【鬼シリーズ:第三弾】緑鬼のパンツは急所を守る

第13部分 子供用虎パンの偉力

「ビロード！　しっかりしろ、ビロード！」

　声が聞こえる……聞き覚えのある声が──

「……所長…………？」

　俺は一体────

　目を開くと、青い空に白い雲、そして所長の心配顔が目に入ってきた。

　生きてる……戻ってこれたのか……？　それともアレは夢だったのか──？

　起きあがろうと思い手を動かすと、鋭い痛みが走った。

「いててて…………」
「今、解錠の物を取りに行かせてるから！　それまで頑張れ！」

　言われて、身体中が痛くて起き上がるどころの話ではない事に気がついた。

「ありがとう……ございます…………」
「意識が戻って安心した……。
　よくやったな、お前が念力を使って守ってくれたおかげで、監査の連中は皆生きてはいる」

　あぁ、あの機材を勝手に触った奴。生きてるのか……まぁ、よかったな……。

「ったく……おかげさまで高価な機材が沢山お釈迦になったぞ……。グレードの高い機材指定で賠償請求してやる」

　はははは、コレでまたしばらくは研究費に困ることはなさそうだ……。

「あんなクソみたいな者、二度と送ってくれるなとキッチリ物も申すからな」
「よろしく頼みます…………」

　しかし……あの瞬間、指輪を外す間もなかったはずだし、念力を使った記憶もないのだが──

「ところで……お前のその格好はなんだ？　前日祭の出し物の用意でもしてたのか？」

　俺の格好……？

「浴衣に虎パンだなんて、ご先祖様の装束みたいじゃないか」

　なんだって⁉︎
　夢じゃなかったのか⁉︎　あの出来事は……！

「しかもなんだそのパンツ？　浴衣はボロボロなのにパンツだけ無事って。どんだけ丈夫なんだよ」

　パンツだけ無事……⁉︎

　ぐぐぐっと根性で首を動かすと、見えたのは色鮮やかな虎のパンツ。確かに浴衣はボロボロだし体も傷だらけ……なのに。そこだけは無傷だった。

…………まさか子供用虎パンに急所を守られるとは……な…………