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∞ 森部誠一の述懐 其の一 ∞
しおりを挟む「はぁ。アレン如きが、何うちの団長を語ってるの?片腹痛いよね」
おーーーい。急にどうした兄さん???
「何が如きだ!言っておくが、俺の方が歳上で、騎士としても先輩に当たる!そんな俺に対する態度がそれで良いと思っているのか?!」
「いいんじゃないの?尊敬に値出来る人なら、自然と敬うんだけどね」
「クラ!」
ギャーギャーと言い争いを始めるクラとアレン。
そんな2人を、呆然と見つめるキリアに、隣でニコニコと微笑みながら見ているカトレア。
「あーーの、これは、いつもの事ですか?」
恐る恐る尋ねてみる。
「そうですね。通常の光景です」
クラ兄さんーー!!!お城に来て何してるの?!いや、カトレアとかに対する態度は正解になったのかもしれないけど、大好きな団長さんの事で喧嘩するの止めてーー!?!?
「キリア、カトレア様の専属魔法使いになったとの事だけど」
暫く喧嘩を続けた後、やっと一段落ついたクラ兄さんから、話し掛けられる。
「もし何か困った事があったら、すぐ俺に言うんだよ?カトレア様の専属魔法使いが嫌になったとかなら、すぐに家に帰ってもいいんだからね?」
あ。根本的な部分は変わって無いんだね。でも駄目だよ?王子様の前でそんな事言ったら。
「大丈夫だよクラ兄さん。クラ兄さんも、騎士団の人達と仲良く!仲良くしてね」
念を押して、2回同じ事を言う。大切だからね。
それから暫く騎士団の練習を見学し、また、城の案内に戻る。
余談だが、ラット騎士団長も途中練習に参加し、愛しい妹と弟が見ているとあって、クラとラットのやる気は倍増し、いつも以上に他の騎士達はボコボコにされたらしい。
「後はーーー」
丁寧にお城の中を案内してくれるカトレア。カトレアは、最初から、ずっと、優しい。
クラ兄さんもいて、頼りになるアレンもいて、何とか、お城での生活もやって行けそう。そう、思った矢先だったーーー
「あら、ゴミ屑じゃない」
「!!!」
その声に、体がビクッと反応する。聞き覚えのある声。
ゆっくりと後ろを振り返ると、そこには、聞き覚えのあった声の主がいた。
「……サウィルンさん」
私の元・家族の1人、姉のサウィルン・ラナン。
「あはっ。姉様、だなんて呼ばれなくて良かったー!あんたなんかうちの子じゃないもんね」
それは、こちらも同じ。私の家族は貴女達じゃない。だから、姉だなんて二度と呼びたくない。
「サウィルン。貴女がお城に何の用ですか?」
サッと、私の前に出て、姉から隠してくれるカトレア。アレンも、その隣で、1歩前に出た。そのアレンの表情は険しくて、サウィルンを警戒しているのが伺える。
カトレア、ユーリさんーー元・兄とも面識があったけど、サウィルンさんとも面識があるんですね。
「貴方に会いに来たのよ、ダーリン♡」
ーーーは?ダーリン?王族に向かって??
「サウィルン様!幾ら貴族であろうと、第7王子であるカトレア様に向かって、なんて口の利き方をーー!!」
ほら、アレンさんが1発で激ギレしてるじゃないですか。
「うっさいわねー。いーの、私とカトレアは婚約者同士なんだから♡」
「貴女の婚約者になった覚えは一切有りません。お引き取り下さい」
動揺する前に一瞬でカトレアが否定した。
「やだ。照れてるの?かぁわぁいー♡」
……元とは言え、実の姉の阿呆さ加減に頭が痛くなりますね。大丈夫?王族相手に、虚偽の婚約者名乗ってるの?ヤバくない?
「……不思議なのですが、この前から、どういった心境の変化なのですか?留学先で一緒だった時には、そのような態度では無かったですよね?それどころか、ニケが命を狙ってるから、精々怯えて過ごせば?と、笑いながら言ってきたじゃ有りませんか」
サウィルンさんとはどこの知り合いなのかと思えば、留学先の学校?あの飛び級したやつの?最初に、カトレアが私達に依頼したーーー。
そう言えば、私の事をニケさん(阿呆テスト男)に話したのは、サウィルンでしたね。成程。皆さん、同じクラスメイトだったんですね。
「やだーそんな過去の事!あれは、命が狙われてるから気を付けて!って意味だったの♡そのお陰で、命が助かったでしょ?」
よく言いますね。カトレア殺人の容疑を、私に被せるためにニケに助言までしといて。
「僕の命が助かったのは、紅の魔法使いーーキリア達のお陰です」
「!」
「そこのゴミ屑がー?」
不満そうな目を、カトレアの背中に守られている私に向ける。
「兄さんから聞いてたけど、あんたホントに生きてたのね」
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「あはは!あそこで野垂れ死んでくれてれば良かったのに!そしたら、あんたの不細工で辛気臭い顔見なくて済んだんだから!」
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