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(2)─卒業式─君からの気持ち〈手紙②〉─
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あれから。俺は、内心まだ美由紀との約束に納得出来ていなかった。
勝手に決めて…っ。何でだよ…っ!少しは俺の気持ちを信じてくれてもいいだろ…っ。
そう思わずにはいられなかった。
けれど、大切そうに手紙を渡してきた美由紀を思いだし、美由紀を見送った後、手紙を大事に鞄にしまって、俺は自宅に帰った。
帰り道。舞う桜が綺麗で、綺麗すぎて。
二人で良く見た桜の樹の花びらが舞う、その中に見えなくなっていった美由紀の後ろ姿を思い出して、俺は今にも泣き出しそうな気持ちだった。
どうして、あの時美由紀をひき止めて抱きしめられなかったんだろう。
そう思いながら。
家に帰ると家族は留守で。俺は自分の部屋に入る。
そして、一人。自室で机の椅子にもたれ掛かり、美由紀に渡された手紙を見つめていた。
そしたら俺も少しだけ希望がわいてきて。
ほんと、何が書いてあるんだろう。
引っ越したら携帯は新しくするって言ってたけど…。
案外、新しい番号かも…っ。
あと、三年後の為の住所とか…っ。
何だか期待に溢れ興奮気味な自分から、少し我に返ると俺はちょっと虚しくなった。
そんな訳ない。
美由紀は、俺の気持ちを試したいんだ。
でも、何故?
素直に信じてくれてもいいのに。
これに書いてあるかな…。
俺は、手紙を改めて見つめた。
女の子らしい手紙。
美由紀の好きな向日葵の柄。
夏の美由紀の誕生日に、俺が美由紀に贈ったのも向日葵だったな…。
そんなことを俺が考えながら。
丁寧に扱わなきゃ。
と封を開けるためにハサミを探した。
手紙には、俺の疑問に答えるような美由紀の気持ちが─そして、美由紀の想いが─書いてあった。
──《 喜多見 和人 様 へ 。》──
この気持ちを、伝えるかどうか、ずっと迷っていました。
和人くんも知っていると思うけど、私は春から東京で、和人くんとは、もう離れてしまうから。
和人くんと親しくなれた、この二年間は私にとって、最高の高校生活となりました。
色々楽しかったよ、ありがとう。
和人くんと高校生活の中で恋人同士になれなかったのは、私が、臆病だったからかもしれません。
和人くんは、いつも、気持ちを伝えようとしてくれてたから。
気付かないふりをしようとしてた私を許してくれてありがとう。
本当にごめんなさい。
言い訳にしかならないけど、私の両親は、私が幼い頃に離婚していて、母に、父の浮気についてきかされて育ちました。
だからって、男の人全てがそうじゃないのは頭ではわかるんだけど、やっぱり、好きな人に嫌われたり、裏切られるのは、こわいって思ってしまいます。
それでも。私は…。
長くなりましたね。ごめんなさい。
何が言いたいのかというと。
和人くん、二年間…ずっと好きでした。
二年生のクラスになっての入学式のあの出来事以来ずっと。
それから親しくなって、どんどん好きになって行きました。
和人くん。
あなたが好き。
離れても。ずっとあなたを想ってる。
だから。私を好きでいて。お願いです。
三年後。会えると信じています。
三年後、どうか必ず私に会いに来て。
───《 榊 美由紀 より 》───
手紙には、そんなことが書いてあった。
美由紀からの手紙を読み終わり、
俺は泣いた。
瞳から涙が溢れて止まらなかった。
だけどなんの涙かわからなかった。
美由紀─言ってくれたら良かったのに。
好きな気持ちを表す俺の隣で、こんなことを考えてたなんて。
美由紀─『裏切られるのがこわい』なんて。皆そうなんだよ。だけど人一倍その気持ちが強かったんだな─。だから─。
わかってあげられなくて、ごめん。
俺は、溢れる涙を拭う。
けれど、思わずにはいられなかった。
だけど、もうちょっと俺の気持ちも信じてくれよ…!
こんなに好きなのに…!
あんなに一緒にいたのに…!
そこには静かな、けれど、後から後から湧き出る悔しさがあった。
だからだ。
だから、美由紀は俺の気持ちを試してるんだ。
そして、多分、自分の気持ちも─。
俺は、美由紀の言葉を思い出す。
『三年後の夏。和人くんの気持ちが今と変わらなかったら会いに来て。』
─変わらないよ。美由紀。
俺の気持ちは、変わらない。
《─三年後どうか必ず私に会いに来て─》
三年後。必ず君に会いに行く。
だから、美由紀も。変わらず俺を好きでいて。
「さてっとぉ。」
俺は、一人、自分に声をかけるように言った。
何から始めよう。
三年後に会った君が、俺を更に好きになるくらいになっていたいから。
俺は机から立ち上がり、窓を開ける。
ふいに吹き込んだ風が、庭の桜の樹の花びらを部屋に舞い散らせる。
それは俺に、美由紀との出会いを思い出させた─。
勝手に決めて…っ。何でだよ…っ!少しは俺の気持ちを信じてくれてもいいだろ…っ。
そう思わずにはいられなかった。
けれど、大切そうに手紙を渡してきた美由紀を思いだし、美由紀を見送った後、手紙を大事に鞄にしまって、俺は自宅に帰った。
帰り道。舞う桜が綺麗で、綺麗すぎて。
二人で良く見た桜の樹の花びらが舞う、その中に見えなくなっていった美由紀の後ろ姿を思い出して、俺は今にも泣き出しそうな気持ちだった。
どうして、あの時美由紀をひき止めて抱きしめられなかったんだろう。
そう思いながら。
家に帰ると家族は留守で。俺は自分の部屋に入る。
そして、一人。自室で机の椅子にもたれ掛かり、美由紀に渡された手紙を見つめていた。
そしたら俺も少しだけ希望がわいてきて。
ほんと、何が書いてあるんだろう。
引っ越したら携帯は新しくするって言ってたけど…。
案外、新しい番号かも…っ。
あと、三年後の為の住所とか…っ。
何だか期待に溢れ興奮気味な自分から、少し我に返ると俺はちょっと虚しくなった。
そんな訳ない。
美由紀は、俺の気持ちを試したいんだ。
でも、何故?
素直に信じてくれてもいいのに。
これに書いてあるかな…。
俺は、手紙を改めて見つめた。
女の子らしい手紙。
美由紀の好きな向日葵の柄。
夏の美由紀の誕生日に、俺が美由紀に贈ったのも向日葵だったな…。
そんなことを俺が考えながら。
丁寧に扱わなきゃ。
と封を開けるためにハサミを探した。
手紙には、俺の疑問に答えるような美由紀の気持ちが─そして、美由紀の想いが─書いてあった。
──《 喜多見 和人 様 へ 。》──
この気持ちを、伝えるかどうか、ずっと迷っていました。
和人くんも知っていると思うけど、私は春から東京で、和人くんとは、もう離れてしまうから。
和人くんと親しくなれた、この二年間は私にとって、最高の高校生活となりました。
色々楽しかったよ、ありがとう。
和人くんと高校生活の中で恋人同士になれなかったのは、私が、臆病だったからかもしれません。
和人くんは、いつも、気持ちを伝えようとしてくれてたから。
気付かないふりをしようとしてた私を許してくれてありがとう。
本当にごめんなさい。
言い訳にしかならないけど、私の両親は、私が幼い頃に離婚していて、母に、父の浮気についてきかされて育ちました。
だからって、男の人全てがそうじゃないのは頭ではわかるんだけど、やっぱり、好きな人に嫌われたり、裏切られるのは、こわいって思ってしまいます。
それでも。私は…。
長くなりましたね。ごめんなさい。
何が言いたいのかというと。
和人くん、二年間…ずっと好きでした。
二年生のクラスになっての入学式のあの出来事以来ずっと。
それから親しくなって、どんどん好きになって行きました。
和人くん。
あなたが好き。
離れても。ずっとあなたを想ってる。
だから。私を好きでいて。お願いです。
三年後。会えると信じています。
三年後、どうか必ず私に会いに来て。
───《 榊 美由紀 より 》───
手紙には、そんなことが書いてあった。
美由紀からの手紙を読み終わり、
俺は泣いた。
瞳から涙が溢れて止まらなかった。
だけどなんの涙かわからなかった。
美由紀─言ってくれたら良かったのに。
好きな気持ちを表す俺の隣で、こんなことを考えてたなんて。
美由紀─『裏切られるのがこわい』なんて。皆そうなんだよ。だけど人一倍その気持ちが強かったんだな─。だから─。
わかってあげられなくて、ごめん。
俺は、溢れる涙を拭う。
けれど、思わずにはいられなかった。
だけど、もうちょっと俺の気持ちも信じてくれよ…!
こんなに好きなのに…!
あんなに一緒にいたのに…!
そこには静かな、けれど、後から後から湧き出る悔しさがあった。
だからだ。
だから、美由紀は俺の気持ちを試してるんだ。
そして、多分、自分の気持ちも─。
俺は、美由紀の言葉を思い出す。
『三年後の夏。和人くんの気持ちが今と変わらなかったら会いに来て。』
─変わらないよ。美由紀。
俺の気持ちは、変わらない。
《─三年後どうか必ず私に会いに来て─》
三年後。必ず君に会いに行く。
だから、美由紀も。変わらず俺を好きでいて。
「さてっとぉ。」
俺は、一人、自分に声をかけるように言った。
何から始めよう。
三年後に会った君が、俺を更に好きになるくらいになっていたいから。
俺は机から立ち上がり、窓を開ける。
ふいに吹き込んだ風が、庭の桜の樹の花びらを部屋に舞い散らせる。
それは俺に、美由紀との出会いを思い出させた─。
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