封印から目覚めると鬼娘の私は陰陽師のお嫁になっていました

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1200年の眠りから覚めました

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 私は鬼だ。
 人から産まれた鬼で人に近い。

 おととさんは鬼だったけど、とっても優しい鬼で人に絶対に危害を加えなかった。
 おかかさんといつも仲は良かった。
 だから村では私の家は村八分扱いで外で一人で遊んでいると村の子供たちは私に石を投げてくる。

「この鬼娘!!里から出てけ!物の怪!!」
 と石を投げられる。我慢した。
 私の見た目は人そのものだが、怒ったり感情的になると、頭から角が生えて力も強くなることを知っていた。だから私は常に感情を殺して過ごした。

 例え石を投げられて怪我をしようとも絶対に人に危害を加えなかった。それが、私達家族の約束であった。
 人を食べている悪い鬼もいたけど、私達はけして食べていない。そんなことしたら村から追い出されて路頭に迷う。

 月日が経ち…私が年頃の16になると、とても美しく育ち、もう石を投げてくる人はいなかったけど、忌み嫌われていることは変わらなかった。

 ある日何もしてないのに村の野犬が勝手に家畜の鶏を殺したのを私達のせいにさせられて、私が他の村に行商に行ってる間に私の家は村人達に焼かれ、おととさんとおかかさんは焼け死んだ。

 何故逃げなかったのかと思って死体を調べるとおととさんとおかかさんは縛られていたことが解った。私は触れたものの過去の記憶を断片的に頭の中で再生することが出来たのだ。

 記憶を手繰り寄せると…

「私達は鶏を殺してません!!野犬の仕業でしょう!?」
 村の男達は激昂し

「まだ言うか!この鬼め!!おい!皆!こいつらを縛り上げろ」

「お松!!」

「太助さん!!」
 おととさんとおかかさんは縛られた後殴られて蹴られてさらに火をつけ殺された…。

 私は怒りでどうにかなりそうで必死になって抑えた。
 おととさんの

「何があろうとも絶対に鬼の道を選んではいけない。お前には人の血だって入っている!心まで鬼になるな!鈴」
 私の能力を見越しておととさんは遺言を残して逝った。

 この言葉で歯を食いしばり唇から血が流れ出た。村人がやってきて

「鬼の娘だ!生きてやがる!こいつも殺せ!!」

「見ろ!目が真っ赤だぞ!!食われる前に殺せ!」
 と桑や槍を持ち村人は私に襲いかかり私は山へ逃げた!!

「うっ!!おととさん!おかかさん!!」
 血の涙を流しながら山へ登るとカラスのギャアギャア鳴く寂れた古いお寺があった。誰も住んでないの?ならば好都合、ここへ隠れていよう。

 と思ってたら若い綺麗な顔した変な格好の男が顔を出し、私を見た。都の貴族かな?
 どうしてこんな所に??

「…ほうほう、鬼娘さん、君はまだ人を喰っていないね?少し落ち着きなさい…」

「あなた誰?」
 私は綺麗な絹布を貰い、それで血を拭けと言われおったまげた。こんな高そうなの…無理!
 首を振ると男は仕方ないと言い自分の上等な着物の袖で血を拭いだして私は慌てた。

「私は土御神家の者…まあ、どうでもいいが、君とても美しい娘だね…」
 とジロジロ見られてしまう。

「あの…私は…鈴と申します」

「鈴か…なるほどやはり…。君は人を食う鬼になりたくないだろう?」

「はい…」

「では、ついておいで…」
 と男に導かれて寺の奥に行くと男は札を出してなんと鬼を呼び寄せた!!

「なっ!!あなた様はまさか!鬼神使い!?陰陽師様!!?」
 ああ、なんて事だ!私は退治されるのだ!よりによって都の陰陽師によって!!
 陰陽師は物の怪を退治する専門家だ。その物の怪の中にはもちろん鬼も含まれている。

「くく、まさかまさか…。朱雀…この鬼娘を封印して来世まで眠らせよう。滅ぼすには惜しい。上手くいけば私の子孫によって目覚めることができよう…私はこの鬼娘が気に入った。このような世でなく目が覚めると素晴らしき世であるとよいな…。その時にまた違った形で逢えるとよいな…」
 と言い優しく微笑まれ頭がポウっとする。

 私は地下深くの封印牢に連れて行かれて額に何か描かれると恐ろしい睡魔が来て倒れた。そこからは眠っていて何が起こったか判らない。

 *
 再び目が薄ら開いた時…目の前にあの綺麗な顔の男がいた。

 でも何かおかしい。あの男と似ているようで違う。私と同じ歳くらいに縮んでいるように見えた。あの男はもっと年上だった。

「あの…だ、だだだだだ大丈夫…ですか??」
 と男は…おずおずと気弱そうに聞いた。服は変な服を着ている。見たこともない。それに若返った男はもやしそのもので細く色白で顔は綺麗だけど情けない程弱そうな感じに見えた。

「………私…ここ…あなた…」
 どうも私は状況が判らなくてどもる。
 起き抜けでベラベラ喋れないのもあった。
 男は赤くなり

「ぼぼぼ、僕は…土御神家の子孫の陰陽師の土倉優平って言うんだけど…。

 ききき、君は…えっと…鬼…だよね?えっと君の…その、約1200年前の封印をさっき解いて…そそそそそのう…」
 と赤くなりもじもじする。ゆーへーとか言う変わった名の男。苗字があるなんてこいつも貴族なわけ?

 ん?待って?…

「お待ちください…1200年!?私が眠って1200年経ったということなのですか??」

「そそそそう…僕はきき、君を眠らせた男の子孫というか血を引く者というか…ね」
 子孫…1200年…変な格好…。
 ふと私の服を見るとなんと私は白い上等な着物を着ている!!

「なっ!!?何?この綺麗な着物!?ああ、どうしましょう!汚したら大変です!」
 と慌てると

「それは…君の長い眠りで何回か定期的に女の使用人が着替えさせたんだよ。身体もちゃんと拭いてね。あ、女の人が全部やったから男は絶対に君に触っていないよ?」
 と言う。

「それであの…ね…ううん。言いにくいんだけど、君はえっと…えっとぉ」
 と煮えきれないようなことを言う。

「きっ……きききき君に僕のお嫁さんになって欲しいんだ!!」
 とついに言った。
 それに私はついていけずに訳がわからなくなった。
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