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(11)─放課後─君との日々〈幼馴染み〉─
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体育準備室─。
佐藤彩香が、激昂して美由紀に向かって手を振り上げた─その時だった。
「佐藤…。…彩香。彩香!!やめろ!!」
そう言って、橘が、その場に現れた。
橘の声に、その場の皆が驚き、そして、その時一瞬怯んだ佐藤の手を俺が捉える。
「やめてっ!喜多見っ!放してっ!放してよっ!」
佐藤が俺に捉えられた右手首と身体全体で抵抗する。
俺は、
美由紀を殴ろうとしていたくせに─。
放したらまた─。
そう思い、放すのを考えあぐねていたが、それを見て美由紀は─。
「…和人くん…。もう大丈夫だから…。」
そして。
「…彩香を。…もう放してやってくれ。」
そう、橘は言った。
「…俺が悪いんだ。こいつに…振られた話なんてしたから。」
橘は続けたが。
「…どうしてっ?!…俊輔は悪くない!悪いのはこの子でしょう?!」
そう俺の手から放れ、橘に肩を抱かれ、佐藤は、涙声で訴える。
「喜多見とも仲良くしててっ、でも、付き合ってないって。何なのっ?!あげく、俊輔に告白されて、俊輔の為じゃないのに泣くのって、あんまりじゃないっ!馬鹿にしてるわよっ。」
「そんな…。…私…。」
美由紀の肩は震えてる。
見ると美由紀の瞳からは、今にも涙が零れそうだった。
それを今、美由紀は必死で堪えていた。
俺はそんな美由紀の肩を抱いて、
「美由紀のせいじゃないだろ─。」
「っ!どうしてよっ?!」
橘に肩を抱かれ泣きながら、佐藤は、俺を睨み付ける。
「…お前が泣くほど悔しいのは、橘が自分意外に告白したことだろ─。」
俺がそう言うと、佐藤は、見る間に真っ赤になっていった。
誰の目にも明らかな気持ちを、いざ、橘本人の目の前で告げられたことが恥ずかしいのか、悔しいのか─。
「─なっ。何言ってるのよ。私はそんな─。」
佐藤は言ったが。
その時、橘は佐藤に言った。
「─彩香。彩香、ごめん。俺…。お前の気持ち、知らないふりしてた。知らないふりして…、美由紀のこと相談とかして…。最低だよな。…今までごめん。」
「─もう、やめてよっ!わかってたわよっ!俊輔が…私のことなんて、何とも思ってないのなんてっ!」
佐藤は泣きじゃくった。
「彩香…。彩香、もうわかったから─。泣かないでくれ。」
橘は切なそうにそう言って
「お前に泣かれると、昔から…俺、弱いんだよ。これからは、お前の気持ち、ちゃんと考えるから。」
「…っく。…っ。」
ひとしきり泣いたあと、佐藤は橘に背中をさすられながら。
「…俊輔…。…もういい。…もういいよ。」
ようやく落ち着いたのか、そして小さな声で美由紀に
「…榊さん、ごめん…。」
橘は、そんな佐藤に
「…もう行こう…。一緒に帰ろう。俺、今日、部活休むって言ってあるから。…これから…部活帰り、一緒に帰ろう。」
「…俊輔。」
そして橘は佐藤を連れてその場をあとにしようとした、その時に、俺達を─美由紀を振り返り。
「彩香が…佐藤がごめんな。俺のせいで迷惑かけてごめんな。もう…大丈夫だから。」
俺は橘に思わず声をかける。
「お前と佐藤、どういう関係なんだよ?」
橘は、静かに─。
「幼馴染みなんだ。だから。彩香のことも、大事なんだよ。…泣かれると辛い。」
そう言って体育準備室を出て行った、橘と佐藤。そしてその後を追いかけるように、ことの成り行きを見ていた佐藤の友人達が出て行った。
幼馴染み─。
俺は思わず佐藤の気持ちを考えた。
美由紀にあんなことした奴ではあったけど、好きな人をただ見ているだけというのは─。好きな人に好きな人が出来てもただ見ているだけというのは─。辛いと思った。
でも、橘は自分の気持ちより、佐藤を選んだ。
それは、その存在の大きさによって。
美由紀と俺は─。
どうなんだろう。
俺も、佐藤みたいになるんだろうか。
嫉妬に狂うんだろうか。
その時、美由紀は、俺を選んでくれるんだろうか。
みっともなく泣きわめく位いくらでも出来るけど。
─俺達は、幼馴染みじゃ…ない。─
その時だった。
まるで俺の気持ちをよんだみたいに、美由紀が言った。
「橘くん…。佐藤さんがすごく大切なんだね。」
「…そうだね…。」
俺がうつむき…呟くと、美由紀は少し考え、やがて照れたように
「私にとっての…和人くんみたいだね。」
「…!!」
「和人くんも、橘くんが佐藤さん思うみたいに私を大事にしてくれる?」
「ずっとそう思ってるよ…。」
美由紀は、嬉しそうに、
「ありがとう。…私達。幼馴染みみたいになれたらいいね。」
ずっと、ずっと、誰より美由紀が大事だよ。
どう言ったら、君にこの気持ちが伝わるのかな…。
でも今は。目の前の君が、嬉しそうに微笑んでいるから。
「…俺達も帰ろう?何だか、大変だったな。」
「…うん。でも、大丈夫。和人くん、来てくれてありがとう。」
「西村が教えてくれたんだ…。そういえば美由紀。西村と選択授業、一緒なの?」
「うん。西村くん、ああ見えて成績良いよ。」
「美由紀、西村のこと、どう見てるんだよ─。…」
また、日常に戻り、俺達はその場を離れ、帰り道を歩き始める。
─ 一瞬、夏の暑さを感じさせる、強い風が吹いた。─
佐藤彩香が、激昂して美由紀に向かって手を振り上げた─その時だった。
「佐藤…。…彩香。彩香!!やめろ!!」
そう言って、橘が、その場に現れた。
橘の声に、その場の皆が驚き、そして、その時一瞬怯んだ佐藤の手を俺が捉える。
「やめてっ!喜多見っ!放してっ!放してよっ!」
佐藤が俺に捉えられた右手首と身体全体で抵抗する。
俺は、
美由紀を殴ろうとしていたくせに─。
放したらまた─。
そう思い、放すのを考えあぐねていたが、それを見て美由紀は─。
「…和人くん…。もう大丈夫だから…。」
そして。
「…彩香を。…もう放してやってくれ。」
そう、橘は言った。
「…俺が悪いんだ。こいつに…振られた話なんてしたから。」
橘は続けたが。
「…どうしてっ?!…俊輔は悪くない!悪いのはこの子でしょう?!」
そう俺の手から放れ、橘に肩を抱かれ、佐藤は、涙声で訴える。
「喜多見とも仲良くしててっ、でも、付き合ってないって。何なのっ?!あげく、俊輔に告白されて、俊輔の為じゃないのに泣くのって、あんまりじゃないっ!馬鹿にしてるわよっ。」
「そんな…。…私…。」
美由紀の肩は震えてる。
見ると美由紀の瞳からは、今にも涙が零れそうだった。
それを今、美由紀は必死で堪えていた。
俺はそんな美由紀の肩を抱いて、
「美由紀のせいじゃないだろ─。」
「っ!どうしてよっ?!」
橘に肩を抱かれ泣きながら、佐藤は、俺を睨み付ける。
「…お前が泣くほど悔しいのは、橘が自分意外に告白したことだろ─。」
俺がそう言うと、佐藤は、見る間に真っ赤になっていった。
誰の目にも明らかな気持ちを、いざ、橘本人の目の前で告げられたことが恥ずかしいのか、悔しいのか─。
「─なっ。何言ってるのよ。私はそんな─。」
佐藤は言ったが。
その時、橘は佐藤に言った。
「─彩香。彩香、ごめん。俺…。お前の気持ち、知らないふりしてた。知らないふりして…、美由紀のこと相談とかして…。最低だよな。…今までごめん。」
「─もう、やめてよっ!わかってたわよっ!俊輔が…私のことなんて、何とも思ってないのなんてっ!」
佐藤は泣きじゃくった。
「彩香…。彩香、もうわかったから─。泣かないでくれ。」
橘は切なそうにそう言って
「お前に泣かれると、昔から…俺、弱いんだよ。これからは、お前の気持ち、ちゃんと考えるから。」
「…っく。…っ。」
ひとしきり泣いたあと、佐藤は橘に背中をさすられながら。
「…俊輔…。…もういい。…もういいよ。」
ようやく落ち着いたのか、そして小さな声で美由紀に
「…榊さん、ごめん…。」
橘は、そんな佐藤に
「…もう行こう…。一緒に帰ろう。俺、今日、部活休むって言ってあるから。…これから…部活帰り、一緒に帰ろう。」
「…俊輔。」
そして橘は佐藤を連れてその場をあとにしようとした、その時に、俺達を─美由紀を振り返り。
「彩香が…佐藤がごめんな。俺のせいで迷惑かけてごめんな。もう…大丈夫だから。」
俺は橘に思わず声をかける。
「お前と佐藤、どういう関係なんだよ?」
橘は、静かに─。
「幼馴染みなんだ。だから。彩香のことも、大事なんだよ。…泣かれると辛い。」
そう言って体育準備室を出て行った、橘と佐藤。そしてその後を追いかけるように、ことの成り行きを見ていた佐藤の友人達が出て行った。
幼馴染み─。
俺は思わず佐藤の気持ちを考えた。
美由紀にあんなことした奴ではあったけど、好きな人をただ見ているだけというのは─。好きな人に好きな人が出来てもただ見ているだけというのは─。辛いと思った。
でも、橘は自分の気持ちより、佐藤を選んだ。
それは、その存在の大きさによって。
美由紀と俺は─。
どうなんだろう。
俺も、佐藤みたいになるんだろうか。
嫉妬に狂うんだろうか。
その時、美由紀は、俺を選んでくれるんだろうか。
みっともなく泣きわめく位いくらでも出来るけど。
─俺達は、幼馴染みじゃ…ない。─
その時だった。
まるで俺の気持ちをよんだみたいに、美由紀が言った。
「橘くん…。佐藤さんがすごく大切なんだね。」
「…そうだね…。」
俺がうつむき…呟くと、美由紀は少し考え、やがて照れたように
「私にとっての…和人くんみたいだね。」
「…!!」
「和人くんも、橘くんが佐藤さん思うみたいに私を大事にしてくれる?」
「ずっとそう思ってるよ…。」
美由紀は、嬉しそうに、
「ありがとう。…私達。幼馴染みみたいになれたらいいね。」
ずっと、ずっと、誰より美由紀が大事だよ。
どう言ったら、君にこの気持ちが伝わるのかな…。
でも今は。目の前の君が、嬉しそうに微笑んでいるから。
「…俺達も帰ろう?何だか、大変だったな。」
「…うん。でも、大丈夫。和人くん、来てくれてありがとう。」
「西村が教えてくれたんだ…。そういえば美由紀。西村と選択授業、一緒なの?」
「うん。西村くん、ああ見えて成績良いよ。」
「美由紀、西村のこと、どう見てるんだよ─。…」
また、日常に戻り、俺達はその場を離れ、帰り道を歩き始める。
─ 一瞬、夏の暑さを感じさせる、強い風が吹いた。─
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