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悪役令嬢幼女編
悪役令嬢はメイド服を作りたい
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ノックは3回だ。2回だとトイレだし4回以上だと家族相手には堅苦しい。
ノックの回数は国際標準マナーで決まっている。それはおそらくこの世界も同じだ。使用人達が4回ノックしていたしお兄様達は3回ノックしていた。
コンコンコン。
「お父様、エルヴェラールです」
ノックの後は名前を名乗る。緊急の場合は加えて簡潔に要件を述べ、入室許可がおりるまで待つ。
いくら家族や緊急の場合であっても入室許可がおりる前に入室するのは失礼にあたる以前に、場合によっては“私はあなたを殺しに来ました”という意味になるらしい。貴族社会って面倒だな。
「入りなさい」
許可がおりたので扉を開けようとするが重くて開かない。いつもはハンナが開けてくれていたのだがあいにくハンナは休憩中だ。
私が扉と格闘していると扉が急に開き、私は後ろに飛ばされて尻もちをついた。
「ああ、ごめんねエル。痛かったね」
お父様は私を抱きかかえると頭をぽんぽんと撫でた。あ、そういえば私、幼女だった。
お父様の書斎と執務室の扉は他の扉より少し重めに作られており、どちらも外側から開けるには引く開き戸になっている。
それは万が一悪意のある人が来ても少しは時間稼ぎができるからだという。
「一人で開けられるように筋トレします」
「やめなさい」
即答ですか。腹筋バキバキシックスパックの幼女は嫌ですかお父様。
そんなことより外出許可だ。できれば今日明日がいい。
「あの、お父様」
「ああ、そういえば」
お父様は私をソファに座らせると書斎の机から手紙を持ってきた。
「エルはこれを待ってたんでしょう?」
え、何それ知らない。
「存じ上げませんわ。私はお父様にお願いをするために参ったのです」
「リエンの家に遊びに行く?」
「いいえ。街に出たいのです。今度は布屋か仕立て屋に」
「そう。それはいいけれどこっちはどうする?」
待って、先ほどリエンって言いましたかお父様。リエンってまさかあのリエン=セーナ=イズフェス様ではありませんよねお父様。あのヴォルグ様のお父様であらせられるリエン様ではありませんよねお父様。
「こっち…というのは」
「リエンから庭園の薔薇が見頃だから観に来ないかって招待を受けてね。エル、リエンの息子と友達になったんだって?よければお嬢さんも一緒にって言われたんだけど。」
待って、私のお友達でお父様の名前がリエンな人ってヴァルグ様しかいないんだけど。
「それはいつでしょうか」
「うん。明日」
明日か。それは是非とも参加したいので街の散策は今日だな。
「英雄様のお庭、ぜひとも拝見したいです。明日行くのなら今これから街に降りても構いませんか」
「いや、今日は行って帰ったらもう夕方だから駄目。商人に来てもらうなら今日でもいいけれど」
駄目か。別に今回はお忍びとかそういうのではなく、ただ布屋か仕立て屋で布を仕入れたいだけだからそれでもいい気がする。
「急ですが仕立て屋さんのご迷惑になりませんか」
「お忍び貴族の方が扱いに困るから迷惑かもね」
そういうものなのか。確かにアイリスの雑貨屋の店主さんも困っていたかもしれない。
お父様は机から呼び鈴のようなものを取り出して2回鳴らした。
「すぐにオーキッドが来るから客間で待っていなさい」
どうやら呼び鈴は魔道具で離れたところでもお父様が懇意にしている仕立て屋さんを呼び出すことができるものなようだった。
私は一度スケッチブックを取りに部屋に戻ってから客間に向かった。
客間のソファに座って待っていると仕立て屋さんが大量の箱とともに登場した。
「お呼びいただき光栄でございますお嬢様。私はオーキッド=グラスでございます」
オーキッドさんは茶髪にタレ目のイケオジだった。
「エルヴェラール=フィオン=インヴィディアです。急だったにもかかわらずお越し下さってありがとうございます。それで、さっそくなのですが」
私がスケッチブックを開き、侍女服を作りたいので深緑色の布が欲しいと伝えた。
オーキッドさんは私が描いたデザインを見るなりものすごい早さで布を取り出し、並べた。
「侍女服にしては変わった形をしておりますがこちらの布なら無難かと」
オーキッドさんの選んだ布はさすがプロの目利きというべきか、無地の布のはずなのに深みがあり美しくおしゃれに見えるものだった。それも私の理想にかなり近いものだ。
「このデザインにするならばワンピース部分の裾とエプロンの裾のどちらに刺繍を入れるべきでしょうか?」
「エプロンですかね。この白い襟にも刺繍を入れるおつもりなら合わせて白いエプロンに入れたほうが統一感があるかと」
私のデザインを元にオーキッドさんと話し合った結果、襟とエプロンの刺繍は花にすることになった。さらに面白そうだからという理由で仕立ても引き受けてくれることになった。
サイズが分からないという話をすると、インヴィディア家の使用人の制服は全てオーキッドさんのお店で作っているらしく、インヴィディア家の使用人のであれば誰のでも作れるということだった。
私はハンナのものを一着とギフトラッピングを頼んだ。
今は別に繁忙期というわけではないらしく、明後日には完成品を持って来ると言われた。明後日が楽しみである。
ノックの回数は国際標準マナーで決まっている。それはおそらくこの世界も同じだ。使用人達が4回ノックしていたしお兄様達は3回ノックしていた。
コンコンコン。
「お父様、エルヴェラールです」
ノックの後は名前を名乗る。緊急の場合は加えて簡潔に要件を述べ、入室許可がおりるまで待つ。
いくら家族や緊急の場合であっても入室許可がおりる前に入室するのは失礼にあたる以前に、場合によっては“私はあなたを殺しに来ました”という意味になるらしい。貴族社会って面倒だな。
「入りなさい」
許可がおりたので扉を開けようとするが重くて開かない。いつもはハンナが開けてくれていたのだがあいにくハンナは休憩中だ。
私が扉と格闘していると扉が急に開き、私は後ろに飛ばされて尻もちをついた。
「ああ、ごめんねエル。痛かったね」
お父様は私を抱きかかえると頭をぽんぽんと撫でた。あ、そういえば私、幼女だった。
お父様の書斎と執務室の扉は他の扉より少し重めに作られており、どちらも外側から開けるには引く開き戸になっている。
それは万が一悪意のある人が来ても少しは時間稼ぎができるからだという。
「一人で開けられるように筋トレします」
「やめなさい」
即答ですか。腹筋バキバキシックスパックの幼女は嫌ですかお父様。
そんなことより外出許可だ。できれば今日明日がいい。
「あの、お父様」
「ああ、そういえば」
お父様は私をソファに座らせると書斎の机から手紙を持ってきた。
「エルはこれを待ってたんでしょう?」
え、何それ知らない。
「存じ上げませんわ。私はお父様にお願いをするために参ったのです」
「リエンの家に遊びに行く?」
「いいえ。街に出たいのです。今度は布屋か仕立て屋に」
「そう。それはいいけれどこっちはどうする?」
待って、先ほどリエンって言いましたかお父様。リエンってまさかあのリエン=セーナ=イズフェス様ではありませんよねお父様。あのヴォルグ様のお父様であらせられるリエン様ではありませんよねお父様。
「こっち…というのは」
「リエンから庭園の薔薇が見頃だから観に来ないかって招待を受けてね。エル、リエンの息子と友達になったんだって?よければお嬢さんも一緒にって言われたんだけど。」
待って、私のお友達でお父様の名前がリエンな人ってヴァルグ様しかいないんだけど。
「それはいつでしょうか」
「うん。明日」
明日か。それは是非とも参加したいので街の散策は今日だな。
「英雄様のお庭、ぜひとも拝見したいです。明日行くのなら今これから街に降りても構いませんか」
「いや、今日は行って帰ったらもう夕方だから駄目。商人に来てもらうなら今日でもいいけれど」
駄目か。別に今回はお忍びとかそういうのではなく、ただ布屋か仕立て屋で布を仕入れたいだけだからそれでもいい気がする。
「急ですが仕立て屋さんのご迷惑になりませんか」
「お忍び貴族の方が扱いに困るから迷惑かもね」
そういうものなのか。確かにアイリスの雑貨屋の店主さんも困っていたかもしれない。
お父様は机から呼び鈴のようなものを取り出して2回鳴らした。
「すぐにオーキッドが来るから客間で待っていなさい」
どうやら呼び鈴は魔道具で離れたところでもお父様が懇意にしている仕立て屋さんを呼び出すことができるものなようだった。
私は一度スケッチブックを取りに部屋に戻ってから客間に向かった。
客間のソファに座って待っていると仕立て屋さんが大量の箱とともに登場した。
「お呼びいただき光栄でございますお嬢様。私はオーキッド=グラスでございます」
オーキッドさんは茶髪にタレ目のイケオジだった。
「エルヴェラール=フィオン=インヴィディアです。急だったにもかかわらずお越し下さってありがとうございます。それで、さっそくなのですが」
私がスケッチブックを開き、侍女服を作りたいので深緑色の布が欲しいと伝えた。
オーキッドさんは私が描いたデザインを見るなりものすごい早さで布を取り出し、並べた。
「侍女服にしては変わった形をしておりますがこちらの布なら無難かと」
オーキッドさんの選んだ布はさすがプロの目利きというべきか、無地の布のはずなのに深みがあり美しくおしゃれに見えるものだった。それも私の理想にかなり近いものだ。
「このデザインにするならばワンピース部分の裾とエプロンの裾のどちらに刺繍を入れるべきでしょうか?」
「エプロンですかね。この白い襟にも刺繍を入れるおつもりなら合わせて白いエプロンに入れたほうが統一感があるかと」
私のデザインを元にオーキッドさんと話し合った結果、襟とエプロンの刺繍は花にすることになった。さらに面白そうだからという理由で仕立ても引き受けてくれることになった。
サイズが分からないという話をすると、インヴィディア家の使用人の制服は全てオーキッドさんのお店で作っているらしく、インヴィディア家の使用人のであれば誰のでも作れるということだった。
私はハンナのものを一着とギフトラッピングを頼んだ。
今は別に繁忙期というわけではないらしく、明後日には完成品を持って来ると言われた。明後日が楽しみである。
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