婚約破棄予定と言われたので透明になって見たら婚約者の本性を知り悩んでいます

白黒

文字の大きさ
上 下
7 / 48

憂鬱な挨拶2

しおりを挟む
一連の流れでどっと精神的に疲れた。

「おい、何してる早く入れ!」
と言われてようやく中へ入り進む。

「もしかして…アンナ先輩と付き合っていなかったのですか?」
そう聞くと怒りでこちらを睨まれてビクっとした。

「はああ?俺が?なんで俺があんなクソビッチと付き合わなきゃならない?学園でもベタベタしてくるが、他の生徒の手前適当に相手してやってるだけだ!会話だけのな!あの女何か勘違いしてるみたいだがな。
…それに他の男と関係を持ってるのも知ってる!俺を舐めるな!あんなふしだらな女などお断りだ!」
と言う。

「そうですか。てっきり付き合ってるのだと思っておりました。大変申し訳ございません」
と謝ると

「うるさい!またお前直ぐそうやって!…まぁもいい!さっさと家の者に挨拶してお前も帰れ!!」
と言い嫌々と案内させる。
公爵家の庭は広く広大でうちより何倍も綺麗な花が咲き誇っていた。手入れのいい庭師がいるのだろう。

「ふん!どうだ!お前のとこよりいいだろ!」
と自慢してくる。

「はあ…凄いですね」

「ちっ!もっと感想ないのかよ!お前口数も少ないな!脳味噌何でできてるんだ?」

「脳味噌は脳味噌です。話す必要が無いこと、最小限で済ませられる事を選んでおります」
と言うと変な顔で止まる。

「何なんだお前は。いきなり饒舌だな!」

「……侯爵家次女のイサベル・マリア・キルシュでございます」

「それはわかってる!!バカが!」
と言い、とうとう中へと入るとズラリと使用人が整列し

「ようこそ!婚約者様!シャーヴァン公爵家へ!」
と挨拶される。

「辞めろ!大袈裟にするな!!おい!早く行くぞ!と手首を掴まれさっさと通り過ぎる。私はペコペコと頭を下げつつ通り過ぎる。
そして応接間みたいな所をノックし

「父上!母上!!」
と言い中からどうぞと声がした。

「おい、くれぐれも俺に話を合わせておけよ!いいな?まだ二人は俺たちが仲がいいと思ってるんだ!!」
と言う。つまり演技しろと。
するといきなり手を組み直された!!
ビクっとすると

「勘違いすんな!いいな!」
と怒りをあらわにしてる。嫌だけど繋いでやったみたいな感じで何も言えない。

「父上…イサベルを連れて来ました…」
とそのまま中へと入るとニルス様を大人の男性にしたような紳士がいて正直カッコいい方だ。お母様の方も美人である。

「初めまして!ようこそ!私はニルスの父のフリードリヒ・オーゲン・シャーヴァンだ」

「初めまして公爵様」

「…大きくなったのね。前に会ったのはまだ赤子だったものね。私は妻のアニカ・ド・シャーヴァンよ」

「初めまして公爵夫人」
とカーテシーで挨拶して椅子を勧められたが同じ長椅子にニルス様が手を離さずに隣に座る。少し顔は赤い。

「仲がいいのは本当だったのか?ニルスは素直じゃ無いからね」

「はは、父上。私は騙しなどしませんよ!」

「それにしても美しい子ね!ニルスには勿体無いくらいだわ!ねぇ、貴方!」

「そうだな、…まぁ若い頃のアニカと比べたらまだまだだが」

「まぁ!貴方ったら!!」
と夫人は照れる。

ゴホンと言い、ニルス様は

「父上も母上も仲がよろしいようで何よりです」

「ああそうだな。もう一人くらい作れそうだな」

「ご冗談を!まだ下に4人もいるのですよ?」
と言うから驚く。そんなに?

「ふふふ。そうね。私達の愛がそうさせたのよ!」
と夫人は嬉しそうに下の子達の名前を紹介した。

「ニルスは跡取りだから他の子は奉公に出たり冒険者になりたい、魔法使いの弟子になりたいなどと色々と夢を持っている。ニルスには悪いがね」
と言うとニルス様は

「公爵家の嫡男として恥ないよう生きて来ましたのでご心配なく!…それよりお祖父様は大丈夫ですか?」

「問題ない。直ぐくる!」
とドスドス音がしたと思ったら扉が壊れそうなくらいバンと音がして入ってきた初老の老人は鍛えているのか割と体格がいい!!

「君がイサベルかな?」

「はい…初めまして…。イサベル・マリア・キルシュと言います」

「ワシはアルトゥール・パブロ・シャーヴァンじゃ!孫の婚約者殿!やはり若い頃のバルバラに似て可憐な月華のようじゃな!!」
とボオっとする。

「祖母をご存知なのですか?」

「勿論知っておるとも!同じ学園で学んだ。バルバラはの…、ワシの隣の席の娘さんでそれは素敵じゃった!ワシの初恋の人じゃ!」
と言われてギョッとした!

「本来ならワシは彼女と結婚をする気じゃったのじゃが…レオポルトの野郎が横から掻っ攫っていきおった!!」
レオポルトとは私のお祖父様のことだ。
……お祖母様がアルトゥール様と結婚なさってたら…私は公爵家の…?
と考えてやめた。
レオポルトお祖父様とバルバラお祖母様はご健在で今も仲睦まじく田舎で暮らしている。とてもおっとりした老夫婦で私は可愛がられた。

「本来ならお互いの子同士で婚約するはずだったのじゃが、フリードリヒの奴はアニカさんにベタ惚れで無理じゃった。それで今度こそはと孫に期待することにしたのじゃ」
この人のせいで私とニルス様は婚約する羽目になったのか。

それからもアルトゥール様から好きなものは何かとかたくさん聞かれた。次の休みも会いたいと言われ私はキラキラした目で見られると断れなかった。

ニルス様は機嫌はあまり良くなくお祖父様との話が終わると手を離し馬車まで演技して送り

「ではまた」
と言い、別れた。
ほんと無駄に疲れた日だった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

処理中です...