夜桜さんは腐女子なんだから仕方がない!

白黒

文字の大きさ
上 下
3 / 12

夜桜沙耶華と世話係とお隣さん

しおりを挟む
 入学後…新入生が入るものと言えば…、そう…部活だ。掲示板には色々な勧誘の部活でたくさん埋まっていた。

 さて…何の部活に入ろうかしら?

 *

 私は共学校に入学にあたり、お父様と交渉した。高校に上がって世話係付き一人暮らしをすること、習い事の代わりに部活に入る事。政治家であるお父様には強く生徒会への加入を勧められたが私は嫌だった。

『お父様!高校生活は一度きりです!そして10代が最後なのです!好きな部活をやらせて欲しいです!!

 私の最後の我儘をお許しください!叶わないなら身投げでも…』
 とハッキリ言うとお父様は折れた。

 それから私の世話係の23歳の女装男…、つまりはオネェと世間では呼ぶ

【荻原美月】さんが一緒に私と都会へ引っ越した。
 美月さんは私のマンションの隣の部屋を借りているが、鍵は合鍵があるので料理や掃除、洗濯と任せている。見た目は完璧な美人であり、オネェと言うこともあり、男が好きらしいので私はオネェ様美月さんでもたびたび脳内のBL展開を繰り広げられることができるが、美月さんは唯一、私のBL趣味を知っている。

 掃除の時に隠してある同人誌本を発見されたからだ。仕方なくお父様達には内緒にしてくれるらしいから助かる。その代わり自分を妄想の種にしないことと釘をさされたけど。

 *

 朝、目を覚ますとニコニコした美女が至近距離で見つめていた。

「おはよう美月さん。今日も綺麗ですね」
 と言うと美月さんは照れて

「あら……沙耶華お嬢様の方がお綺麗じゃない!寝顔…最高よ」
 と悶えていた。

「顔を洗って着替えたら朝食ですよ」
 と笑って嬉しそうに言う。
 本当に女の人と錯覚しそうになる。
 しかしその後、数分間、美月さんがトイレに篭ったことを私は知らなかった。

 着替え終わると美月さんが椅子を引いてくれた。優しい。

「さあ、食べましょうね」
 と朝から気合い入れまくりの朝食が並んでいる。栄養バランスに配慮された朝食だ。綺麗な目玉焼き、新鮮サラダに自家製のジャム数種類、絶妙なフレンチトースト、健康スムージー。

「いつもありがとう、美味しそうだわ、美月さん」
 とお礼を言うと照れる美月さん。

「あらあ!いいのよぉ!私が好きでしてるし!!沙耶華お嬢様が喜んでくれて嬉しいわ!」
 とクネクネと本当に嬉しそうだ。
 朝食を食べ終わり、お弁当を渡されて玄関でお見送りされる。美月さんはいつもハグして頰にすりすりしてくる。
 今日もなんかたっぷり堪能された。

 あーあ、これが私でなく、年下イケメン大学生ならお似合いな所なのに残念だわ。
 美月さんは攻めでイケメン年下大学生が受け…。いや、大学生が逆に攻めもありか?
 うーん。、と朝から妄想に耽っているとエレベーターが開く。
 中には前髪が長い、予備校生みたいな男の人が乗っていた。必死で単語帳を見ている。

 私はぺこりと頭を下げた。すると
 バサッと単語帳を落としたので拾ってさしあげたら、

「あ、ありがとう…ございます…」
 とお礼を言う。ん!?
 よく見るとこの人…中々綺麗な顔立ちね。ハッ!

 か、隠れイケメン!?な、なんなの!?

「いいえ。私205号室の夜桜沙耶華と申します。春から越してきましたの」
 と言うと予備校生は

「…!!あ、ああ!お隣なんだ!?お、俺…204なの!!冴島紘也っていいます!」
 と慌てて言う。

「まあ、そうでしたの。よろしくお願いします」

「よ、よろしく…」
 それからマンションを出て、駅まで一緒に歩くことになった。

「予備校が駅前なんだ…。ご、ごめんね。俺みたいな冴えない奴が隣で…」
 と言う。

「いえいえ、自信をお持ちになってくださいね。冴島さん」
 と話しているとなんか黒塗りベンツが近付いてきた!!

 ウイインと窓が開いて中から玲一郎が

「沙耶華!?な、ななな、隣の男は誰だ!?ま、まさか誘拐か!?」
 と盛大に勘違いした。相変わらず頭がおかしい男ね。

「おはよう玲一郎。生憎だけど、この方はお隣さんなの。駅までご一緒しているの」
 と言うと

「ハア!?ま、また隣だと!?どう言う事だ!?」

「隣と言ってもマンションの部屋が隣ということよ。貴方はさっさと学校へ行ったら?私は…電車へ乗って行くから」
 と言うと玲一郎は真っ青になり

「ハアアア!?で、電車だって!?し、正気か!?あんな庶民が大量に乗り、箱詰めになっておっさんに痴漢に遭うような乗り物に乗るー!?」
 と失礼なことを言う。

「私…女性車両に乗るから平気よ」
 と言うと一瞬ホッとした玲一郎は

「別に、無理して乗らなくても俺が乗せてやってもいいけど!?」
 と止まり、扉を運転手が開けた。

「折角だけど、私はお隣さんと親交を深めたいので歩いて行くわ。玲一郎、また学校でね」
 と無視して歩く。
 玲一郎は青ざめ、冴島さんはちょっとあわあわした。

「い、いいのかな?彼?お友達?」

「ああ、あの男は一応親が勝手に決めた婚約者ですが、お互い何も思っていませんの。彼には相応しい人がいますし」
 と言うと驚き

「ええ!?そ、そうなんだ!?てっきり彼は君のこと…好きなんだと思ったけど!?」
 と言い出す。

「いえ、そんな!私より素晴らしいお相手がいますの!!」
 と私は強く言った!月城くん以上の受けは考えられないわ!玲一郎には月城くんとラブラブになってほしい!

 そして冴島さんは美月さんといい仲になってほしいな!それには…

「冴島さん、せっかくお隣ですから夕飯ご一緒しませんか?うちで。実は私にはお世話係がいて、その方の作る料理は最高なのです!」
 と言っておくと

「え、あ、あの!そんな!い、いいんですか!?」
 と赤くなる冴島さん。もちろんいいですとも!

「是非とも親交を深めましょう!!」
 と言い、約束し、駅で別れた。本日は夕食が楽しみだわ!
 と私はウキウキと女性専用車両に乗り込んだ。


 まさか今、私のマンションの部屋の寝室で

「ハア!ハア!沙耶華お嬢様!好き…」
 と恍惚な顔で、ベッドでゴロゴロしている女装男がいるとは知らずに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

処理中です...