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第14部分 愛しい者の中に、感じる懐かしい面影

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後日、図書館にて──

「緑鬼の里は流星によって多大な被害を受けたものの、長の代理を務めていた次代長である“若竹”誘導の元、死んだ者は一名のみだった」

……俺のことだろうか。

自分の知る歴史とは少し違うそれを、俺はじっくり追っていった。

「島での疫病は、緑鬼と人間の協力があり、蔓延することなく抑えられた──」

研究所員の中に、見覚えのない奴がいる気がするが、どいつが“そう”なのかわからない。
街も何か、どこかが以前と違う気がするが、何がどうだったのか思い出せない。

ハッキリと分かるのは、確かに歴史が変わったということ。

一度、滅びそうになったはずの緑鬼の一族。その記載がなくなっていた。
調べてわかったのは、緑鬼の一族は一度も滅亡の危機に陥る事なく、鬼と人との架け橋の役割を果たしてきたということ──

「ねぇ、こんな所で何やってんのよ? ビロード」

後ろからかけられたその声に、俺の心は瞬時に潤う。

「翠(すい)。ちょっとな。こないだ爆発に巻き込まれた話はしたろ?」
「それ! 解錠が必要くらいの怪我だったんだって、さっき所長さんから聞いて、すごく驚いたんだから!」
「すまない……」

 すぐに治ったし、問題ないだろうと思ったのだが、何故か怒っている彼女にとりあえず謝っておく。すると翠は頬を膨らませ拗ねたように言う。

「そうだってわかってたら、もっと色々やってあげたのに……」

 ん、ソレは何とも惜しいことをした気がするな。

「本当にすまない。怪我もすぐ治って、研究の事で頭がいっぱいだったんだよ。大事な実験があったし……」

 そう言って俺は本を閉じて立ち上がり、自分より少しだけ背の低い翠を正面から見つめる。

「本当にもぅ……。で? 何でそんな古い歴史書なんか見てたの?」
「自分の記憶が正しいか確認してたんだよ。頭打ったせいで何か変になってないか、ってな」

 腰までの長い髪は漆黒で、角は二本。

「それで? 大丈夫だった?」

 その瞳は燃えるように揺らめく赤い目で──。
 懐かしい面影を感じながら、俺は言った。

「……あぁ、問題ない」
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