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(31)─三年間─君を想う日々─〈告白〉

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あれから。日々は過ぎ。
俺は大学三年になった。
この頃には、俺は香織を避けるように、サークルにも顔を出すことも少なくなっていた。

それでも、たまに構内を歩いている時に見かける香織は、俺を見ては、淋しそうにわらってた。

誰かを傷つけてまで、自分のやるせなさを紛らわそうとしたことに、俺は、自分自身が堪らなく嫌になった。

これからは、全部。
一人で抱えていこう。

そう決めて、香織の後ろ姿を見送った。

大学の敷地内に植えられた桜が見事に咲いている。

俺は一人、その桜を見に来て、おもいにふける。

美由紀。卒業式の後、俺に手紙を渡し走り去る君の後ろ姿を見送って、もう二年になる。
君は、今、どうしているのかな。
時々は俺を思い出したりしてくれている?
俺はいつも君を想ってるよ。
いまでも変わらず君が好きだよ。
─こんなにも。
切ない程に。

そんなことを考え、俺はその場を後にした。

六月。新緑の鮮やかな頃。大学の三年ともなると、周りでは皆、就職活動に動きだした。
俺も。皆にやや遅れて動き始めた。

そんな日々の中でも。季節はかわる。

太陽の陽射し眩しい夏が来た。
俺は大学から家へと帰り、いつものように、母さんに声をかける。
自分の部屋へ戻った俺は、クーラーのスイッチをつけた。
そして、ベッドに横になると。

俺は思う。
美由紀と行った花火大会のこと。
美由紀の誕生日に君に贈った向日葵のこと。
その時々の君の笑顔。
どれだけ恋しいか…。
美由紀…。君が恋しい。
会いたくて。会いたくて、堪らないんだよ。

そんなことを考えながら、俺はそのまま、眠りに落ちた。

クーラーの風は冷たかった。

日々は過ぎ。

季節はめぐり。
今は冬の最中。
俺の日常は、コンピューターの勉強、たまに顔を出すサークル(この頃は香織とは、すっかりもとの関係に戻れた。サークルには、気分転換にトレーニングに行っていた。)そして就職活動と。忙しかった。

そんな中で、俺が大学の敷地内のベンチに一人座っていた時だった。
珍しく久しぶりに香織から声をかけられた。香織は俺の隣に座る。
「和人、こんなところでどうしたの?」
「あ…。香織。そっちこそどうした?」
俺がそう言うと香織は。
「ちょっと、和人と話したかったの。そしたら、ベンチに和人の姿が見えたから…。」
そう言ってわらった。
「何、どうした?」
俺が言うと。香織は言った。
「うん。あのね。私…。和人のこと、ほんとに好きだったみたい。会わなくなっちゃったら…すごく…淋しくて…。」
「…香織…。」
俺は香織の言葉に、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
俺には、謝ることしか出来ない…。
「…ごめんな…。」
香織はそれでもわらって言った。
「和人ったら。謝らないでよぅ。ただ、私、もうすぐ卒業じゃない。ほら、先輩だから。」
「…ああ。」
俺はそう答えるしか出来なかった。
香織は続けた。
「一度も先輩扱いされなかったけど!えと、それでね。卒業しちゃう前に、ちゃんと気持ち、伝えておきたかったの。」
「…香織…。」
「─和人、私。ほんとにあなたが好きだった。片思いだったけど。一緒にいられた時は楽しかった。…今までありがとう。」
「…香織…。俺も。俺もありがとう。こんな俺と付き合ってくれて。」
俺がそう言うと、香織はベンチから立ち上がり、
「どういたしまして。卒業までよろしくね。」
とわらうと、俺に手を振り歩いて行った。
俺は、その後ろ姿をいつまでも見つめていた。

それから春は来て。四年の先輩達は卒業し─。
香織も卒業していった。

俺は、新しく大学四年となった。

家に帰ると、庭の桜が咲き誇り、春の盛りを告げていた。

美由紀からの知らせは─。
まだ来なかった。

三年の約束の知らせは─。
まだ来なかった。

美由紀、君はまだ覚えている?
君が俺に告げた、約束を。
『三年後の夏。気持ちが変わらなかったら
、会いに来て。』
俺はずっと支えにしてきた、その言葉を。
君に会える、この夏を。

庭の桜はその花を風に揺らしている。
春の香りのする風が吹いている。

俺はやがて来る、夏に胸を高鳴らせていた。
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