cmメンタル

れい

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安堵

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3日後 私は退院した。


看護師達に見送られながら 私はまた空を眺めた。


「愛弓、今頃空のどの辺にいるかな。。」


その独り言を聞いたお母さんが 少し悲しそうな顔をしながら あのへんじゃないかな。と指さした。


それは朝になっても消えない白い三日月だった。


「きっと、愛弓ちゃんあの辺からあなたのこと見守ってくれているはずだから。」


ニコッと微笑むお母さんにつられて 私も そうだといいなと言って笑った。


そうこう言ってる間に 車についた。


中ではお父さんが待っていた。


「あなた、夜勤明けで疲れてるのにごめんね。お願いします。」


「あぁ。。ふぁー、眠い。 澪 もう明日から学校にはいけそうか?しっかり勉強頑張らないと成績に響くんじゃないのか?」


お父さんは気難しい表情でボソボソといった。


正直、お父さんのことはあまり好きじゃない。


私が入院している間 一度も見舞いにくることはなかったし、退院したら退院したで これだ。


きっと私のことなんて、心配してないんだ。

聞こえないようにため息をつきながら

「頑張ります。明日から頑張るから今日は休ませて。」


ん と小さく唸って お父さんは車を走らせた。


「澪、お腹空いてない??今日はお父さんが澪の退院祝いに好きなものご馳走してくれるらしいから遠慮なくいってね。」



お父さんは何も言わなかった。

うーんと少し悩んだ。


お肉も食べたいし お魚も捨てがたい。

野菜は。。そんなに好きじゃない。


「野菜以外ならいいよ。なんでもいい、お肉でもお魚でも 2人の好きなとこ選んでよ。」


考えるのが面倒なので投げた。


お母さんが もう とため息をついてお父さんと話し始めた。


興味がない話だから 全く聞こえなかった。


でも時々わずかに お父さんが笑う声が聞こえた。


あのお父さんが めずらしいなと思いつつ私はぼんやりと外の景色を眺めた。


楽しそうに歩く小学生。自転車をこぐ中高生。


下校途中の風景は私に 学校のことを思い出させた。


学校に行ったら またあいつらがいるのかと思うと吐き気がした。


いまは考えるのはよそう。
明日考えて無理なら明日も休めばいい。


そう考えると少し気が楽になった。


いつの間にか目的地に着いたようで ついたぞとお父さんが私に声をかけた。

そこは私がずっと行きたがっていたレストランだった。


「わぁあー!ここずっと行きたかったの!覚えててくれたの?お父さん!」


お父さんは照れ隠しなのか 頭をぼりぼりかきながら、まあそりゃお前のことならお見通しだからなとボソボソといった。


こんなお父さんだけど 少しは私のこと考えてくれてたのかと思うと嬉しかった。


そんな私とお父さんをみて お母さんは微笑みながら 入るわよーと声をかけた。


いらっしゃいませ 3名様ですか? と上品に女性のウエイトレスが声をかけてきた。


お父さんが 3人 喫煙 とボソッと言った。かしこまりました。3名様喫煙席ご案内いたしまーす!と大きな声でウエイトレスが案内をしてくれた。


私たちは席に着き 出されたお冷を飲んでホッと一息ついた。


「それにしても、いいところねー。こんなところあるだなんて、お母さん知らなかったわ。あ、澪 何にする??」


ささっと私に メニュー表を差し出した。

何かの動物の皮でできたようなカバーのメニュー表から ここのお店は高級店なのかなと察した。


案の定 どのメニューもそれなりのお値段だった。


だって、生ハムサラダが1000円だなんて。。他のメニューを見るのがおそろしかった。


うーんうーんと迷ってる私をみて、お父さんはまだか?ときいてきた。


「いくらなんでも、ここは高すぎだよね。ごめんねお父さん、私やすいサラダだけでいいから。。」


そう言いかけるとお父さんは軽く咳をし、ピンポーンとボタンを押した。


「ご注文をお伺いいたします。」

え、ちょっとまだ何も決めてないのに。

「この シェフの気まぐれフルコースを3つ。以上」

「かしこまりました。シェフの気まぐれフルコースを3名様分ですね。ごゆっくりお過ごしくださいませ。失礼いたします。」


深々と頭をさげるウエイトレスが去ったのを確認してからお父さんに問いかけた。


「お父さん、よかったの? あれ、高いやつでしょ?」


お父さんはメガネを拭きながら 私を見やった。


「子供は気にせず、好きなだけ食べたらいいんだ。今日はお前のためにご馳走するって言ったろ。気にせず食べなさい。お前が迷ったときのこと考えてあらかじめ母さんと決めてたものだから 澪にも気に入ってもらえると思って フルコースを注文したんだ。」


メガネを拭きつつ話すお父さんの表情はどこかやわらかかった。


しばらくしてから料理が来た。

それをもくもくと食べ始める私達


に投げかけられる視線がきになった。


あの子は。。


ニコッと笑ったその人は シオンだった。




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