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(18)─始業式─君との日々〈距離〉─
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あれから夜、俺は、お姉さんの部屋に案内する、と言う美由紀の言葉を断って、ダイニングのソファを借り、早めに休んだ(同じ屋根の下に美由紀がいると思うと、緊張してなかなか眠れなかったが。)
楽しそうに話し続ける美由紀に、
「そろそろ、眠くなってきちゃったな…。俺、このソファ、借りていい?」
そう言って。
俺の言葉に美由紀は、どこか残念そうな顔をしながら、
「…うん。わかった。本当に、そのソファで良いの?お姉ちゃんの部屋、片付けてあるのに…。」
と言ったが、俺は
「いいんだ。このソファで邪魔にならないなら。」
と言った。
美由紀は、まだ、二人で話したそうにしていたけれど、俺にだって、理性の限界はある。(しかも、いつの間にか着替えていた、部屋着姿の美由紀は、可愛いかった。)
そして、美由紀は
「うん。じゃあ…。おやすみ。和人くん。」
そう言って、
「おやすみ、美由紀。」
俺が返事をすると、自分の部屋へと戻って行った。
俺はその夜はなかなか寝付かれなかったが、いつの間にか眠りについていて、翌朝、美由紀の声で起こされた。
「和人くん、おはよう。もうそろそろ起きて。朝食出来てるよ。」
俺は、美由紀の声にいっぺんに目が覚める。
テーブルには、美由紀が用意してくれた朝食があった。
バケットにヨーグルト、ジャムにオムレツ、桃まで用意してあった。
「あ…。俺…。なかなか起きなくてごめん。でも。すごいな。俺の家の朝飯と大違いだ。」
俺が美由紀にそう伝えると、美由紀は照れたように
「家もいつもは、こんなには用意しないの。今日は…和人くん食べるかな…って。…アイスコーヒー、飲むよね?あ、座っててね。」
と言って、アイスコーヒーの用意を始めた。
それから、美由紀と朝食を食べながらしばらく話して、俺は美由紀の家を後にした。
帰る時、美由紀は、
「和人くん、楽しかった。ありがとう。また…今度は学校でね。」
と言い、俺が
「いつかまた、一緒にどこか行こう。美由紀さえ良かったら。今回はありがとう。お母さんによろしく伝えて。」
そう言うと嬉しそうにわらっていた。
帰り道、一人歩いて。俺は思った。
俺の中で、美由紀への想いが、どんどん膨らんでいく。
俺は、やっぱり美由紀が好きだった。
好きで好きでどうしようもない程。
伝えられない想いは、これ以上苦しくて…。
美由紀に笑いかけられる程、口をついて出そうになっていた。
『美由紀、君が好きだ。ずっと好きだった。』
『どうして気持ちを受け入れてくれないんだ』
そう、美由紀に言いそうになっていた。
誰よりも、そばにいたい。そう強く思う気持ちに変わりはない。だけど…。
少し、距離を置いた方が良いかもしれない…。
約束は、果たせなくなってしまうな…。
そんなことを、考えながら、歩き続けた。
─夏の名残の太陽が暑かった。
家へ帰ると、母さんがリビングで俺の帰りを待っていたが、俺は一言、
「ただいま。疲れているから、部屋で休む。」
と言って、自分の部屋へ行き、ベッドに寝転んだ。
疲れた…。
もう、何も考えたくない…。
夏の暑さにやられたのか、妙な疲労感に襲われ、俺は瞳を閉じた。
夢を見る。
それは、出会った時の美由紀の姿。
あの時の胸のときめき。
あの時、俺は君に恋をした。
それからは、どんどん惹かれていくばかりで…。
美由紀、もう、そばにいるだけでいいなんて思えないんだよ。
苦しいんだよ─。
目覚めると、俺は泣いていた。
─もう、この恋は終わりにしよう。
誰よりも親しい、幼なじみ。
それでいい。
俺は俺の為に、この恋から自由になろう─。
そんな想いを胸に、俺はベッドから起きあがり、一階のもう家族が揃っているだろうリビングへ降りて行った。
夏休みが終わり、再び学校が始まった。
始業式では、美由紀が貧血を起こし、いつものように、俺が保健室まで連れていく。
ただ違ったのは。
「美由紀、俺、先にクラスに戻るな。」
俺がそう言ったこと。
俺の変化に美由紀は困惑していた。
美由紀は横になっていたベッドから起き、
「あ…。うん。和人くん…。あ、ここまでありがとう。」
淋しそうにそう言う。
そんな美由紀を見るのは切なかったが、振り切るように俺は
「うん。じゃあ。美由紀、後で教室で。」
と言って、その場を後にした。
それからも。
美由紀と距離を置こうと決めた俺は、美由紀に対して、どうしても、今まで通りの接し方が出来なくなってしまった。
自然な距離感が、俺には、まだつかめなかった。
美由紀の望む、幼なじみのような関係というものには、俺はまだ…なれなくて。
恒例だった勉強会も、何かと言い訳を作っては、俺から約束を断り、学校帰りも、西村に誘われたと言って、あまり一緒に帰ることがなくなった。
そんな俺に、西村は一緒に帰る学校帰り、コンビニで買ったペットボトルを飲みながら
「お前と榊、ケンカでもしてんのか?…でも、榊、心配そうにお前見てんし。お前、何か怒ってる?」
と声をかける。
「そんなんじゃねぇよ。美由紀に怒るとかじゃない。」
そう俺がこたえると。
「片思いが辛くなったかぁ?…お前、それでいいの?」
なんて言ってくる。
お前に何がわかるんだよ。
もう、苦しいんだよ。
俺がそんなことを考えながら黙っていると、
「あーあ。榊も、言わないだけでお前のこと絶対好きだと思うのになぁ。」
そんなことを言う。
「もう、いいんだよ。」
俺が、ボソリとそう呟くと。
「良くねぇだろ。榊、ずっと泣きそうな顔してお前みてんぞ。好きだって…言えない何か抱えてる時だってあんだろ。受け止めてやれよ。」
西村は言い、
「まあ、後はお前が答えだすことだけど。…好きなんだろ?諦めんなよ。」
そう呟くと、持っていたペットボトルを飲み干した。
─好き?
美由紀が、俺を?特別な感情で?
好きだけど言えない何か?
俺にはわからない。
─美由紀、わかっていれば。
君の気持ちがわかっていれば。
わかるのは、こんなにも君が好きだっていうことだけ…。
俺の気持ちだけを置き去りにして、季節は秋になっていった。
楽しそうに話し続ける美由紀に、
「そろそろ、眠くなってきちゃったな…。俺、このソファ、借りていい?」
そう言って。
俺の言葉に美由紀は、どこか残念そうな顔をしながら、
「…うん。わかった。本当に、そのソファで良いの?お姉ちゃんの部屋、片付けてあるのに…。」
と言ったが、俺は
「いいんだ。このソファで邪魔にならないなら。」
と言った。
美由紀は、まだ、二人で話したそうにしていたけれど、俺にだって、理性の限界はある。(しかも、いつの間にか着替えていた、部屋着姿の美由紀は、可愛いかった。)
そして、美由紀は
「うん。じゃあ…。おやすみ。和人くん。」
そう言って、
「おやすみ、美由紀。」
俺が返事をすると、自分の部屋へと戻って行った。
俺はその夜はなかなか寝付かれなかったが、いつの間にか眠りについていて、翌朝、美由紀の声で起こされた。
「和人くん、おはよう。もうそろそろ起きて。朝食出来てるよ。」
俺は、美由紀の声にいっぺんに目が覚める。
テーブルには、美由紀が用意してくれた朝食があった。
バケットにヨーグルト、ジャムにオムレツ、桃まで用意してあった。
「あ…。俺…。なかなか起きなくてごめん。でも。すごいな。俺の家の朝飯と大違いだ。」
俺が美由紀にそう伝えると、美由紀は照れたように
「家もいつもは、こんなには用意しないの。今日は…和人くん食べるかな…って。…アイスコーヒー、飲むよね?あ、座っててね。」
と言って、アイスコーヒーの用意を始めた。
それから、美由紀と朝食を食べながらしばらく話して、俺は美由紀の家を後にした。
帰る時、美由紀は、
「和人くん、楽しかった。ありがとう。また…今度は学校でね。」
と言い、俺が
「いつかまた、一緒にどこか行こう。美由紀さえ良かったら。今回はありがとう。お母さんによろしく伝えて。」
そう言うと嬉しそうにわらっていた。
帰り道、一人歩いて。俺は思った。
俺の中で、美由紀への想いが、どんどん膨らんでいく。
俺は、やっぱり美由紀が好きだった。
好きで好きでどうしようもない程。
伝えられない想いは、これ以上苦しくて…。
美由紀に笑いかけられる程、口をついて出そうになっていた。
『美由紀、君が好きだ。ずっと好きだった。』
『どうして気持ちを受け入れてくれないんだ』
そう、美由紀に言いそうになっていた。
誰よりも、そばにいたい。そう強く思う気持ちに変わりはない。だけど…。
少し、距離を置いた方が良いかもしれない…。
約束は、果たせなくなってしまうな…。
そんなことを、考えながら、歩き続けた。
─夏の名残の太陽が暑かった。
家へ帰ると、母さんがリビングで俺の帰りを待っていたが、俺は一言、
「ただいま。疲れているから、部屋で休む。」
と言って、自分の部屋へ行き、ベッドに寝転んだ。
疲れた…。
もう、何も考えたくない…。
夏の暑さにやられたのか、妙な疲労感に襲われ、俺は瞳を閉じた。
夢を見る。
それは、出会った時の美由紀の姿。
あの時の胸のときめき。
あの時、俺は君に恋をした。
それからは、どんどん惹かれていくばかりで…。
美由紀、もう、そばにいるだけでいいなんて思えないんだよ。
苦しいんだよ─。
目覚めると、俺は泣いていた。
─もう、この恋は終わりにしよう。
誰よりも親しい、幼なじみ。
それでいい。
俺は俺の為に、この恋から自由になろう─。
そんな想いを胸に、俺はベッドから起きあがり、一階のもう家族が揃っているだろうリビングへ降りて行った。
夏休みが終わり、再び学校が始まった。
始業式では、美由紀が貧血を起こし、いつものように、俺が保健室まで連れていく。
ただ違ったのは。
「美由紀、俺、先にクラスに戻るな。」
俺がそう言ったこと。
俺の変化に美由紀は困惑していた。
美由紀は横になっていたベッドから起き、
「あ…。うん。和人くん…。あ、ここまでありがとう。」
淋しそうにそう言う。
そんな美由紀を見るのは切なかったが、振り切るように俺は
「うん。じゃあ。美由紀、後で教室で。」
と言って、その場を後にした。
それからも。
美由紀と距離を置こうと決めた俺は、美由紀に対して、どうしても、今まで通りの接し方が出来なくなってしまった。
自然な距離感が、俺には、まだつかめなかった。
美由紀の望む、幼なじみのような関係というものには、俺はまだ…なれなくて。
恒例だった勉強会も、何かと言い訳を作っては、俺から約束を断り、学校帰りも、西村に誘われたと言って、あまり一緒に帰ることがなくなった。
そんな俺に、西村は一緒に帰る学校帰り、コンビニで買ったペットボトルを飲みながら
「お前と榊、ケンカでもしてんのか?…でも、榊、心配そうにお前見てんし。お前、何か怒ってる?」
と声をかける。
「そんなんじゃねぇよ。美由紀に怒るとかじゃない。」
そう俺がこたえると。
「片思いが辛くなったかぁ?…お前、それでいいの?」
なんて言ってくる。
お前に何がわかるんだよ。
もう、苦しいんだよ。
俺がそんなことを考えながら黙っていると、
「あーあ。榊も、言わないだけでお前のこと絶対好きだと思うのになぁ。」
そんなことを言う。
「もう、いいんだよ。」
俺が、ボソリとそう呟くと。
「良くねぇだろ。榊、ずっと泣きそうな顔してお前みてんぞ。好きだって…言えない何か抱えてる時だってあんだろ。受け止めてやれよ。」
西村は言い、
「まあ、後はお前が答えだすことだけど。…好きなんだろ?諦めんなよ。」
そう呟くと、持っていたペットボトルを飲み干した。
─好き?
美由紀が、俺を?特別な感情で?
好きだけど言えない何か?
俺にはわからない。
─美由紀、わかっていれば。
君の気持ちがわかっていれば。
わかるのは、こんなにも君が好きだっていうことだけ…。
俺の気持ちだけを置き去りにして、季節は秋になっていった。
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