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(29)─三年生の一年間─君との日々─〈卒業〉
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冬休み中は、互いに忙しさを理由に、俺と美由紀は、もう、恒例の日曜日の勉強会は行わなくなってしまった。
俺はたまに一人になる度、抱きしめた美由紀の─。温かさを思い出しては、切なくなった。
俺は、ベッドに寝転び、天井を見つめながら─。
あの俺の腕の中で泣いていたいたいけな美由紀を、手に入れる為には、一体俺はどうすれば良かったのだろうかと─。
そんなことを考えていた。
飼い慣らしたはずの嫉妬が頭をもたげる。
美由紀、俺の腕の中で泣いていた君は。
これから。俺から離れ。
いつかは違う誰かの腕の中で、
その涙を見せ、その身をゆだねるの…。
そう思うと俺は堪らなかった。
嫉妬で焼ききれそうだった。
俺には、なす術がない。
俺は頭を振る。
今は、こんなこと考えている時じゃない。
冬休みが明けたら。共通テスト、出願、受験、と控えている。
今は。俺は、自分のことに集中しなければ。
俺はベッドから降りて、机に向かった。
冬。年はもう明けていた。
学校が始まり、俺は共通テストがあった。
そして、その結果は良く、俺は胸を撫で下ろした。
西村達を見ても、それぞれに結果は良かったようで、皆、久しぶりに浮かれていた。
帰り道。久しぶりに一緒に帰る、美由紀に
(あれ以来、妙に俺は美由紀とは意識しあってしまって妙に気まずかった。)その結果を伝えると美由紀は喜んでくれた。
あとは。残されているのは、出願と受験だけだ。
そして。しばらくして、時期がきて、俺は出願をした。
2月に入ると自由登校になり、美由紀と会えるのは、週に一度になった。
そして。受験の前日。
自分の部屋で、俺が受験の為の持ち物を揃えている時、携帯がなった。
美由紀からの電話だった。
「あの…。和人くん。今…大丈夫?」
俺はベッドに座り、話す。
「うん。…美由紀。どうしたの?」
躊躇いがちに美由紀は言った。
「和人くん…。明日…頑張ってね。」
「美由紀…!」
「邪魔しちゃうかな…とも思ったんだけど、それだけ伝えたかったの…。」
「美由紀…。邪魔なんかじゃない。…ありがとう。ありがとうな。」
俺がそう伝えると、美由紀は恥ずかしそうに言った。
「うん。それじゃ…。…和人くん。頑張ってね。」
「うん。わかった。…それじゃ。また。今度学校で。」
そう言って電話を切った。
頑張らなきゃな…。
俺は、そう改めて思い、また持ち物の準備に取りかかり、それが終わると再び机に向かった。
そして、無事、受験は終わり。
俺は手応えを感じていた。
おそらくは大丈夫だろう。
そう思いながら、合格の知らせを待った。
たまにある学校での美由紀との帰り道、美由紀は、東京で新しく一人暮らしをする為の家を決めてきた話しをした。
美由紀は、どんどん遠くなる。
俺は君に、卒業までに気持ちを伝えたかったけれど…。
それでも、やっぱり美由紀、君は望まないんだろう…。
そして。忙しく過ごす美由紀との接点は、たまにある学校の帰り道だけとなった。
俺は俺で。ほとんどが同じ大学を受けた西村達と、自由登校の間は遊んで過ごした。
そして。日々は過ぎ。
卒業式も終わり、その日の夜。
一階では、家族が騒がしい。
俺は、自分の部屋で椅子に座り、美由紀からの手紙を眺める。
俺は美由紀。
君にとうとう二年間の間に、想いを伝えることは出来なかった。
そう思ったが、今日やっと俺は勢いでやっと口にした。
なのに、君が─。
気持ちが変わってしまうなんて泣くから。
それでも、俺の気持ちを試すように、
『三年後の夏。気持ちが変わらなかったら
会いに来て。』
なんて言うから。
─俺は君に、必ず会いに行く。
美由紀。
俺の気持ちは変わらない。
君をずっと好きでいるよ。
二年間、君への想いは膨らみ続けた。
きっとこれからも、君を想う気持ちは変わらない。
─だから。待っていて。
三年後。必ず俺は君に会いに行くから。
美由紀からの手紙を大切に引き出しにしまって、俺は椅子から立ち上がり、部屋の窓を開ける。
そこには、春の夜の匂いがした。そして目に入る庭の桜の樹。花が見事に咲き誇り、盛りを過ぎたその花は花びらを風に散らしていた。
─それから。俺のもとには希望していた大学からの合格通知が届いた。
そして俺は。四月に大学生となった。
俺はたまに一人になる度、抱きしめた美由紀の─。温かさを思い出しては、切なくなった。
俺は、ベッドに寝転び、天井を見つめながら─。
あの俺の腕の中で泣いていたいたいけな美由紀を、手に入れる為には、一体俺はどうすれば良かったのだろうかと─。
そんなことを考えていた。
飼い慣らしたはずの嫉妬が頭をもたげる。
美由紀、俺の腕の中で泣いていた君は。
これから。俺から離れ。
いつかは違う誰かの腕の中で、
その涙を見せ、その身をゆだねるの…。
そう思うと俺は堪らなかった。
嫉妬で焼ききれそうだった。
俺には、なす術がない。
俺は頭を振る。
今は、こんなこと考えている時じゃない。
冬休みが明けたら。共通テスト、出願、受験、と控えている。
今は。俺は、自分のことに集中しなければ。
俺はベッドから降りて、机に向かった。
冬。年はもう明けていた。
学校が始まり、俺は共通テストがあった。
そして、その結果は良く、俺は胸を撫で下ろした。
西村達を見ても、それぞれに結果は良かったようで、皆、久しぶりに浮かれていた。
帰り道。久しぶりに一緒に帰る、美由紀に
(あれ以来、妙に俺は美由紀とは意識しあってしまって妙に気まずかった。)その結果を伝えると美由紀は喜んでくれた。
あとは。残されているのは、出願と受験だけだ。
そして。しばらくして、時期がきて、俺は出願をした。
2月に入ると自由登校になり、美由紀と会えるのは、週に一度になった。
そして。受験の前日。
自分の部屋で、俺が受験の為の持ち物を揃えている時、携帯がなった。
美由紀からの電話だった。
「あの…。和人くん。今…大丈夫?」
俺はベッドに座り、話す。
「うん。…美由紀。どうしたの?」
躊躇いがちに美由紀は言った。
「和人くん…。明日…頑張ってね。」
「美由紀…!」
「邪魔しちゃうかな…とも思ったんだけど、それだけ伝えたかったの…。」
「美由紀…。邪魔なんかじゃない。…ありがとう。ありがとうな。」
俺がそう伝えると、美由紀は恥ずかしそうに言った。
「うん。それじゃ…。…和人くん。頑張ってね。」
「うん。わかった。…それじゃ。また。今度学校で。」
そう言って電話を切った。
頑張らなきゃな…。
俺は、そう改めて思い、また持ち物の準備に取りかかり、それが終わると再び机に向かった。
そして、無事、受験は終わり。
俺は手応えを感じていた。
おそらくは大丈夫だろう。
そう思いながら、合格の知らせを待った。
たまにある学校での美由紀との帰り道、美由紀は、東京で新しく一人暮らしをする為の家を決めてきた話しをした。
美由紀は、どんどん遠くなる。
俺は君に、卒業までに気持ちを伝えたかったけれど…。
それでも、やっぱり美由紀、君は望まないんだろう…。
そして。忙しく過ごす美由紀との接点は、たまにある学校の帰り道だけとなった。
俺は俺で。ほとんどが同じ大学を受けた西村達と、自由登校の間は遊んで過ごした。
そして。日々は過ぎ。
卒業式も終わり、その日の夜。
一階では、家族が騒がしい。
俺は、自分の部屋で椅子に座り、美由紀からの手紙を眺める。
俺は美由紀。
君にとうとう二年間の間に、想いを伝えることは出来なかった。
そう思ったが、今日やっと俺は勢いでやっと口にした。
なのに、君が─。
気持ちが変わってしまうなんて泣くから。
それでも、俺の気持ちを試すように、
『三年後の夏。気持ちが変わらなかったら
会いに来て。』
なんて言うから。
─俺は君に、必ず会いに行く。
美由紀。
俺の気持ちは変わらない。
君をずっと好きでいるよ。
二年間、君への想いは膨らみ続けた。
きっとこれからも、君を想う気持ちは変わらない。
─だから。待っていて。
三年後。必ず俺は君に会いに行くから。
美由紀からの手紙を大切に引き出しにしまって、俺は椅子から立ち上がり、部屋の窓を開ける。
そこには、春の夜の匂いがした。そして目に入る庭の桜の樹。花が見事に咲き誇り、盛りを過ぎたその花は花びらを風に散らしていた。
─それから。俺のもとには希望していた大学からの合格通知が届いた。
そして俺は。四月に大学生となった。
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