国は、混血者に対して人間の国よりは差別が少ないのか……。だが、人間に対する差別はあるみたいだ。混血への差別も、ゼロと言う訳では無いだろう。確かに、人間の女が暮らすには、少し辛い環境なのかも知れない。
「そこで、親父は母の為……そして、生まれたばかりの儂の為に、人間の国で暮らす決意をしたんだ。母との関係や、俺が混血である事を隠してな……」
家族と一緒に暮らせない。愛する妻と子供に父親として接する事が出来ないと言うのは、相当辛い事だったろう。どれ程の決意でスミスの親父がその決断をしたのか、容易に想像が付く。それもこれも、全ては愛する妻と子供の為。どうやら、立派な男だったみたいだな……スミスの親父は。だが、その息子の顔は暗く沈んでいた。そして、口惜しそうに続きを語る。
「だが、そんな生活も長くは続かなかった。親父と母の関係は、すぐにバレた。そして、勿論、俺が二人の間に出来た子供……混血である事もな」
一層、表情を曇らせるスミス。その顔には、怒りすら滲み出している。
「母は知らなかったんだ。親父が、亜人であるが故に町の奴等から酷い差別を受けていた事を。そして、それを知った母は全てを話した。町の人間達に、理解を求めて。親父は亜人だが、自分の愛する大切な人なんだと。他の人間と、同じ様に接して欲しいんだと……」
「それで……どうなったの?」
珍しく、アスカが口を挟んだ。もしかすると、他人事だと思えなかったのかも知れない。
「最初は厳しかった。だが、それでも少しずつだが理解を示す人間も現れ始めてたんだ。しかし、そんな風潮に異を唱える奴等が現れた……」
「まさか……」
思わず、声が漏れた。嫌な予感がする。そして、その予感は的中した。
「……そう。教会だ」
やはりか。この世界の教会と言うのは、本当に禄な事をしない。アスカ達への弾圧と言い、スミスの両親の話と言い……。
「教会は、亜人や混血者の平等な権利を訴える母が邪魔だったんだろう。教会は、徹底的に俺達親子を弾圧した。もう誰も、俺達には関わりたく無くなるくらいにな……」
「酷い……」
口元を抑え、ビビが呟く。しかし、スミスの告白は終わらない。
「町で暮らせなくなった俺達は、人目を避けて暮らす様になった。。亜人だった親父は、名もなき村に行けば迷惑をかけると考えたのかも知れない。とにかく、その日から俺達は山奥でひっそりと暮らした。親父に、鍛冶職人の技術を叩き込まれたのもこの頃だ」
「え? 鍛冶職人の技術は固有能力では無いんですか? 魔法剣なんて物を造れるくらいなのに……」
他のどの職人も、真似出来ない程の超技術。てっきり、生まれ持った能力だとばかり思っていたのだが…。
「何バカな事を言ってるんだ。そんな都合の良い能力がある訳ないだろ。それに、魔法剣を打てる様になったのも、つい最近の話だ」
「最近? つまり、レベルが上がったから打てる様になったと……そう言う事ですか?」
思わず、尋ねた。何か、俺が考えていた状況と少し違う。すると、スミスは驚く様な答えを口にした。
「──あ? ああ、その通りだ。この歳になって、ようやく固有能力のレベルが上がったんだよ……レベル『四』にな」
0
お気に入りに追加
26
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
真木さん、更新お疲れ様です。
ロックグリズリーさんを熊鍋にしてしまいましょう(笑)
(身に付けるが見に付けるになってますよ|*゚ノロ゚)コッソリ)
熊鍋www
体毛も全て固いから食べるの大変そうです(笑)
な、直します…(T_T)
感想、いつもありがとうございます!!(。>﹏<。)
真木さん、更新お疲れ様です!
不意じゃなくても使用できる不意打ちスキルの強スキル具合が良い感じですね!また、完全無欠ではなくて、欠点や弱点があるところも好きです(*´艸`*)
寒村で出会った混血の美少女は第一ヒロインなのか、純血・混血にどういった意味が隠されているのか楽しみです٩(ˊᗜˋ*)و
アルファに慣れてなくて感想頂いてたのに気付いていませんでした…!ごめんなさい…!(T_T)
基本的に主人公最強ですからね…(笑)
不意打ちは更に俺ツエー全開になりますwww
混血、純血の話は割と本作の根幹にも関わってくる予定です!!
まるさん、感想ありがとうございます!!