眠れない夜に

Gardenia

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第3章

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メインの料理も食べ終わり、ダイニングテーブルから窓に向って置かれたソファーに二人は移動していた。

フルーツを使ったデザートとチーズのトレイを残してシェフは1階の店に下がった。

赤ワインを飲み干した後佐々木は「食後酒にするか」と言い、真理亜の返事を待たずにデザートワインを開封している。

沈黙が心地よく、佐々木が回すワインオープナーとコルクの擦れる音を聞きながら、真理亜は自分がもうかなり酔っていることを自覚していた。

「ほら」と佐々木は小さめのワイングラスを真理亜に手渡すと、もう1つを持ったまま真理亜の隣に座った。

二人はしばらく何も言わずにただそうやって座っていた。



「ここは子供の頃住んでいた家があったところなんだ」

佐々木はそう言ってからワインを口に含んだ。

「確かお兄さんがいたよね?」

「あぁ。兄貴は家業を継いでるよ」

「そっちを手伝わなくていいの?」

それには佐々木は答えなかった。

真理亜はワインをゆっくり飲んだ。

「俺は一生この店の切り盛りをやってるというのも有りだ」

「うまくやってるように見えるよ」

「まぁ、嫌いじゃない」

佐々木がワインボトルを取り上げて真理亜のグラスにまた少し注いだ。


「ワインの輸入をしたいんじゃないの?」

「ん~~」

また佐々木は答えなかった。

「急に歯切れが悪くなったわね」

佐々木はどう言うべきなのか迷っているようだ。

「俺、このままでも良いのかなって思うんだよ。

このまま桜羽の運営をして、このビルを管理して。

でも、親父や兄貴たちの会社で一緒に仕事をしたいとも思うんだ」

「もしかして会社に来いって言われたの?」

「いや。呼ばれるかもしれないし、そうじゃなくても俺が行きたいって言えば歓迎だろうな」

そこで言葉を切ってワインを自分のグラスに注ぐ佐々木を見ながら、真理亜は慎重に聞いてみた。

「じゃ、いずれはお父様の会社に入ることを視野に入れているのね」

佐々木はまた一口ワインを飲んでから、「あぁ、まだ先のことだけど、きっとそうなると思う。
でもまだ今はもう少しやりたいことがあるんだ」

真理亜はニヤニヤするのを止められなかった。

「お前にはお見通しだな」

佐々木もニヤリと笑った。

「ワインの輸入を考えてみたい」


「素敵なことだわ」

「俺にはまだ数年自由時間があるとおもう」

「うんうん」

「1~2年でいいんだ。フランスに行って来ようと思ってるんだ」

「へ~~~?」

「最近ずっと考えていたんだけど、今決めたよ」

真理亜はさらにニヤニヤ笑ってワイングラスを佐々木のグラスに当てて、「頑張って」と励ました。


「俺たち、また友達に戻っていいよな?」

「ずっと友達を止めたつもりはないんだけど?」

「じゃ、もう少し飲もう」

シェフが置いていったデザートやチーズを食べながら、二人はさらにグラスを重ねた。




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