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第3章
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次の週末の約束をしないままに佐々木は帰っていった。
食事を誘いに来たのかとも思っていた真理亜は拍子抜けしてしばらく椅子に座っていた。
やはり佐々木は少し怒っているらしい。
彼の立場になって考えてみて真理亜は苦い笑いが出てしまった。
彼の店以外で飲んでトラブルになって連絡もせず外泊したうえに、これからの人生を仕事をするのかしないのか迷う彼女ってどうよ!
佐々木との付き合いはまだ一緒に居るときは楽しいだけの時間を過ごす段階だと思える。
真理亜が結婚しても仕事を続けるのがどうかなんて、そういうことを話せる時期ではないはずだ。
佐々木にしても真理亜が彼に話し難い事柄であったのは理解してると思う。
真理亜がこれからどういう風に生きていくか、それを相談するにはまだ早い関係なのだ。
今日二人の立ち位置を確認してしまったのは気まずいとしか言いようが無い。
真理亜は深いため息を吐いた。
佐々木が決定的なことは言わずに帰ったので、当分様子を見るしかないだろう。
そうは思っても、その日はずっと気分が沈みがちでそのことばかりを繰り返し考えてしまって、気がつけばとっくに陽が沈む時間になったらしく部屋は薄暗くなっていた。
簡単な夕食を終えたあと、TVをつけたがなかなか集中しない。
やはり考えることは佐々木とのことだ。
佐々木亮輔と結婚したらいったいどうなるんだろうか。
その前に、佐々木が真理亜を結婚したい相手と思う時期がくるのだろうか。
佐々木は確か大きな不動産会社の息子のはずだ。
兄が居るので跡取りではないにしても彼の所作や話の断片からしてたぶんセレブと呼ばれるご家庭で、庶民の真理亜とは家柄が合わないと横槍が入るかもしれない。
真理亜の実家は庶民だが安定しており身内にも問題児は見当たらないので、家柄を気にしない家庭なら佐々木と真理亜との結婚話はさほど障害がないように思える。
やはり佐々木の考え次第かと再び思った時、唐突に私の気持ちはどうなんだろうと真理亜は思い至った。
佐々木次第って、それって、私が結婚したがってるみたいだわ。
私は・・・?佐々木亮輔と結婚したいのかしら。
真理亜は「う~~ん」と唸って頭を抱えてしまった。
やがてゆっくりと顔を上げた真理亜の目にオレンジ色の箱が目に入った。
佐々木のフランス土産のオレンジの箱。
中にはピンク色のシルクのスカーフが入っている。
それを思い出したとき、真理亜は佐々木には過去の自分を全部話せないと気がついた。
聞かれなければ話すこともないがたとえ話せといわれてもそれを佐々木に話すことは無いだろうと思う。
佐々木の伴侶として彼の隣に立つのは自分ではないことを思い、真理亜はまた深いため息を吐いた。
食事を誘いに来たのかとも思っていた真理亜は拍子抜けしてしばらく椅子に座っていた。
やはり佐々木は少し怒っているらしい。
彼の立場になって考えてみて真理亜は苦い笑いが出てしまった。
彼の店以外で飲んでトラブルになって連絡もせず外泊したうえに、これからの人生を仕事をするのかしないのか迷う彼女ってどうよ!
佐々木との付き合いはまだ一緒に居るときは楽しいだけの時間を過ごす段階だと思える。
真理亜が結婚しても仕事を続けるのがどうかなんて、そういうことを話せる時期ではないはずだ。
佐々木にしても真理亜が彼に話し難い事柄であったのは理解してると思う。
真理亜がこれからどういう風に生きていくか、それを相談するにはまだ早い関係なのだ。
今日二人の立ち位置を確認してしまったのは気まずいとしか言いようが無い。
真理亜は深いため息を吐いた。
佐々木が決定的なことは言わずに帰ったので、当分様子を見るしかないだろう。
そうは思っても、その日はずっと気分が沈みがちでそのことばかりを繰り返し考えてしまって、気がつけばとっくに陽が沈む時間になったらしく部屋は薄暗くなっていた。
簡単な夕食を終えたあと、TVをつけたがなかなか集中しない。
やはり考えることは佐々木とのことだ。
佐々木亮輔と結婚したらいったいどうなるんだろうか。
その前に、佐々木が真理亜を結婚したい相手と思う時期がくるのだろうか。
佐々木は確か大きな不動産会社の息子のはずだ。
兄が居るので跡取りではないにしても彼の所作や話の断片からしてたぶんセレブと呼ばれるご家庭で、庶民の真理亜とは家柄が合わないと横槍が入るかもしれない。
真理亜の実家は庶民だが安定しており身内にも問題児は見当たらないので、家柄を気にしない家庭なら佐々木と真理亜との結婚話はさほど障害がないように思える。
やはり佐々木の考え次第かと再び思った時、唐突に私の気持ちはどうなんだろうと真理亜は思い至った。
佐々木次第って、それって、私が結婚したがってるみたいだわ。
私は・・・?佐々木亮輔と結婚したいのかしら。
真理亜は「う~~ん」と唸って頭を抱えてしまった。
やがてゆっくりと顔を上げた真理亜の目にオレンジ色の箱が目に入った。
佐々木のフランス土産のオレンジの箱。
中にはピンク色のシルクのスカーフが入っている。
それを思い出したとき、真理亜は佐々木には過去の自分を全部話せないと気がついた。
聞かれなければ話すこともないがたとえ話せといわれてもそれを佐々木に話すことは無いだろうと思う。
佐々木の伴侶として彼の隣に立つのは自分ではないことを思い、真理亜はまた深いため息を吐いた。
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