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1日でも早く
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わ、私が日比野くんの憧れって!!
おかしいでしょ!?私よ!?可愛くもなく、地味で雨女とバカにされてひっそりと生息していた私に憧れなんて、この世界の日比野くんは目がおかしいのかもしれない!逆なら有り得るのに!!
この世界の日比野くん、良い人だし、私のことをバカにしない。
1人ぼっちで居場所も無かった私だけど、この国は必要としてくれる。
そう思うと、やる気もでてきた。
「私が……出来ることなら、やってみます」
この国を私が救うんだ!雨女なんだから、私には雨が味方についてるんだから!!
それから食事の時間になり、質素な乾パンみたいなのと四角い固形物が出された。
「この四角いの何?」
「水です。口の中に入れると溶けて体内で1日分の水分が取れるようになっています」
と言う。
凄い。けど、水が無いから仕方ないのか。
1日でも早く役に立ちたい。こんな時だもんね。
「それから朝露で集めた貴重なものもあります。現存する植物が少ないので大切に育てているのですが、やはり雨が降らない今、それらも枯れてきていて、もう本当にギリギリです!」
と日比野くんが言う。
「とりあえず、早く儀式した方がいいよね!?」
「はい。明日には儀式を行う予定です!お願いしますね!警備はもちろん厳重に行います!!」
「わ、わかりました!」
こうなるともう、私が出来るのは祈る事のみ。
「雨森様……。我が国の未来は貴方にかかっています!貴方の国の様に豊かな雨の恵みが訪れると信じてます!!」
と頭を下げる日比野くんに
「ひえっ!私なんかに頭を下げないでくださいいい!」
と言う。
「そちらの世界では、雨森様は不当に扱われることが多かったのですか?」
「ええと、まあ……。その私なんてただの地味な子だし……。と、友達もいなかったというか……」
とボソボソと喋ると日比野くんが
「うっっ!想像したら切なくなります!!なぜ貴方がバカにされなくちゃいけないのでしょう!
こんなお力を持ち、生まれたのに!!
大丈夫!自信を持ってください!!
何ならこちらの世界でずっと暮らすと言うのも……」
「ううん……。で、でも一応家族が心配するかもしれないし……」
と言うと日比野くんは残念そうに
「そうですよね、すみません!
あ、そうだ。こちらの世界でも星が見えますよ!
雨が降らないのでいつも晴れていて煌めいていて!
ああ、でも迂闊に外に出るともしかして暗殺者が潜んでいるかもしれないので今は外を見せることができなくてすみません!」
と言う日比野くん。
「気にしなくていいですよ。私頑張ります。皆さんがたくさんお水を飲めるよう雨を降らします」
すると日比野くんは嬉しそうに
「やっぱり……。雨森様はお優しい方ですね!日比野家は代々巫女様に仕える家系ですが、巫女様とお会いできるのは神事の時のみでした。もちろん喋った事はありませんでした!
巫女様はこの国の最上位であり、私などと本来喋ることも許されないのですが、別世界の巫女様はこちらの巫女様と比べなんとも気さくに話せますね!」
「そもそも、私の世界じゃ、私は巫女じゃないし、一般庶民だから……」
と言うと
「そうでしたか。でも何故あの社に居たのですか?」
「う……、そ、それは……」
学校をサボってバスの終着点まで行ってたまたま有った近くの潰れたボロ神社に寄ってたから……なんて、言えない。
「ですが、近くに居てくれたおかげで僕は助かりました。巫女様もこちらの世界の危機を感じ取っていたのかと思いました」
「まさか!偶然だよ!」
「ふふふ、そうですか?偶然なんてそうそう起きないので」
と日比野くんは笑う。
すると日比野くんは急に真剣な顔をして胸に手を当てて私をジッと見つめながら
「雨森様…。こちらの世界にいる間はどうぞ僕でよければ愚痴でも何でも聞きますよ?」
うっ、こんなカッコいい日比野くんが私なんかの為に何でもとか言われると照れる。背景は薔薇だし、キラキラしている。
「えと、その…何でもなんて日比野くんにそう言われると…。
あ、も、元の世界の日比野くんてね。学校の子達にとても人気でね!わ、私席隣なんだけどほんと、こんな地味な私なんかにいつも声かけてくれて感謝してて…」
と言うとちょっとだけ日比野くんはぷうっとした。
「そうですか。もう1人の僕は本当に馴れ馴れしい奴だったんですね?」
それにちょっとおかしくなる。自分に嫉妬してるみたいだし。
でも考えてみれば私もこっちの世界の私が羨ましいかも。皆から慕われてたんだし。義務からかも知れないけど。
「日比野くん…。そ、その『雨森様』ってのは2人の時あんまり呼ばないでほしいです。様なんて私つけられた事ないし偉そうだし…」
「しかし、我が国では最上位の方に失礼で…」
「わ、私この世界の人じゃないし…。なんか慣れないし…」
「……巫女様がそう仰れるなら…。元の世界の僕はなんと呼んでいましたか?」
「ふ、普通に『雨森』って」
と言うと日比野くんは青ざめた。
「よ、呼び捨て!?不敬な!!」
「いや、普通だよ!!」
「うううっ!くっ!!
で、では!し、失礼ながら2人きりの時は僕は雨森様の事を…
あ、あ…『茜さん』とお呼びしても?」
と顔を赤くして言う。
私も照れる。何の対抗だよと思うけど。
「う、うん。いいよ…」
としか言えない。
「で、では僕のことも日比野くんじゃなくて『充』とお呼びください!!
元の僕と同じじゃ嫌なので!」
と言われてドキッとする。いくら何でもそんなのリア充の様な!!この私が!!
日比野くんは眉を顰め
「い、嫌でしょうか?」
とキラキラさせながら言うからとても断れる雰囲気じゃない!!
「ううっ!!わ、わかりました!!お好きに呼んでくださいいいい!!」
とつい言ってしまった。
日比野くんは
「やった!」
と小さくガッツポーズしていた。
ああ!もうこんなの1日でも早くなんとかして元の日常にもどらなきゃ心臓持たないかも。
おかしいでしょ!?私よ!?可愛くもなく、地味で雨女とバカにされてひっそりと生息していた私に憧れなんて、この世界の日比野くんは目がおかしいのかもしれない!逆なら有り得るのに!!
この世界の日比野くん、良い人だし、私のことをバカにしない。
1人ぼっちで居場所も無かった私だけど、この国は必要としてくれる。
そう思うと、やる気もでてきた。
「私が……出来ることなら、やってみます」
この国を私が救うんだ!雨女なんだから、私には雨が味方についてるんだから!!
それから食事の時間になり、質素な乾パンみたいなのと四角い固形物が出された。
「この四角いの何?」
「水です。口の中に入れると溶けて体内で1日分の水分が取れるようになっています」
と言う。
凄い。けど、水が無いから仕方ないのか。
1日でも早く役に立ちたい。こんな時だもんね。
「それから朝露で集めた貴重なものもあります。現存する植物が少ないので大切に育てているのですが、やはり雨が降らない今、それらも枯れてきていて、もう本当にギリギリです!」
と日比野くんが言う。
「とりあえず、早く儀式した方がいいよね!?」
「はい。明日には儀式を行う予定です!お願いしますね!警備はもちろん厳重に行います!!」
「わ、わかりました!」
こうなるともう、私が出来るのは祈る事のみ。
「雨森様……。我が国の未来は貴方にかかっています!貴方の国の様に豊かな雨の恵みが訪れると信じてます!!」
と頭を下げる日比野くんに
「ひえっ!私なんかに頭を下げないでくださいいい!」
と言う。
「そちらの世界では、雨森様は不当に扱われることが多かったのですか?」
「ええと、まあ……。その私なんてただの地味な子だし……。と、友達もいなかったというか……」
とボソボソと喋ると日比野くんが
「うっっ!想像したら切なくなります!!なぜ貴方がバカにされなくちゃいけないのでしょう!
こんなお力を持ち、生まれたのに!!
大丈夫!自信を持ってください!!
何ならこちらの世界でずっと暮らすと言うのも……」
「ううん……。で、でも一応家族が心配するかもしれないし……」
と言うと日比野くんは残念そうに
「そうですよね、すみません!
あ、そうだ。こちらの世界でも星が見えますよ!
雨が降らないのでいつも晴れていて煌めいていて!
ああ、でも迂闊に外に出るともしかして暗殺者が潜んでいるかもしれないので今は外を見せることができなくてすみません!」
と言う日比野くん。
「気にしなくていいですよ。私頑張ります。皆さんがたくさんお水を飲めるよう雨を降らします」
すると日比野くんは嬉しそうに
「やっぱり……。雨森様はお優しい方ですね!日比野家は代々巫女様に仕える家系ですが、巫女様とお会いできるのは神事の時のみでした。もちろん喋った事はありませんでした!
巫女様はこの国の最上位であり、私などと本来喋ることも許されないのですが、別世界の巫女様はこちらの巫女様と比べなんとも気さくに話せますね!」
「そもそも、私の世界じゃ、私は巫女じゃないし、一般庶民だから……」
と言うと
「そうでしたか。でも何故あの社に居たのですか?」
「う……、そ、それは……」
学校をサボってバスの終着点まで行ってたまたま有った近くの潰れたボロ神社に寄ってたから……なんて、言えない。
「ですが、近くに居てくれたおかげで僕は助かりました。巫女様もこちらの世界の危機を感じ取っていたのかと思いました」
「まさか!偶然だよ!」
「ふふふ、そうですか?偶然なんてそうそう起きないので」
と日比野くんは笑う。
すると日比野くんは急に真剣な顔をして胸に手を当てて私をジッと見つめながら
「雨森様…。こちらの世界にいる間はどうぞ僕でよければ愚痴でも何でも聞きますよ?」
うっ、こんなカッコいい日比野くんが私なんかの為に何でもとか言われると照れる。背景は薔薇だし、キラキラしている。
「えと、その…何でもなんて日比野くんにそう言われると…。
あ、も、元の世界の日比野くんてね。学校の子達にとても人気でね!わ、私席隣なんだけどほんと、こんな地味な私なんかにいつも声かけてくれて感謝してて…」
と言うとちょっとだけ日比野くんはぷうっとした。
「そうですか。もう1人の僕は本当に馴れ馴れしい奴だったんですね?」
それにちょっとおかしくなる。自分に嫉妬してるみたいだし。
でも考えてみれば私もこっちの世界の私が羨ましいかも。皆から慕われてたんだし。義務からかも知れないけど。
「日比野くん…。そ、その『雨森様』ってのは2人の時あんまり呼ばないでほしいです。様なんて私つけられた事ないし偉そうだし…」
「しかし、我が国では最上位の方に失礼で…」
「わ、私この世界の人じゃないし…。なんか慣れないし…」
「……巫女様がそう仰れるなら…。元の世界の僕はなんと呼んでいましたか?」
「ふ、普通に『雨森』って」
と言うと日比野くんは青ざめた。
「よ、呼び捨て!?不敬な!!」
「いや、普通だよ!!」
「うううっ!くっ!!
で、では!し、失礼ながら2人きりの時は僕は雨森様の事を…
あ、あ…『茜さん』とお呼びしても?」
と顔を赤くして言う。
私も照れる。何の対抗だよと思うけど。
「う、うん。いいよ…」
としか言えない。
「で、では僕のことも日比野くんじゃなくて『充』とお呼びください!!
元の僕と同じじゃ嫌なので!」
と言われてドキッとする。いくら何でもそんなのリア充の様な!!この私が!!
日比野くんは眉を顰め
「い、嫌でしょうか?」
とキラキラさせながら言うからとても断れる雰囲気じゃない!!
「ううっ!!わ、わかりました!!お好きに呼んでくださいいいい!!」
とつい言ってしまった。
日比野くんは
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と小さくガッツポーズしていた。
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