封印から目覚めると鬼娘の私は陰陽師のお嫁になっていました

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約束

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「待って!!晃樹!!」

 帰り道を歩いていると先ほど潰した片目を復活させ、茨城童子が追いついてきた。

「やっぱり鬼の力を使ったね。回復が異常に早い」

「そりゃそうよ。まだ死ぬわけにはいかないし、晃樹も私を殺さなかった。首を刎ねればいいのに。

 でも殺さなかったのは私の事…す、好きなんでしょ!?」

「は?お前が僕のこと好きなんだろ?」

「ち、ちが、ちが、ちが…い…」

「あ?」
 もじもじする詩織に僕は背を向け行こうとしたら手を掴まれる。

「ねえ!!ならこうしない?私が聡明の生まれ変わり殺す!そしたら人として生きる!殺しもしない!

 晃樹は人を殺めたくないんでしょ?人として生きたいのよね?私だってしょ、将来晃樹がどうしてもって言うならお嫁に行ってあげてもいーのよ?」

 ぺちゃくちゃうるさい女。
 しかし頭ではわかってても心臓はドキドキしている。相反する魂。

「……お前に聡明の生まれ変わりを殺すことなんかできないだろう。あいつは手強いし俺と同等かそれ以上だ。簡単じゃないし、お前が死ぬぞ?」

「でも…私は構わない。全力で聡明達を殺す!!あんたの為よ」

「勘違いしてるよ。詩織。お前が好きなのは酒呑童子で宇城晃樹というガキじゃないんだ」

 すると彼女はキッとこちらを見てガシッと僕を掴みいきなりキスをした!

「ふえっ!?」
 驚きガキの自分が後ずさるが

「…大丈夫。その姿も好き…かもしれないわ?晃樹が大人になるまで待つから…」
 と言い、顔が熱くなる。こ、これは勘違いだし!!僕はアイドルのかのちゃんが好きだし!!

「私が絶対に聡明の生まれ変わりを殺してくる!そしたら幸せを夢見てもいいでしょう?だって全部終わるもの。過去の因縁も何もかも!」
 と彼女の決意は固いようだ。

「はあ…わかったよ。そこまで言うなら勝手にして。生きてたらまた会おう」
 と言うと彼女は満面の笑顔になり

「うん、晃樹!約束ね!!絶対よ!?嘘ついたら針千本よ!?

 うーん、それじゃ痛いか。しょうがないからキス千回に負けといてあげるわ!」
 と言いようやく彼女は離れて立ち上がりこっそり見ていた石熊と金熊の元へと去る。

 はあ。約束ね…。
 彼女はこの姿の僕を好きだと言う。見た目か?それとも本来のか?どちらにしろ僕と彼女はやはり運命なのだろう。どうしたって惹かれあってしまう。

 何度転生しても。

『それでいいのか!?』
 黒い声が聞こえる。一人だけ戦わない道を選んだ。酒呑童子の過去を切り捨てたいのに。雑魚鬼を殺し、彼女の片目も潰した。人ではない自分もまだいるのに、僕は運命を断ち切りたい…。

 静かに暮らしたいのにな。
 でも約束してしまった。
 彼女との幸せな未来を…。
 頰から涙が出た。
 たぶん聡明の生まれ変わりと本気でやり合ったら彼女は負けるかもしれない。

 この間バスで会った聡明の横にいた鬼娘…。あれも相当な力を付けている。

 無意識だがわかる。
 愛する者の隣にいると強くなる。

「何でこんな因果ばかりなんだ」

 結局終わらない戦い。どちらが勝っても勝負はまた未来へと持ち越されるだけだ。

「虚しい。なんて虚しいんだ。でも……僕も最愛の彼女を助けなくてはならない…!

 今度は宇城晃樹として!」

 と僕は決意した。
 最後の戦いにすると決めた。 

 *
 それから数日後、僕は彼女の母親が休日出勤なのを見計らい、家を訪ねた。
 馬渕家は高層マンションの僕の家と違い、平家の一軒家。

「ここここここ、晃樹!?どうしてうちに!?」

「あ!旦那!!」
 と石熊達もいる。ジロだと睨むと空気を察して二人は

「えーと、用事思い出したわ!」
「俺もや」
 と慌ただしく出て行った。
 ふん、人の皮を被った鬼め。

「なに?上がっていいよ?」

「ああ、別にここでもいいけど。直ぐに帰るし」
 と言うと

「だだだだ、だめえええ!せっかく来たしお茶でも飲んでってよ!ね!!」
 と無理矢理部屋に通された。
 ふわっと女の子の匂いがした。ドキドキする。ぬいぐるみもあり部屋は女の子だった。
 違う意味でドキドキしてきた。

 お茶を持ち彼女は

「どうぞ!このお菓子食べる?こないだ親戚のおじさんからもらったの?晃樹はお金持ちだし口に合わないかもだけど」

「いや、いただくよ」

 うちには家政婦がいてパティシエ並みのスイーツをいつも持ってくる。
 こういう袋に入ったお菓子はあまり食べない。

 口に含むと甘い。

 それにしても視線を感じる。
 コホンと咳を一つして

「要件はね、こないだのことだけど。とりあえず僕も協力してあげる気になった」

「えっ!?ほ、ほんと!?」

「うん。聡明の生まれ変わり達を倒したら、もうこんなことやめて普通に生きる。僕たちの中にはいつも苦しみがある。奴が憎い気持ちもある。だからもうこれで全部終わりにする。

 勝っても負けてもここで終わる。いいね?」

「うん!わかったわ!!」
 にこにこと彼女は本当に聞いているのか知らないが嬉しそうだ。

「じゃあ僕は帰るね」

「ええー!?も、もう!?」

「塾もあるし」

「ええー!?そ、そんな!来たばかりだしゆっくりしていってよ!ほらまだ時間あるでしょ?晃樹ゲーム好き?ゲームしようよ!!」
 と対戦ゲームらしきものを用意してきた。
 いつもは母親が暇な時にしかしないみたいだ。

 こいつ友達いないのかな?僕もいないけど。

 仕方なくゲームを少しやる。対戦はネットでしかしないからこうして肩並べて誰かとするのはなかった。

「ぎゃっ!負けた!!晃樹つよ!」

「…詩織が弱すぎる」
 そろそろ帰ろうかな塾あるし。と鞄に手を伸ばすと止められる。

「ううー、もう一回!」

「しつこいな!ほんとに!」

「ううー!!」
 と可愛く泣くので仕方なく三つ編みを引き寄せキスしてやると詩織は照れて溶けた。

「晃樹…。こう」
 とキスを求められると僕も敵わない。
 ひとしきりキスをすると立ち上がり

「もうダメおしまい。本当に時間だから」
 と断りあっさりボケっと赤い顔した詩織を置いて玄関で靴を履いているとガチャッと彼女の母親が入ってきた!!

 ゲゲ!まずい!こんな所に小学生のガキがいるとか!!

「え!?何この美少年?」
 と母親も驚いている。

「あ、あの僕は!」
 と焦っていると上から詩織が降りてきて

「あ、おかーさん!おかえり!!」

「詩織?この子は?」
 と言う母親に詩織は思い切りよく

「え?私の彼氏だけど?」
 と言い切り僕は頭が痛くなった。
 母親も驚き

「ええええええええええ!?」
 と声を上げた。そりゃそうだろう。
 普通に考えてあり得ないだろう!!

「さっきまでラブラブしてたよ?」
 と言う余計なことを言う詩織を部飛ばしたい。
 気まずくなり逃げようとした僕をガシッと母親が掴み

「どう言うことか説明して?」
 とにっこりされ汗が伝う。
 笑ってるけど目が笑ってない。
 僕は震えながらも観念して

「あ、あの…。詩織…さんとお付き合いさせていただいております…。宇城晃樹です…」
 と土下座しながら自己紹介する羽目になったこと許さない!!
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