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(16)─夏休み─君との日々〈外泊①〉─
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花火大会は盛り上がった。
俺の隣で美由紀は、すっかり花火に見入り、時折歓声を上げていた。
俺は、そんな美由紀を見つめていた。
色々思うことはあるけど、こんなに喜んでいる美由紀といられるなら、一緒に来て良かった…。
そんなことを思いながら。
そして花火大会が終わった。
美由紀は、満足そうに言う。
「…すごく綺麗だったね。和人くん。」
「そうだね。最後のなんて、特に。」
「うんっ。最後の花火、特に綺麗だった。
…和人くん。今日は、連れて来てくれてありがとう。」
「…何。急に。俺も楽しかったよ。ありがとう。そろそろ帰ろうか。」
「…うん。」
美由紀は、名残惜しそうに振り返ると、俺と一緒に歩きだした。
俺達は、辺りの人混みに流されながら、バス待ちの長い列にならんだ。
その中でも俺は、美由紀を人混みから守ろうと必死だったけれど。
そんな俺に、何だかさっきから、携帯で誰かと話していたらしかった美由紀が、おずおずと話しかける。
「あのね、さっきお母さんから電話があって…。和人くん…。今日、家に泊まらない?」
突然の美由紀の言葉に俺が驚いていると、
俺のその表情を読んだのか、美由紀は
「あっ!違うよっ?!そうじゃなくてっ!」
そう言ったが、その顔は真っ赤だった。
そして美由紀は続けた。
「お母さんが、バスが着いたらに車で駅まで迎えに行ってあげるから…和人くんも大変だから泊まってもらえばって。今…お姉ちゃんの部屋、片付けてあるしって…言って。」
─確かに、これからバスで美由紀の最寄り駅まで行き、それからまた、電車で俺の最寄り駅まで。そしてまた、そこから歩いて家まで…。
という道のりは、今の俺には正直辛く、遠く思えた。
何より、美由紀の家に(お母さんがいらしても)泊まる、というのは、魅力的だった。
俺は、もちろん、その美由紀のお母さんの提案にのらせてもらうことにした。
「美由紀、お願いしてもいいかな?」
美由紀は、嬉しそうに言った。
「もちろん。お母さんも喜ぶと思うの。」
そうして美由紀は携帯を取り出すと、お母さんに連絡を取ったようだった。
「お母さん、喜んでた。それで、バスが着く頃、迎えに行くって。あ、和人くん、そろそろバスが来ちゃう。」
そうして俺達はバスに乗り込んだ。
バスの窓の外、流れて行く景色を、二人で見ていた。
伝えられない想いなのに、美由紀…。
どうして、俺は…。こんなにも君が好きなんだろう…。
そんなことを考えて、つい黙りこんでいた俺を、美由紀が不思議そうな瞳で見上げ、
「和人くん?」
なんて、そう呼ぶから。
つい、俺は。
美由紀、君の気持ちに期待したくなるんだ。
美由紀、君も俺と同じように…俺を想ってくれているんじゃないかって─。
そして、いつかは、俺の気持ちを受け入れてくれるんじゃないかって─。
─それは、幼なじみを望むような、気持ちじゃなくて─。
俺は、思いを振り払うように、頭をふると美由紀に笑いかけた。
「ごめん。つい外の景色に夢中になっちゃって。それで、どうしたの?美由紀?」
「ううん。さっきから、和人くん…黙ってたから、どうしたのかなって。そうならいいの。」
「そっか。ごめん。…もうすぐ着くね。」
「あ…うん。もう少しだね。お母さん、もう着いてるかなぁ…。」
俺達がそんな話をしているうちに、バスは駅に着いた。
もう、すっかり夜となり、駅前はネオンと夜独特の賑やかさに満ちていた。
「何だか、夜の駅前は賑やかだね…。」
「ちょっと怖いみたい…。早くお母さん、迎えに来てくれないかな…。」
「ちゃんと、俺がいるから。」
「…うん。ありがとう、和人くん。」
それでも美由紀は、どこか不安そうな顔をしていた。
大丈夫。美由紀。
どんなことをしたって君を守るから。
そして。この時、思った。
美由紀、君がそんな顔をしなくて良いくらいに、強い男に、必ずなるから。
今は力不足かもしれないけど。
だからそんなに、不安そうな顔しないで…。
俺が、願うようにそう思っていた、その時。
美由紀と俺の横の道路脇に一台の車がとまり、クラクションが鳴らされた。
そして、運転手側の窓が開き、
「美由紀!お待たせっ!」
と声をかけられた。
美由紀は、その車に駆け寄ると、後部座席のドアを開けながら
「お母さん、遅いよぉ!夜の駅前、怖いんだもん。あ…!…あのね、こちら、話してた和人くん。」
親しげな、甘えるような声で話す。
そして、美由紀にお母さんと呼ばれた女性は。
「こんばんは。和人くん。美由紀の母です。とりあえず、乗って?話は車の中で。」
と言った。
俺は、慌てて車に乗り込み、美由紀の隣に座りながら
「こんばんは。喜多見和人です。いつも美由紀さんと仲良くさせてもらってます。…それから…。今日はお世話になりますっ。」
と言うのが精一杯だった。
そんな俺に、美由紀のお母さんは
「仲良くしてもらってるのは、美由紀よねぇ。和人くんのおかげで、勉強もだいぶ頑張れて。行きたい学校に行けそうなんだから。今日は楽しんでね。」
と言ってわらった。
「いえ、そんなっ。俺なんて。」
「いいの。いいの。これからも、美由紀をよろしくね。」
そう言って楽しそうに笑うお母さんを、美由紀はどこか恥ずかしそうに、楽しそうに見ていた。
俺は、そんな幸せそうな美由紀を見ているのが、嬉しくて仕方なかった。
窓の外、繁華街のネオンか遠ざかっていく。
俺の胸は、これから美由紀の家に泊まりに行くという期待で一杯だった。
いつかは離れてしまう美由紀のことを、今は少しでも知りたかった。
今は、他の誰よりも君のそばにいたかったんだ。
俺の隣で美由紀は、すっかり花火に見入り、時折歓声を上げていた。
俺は、そんな美由紀を見つめていた。
色々思うことはあるけど、こんなに喜んでいる美由紀といられるなら、一緒に来て良かった…。
そんなことを思いながら。
そして花火大会が終わった。
美由紀は、満足そうに言う。
「…すごく綺麗だったね。和人くん。」
「そうだね。最後のなんて、特に。」
「うんっ。最後の花火、特に綺麗だった。
…和人くん。今日は、連れて来てくれてありがとう。」
「…何。急に。俺も楽しかったよ。ありがとう。そろそろ帰ろうか。」
「…うん。」
美由紀は、名残惜しそうに振り返ると、俺と一緒に歩きだした。
俺達は、辺りの人混みに流されながら、バス待ちの長い列にならんだ。
その中でも俺は、美由紀を人混みから守ろうと必死だったけれど。
そんな俺に、何だかさっきから、携帯で誰かと話していたらしかった美由紀が、おずおずと話しかける。
「あのね、さっきお母さんから電話があって…。和人くん…。今日、家に泊まらない?」
突然の美由紀の言葉に俺が驚いていると、
俺のその表情を読んだのか、美由紀は
「あっ!違うよっ?!そうじゃなくてっ!」
そう言ったが、その顔は真っ赤だった。
そして美由紀は続けた。
「お母さんが、バスが着いたらに車で駅まで迎えに行ってあげるから…和人くんも大変だから泊まってもらえばって。今…お姉ちゃんの部屋、片付けてあるしって…言って。」
─確かに、これからバスで美由紀の最寄り駅まで行き、それからまた、電車で俺の最寄り駅まで。そしてまた、そこから歩いて家まで…。
という道のりは、今の俺には正直辛く、遠く思えた。
何より、美由紀の家に(お母さんがいらしても)泊まる、というのは、魅力的だった。
俺は、もちろん、その美由紀のお母さんの提案にのらせてもらうことにした。
「美由紀、お願いしてもいいかな?」
美由紀は、嬉しそうに言った。
「もちろん。お母さんも喜ぶと思うの。」
そうして美由紀は携帯を取り出すと、お母さんに連絡を取ったようだった。
「お母さん、喜んでた。それで、バスが着く頃、迎えに行くって。あ、和人くん、そろそろバスが来ちゃう。」
そうして俺達はバスに乗り込んだ。
バスの窓の外、流れて行く景色を、二人で見ていた。
伝えられない想いなのに、美由紀…。
どうして、俺は…。こんなにも君が好きなんだろう…。
そんなことを考えて、つい黙りこんでいた俺を、美由紀が不思議そうな瞳で見上げ、
「和人くん?」
なんて、そう呼ぶから。
つい、俺は。
美由紀、君の気持ちに期待したくなるんだ。
美由紀、君も俺と同じように…俺を想ってくれているんじゃないかって─。
そして、いつかは、俺の気持ちを受け入れてくれるんじゃないかって─。
─それは、幼なじみを望むような、気持ちじゃなくて─。
俺は、思いを振り払うように、頭をふると美由紀に笑いかけた。
「ごめん。つい外の景色に夢中になっちゃって。それで、どうしたの?美由紀?」
「ううん。さっきから、和人くん…黙ってたから、どうしたのかなって。そうならいいの。」
「そっか。ごめん。…もうすぐ着くね。」
「あ…うん。もう少しだね。お母さん、もう着いてるかなぁ…。」
俺達がそんな話をしているうちに、バスは駅に着いた。
もう、すっかり夜となり、駅前はネオンと夜独特の賑やかさに満ちていた。
「何だか、夜の駅前は賑やかだね…。」
「ちょっと怖いみたい…。早くお母さん、迎えに来てくれないかな…。」
「ちゃんと、俺がいるから。」
「…うん。ありがとう、和人くん。」
それでも美由紀は、どこか不安そうな顔をしていた。
大丈夫。美由紀。
どんなことをしたって君を守るから。
そして。この時、思った。
美由紀、君がそんな顔をしなくて良いくらいに、強い男に、必ずなるから。
今は力不足かもしれないけど。
だからそんなに、不安そうな顔しないで…。
俺が、願うようにそう思っていた、その時。
美由紀と俺の横の道路脇に一台の車がとまり、クラクションが鳴らされた。
そして、運転手側の窓が開き、
「美由紀!お待たせっ!」
と声をかけられた。
美由紀は、その車に駆け寄ると、後部座席のドアを開けながら
「お母さん、遅いよぉ!夜の駅前、怖いんだもん。あ…!…あのね、こちら、話してた和人くん。」
親しげな、甘えるような声で話す。
そして、美由紀にお母さんと呼ばれた女性は。
「こんばんは。和人くん。美由紀の母です。とりあえず、乗って?話は車の中で。」
と言った。
俺は、慌てて車に乗り込み、美由紀の隣に座りながら
「こんばんは。喜多見和人です。いつも美由紀さんと仲良くさせてもらってます。…それから…。今日はお世話になりますっ。」
と言うのが精一杯だった。
そんな俺に、美由紀のお母さんは
「仲良くしてもらってるのは、美由紀よねぇ。和人くんのおかげで、勉強もだいぶ頑張れて。行きたい学校に行けそうなんだから。今日は楽しんでね。」
と言ってわらった。
「いえ、そんなっ。俺なんて。」
「いいの。いいの。これからも、美由紀をよろしくね。」
そう言って楽しそうに笑うお母さんを、美由紀はどこか恥ずかしそうに、楽しそうに見ていた。
俺は、そんな幸せそうな美由紀を見ているのが、嬉しくて仕方なかった。
窓の外、繁華街のネオンか遠ざかっていく。
俺の胸は、これから美由紀の家に泊まりに行くという期待で一杯だった。
いつかは離れてしまう美由紀のことを、今は少しでも知りたかった。
今は、他の誰よりも君のそばにいたかったんだ。
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