封印から目覚めると鬼娘の私は陰陽師のお嫁になっていました

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1200年越しのど変態

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「え?優平くんのご両親に会えるのですか?」
 と私は朝食の席で聞いた。
 昨日のデートから今日は優平くんの学校振り返り休日でお休みだし、お父様のげんこーが上がったらしい。

「まぁ、当主が変わると親から引き離されてしまうけどね。親は敷地内の離れにちゃんといるよ。前当主だからね。父さんは。

 それで兼ねてからの趣味小説で賞とって小説家で暮らしているんだ。原稿の締め切りが終わるまで離れから出ない人なんだよ…。だから今まで紹介出来なくてごめんね?」
 と優平くんが言う。
 敷地内は結界が張り巡らせてあるし離れももちろん安全なのだ。だから私はお庭には自由に出れる。

 離れの屋敷は本邸の少し裏側の雑木林の奥にあった。綺麗な青竹を通り過ぎて離れの玄関の呼び鈴を押すとパタパタと音がしてガラリと扉が開くと可愛らしい白いフリル付きエプロンと黒いお着物を着た使用人の女の人が出てきた。

「どうも…茉理さん…父と母はいますか?」
 茉理さんという黒目パッチリで茶髪でツインテールという髪型をしている彼女は

「ええ、いらっしゃいますよ優平坊ちゃん♡」
 とポッと優平くんを見て私には凄い顔で睨んだ。あからさまな態度だった。

「鈴さん、この人は不知火茉理さん。
 小さい頃からの僕の幼馴染のお姉さんだよ。今は離れでバイトしてるんだ。

 不知火家は土御神家の分家…つまり従姉弟かな」

「んふふふふっ、従姉弟ってねー?結婚できるのよぉー?優平坊ちゃん♡」
 と茉理さんは明らかに優平くんに恋をしていた!!態度を見たらすぐ判った。というか解りやすすぎる…。

「茉理お姉さん…。僕のお嫁さんの鈴さんだよ」
 と紹介されてぺこりと頭を下げると気に食わないという顔で

「ふぅぅぅーん!?貴方、例の鬼よね?封印されてた。私なんかは絶対入っちゃダメって本家に言われてたから見たこと無かったけど。そんな顔してたのぉ…。

 でも貴方…あれよね?1200歳超えてるのよねぇ??」
 と私は言われて気付いて物凄い傷付いた!!

 わ、私…私って…

「んふふふふっ!すっっっごいババアじゃなぁーい!鈴さん!!」
 と嫌味を全開で言われて青くなった。

「ち…ちょっと!茉理姉さん!虐めないでよ!鈴さん眠ってたし時間は止まってたんだから!」

「でもぉ!平安時代の鬼でしょ!?ものすっごく古いわよね?」

「あ、あの私…勉強してて…」

「どうせテレビとか見てるだけでしょ?漢字も小学生くらいの頭しかないでしょ?貴方薔薇って漢字書ける?」

「えっ…」
 と絶句する。バラと言うのはあのドラマでよく見る赤い花のことだ。漢字も何となく画面で見た記憶がある。でも凄く複雑なやつで書けと言われて書けるわけなかった。

「茉理姉さん!!虐めないでよっ!」
 と優平くんが前に出ると茉理さんは

「ふぅーん?優平坊ちゃんのくせにお姉さんに強気に出てきたね?昔はトイレ行くのも付いてきてって私にしがみ付いてきたり、お風呂も怖いから一緒に入ってと言ったり…。あ、お布団にも潜り込んでたわよね?」
 と私に自慢する様に言い、さらに

「優平坊ちゃんの弱いところお姉さん知ってるしぃ!」
 と優平くんの耳たぶをカプリと齧ると

「ふあっ!!」
 と優平くんは赤くなり耳を押さえて離れた!

「んふふふふっ!昔からそこ齧ると可愛い反応してさらに可愛い♡」
 とジリジリ優平くんに近づこうとするので私は反射的にドンっと彼女を押す。

 地面に尻餅をついた茉理さんは

「何すんのよ!この鬼ババア!!」
 と言われる。ついに髪を掴まれて取っ組み合いになって服が汚れるけど私もムキになった!だって私の知らない優平くんの話とかいっぱいするし、まるで自分のものだから諦めろと言われてるみたいだもん!

「ちょっ!やめてよ2人ともー!」
 と優平くんが困っていると

「あらあらどうしたの?騒がしいわねぇ?」
 と優しそうな方が現れる。私は興奮して角が出てしまっていた。

「あら…貴方!もしかして…優平のお嫁さんの鬼?」
 と聞かれた。

「……奥様…」
 と茉理さんは私から離れて頭を下げる。

「こんにちは…土倉小夜子と言います。優平の母です。貴方お名前は?」

「鈴です…私はただの鈴で…」
 苗字はない…。あの時代…庶民の私は苗字…姓を持つことはなかったから。

「まぁ、鈴?可愛いわねぇ?鳴らすとリーンって綺麗なのよねぇ?」

「そうですか?今の時代とは合わなくて古臭い名前ですよ?奥様…。鈴なんて」
 と茉理さんが言う。
 私はまたショックだった!ふ、古臭い!!
 確かに!1200年経ってるから当たり前だけど、今の女子高生は名前も聞いたこともないような名前が多い。

「あら?そう?可愛いと思うけど?」
 と小夜子奥様が言うと、くっ!と顔を歪める茉理さん。また睨まれた。

 するとズルズルと地面を這いながら何かが迫ってきた!!

「きゃっ!」
 と驚いて小さく悲鳴を上げると優平くんが

「父さん!」
 と声をかけた。

「ふふは…。若い女の子の匂いがする…」

「あら貴方?寝ていたのではなかったの?えいっ!えいっえいっ!」
 とげしげしと青白い顔で少しお髭の生えた優平くんのお父様らしき人が

「あっ!人妻に踏まれてるっ!あっ♡あっ♡」
 と変な声をだして踏まれ続ける。

「鈴さん…。あまり見ない方がいいよ。変態だから」

「えっ!!?」
 しかし先日の鬼と闘う優平くんも変態だったし…ええ?血なの?

 それが本当なら土御神の子孫は変態の血が流れて私はその変態の血で目覚めたことに…。

 ああ、だから優平くんのお風呂の後とか入って興奮するのだろうか?と納得しかける。

 *

 コトリとお茶が運ばれて茉理さんは何故か縛られてゴロゴロ転がっていた。しかも変な縛られ方。

 優平くんは赤くなり見ないようにしている。
 お父様は

「ふふふあれ、亀甲縛りだよ?茉理ちゃんが粗相をしたようだからお仕置きだよ」
 と言うと今度は同じような縛りを奥様にされてゴロゴロ転がるお父様…。

「うふふふ。このっ変態!!いくら職業ネタと言いやめてくれないかしら?この18禁エロ小説家!」

「ごめんなさーい、小夜子さーん」
 と転がりながら謝った。
 はああっとため息をつき優平くんは

「父さん!母さん!折角挨拶にきたんだから、ちゃ、ちゃんとしてよっ!僕恥ずかしいよっ!」
 するとお父様は指を少し動かすと

【破】

 と唱え、自分の縄がブチブチと切れた。
 そして真剣に向き合い

「鈴さんでしたね。…私は優平の父、前当主の土倉俊和と申します。長き眠りよりよくぞ目覚められました。そして優平のお嫁になって頂き感謝申し上げる!

 優平は聡明様の生まれ変わりです…。聡明様は高名な陰陽師…。貴方を封印した聡明様はこの世を待ち、再び貴方を目覚めさせたのです」

「あの…ずっと気になっていたのですが、どうして私…1200年経って眠りから覚まされたんですか?何で優平くんが聡明様の生まれ変わりなのですか?何故この時なのですか?」

「そうねぇ、その辺りはまだ説明していなかったのね、優平」

「うっ…」
 と苦い顔をする優平くん。

「実はね?毎度あの鬼門から出てくる鬼達は聡明様が昔に魑魅魍魎の世界へ送った鬼達だ。それは判るね?」
 私は昨日の闘いを思い出してうなづいた。

「だが、当然逃れた鬼がいる。それが最強の鬼と言われる伝説の酒呑童子だよっ!!まぁどっかの強いお侍さんに最終的には斬られちゃったみたいだけどね?

 でもね…。酒呑童子を斬ったのはお侍さんに化けた聡明様とも言われている。そしてその時、酒呑童子は聡明様のライバルと言われる陰陽師の芦谷堂満の手を借り、逃げ延びたと言われ、酒呑童子はその後、人間に化けて暮らし子孫を残していったと言われている。しかし最強と言われた血も人間と交わることで次第に薄れていったが、酒呑童子は呪いを子孫に残した。

 そう、それが1200年後の今の世だ。つまり…今この世に酒呑童子の呪いを受けた子孫…酒呑童子の生まれ変わりが存在している。だから呪いを見越して1200年後の未来を視た聡明様は自分もその時代に生まれ変わる準備をなされた。それが…優平だよ」

「……………」

「…父さん…、鈴さんがびっくりしているよ!

 あのね、生まれ変わりと言っても僕には前世の記憶なんてないし!ただ、力を引き継いでいるだけだと思います。聡明様の力そのものをいただいたんです…。酒呑童子の子孫の生まれ変わりを倒す為と言ってもいい…。見たことないけどね…」

「でも何で私を眠らせる必要が?それだけなら私が優平くんのお嫁さんになることと何の関係があるのでしょう?」

 するとお父様が説明した。
「聡明様のお嫁さんの輪花様がライバル芦谷に寝取られちゃってねー?聡明様が激おこでなんか輪花様殺しちゃったみたいなんだよぉ。あの時代もドロドロしてたんだねぇ?

 聡明様はその頃からちょっと鬱になってね、もう女なんか信じないわー!みたいになっちゃったらしくてね。ほら、十二神将も男ばっかで固めてね。芦谷も鬼どももブッコロ状態だった。
 そんな中君と出会ってしまい…一目惚れかな?したみたいだね。

 それで君を封印したんだよ。男は自分以外触らせないようにと結界はりまくりーのでね、優平が触れて封印が解けたのはそういうことさ。だって生まれ変わりだもんな。今度こそ自分だけの花嫁と一生添い遂げたいんだよ。恐ろしい執念だよ。ヤンデレだよ!!

 あ、一応言っておくと聡明様が君に手を出さず眠らせたのは年が違うからってさ。それだけらしいよ」

「ええっ!!?わ、私そのお方にお会いしたのは本当にちょっとだし何も告げられてませんよ!?そんなの嘘ですよ!」
 だってほんとに会ってからちょっとしか経っていない。優しく血の涙を拭いてくれたけど。

「昔の人は奥手なんだよ…しかも聡明様は貴族だったんでしょ?貴族が庶民の鬼娘に告白とか出来ない時代だったんじゃないかな?

 それに浮気した嫁を斬り殺した後だったからね…。女の子信じられない病気もあったし、手を出さず封印した。

 この世を憎んで、1200年後の封印が解けるまで…。生まれ変わるまで待とうとしたんだ。一回リセットしたかったんだろうね………。

 うん!まさに!!1200年越しのど変態だね!優平!!」
 とにっこりするお父様に優平くんは泣きそうになった。

「あああ…嫌だ…!嫌だあ…!先祖がど変態なんて!!嫌だあああ!!鈴さんは好きだけど変態は嫌だあああ!!」
 と泣いた。
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