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憂鬱と悩み
佐伯悠登の憂鬱※
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やっちゃったなー…。
色んな意味で。
職場の上司とやってしまった。…しかも好きになってしまった。
他人に興味無い。嘘をつけないなんて言いながらそれが嘘になってしまった。興味持ってるどころか好きになってるし。
他人の顔色を伺って、言いたいことをあんまり言えないんだろうなぁ。社歴は五年?六年だっけか、部下に対してもうちょっときつく言っていいのに何だこの人?おどおどして。なんでこんなに自信なさげなんだろう。顔だって悪くないんだからもうちょい堂々とすりゃいいのに。
入社した頃の俺は未央のことをそんな風に思っていた。
俺の一番嫌いなタイプだ。本当は思っていることが絶対いっぱいあるはずなのにへらへら笑って自分の気持ちを封印している。
「佐伯くんってすごいね!デザインした商品すごい売れてるよ。ホームページとかアプリでもアクセス多いし、才能あって羨ましいな」
ある日そんな風に話しかけられて、そういう良いことに関してなら言える人なんだ、いい人じゃん。と俺の中で少しずつ認識が変わってきた。気弱な奴、というかそれ以上に優しすぎる性格なんだなと思い始めて嫌いという気持ちはなくなっていった。
俺は自分の仕事に絶対的な自信を持っているし、入社してから時間はあまり経ってないけど実績も作ってきた。社長とか、上の人には褒められるけど社内の女には一切言われないしそもそも近寄ってこない。皆仕事は割り切ってやってるから話はするけど褒められるなんてことはまぁ、ない。
入社した当初は絡まれることも多かったけど鬱陶しくて突き放しちゃったからな。そこは仕方ないし、別に後悔もしていない。
社内の女は話しかけてこない、俺の中でそれが定着していたから未央が話しかけてきたことが意外だったし、異性から自分の仕事ぶりを褒められるのはやっぱり嬉しかった。
でもそれだけだった。…のに昨日の新人歓迎会で全てが変わってしまった。
一次会が終わって、二次会に移動しようとしている時に未央が急に泣きだした。うわ、何泣いてんのこの人。情緒不安定か?と思いつつ他の奴や、新人にこんな姿は見せたくないだろうからとタクシーに乗せて一緒に抜け出した。まぁちょうどいいや帰りたかったし。
…と気楽に考えていたのに未央は想像以上に俺を困らせてくれた。
家も教えてくれないし、っていうか喋りもしないし。めんどくせぇ…!旦那さんの浮気現場でも目撃したのかなとか色々思うことはあったけどそれを聞くのも面倒くさくて何も聞かなかった。
どうしようもないから俺がよく行く店に連れて行ったら何があったとか全然言わない割にやたら飲み始めるし。
未央はかなり酔っていた…というかもはや酔い潰れてどこに帰せばいいのかわからないし、とりあえず、でホテルに連れて行った。
ベッドに寝かせて、部屋に置いてあるサービスの水を飲ませたりなんかしているうちにちょっと意識を取り戻してきてほっとしたのも束の間、未央は起き上がって俺に抱きついてきた。
「…キスしたい」
「は?」
「悠登、キスして」
「何言ってんすか」
「あたしとはキス出来ないの?」
別に誰ともしてないし…で、二人っきりになったらいきなり名前で呼んでくるんだ。困惑して眉を顰めていると、未央の目が潤み始めた。
「あたしのこと嫌い?」
…酔ったらこんな風になるんだ。ちょっと可愛いな。
「ねぇ、ねぇ」
「わかったわかった」
改めて自分の中で確認した。この人、結婚してるよな…指輪もしてるし。んーまぁでもいいや。あっちがしたがってるし俺知らね。
「ん…」
抱き締め返してキスをすると未央が声を漏らし、俺の口の中に舌を入れてきたからびっくりしてつい体を離してしまった。
「ちょっと、一ノ瀬さん酔いすぎ!」
「…嫌?悠登とえっちしたいな…」
「落ち着いてください」
「落ち着いてるもん…ね、悠登…」
上目遣いで頬を赤く染めながら俺を見つめる未央が可愛くて結局押し倒してしまった。
「本気で言ってます?まじでやっちゃいますよ」
「うん、しよ…」
目を閉じる未央の唇にキスをして、服を脱がせて露わになっていく肌にもキスをしながら俺も服を脱いだ。
「…あっ、あ…」
「ほんとに大丈夫?」
「うん…」
ベッドの上の未央は普段の姿から考えられないほどに乱れた。…っていうか、まじでめちゃくちゃ可愛いんですけど。エロいし!
さすが人妻。そう思うと気持ちがどんどん盛り上がってきてしまった。
「悠登、悠登…いっちゃう…」
「また?」
「あ、いく、いくっあぁあっ!」
…これ相当酔ってるな。何回もいってるし…
「めちゃくちゃ敏感なんだね」
「うん…」
息を荒らげながら恥ずかしそうに微笑む未央がこれまた可愛くて、未央が結婚してるとか上司だとか関係なくなってきて最後までしてしまった。
「あっ、やだ悠登、悠登っ…」
「未央」
「ばか、悠登のばか…」
「どうしたの、やめようか?」
未央が急に泣き始めたので俺は腰を振るのをやめた。
「…やめちゃやだ…」
「もー、何だよ…」
「悠登、やめないで…」
未央は抱かれながら何度も俺の名前を読んだ。
「悠登が浮気するから…なんで浮気なんかしたの…」
…この辺りで何かがおかしいことに気付いた。
もしかして俺の名前呼んでるわけじゃないの?いやいや俺の名前だけど。
「やだ、他の人とこんなことして欲しくなかった…あ、悠登のばか…」
あー、俺と旦那の名前被ってるのか。俺の事自分の旦那だと思ってるんだ。しかもやっぱり浮気されてたのかよ!
それからはほぼ惰性で腰を振り、未央が再び絶頂して中が締まった時にようやく俺はいくことが出来た。
「…寝んのはや」
未央に背中を向けながら後処理をして、振り向いた時には未央はすでに寝息を立てていた。
俺は未央とやったけど未央は俺とやってなかったんだ…と思うとなんだか悔しくなってきてあんまり寝付けなかった。
翌朝。旦那とやってたんじゃないよ、俺とやってたんだよってことをわからせたくて二回も抱いてしまった。イライラするのは嫉妬なんだ。俺は未央を好きになっていることに気付いた。
好きになった。離婚して俺と付き合って。
未央、困ってたなぁ…まぁ困ったとしても悩むことで未央の心が俺のことばっかりになれば勝ちだ。旦那が浮気してるんだからチャンスはある。
時間がかかりそうなことが少し憂鬱だけど、俺の心にはもう火がついてしまった。
絶対に未央を振り向かせる。
色んな意味で。
職場の上司とやってしまった。…しかも好きになってしまった。
他人に興味無い。嘘をつけないなんて言いながらそれが嘘になってしまった。興味持ってるどころか好きになってるし。
他人の顔色を伺って、言いたいことをあんまり言えないんだろうなぁ。社歴は五年?六年だっけか、部下に対してもうちょっときつく言っていいのに何だこの人?おどおどして。なんでこんなに自信なさげなんだろう。顔だって悪くないんだからもうちょい堂々とすりゃいいのに。
入社した頃の俺は未央のことをそんな風に思っていた。
俺の一番嫌いなタイプだ。本当は思っていることが絶対いっぱいあるはずなのにへらへら笑って自分の気持ちを封印している。
「佐伯くんってすごいね!デザインした商品すごい売れてるよ。ホームページとかアプリでもアクセス多いし、才能あって羨ましいな」
ある日そんな風に話しかけられて、そういう良いことに関してなら言える人なんだ、いい人じゃん。と俺の中で少しずつ認識が変わってきた。気弱な奴、というかそれ以上に優しすぎる性格なんだなと思い始めて嫌いという気持ちはなくなっていった。
俺は自分の仕事に絶対的な自信を持っているし、入社してから時間はあまり経ってないけど実績も作ってきた。社長とか、上の人には褒められるけど社内の女には一切言われないしそもそも近寄ってこない。皆仕事は割り切ってやってるから話はするけど褒められるなんてことはまぁ、ない。
入社した当初は絡まれることも多かったけど鬱陶しくて突き放しちゃったからな。そこは仕方ないし、別に後悔もしていない。
社内の女は話しかけてこない、俺の中でそれが定着していたから未央が話しかけてきたことが意外だったし、異性から自分の仕事ぶりを褒められるのはやっぱり嬉しかった。
でもそれだけだった。…のに昨日の新人歓迎会で全てが変わってしまった。
一次会が終わって、二次会に移動しようとしている時に未央が急に泣きだした。うわ、何泣いてんのこの人。情緒不安定か?と思いつつ他の奴や、新人にこんな姿は見せたくないだろうからとタクシーに乗せて一緒に抜け出した。まぁちょうどいいや帰りたかったし。
…と気楽に考えていたのに未央は想像以上に俺を困らせてくれた。
家も教えてくれないし、っていうか喋りもしないし。めんどくせぇ…!旦那さんの浮気現場でも目撃したのかなとか色々思うことはあったけどそれを聞くのも面倒くさくて何も聞かなかった。
どうしようもないから俺がよく行く店に連れて行ったら何があったとか全然言わない割にやたら飲み始めるし。
未央はかなり酔っていた…というかもはや酔い潰れてどこに帰せばいいのかわからないし、とりあえず、でホテルに連れて行った。
ベッドに寝かせて、部屋に置いてあるサービスの水を飲ませたりなんかしているうちにちょっと意識を取り戻してきてほっとしたのも束の間、未央は起き上がって俺に抱きついてきた。
「…キスしたい」
「は?」
「悠登、キスして」
「何言ってんすか」
「あたしとはキス出来ないの?」
別に誰ともしてないし…で、二人っきりになったらいきなり名前で呼んでくるんだ。困惑して眉を顰めていると、未央の目が潤み始めた。
「あたしのこと嫌い?」
…酔ったらこんな風になるんだ。ちょっと可愛いな。
「ねぇ、ねぇ」
「わかったわかった」
改めて自分の中で確認した。この人、結婚してるよな…指輪もしてるし。んーまぁでもいいや。あっちがしたがってるし俺知らね。
「ん…」
抱き締め返してキスをすると未央が声を漏らし、俺の口の中に舌を入れてきたからびっくりしてつい体を離してしまった。
「ちょっと、一ノ瀬さん酔いすぎ!」
「…嫌?悠登とえっちしたいな…」
「落ち着いてください」
「落ち着いてるもん…ね、悠登…」
上目遣いで頬を赤く染めながら俺を見つめる未央が可愛くて結局押し倒してしまった。
「本気で言ってます?まじでやっちゃいますよ」
「うん、しよ…」
目を閉じる未央の唇にキスをして、服を脱がせて露わになっていく肌にもキスをしながら俺も服を脱いだ。
「…あっ、あ…」
「ほんとに大丈夫?」
「うん…」
ベッドの上の未央は普段の姿から考えられないほどに乱れた。…っていうか、まじでめちゃくちゃ可愛いんですけど。エロいし!
さすが人妻。そう思うと気持ちがどんどん盛り上がってきてしまった。
「悠登、悠登…いっちゃう…」
「また?」
「あ、いく、いくっあぁあっ!」
…これ相当酔ってるな。何回もいってるし…
「めちゃくちゃ敏感なんだね」
「うん…」
息を荒らげながら恥ずかしそうに微笑む未央がこれまた可愛くて、未央が結婚してるとか上司だとか関係なくなってきて最後までしてしまった。
「あっ、やだ悠登、悠登っ…」
「未央」
「ばか、悠登のばか…」
「どうしたの、やめようか?」
未央が急に泣き始めたので俺は腰を振るのをやめた。
「…やめちゃやだ…」
「もー、何だよ…」
「悠登、やめないで…」
未央は抱かれながら何度も俺の名前を読んだ。
「悠登が浮気するから…なんで浮気なんかしたの…」
…この辺りで何かがおかしいことに気付いた。
もしかして俺の名前呼んでるわけじゃないの?いやいや俺の名前だけど。
「やだ、他の人とこんなことして欲しくなかった…あ、悠登のばか…」
あー、俺と旦那の名前被ってるのか。俺の事自分の旦那だと思ってるんだ。しかもやっぱり浮気されてたのかよ!
それからはほぼ惰性で腰を振り、未央が再び絶頂して中が締まった時にようやく俺はいくことが出来た。
「…寝んのはや」
未央に背中を向けながら後処理をして、振り向いた時には未央はすでに寝息を立てていた。
俺は未央とやったけど未央は俺とやってなかったんだ…と思うとなんだか悔しくなってきてあんまり寝付けなかった。
翌朝。旦那とやってたんじゃないよ、俺とやってたんだよってことをわからせたくて二回も抱いてしまった。イライラするのは嫉妬なんだ。俺は未央を好きになっていることに気付いた。
好きになった。離婚して俺と付き合って。
未央、困ってたなぁ…まぁ困ったとしても悩むことで未央の心が俺のことばっかりになれば勝ちだ。旦那が浮気してるんだからチャンスはある。
時間がかかりそうなことが少し憂鬱だけど、俺の心にはもう火がついてしまった。
絶対に未央を振り向かせる。
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