婚約破棄予定と言われたので透明になって見たら婚約者の本性を知り悩んでいます

白黒

文字の大きさ
上 下
45 / 48

小さな幸せの時間

しおりを挟む
私達はあの後結局逃げて逃げて馬が朝疲れた頃に小さな集落の村に辿り着いた。
若者はほとんどおらず、村長に話をしてしばらく匿ってもらうことができた。

ニルス様は礼を言い、村の畑仕事を手伝い、私も村のお婆さん達の世話をして過ごすことになった。村長に空いてる家を当てがわられ掃除をして使わせてもらうことにした。
ニルス様と夜は別々に眠ることにした。それでも頰や額におはようとおやすみの軽いキスをし、まるでもう夫婦かのように思えた。

ニルス様は

「ちゃんとお祖父様達の決着が着いたら戻ろう。そ、それまでは君に手は出さないと誓おう!」
と真面目な彼は宣言した。

「は、はい…」
と少し残念な自分がいたがそれでも幸せに時間だけは過ぎて行く。昼間はお互い自分の持ち場で仕事をして夜は別々な部屋で眠りに着いたけど村ではおじいさん達にもはや仲のいい二人と噂になり

「別にこの村で子供を産んじまった方がいいんじゃないかね?その方が早いよあんた達?ほら、これをあの人に飲ませてやればもう下は元気になるよ」
とそっちのお薬を無理矢理貰い私は困り結局戸棚の奥にしまう事となる。
それはニルス様も同じのようで何故か何か貰ってきたようだが、コソコソと私に隠れて隠したりしていたから同じようなものだろう。

落ち着くとニルス様は従者に向け手紙を書いて送ってもらう。従者からも報告の手紙が来た。未だ話は平行線を辿り、頑固なバルバラお祖母様にレオポルトお祖父様はまだ騙されていると言い聞かないらしい。

「全く…困ったものだ…。これでは当分戻れない…。すまないイサベル。不便だろう、この村には何も無いし」

「いえ、ありますよ。ニルス様との幸せな時間です!」
と言うとニルス様は真っ赤になり

「なっ、なっ!そ、そんなことは言うな!」

「えっ!?何故ですか?」

「君は…ほら、一番は研究だろ?薬師になりたいんだろ?ちゃんと復学して資格をだな…」
と言うが照れて語尾はモゾモゾと聞こえない。

「とにかか私は幸せです。早くお祖父様達が納得してくださればいいのに…」
と私はニルス様の座る椅子の横に腰掛け少し近寄ってみた。

ニルス様は照れておりやはり幸せな時間だと思う。


そんな中、どうやら村の近くで魔物が出たと街へ行商に出ていたお婆さんが慌てて帰ってきた。

「ひぃひぃ!この先の橋の向こうじゃ!娘に送る土産を落としてもうたよ!!変な一つ目ギョロ目の魔物じゃ!怖い怖い!街からギルドに派遣してもらうか?」
と村長達と話し合いが行われた。

ここから近い街のギルドから2~3人の安いDランクパーティーを派遣してもらうことになった。

「彼らがこちらに滞在中、俺達のことは村長の孫と婚約者と言うことになった。イサベルすまんな」

「いえ、正体がバレないよう気を付けましょう」
と私達は警戒して冒険者達を迎え入れる準備を整えた。普段私達が使っている家が冒険者用の宿泊所だったらしいので急いで村長の家に荷物を運び移した。

村長の家は部屋が息子のものしかなく二人で使うことになり距離が近くなった。

「す、済まない、俺はソファーで寝るから」
とニルス様が言うので

「いえ、そんな!私の方がそうしますわ!」
とベッドの譲り合いが続くが結局はニルス様がソファーを使うことになった。

数日後に何とも弱そうな冒険者パーティーが現れた!!流石Dランク!!ニルス様も少し大丈夫かとぼやいていた。

「どうもー!剣士のアレスです!」
と弱そうな茶髪でだらしない顔の剣士さんと

「魔法使いのエイビンだ…よろよろしく…」
とボソボソと黒いフードを被った気弱そうな男の魔法使いさんに

「シャクナです!よろしくぅ!あたしは感知魔法が使えるの!よろしくぅ!あ!いい男がいる!!結婚して!!」
とニルス様に握手しに来たが

「済まないが先約がある」
と私の手を握った。

「あらーー!こんな田舎に美男美女!!」

「ほんとだ!すっげえ美女!めっさ綺麗だなぁ!お茶したいなぁ!」
と剣士は軽い。ニルス様は呆れ果て

「おい、冒険者!金で雇われたんだからさっさと魔物を退治しに行けよ!俺の婚約者を見るな!」
と釘を刺していた。

「……はーい!さっさと片付けてきちゃおー!」
と元気な女の子が言い、だらしない男達は付いて行く。

「大丈夫かあれは?」
とニルス様が言う。

「とりあえず夕食を作り待っていましょう」

「…俺は肉を捌こう」
この数日程でニルス様は獣を捕まえて捌けるほどには逞しくなったと思う。絶対学園にいた頃は無理だったと思う。
でもたまに

「なぁ…イサベル…俺筋肉ついてないよな!?」
と青ざめて確認に来る。余程アルトゥール様みたいになるのが嫌なんだろう。

「大丈夫ですよ、うふふ…」
と笑ってしまう。

それから…一日経ち、あれおかしいな?と村の人達がざわついた頃Dランク冒険者の皆さんが帰ってきた。ボロボロだ。あちこち魔物に噛みつかれたらしい。歯形がつき泣いていた。

「お前ら…」
ニルス様が呆れ、

「だって簡単な仕事だと思ったんだよ!!案外すばしっこくて捕まんなくて!!捕獲網も破けちゃってー!」
と剣士は泣きながらボロ網を見せた。

「しかも二匹いた!!一匹だと思って油断したんだもんー!」

「連携が取れなかった。真っ先にアレスが俺たちを置いて逃げて隠れたからアレスを探してた」
と言う魔法使い。
何でこの人達冒険者してるんだろ?

「もういい!俺が行く!」
とニルス様が言う。

「えっ!?ニルス様大丈夫ですか!?ハンさんもいないのに!」

「…お前また…俺だって少しはやると言うかそこのアレスよりはできる」
と言うと感知の女の子の目がハートになりニルス様に飛びつく。

「んじゃ!あたしも行くう!ねっ!!ニルス様あん!!」
と猫撫で声を出したのでニルス様が嫌がり

「やめろ!!」
と引き剥がした。

「わ、私も行きます!回復魔法少しなら…後、薬草も作って持っていきましょう!」
と言うとニルス様は

「イサベル危険だろ?お前はここで待って…」
と言うとアレスさんが

「そうだよ!イサベルさん!俺とここで待ってよう!仲間達よ!後はよろしくぴ!」
とアレスさんが元気よく返事をしたのでニルス様は

「やはり心配だからイサベルは俺から離れるなよ?」
と同行を許された。白髪の二つ編みのシャクナさんは

「うわっ!言われたい!あたしもいい男にそんなこと言われたい!いーなー!イサベルちゃん!!」
と羨ましがられなんか騒々しく再び村の外へと向かった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

婚約者は王女殿下のほうがお好きなようなので、私はお手紙を書くことにしました。

豆狸
恋愛
「リュドミーラ嬢、お前との婚約解消するってよ」 なろう様でも公開中です。

処理中です...