21 / 69
異世界フィオール
21話 カーミラとヒデヨシの戦い
しおりを挟む
メーシャが戦ったり空中浮遊している頃。時を同じくして、カーミラ視点。
「……いくよ、フーリ」
カーミラの掛け声とともに風がふわりと渦巻き、その精霊は静かに姿を顕現させた。
「──ふも……!」
フーリ……カーミラの契約している精霊なのだが、黄緑色で二足歩行の2頭身タヌキで、大きさも30cmくらいしかない。見た目は完全にゆるキャラだ。
ちなみに、名前の由来も風の狸で『風狸』である。
「ギリリィ……?」
そんな精霊の姿にトレントもおもわず侮ってしまう。だが──。
「もい!」
頬すら届くか怪しいほど短い手を振ると、風が斬撃となって風を切り裂きながらトレントをまっぷたつ。一瞬で倒してしまった。
「本気を出すまでも無いですが……『──来たれ、金色の鬼のチカラ』!!」
刹那。カーミラの髪が瞳と同じ金色に染まり、圧縮されたオーラが地面をえぐる。
「ギ、ギュルル……!?」
カーミラの放つ威圧感に、トレントは石化したみたいに動けなくなってしまった。
「…………ふう~」
動かないトレントを前に、腰の細剣に手をかけながらカーミラはゆっくり呼吸を整える。そして──。
「──はっ!!」
細剣の閃きが駆け抜けると、周囲のトレントに大穴を開けてしまう。
「…………ギ……ギュル?」
トレントは己が倒された理由を知る間もなく地面に倒れ伏した。
カーミラのパワーは鬼のチカラで跳ね上がり、そのパワーでトレントが認識するより早い突きを放ったのだ。
ただの早い突きなのだ。そう、音速を優に超えるだけのただの早い突きなのだった。
「今日の突きはまあまあですね。って…………あ、メーシャちゃんが……飛ばされていってる!?」
驚きで鬼のチカラが消えちゃうカーミラ。
「むふ……?」
慌てるカーミラとは逆に、自分の役割を終えたフーリはマイペースに木の実を食べていた。
「フーリ、むかえにいくよ!」
「もっふ!?」
そんなフーリを抱えながら、カーミラは足元に風を発生させて空中を走ってメーシャを迎えにいくのだった。
● ● ●
そして最後にヒデヨシ。
まだトレントは十分いる。全部倒せば宣言通り1番多く倒すことができるはずだ。
「ちうっち……」
ヒデヨシはここまでトレントの攻撃を回避していただけで、あえて一切反撃をしなかった。
それはなぜか……。
「ちゅぁちう」
昨日、ミツメオオカミ=ラードロ戦で覚えたブレス攻撃。使ったことはないが、これに確固たる自信があったからだ。
『ヒデヨシ、やっちまうんだな?』
カーミラがメーシャの方に行ったので、デウスはヒデヨシの方についている事にしたようだ。
「ちう……!」
ヒデヨシがお口を大きく開けると同時に、背中の五角形のマークが緑色に発光。エネルギーがお口の前にどんどん集まっていく。
「「「ギュルルィ……!!」」」
ジリジリと距離を詰めるトレント。もうヒデヨシが逃げる隙間はなさそうだ。
『ま、逃げる必要はねえけどな。……ヒデヨシ、いっちょ見せてやれ!!』
「──ぢゅぁああああああ!!!!!」
まさに灼熱の業火。
有無を言わせぬその火力は、トレントを瞬く間に燃やし尽くしていく。
『す、すげえっ! 新技カッケェぜ!!』
「ちゅいぃいいい!!」
ヒデヨシは火力を一定に保ちながら勢いよく回転。周囲のトレントを1匹残らず倒してしまった。
しかも、その炎のブレスのスゴいところは、トレントは燃やしたのに森の木には少しの焼け跡すらつけていないことだ。
『…………ヒデヨシ、良かったらまた今度一緒に必殺技みてえなの考えようぜ!』
デウスはヒデヨシのポテンシャルに惹かれたようだ。
「ちゅいいちうちゅ。ちゅぁいちゅうちちゅちゅちいちい……!」
ヒデヨシもまだまだ己の伸び代を感じ、デウスとの必殺技作りの提案にワクワクしてしまうのであった。
* * * * *
「──いゃあ~、ごめんごめん! 今度からなんか降り方というか、空中で自由に動く方法とか考えないとだね!」
カーミラに地上へ降ろしてもらったメーシャは、戻ってくるや少し恥ずかしそうに笑った。
「……メーシャちゃんは魔法の適性も悪くなさそうだから、風魔法を覚えるのも手かもしれない」
完璧に、とまではいかないがカーミラはある程度の魔法がつかえるかの適性が分かるようだ。
「あ、魔法!? イイね! あ……でも、今はあれだから帰ったらかな?」
ゲーム大好き人間のメーシャはもちろん、小さい頃に何度も魔法を出す練習をしていた。だから、本当に出せるならすぐにでも習得したいのだが、今は残念ながら任務中。
しかも、もう洞窟に着いてしまった。
「もへ?」
足元にいたフーリがカーミラの顔を覗く。
「そうね。すぐに出来るかはともかく、基本を教えるくらいならすぐか……」
フーリは人語が分からない。だが、カーミラとフーリは長年一緒に過ごした仲。言葉がわからなくとも何が言いたいかは理解できるのだ。
「ちょっと待って、すぐイケんの?! ……マジ?」
一連の会話でメーシャの目が輝いてしまう。
「はい。初級魔法の基礎を教えるくらいなら……」
「ちううち!」
「うん!」
メーシャとヒデヨシの仲も半年と少しながら、互いに言葉を理解しているようだ。
『ウロボロスのチカラも全開放はまだまだ先だし、手札を増やせるのは良いかもな』
「よ~っし! じゃあ、カーミラせんせい、お願いします!」
● ● ●
「心臓から血管を伝って熱を手のひらに送るイメージ……。そんで、手を当てたい的に向けて、魔法名を唱える」
メーシャはカーミラに教えてもらったことを復唱しながら手に意識を集中させていく。そして……。
「──"初級風魔法"!」
瞬間、虚空から風の刃が飛び出して落ちていた石ころを切り裂いた。
「…………すごい。こんなにすぐこのクオリティの魔法を出せるようになるなんて…………。もしかして、元々練習していたんでしょうか?」
『……メーシャならやりかねねえな。魔法のないはずの世界に住んでたのに、俺様と出会った頃には数え切れないほど転移魔法を経験してたくらいだからな……』
デウスはメーシャの言ったゲームでの経験を、そのまま現実での経験と勘違いしたままのようだ。
「あんま時間かけてもあれだし、一回だけ飛ぶ練習するね?」
「……どうぞ」
「次は足に魔力を……この熱って魔力だよね? 魔力を集中させる~……そんで、対象は足の下の空間? 空間にとどめる印象だったっけ?」
「そう。……あ、飛ぶ直前にジャンプしないと魔法が地面に当たって吹き飛ばされるから気をつけて」
「そだそだ。…………いくよ~! ──初級風魔法!」
メーシャはジャンプした瞬間魔法を発動。
風の刃は足の下で超高速回転し浮力を生み出し、メーシャの身体をふわりと浮き上がらせる。
「お、おぉ~! で……でも、維持するの難しい……! 気を抜くとすぐに勢いが。──あっ!?」
ぴょいーん!
風魔法が暴走してしまい、強くなりすぎた浮力がメーシャを勢いよく飛び上がらせてしまった。
「ちうち!」
「あおあおあぁわっ!? ──初級風魔法!!」
落下して地面に叩きつけられそうになる直前、メーシャは調節もせずに勢いのまま魔法を発動。
──ドッゴッッ!!
「…………やりすぎちゃった」
魔力過多で発動された風魔法は爆発を起こし、周囲の木々や地面を瞬時に切り裂いてクレーターを作ってしまった。
『…………まあ、被害がなくて良かった』
今回落下地点が離れた位置で、味方も動物も他のヒトもいない場所だったので何事もなく済んだが、万が一を考えれば空中浮遊を実戦投入するのはまだ先にした方が良さそうだ。
「そ、そだね……」
「でも、空中で飛び続けるのは無理でもヒュル自体は安定して発動できるし、攻撃やとっさの移動に使う分には問題なさそう……かな?」
カーミラがフーリとアイコンタクトで意見をすり合わせながらメーシャをフォローする。
「みっふぁ」
『そうだな。ただ、攻撃対象からはずして魔法が味方に当たっても傷付けないようにするテクニックがあるんだが…………まあ、それを覚えるまでは味方近くでの発動は控えた方が良いな』
「あ、フレンドリーファイアしないようにできるんだ?」
「あるけど、少し落ち着いた環境でやりたいので帰ってからしましょ」
範囲が広かったり前衛の世界の外から飛んでくる魔法。なので、初級魔法を覚える時に基礎として味方に攻撃が当たらないようにする方法を学ぶのだ。
だが今回は突貫でのレクチャーなので、時間のかかるこのテクニックを教えるのは見送ったのであった。
「わかった。そんじゃ落ち着いたところでそろそろ洞窟に入るか!」
「……いくよ、フーリ」
カーミラの掛け声とともに風がふわりと渦巻き、その精霊は静かに姿を顕現させた。
「──ふも……!」
フーリ……カーミラの契約している精霊なのだが、黄緑色で二足歩行の2頭身タヌキで、大きさも30cmくらいしかない。見た目は完全にゆるキャラだ。
ちなみに、名前の由来も風の狸で『風狸』である。
「ギリリィ……?」
そんな精霊の姿にトレントもおもわず侮ってしまう。だが──。
「もい!」
頬すら届くか怪しいほど短い手を振ると、風が斬撃となって風を切り裂きながらトレントをまっぷたつ。一瞬で倒してしまった。
「本気を出すまでも無いですが……『──来たれ、金色の鬼のチカラ』!!」
刹那。カーミラの髪が瞳と同じ金色に染まり、圧縮されたオーラが地面をえぐる。
「ギ、ギュルル……!?」
カーミラの放つ威圧感に、トレントは石化したみたいに動けなくなってしまった。
「…………ふう~」
動かないトレントを前に、腰の細剣に手をかけながらカーミラはゆっくり呼吸を整える。そして──。
「──はっ!!」
細剣の閃きが駆け抜けると、周囲のトレントに大穴を開けてしまう。
「…………ギ……ギュル?」
トレントは己が倒された理由を知る間もなく地面に倒れ伏した。
カーミラのパワーは鬼のチカラで跳ね上がり、そのパワーでトレントが認識するより早い突きを放ったのだ。
ただの早い突きなのだ。そう、音速を優に超えるだけのただの早い突きなのだった。
「今日の突きはまあまあですね。って…………あ、メーシャちゃんが……飛ばされていってる!?」
驚きで鬼のチカラが消えちゃうカーミラ。
「むふ……?」
慌てるカーミラとは逆に、自分の役割を終えたフーリはマイペースに木の実を食べていた。
「フーリ、むかえにいくよ!」
「もっふ!?」
そんなフーリを抱えながら、カーミラは足元に風を発生させて空中を走ってメーシャを迎えにいくのだった。
● ● ●
そして最後にヒデヨシ。
まだトレントは十分いる。全部倒せば宣言通り1番多く倒すことができるはずだ。
「ちうっち……」
ヒデヨシはここまでトレントの攻撃を回避していただけで、あえて一切反撃をしなかった。
それはなぜか……。
「ちゅぁちう」
昨日、ミツメオオカミ=ラードロ戦で覚えたブレス攻撃。使ったことはないが、これに確固たる自信があったからだ。
『ヒデヨシ、やっちまうんだな?』
カーミラがメーシャの方に行ったので、デウスはヒデヨシの方についている事にしたようだ。
「ちう……!」
ヒデヨシがお口を大きく開けると同時に、背中の五角形のマークが緑色に発光。エネルギーがお口の前にどんどん集まっていく。
「「「ギュルルィ……!!」」」
ジリジリと距離を詰めるトレント。もうヒデヨシが逃げる隙間はなさそうだ。
『ま、逃げる必要はねえけどな。……ヒデヨシ、いっちょ見せてやれ!!』
「──ぢゅぁああああああ!!!!!」
まさに灼熱の業火。
有無を言わせぬその火力は、トレントを瞬く間に燃やし尽くしていく。
『す、すげえっ! 新技カッケェぜ!!』
「ちゅいぃいいい!!」
ヒデヨシは火力を一定に保ちながら勢いよく回転。周囲のトレントを1匹残らず倒してしまった。
しかも、その炎のブレスのスゴいところは、トレントは燃やしたのに森の木には少しの焼け跡すらつけていないことだ。
『…………ヒデヨシ、良かったらまた今度一緒に必殺技みてえなの考えようぜ!』
デウスはヒデヨシのポテンシャルに惹かれたようだ。
「ちゅいいちうちゅ。ちゅぁいちゅうちちゅちゅちいちい……!」
ヒデヨシもまだまだ己の伸び代を感じ、デウスとの必殺技作りの提案にワクワクしてしまうのであった。
* * * * *
「──いゃあ~、ごめんごめん! 今度からなんか降り方というか、空中で自由に動く方法とか考えないとだね!」
カーミラに地上へ降ろしてもらったメーシャは、戻ってくるや少し恥ずかしそうに笑った。
「……メーシャちゃんは魔法の適性も悪くなさそうだから、風魔法を覚えるのも手かもしれない」
完璧に、とまではいかないがカーミラはある程度の魔法がつかえるかの適性が分かるようだ。
「あ、魔法!? イイね! あ……でも、今はあれだから帰ったらかな?」
ゲーム大好き人間のメーシャはもちろん、小さい頃に何度も魔法を出す練習をしていた。だから、本当に出せるならすぐにでも習得したいのだが、今は残念ながら任務中。
しかも、もう洞窟に着いてしまった。
「もへ?」
足元にいたフーリがカーミラの顔を覗く。
「そうね。すぐに出来るかはともかく、基本を教えるくらいならすぐか……」
フーリは人語が分からない。だが、カーミラとフーリは長年一緒に過ごした仲。言葉がわからなくとも何が言いたいかは理解できるのだ。
「ちょっと待って、すぐイケんの?! ……マジ?」
一連の会話でメーシャの目が輝いてしまう。
「はい。初級魔法の基礎を教えるくらいなら……」
「ちううち!」
「うん!」
メーシャとヒデヨシの仲も半年と少しながら、互いに言葉を理解しているようだ。
『ウロボロスのチカラも全開放はまだまだ先だし、手札を増やせるのは良いかもな』
「よ~っし! じゃあ、カーミラせんせい、お願いします!」
● ● ●
「心臓から血管を伝って熱を手のひらに送るイメージ……。そんで、手を当てたい的に向けて、魔法名を唱える」
メーシャはカーミラに教えてもらったことを復唱しながら手に意識を集中させていく。そして……。
「──"初級風魔法"!」
瞬間、虚空から風の刃が飛び出して落ちていた石ころを切り裂いた。
「…………すごい。こんなにすぐこのクオリティの魔法を出せるようになるなんて…………。もしかして、元々練習していたんでしょうか?」
『……メーシャならやりかねねえな。魔法のないはずの世界に住んでたのに、俺様と出会った頃には数え切れないほど転移魔法を経験してたくらいだからな……』
デウスはメーシャの言ったゲームでの経験を、そのまま現実での経験と勘違いしたままのようだ。
「あんま時間かけてもあれだし、一回だけ飛ぶ練習するね?」
「……どうぞ」
「次は足に魔力を……この熱って魔力だよね? 魔力を集中させる~……そんで、対象は足の下の空間? 空間にとどめる印象だったっけ?」
「そう。……あ、飛ぶ直前にジャンプしないと魔法が地面に当たって吹き飛ばされるから気をつけて」
「そだそだ。…………いくよ~! ──初級風魔法!」
メーシャはジャンプした瞬間魔法を発動。
風の刃は足の下で超高速回転し浮力を生み出し、メーシャの身体をふわりと浮き上がらせる。
「お、おぉ~! で……でも、維持するの難しい……! 気を抜くとすぐに勢いが。──あっ!?」
ぴょいーん!
風魔法が暴走してしまい、強くなりすぎた浮力がメーシャを勢いよく飛び上がらせてしまった。
「ちうち!」
「あおあおあぁわっ!? ──初級風魔法!!」
落下して地面に叩きつけられそうになる直前、メーシャは調節もせずに勢いのまま魔法を発動。
──ドッゴッッ!!
「…………やりすぎちゃった」
魔力過多で発動された風魔法は爆発を起こし、周囲の木々や地面を瞬時に切り裂いてクレーターを作ってしまった。
『…………まあ、被害がなくて良かった』
今回落下地点が離れた位置で、味方も動物も他のヒトもいない場所だったので何事もなく済んだが、万が一を考えれば空中浮遊を実戦投入するのはまだ先にした方が良さそうだ。
「そ、そだね……」
「でも、空中で飛び続けるのは無理でもヒュル自体は安定して発動できるし、攻撃やとっさの移動に使う分には問題なさそう……かな?」
カーミラがフーリとアイコンタクトで意見をすり合わせながらメーシャをフォローする。
「みっふぁ」
『そうだな。ただ、攻撃対象からはずして魔法が味方に当たっても傷付けないようにするテクニックがあるんだが…………まあ、それを覚えるまでは味方近くでの発動は控えた方が良いな』
「あ、フレンドリーファイアしないようにできるんだ?」
「あるけど、少し落ち着いた環境でやりたいので帰ってからしましょ」
範囲が広かったり前衛の世界の外から飛んでくる魔法。なので、初級魔法を覚える時に基礎として味方に攻撃が当たらないようにする方法を学ぶのだ。
だが今回は突貫でのレクチャーなので、時間のかかるこのテクニックを教えるのは見送ったのであった。
「わかった。そんじゃ落ち着いたところでそろそろ洞窟に入るか!」
20
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
元聖女だった少女は我が道を往く
春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。
彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。
「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。
その言葉は取り返しのつかない事態を招く。
でも、もうわたしには関係ない。
だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。
わたしが聖女となることもない。
─── それは誓約だったから
☆これは聖女物ではありません
☆他社でも公開はじめました
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
罪人として生まれた私が女侯爵となる日
迷い人
ファンタジー
守護の民と呼ばれる一族に私は生まれた。
母は、浄化の聖女と呼ばれ、魔物と戦う屈強な戦士達を癒していた。
魔物からとれる魔石は莫大な富を生む、それでも守護の民は人々のために戦い旅をする。
私達の心は、王族よりも気高い。
そう生まれ育った私は罪人の子だった。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる