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第1章
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ゲイバーGenisisを出た真理亜は軽く自己嫌悪に陥っていた。
賢吾の話をちゃんと聞いてあげなかったこと
悪戯心でノアの店に連れていったこと
店員や常連さんとばかり話して賢吾を放置したこと
そして最後に置き去りにしたこと
私ってなんて嫌な女なんだろう。
でも、静かに飲みたいだけだったんだよね。
そう言い訳をした。心の中でだが。
今夜はAngel Eyesのカウンターで譲二のバーテンダーワークを見ながら飲みたかっただけなのだ。
賢吾は先客で、オヒトリサマの真理亜に気を遣って話しかけてくれたのかもしれない。
賢吾の性格ならきっとそうだろう。
でも、その夜真理亜が求めていたのはそういうものではなかった。
賢吾は明るすぎる。
真理亜はため息をひとつ吐いて、仕方が無いときもある。今夜はそういうときなんだ。
そう思うことにして再びAngel Eyesの扉を開けた。
先ほど真理亜が座っていた席には、もう誰かが座っていた。
「ここしかないけど、いいかな?」
譲二が申し訳なさそうに言いながらコースターを置く。
先ほど田所が座っていた場所の隣だ。
その田所の姿はなく、マティーニグラスだけ置かれている。
「いえ、金曜日だもの。1席あっただけでも嬉しいです」
その言葉に譲二は嬉しそうにシェイカーの準備をした。
「何飲んできたの?」
「テキーラです」
「ほぉ・・それはまた」
「1ショットだけなので・・・」
「賢吾はどうしてる?」
「ノアさんが残していけって・・・」
「あははは、気に入られたな?」
「斉藤さんには気の毒なことをしました」
「あいつはノンケだからなぁ」
「斉藤さんがゲイになるとは思いませんが、ノアさんとは話が合うみたいでしたよ?」
「そっか。真理亜ちゃんがそう言うならそうなんでしょう」
「何かすっきりするのもを作ってください」
「ふむ。姫にはすっきりと言うより、辛口の大人のギムレットをお作りしましょう」
譲二は真剣な顔をしてジンを選び、やがて静かにシェイカーを振り始めた。
柔らかく白濁した液体を脚のついた小さめのカクテルグラスに注ぎ終わると、
譲二は「どうぞ」と言って真理亜のほうに押しやった。
初めての匂いにおいしそうな予感を感じながら、ノアはカクテルグラスの細い足を3本の指で支えて口に運んだ。
ギムレットを口に吸い込む直前に甘さのないライムの香りが鼻腔に入り込み、
爽やかな舌触りと共にジンの香りが入り混じって、なんともいえない味を作り出している。
「これがギムレットですか」
一口目を喉に流して、真理亜は呟いてしまった。
「どうかな?飲める?」
譲二が心配そうに聞いた。
「はい。これは美味しいですね。繊細ですが強さがあるし。
最後にほんのりした甘さもあって飲みやすいです」
「それにしても強いお酒も飲めるようになりましたね」と譲二は目を細めて真理亜を見た。
「はい、譲二先生のおかげです」
ふたりで笑ったあと、譲二は他の注文をつくるために手早くシェイカーを洗った。
次々にカクテルを作る譲二をぼんやり見ながら、真理亜は二口目を飲む。
真理亜が次にグラスを口に運んでいる時、ふんわりと暖かく少しだけスパイシーな空気を感じたと思ったら、隣の客が戻ってきたようだ。
真理亜は視線を向けることもなく、三口目のギムレットを喉に流し込んだ。
「俺にも同じものくれ。ギムレットだろ?シロップ無しで」と隣に戻った客の声がした。
(あ、田所課長だ・・・。まだ居たんだ)
真理亜はグラスに手を伸ばした。
「真理亜ちゃん、そんなに早いペースは駄目だ。こういう強いお酒はもう少しゆっくり飲むんだ」
譲二からそういう声がかかった。
「はい」
真理亜は譲二を見ずに、素直に手を引っ込めた。
「一人で戻ってきたのか?」
田所の声が聞こえた。
(え?私に話しかけてるんだよね?)
真理亜はゆっくりと田所のほうに顔を向けた。
「はい」
田所にあれこれ言う必要は無い。真理亜は簡潔に答えた。
田所の前にも同じグラスでギムレットが置かれた。
それからは話しかけられることもなく、真理亜はしばらくぼんやりとしながら無言を楽しんでいた。
やがてギムレットを飲み干して、譲二に声をかける。
「譲二さん、お会計をお願いします」
「おっ、今日はもう帰る?」
「はい。今、とってもよい気分なのでこのまま寄り道せずに帰ります」
「今日は賢吾のことありがとな」
「いえ。今度来られたら謝っておいてください」
「いいよ、あいつはそれだけのことをしたんだから」
「今度はいつもの時間に来ますね」
「モルトの良いのが入ったんだよ。飲みにおいで?」
「はい」
真理亜は嬉しそうに頷いて、バッグに手を伸ばした。
「こっちも会計してくれ」
隣の田所が譲二に声をかけた。
譲二が頷いて伝票にとりかかると、田所が真理亜のほうに身体を向けたのがわかった。
真理亜がちょっと緊張していると、「送っていくよ」という田所の声が聞こえた。
「え?」
真理亜が反射的に田所を見ると、「タクシーで帰るんだろ?通りまで一緒に行く」
家まで送るという意味ではなく、タクシーを捕まえてくれるということだとわかったのは3秒後だ。
「あ、大丈夫です」とっさに断ると、田所の眉間に皺が寄った。
譲二が伝票を持って戻ってきた。
「この時間はこの界隈は混むんだ」真理亜にそう言ったあと、田所は譲二を見て、
「お嬢ちゃんが一人じゃ危ないよな?」そう言うのが聞こえた。
真理亜はそれを聞いたとたんに、かーっと頭が熱くなった。
「お嬢ちゃんじゃないですよ」
そう言いながら、財布を取り出しお金を出す。
「おいおい、お酒の味もまだよくわからない若い女性が金曜のこの時間に・・・」
田所がそこまで言った時、譲二のくすくす笑いが聞こえた。
「田所、いくらなんでもお嬢ちゃん扱いはないだろう」
「だって、まだ大学出たての22か3くらいだろ?子供だろ」
譲二の笑いが大きくなった。
何か場違いなことを言ったのかと田所は口を噤んで隣の真理亜を見ると、
さっきは怒ってたはずなのに、顔を赤くして苦笑している。
「お前さ、賢吾の話聞いてなかっただろう。真理亜ちゃんは賢吾と同期だぞ」
「あ、いや・・・。そうか。それでも25~6だろ?」
譲二はしょうがないヤツだなとイタイ子を見るように田所を見た。
「女性の歳の話で数字言うやつがあるか。賢吾も真理亜ちゃんも25~6では断じてないよ」
「そうなのか?」
「そうですよ」今度は真理亜も声を出した。
「これでも30目前の女ですよ?大丈夫ですから」と田所の目をみてしっかりとお断りをした。
「真理亜ちゃん、こんな無粋な男だけど僕の幼馴染だから許してやって?」とお釣りを渡しながらとりなした。
「はい」と答える真理亜に、さらに顔を寄せて小さな声で続ける。
「確かにこの時間は外は人通り多いし、盛り上がる時間がだからなぁ。
タクシーも捕まりにくいかもしれない。
こういう時は男を利用しな?
ね、お詫びとして田所にタクシー捕まえさせなさい」
譲二は早口でそう言うと、カクテル作りに戻っていった。
「ということで、そこまでお送りさせていただけますか?」
田所は礼儀正しく真理亜の椅子を引きながら許可を求めた。
そういうエスコートをしてもらったことがない真理亜はちょっとドキドキしながら、
「はい。ではよろしくお願いします」と答えると田所は口の端をちょっと上げた。
(笑ったんだよね?田所課長)
わかり難い表情に戸惑いながら、田所が抑えている扉をくぐった。
確かに外の通りは混んでいた。
終電の時間も近いので今がピークの時間帯だろう。
「家はどっち?」と田所が聞くので、「あっちです」と方法を指で示す。
一瞬田所は言葉に詰まって、「そうか、あっちか・・・」と呟いた。
「では、向こう側で捕まえよう」と歩き始めた田所の後ろを、急ぎ足で真理亜はついていった。
タクシーはたくさん見るが空車は少ない。
それでも割りと早くに1台のタクシーが止まってくれた。
自動で開いたドアを田所が押さえるようにして、真理亜が乗り込むのを促す。
「ありがとうございました」と軽く頭を下げて座席に座った真理亜に、
「さっきはすまなかったな」と田所がドアを押さえたまま言った。
「いえ、いいですよ。もう気にしてませんから」
「本当に?」
「はい、謝罪は受け入れました」と言って、ニッコリと微笑んだ。
「あはは、これは1本とられたな。じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
タクシーのドアが閉まってから、真理亜は行き先を告げた。
そして真理亜はタクシーの背もたれに背中を預けながら軽く目を瞑った。
今夜はいろんな意味で落ち着かない夜だったと思い返していた。
最後に田所課長、笑ったよね・・・と驚いていた。
田所は真理亜の乗ったタクシーを見ながら、警戒心の強い子だと思っていた。
まず、賢吾の「ここにはよく来るの?」という質問に、否定はしないもののよく来るとも言わなかったことに興味を持った。
賢吾をゲイバーに連れて行って、そして一人で戻ってきた。
譲二が機嫌よくギムレットを作っていた。
そして、隣に居ながら話しかけてこなかった。
田所に話しかけない女はめずらしい。
タクシーを捕まえるにも、住所を言わない。
最後に、謝罪は受け入れた・・か。
ああいう子が同じ会社に居たんだなと改めて思うと、不思議な気分になった。
しばらく同じ場所に立っていたことに気がついた後、自分も帰るかとタクシーに手を揚げた。
賢吾の話をちゃんと聞いてあげなかったこと
悪戯心でノアの店に連れていったこと
店員や常連さんとばかり話して賢吾を放置したこと
そして最後に置き去りにしたこと
私ってなんて嫌な女なんだろう。
でも、静かに飲みたいだけだったんだよね。
そう言い訳をした。心の中でだが。
今夜はAngel Eyesのカウンターで譲二のバーテンダーワークを見ながら飲みたかっただけなのだ。
賢吾は先客で、オヒトリサマの真理亜に気を遣って話しかけてくれたのかもしれない。
賢吾の性格ならきっとそうだろう。
でも、その夜真理亜が求めていたのはそういうものではなかった。
賢吾は明るすぎる。
真理亜はため息をひとつ吐いて、仕方が無いときもある。今夜はそういうときなんだ。
そう思うことにして再びAngel Eyesの扉を開けた。
先ほど真理亜が座っていた席には、もう誰かが座っていた。
「ここしかないけど、いいかな?」
譲二が申し訳なさそうに言いながらコースターを置く。
先ほど田所が座っていた場所の隣だ。
その田所の姿はなく、マティーニグラスだけ置かれている。
「いえ、金曜日だもの。1席あっただけでも嬉しいです」
その言葉に譲二は嬉しそうにシェイカーの準備をした。
「何飲んできたの?」
「テキーラです」
「ほぉ・・それはまた」
「1ショットだけなので・・・」
「賢吾はどうしてる?」
「ノアさんが残していけって・・・」
「あははは、気に入られたな?」
「斉藤さんには気の毒なことをしました」
「あいつはノンケだからなぁ」
「斉藤さんがゲイになるとは思いませんが、ノアさんとは話が合うみたいでしたよ?」
「そっか。真理亜ちゃんがそう言うならそうなんでしょう」
「何かすっきりするのもを作ってください」
「ふむ。姫にはすっきりと言うより、辛口の大人のギムレットをお作りしましょう」
譲二は真剣な顔をしてジンを選び、やがて静かにシェイカーを振り始めた。
柔らかく白濁した液体を脚のついた小さめのカクテルグラスに注ぎ終わると、
譲二は「どうぞ」と言って真理亜のほうに押しやった。
初めての匂いにおいしそうな予感を感じながら、ノアはカクテルグラスの細い足を3本の指で支えて口に運んだ。
ギムレットを口に吸い込む直前に甘さのないライムの香りが鼻腔に入り込み、
爽やかな舌触りと共にジンの香りが入り混じって、なんともいえない味を作り出している。
「これがギムレットですか」
一口目を喉に流して、真理亜は呟いてしまった。
「どうかな?飲める?」
譲二が心配そうに聞いた。
「はい。これは美味しいですね。繊細ですが強さがあるし。
最後にほんのりした甘さもあって飲みやすいです」
「それにしても強いお酒も飲めるようになりましたね」と譲二は目を細めて真理亜を見た。
「はい、譲二先生のおかげです」
ふたりで笑ったあと、譲二は他の注文をつくるために手早くシェイカーを洗った。
次々にカクテルを作る譲二をぼんやり見ながら、真理亜は二口目を飲む。
真理亜が次にグラスを口に運んでいる時、ふんわりと暖かく少しだけスパイシーな空気を感じたと思ったら、隣の客が戻ってきたようだ。
真理亜は視線を向けることもなく、三口目のギムレットを喉に流し込んだ。
「俺にも同じものくれ。ギムレットだろ?シロップ無しで」と隣に戻った客の声がした。
(あ、田所課長だ・・・。まだ居たんだ)
真理亜はグラスに手を伸ばした。
「真理亜ちゃん、そんなに早いペースは駄目だ。こういう強いお酒はもう少しゆっくり飲むんだ」
譲二からそういう声がかかった。
「はい」
真理亜は譲二を見ずに、素直に手を引っ込めた。
「一人で戻ってきたのか?」
田所の声が聞こえた。
(え?私に話しかけてるんだよね?)
真理亜はゆっくりと田所のほうに顔を向けた。
「はい」
田所にあれこれ言う必要は無い。真理亜は簡潔に答えた。
田所の前にも同じグラスでギムレットが置かれた。
それからは話しかけられることもなく、真理亜はしばらくぼんやりとしながら無言を楽しんでいた。
やがてギムレットを飲み干して、譲二に声をかける。
「譲二さん、お会計をお願いします」
「おっ、今日はもう帰る?」
「はい。今、とってもよい気分なのでこのまま寄り道せずに帰ります」
「今日は賢吾のことありがとな」
「いえ。今度来られたら謝っておいてください」
「いいよ、あいつはそれだけのことをしたんだから」
「今度はいつもの時間に来ますね」
「モルトの良いのが入ったんだよ。飲みにおいで?」
「はい」
真理亜は嬉しそうに頷いて、バッグに手を伸ばした。
「こっちも会計してくれ」
隣の田所が譲二に声をかけた。
譲二が頷いて伝票にとりかかると、田所が真理亜のほうに身体を向けたのがわかった。
真理亜がちょっと緊張していると、「送っていくよ」という田所の声が聞こえた。
「え?」
真理亜が反射的に田所を見ると、「タクシーで帰るんだろ?通りまで一緒に行く」
家まで送るという意味ではなく、タクシーを捕まえてくれるということだとわかったのは3秒後だ。
「あ、大丈夫です」とっさに断ると、田所の眉間に皺が寄った。
譲二が伝票を持って戻ってきた。
「この時間はこの界隈は混むんだ」真理亜にそう言ったあと、田所は譲二を見て、
「お嬢ちゃんが一人じゃ危ないよな?」そう言うのが聞こえた。
真理亜はそれを聞いたとたんに、かーっと頭が熱くなった。
「お嬢ちゃんじゃないですよ」
そう言いながら、財布を取り出しお金を出す。
「おいおい、お酒の味もまだよくわからない若い女性が金曜のこの時間に・・・」
田所がそこまで言った時、譲二のくすくす笑いが聞こえた。
「田所、いくらなんでもお嬢ちゃん扱いはないだろう」
「だって、まだ大学出たての22か3くらいだろ?子供だろ」
譲二の笑いが大きくなった。
何か場違いなことを言ったのかと田所は口を噤んで隣の真理亜を見ると、
さっきは怒ってたはずなのに、顔を赤くして苦笑している。
「お前さ、賢吾の話聞いてなかっただろう。真理亜ちゃんは賢吾と同期だぞ」
「あ、いや・・・。そうか。それでも25~6だろ?」
譲二はしょうがないヤツだなとイタイ子を見るように田所を見た。
「女性の歳の話で数字言うやつがあるか。賢吾も真理亜ちゃんも25~6では断じてないよ」
「そうなのか?」
「そうですよ」今度は真理亜も声を出した。
「これでも30目前の女ですよ?大丈夫ですから」と田所の目をみてしっかりとお断りをした。
「真理亜ちゃん、こんな無粋な男だけど僕の幼馴染だから許してやって?」とお釣りを渡しながらとりなした。
「はい」と答える真理亜に、さらに顔を寄せて小さな声で続ける。
「確かにこの時間は外は人通り多いし、盛り上がる時間がだからなぁ。
タクシーも捕まりにくいかもしれない。
こういう時は男を利用しな?
ね、お詫びとして田所にタクシー捕まえさせなさい」
譲二は早口でそう言うと、カクテル作りに戻っていった。
「ということで、そこまでお送りさせていただけますか?」
田所は礼儀正しく真理亜の椅子を引きながら許可を求めた。
そういうエスコートをしてもらったことがない真理亜はちょっとドキドキしながら、
「はい。ではよろしくお願いします」と答えると田所は口の端をちょっと上げた。
(笑ったんだよね?田所課長)
わかり難い表情に戸惑いながら、田所が抑えている扉をくぐった。
確かに外の通りは混んでいた。
終電の時間も近いので今がピークの時間帯だろう。
「家はどっち?」と田所が聞くので、「あっちです」と方法を指で示す。
一瞬田所は言葉に詰まって、「そうか、あっちか・・・」と呟いた。
「では、向こう側で捕まえよう」と歩き始めた田所の後ろを、急ぎ足で真理亜はついていった。
タクシーはたくさん見るが空車は少ない。
それでも割りと早くに1台のタクシーが止まってくれた。
自動で開いたドアを田所が押さえるようにして、真理亜が乗り込むのを促す。
「ありがとうございました」と軽く頭を下げて座席に座った真理亜に、
「さっきはすまなかったな」と田所がドアを押さえたまま言った。
「いえ、いいですよ。もう気にしてませんから」
「本当に?」
「はい、謝罪は受け入れました」と言って、ニッコリと微笑んだ。
「あはは、これは1本とられたな。じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」
タクシーのドアが閉まってから、真理亜は行き先を告げた。
そして真理亜はタクシーの背もたれに背中を預けながら軽く目を瞑った。
今夜はいろんな意味で落ち着かない夜だったと思い返していた。
最後に田所課長、笑ったよね・・・と驚いていた。
田所は真理亜の乗ったタクシーを見ながら、警戒心の強い子だと思っていた。
まず、賢吾の「ここにはよく来るの?」という質問に、否定はしないもののよく来るとも言わなかったことに興味を持った。
賢吾をゲイバーに連れて行って、そして一人で戻ってきた。
譲二が機嫌よくギムレットを作っていた。
そして、隣に居ながら話しかけてこなかった。
田所に話しかけない女はめずらしい。
タクシーを捕まえるにも、住所を言わない。
最後に、謝罪は受け入れた・・か。
ああいう子が同じ会社に居たんだなと改めて思うと、不思議な気分になった。
しばらく同じ場所に立っていたことに気がついた後、自分も帰るかとタクシーに手を揚げた。
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