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第20話 学校で、落としてしまったペンダント
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その日は、朝からずっと雨が降り続けていました。そのせいで校舎から外に出る生徒はほとんどいません。短い十分の休み時間中は、どこに行っても誰かがいて、華奈は一人になれる場所を見つけることができませんでした。
お昼休みも同じで、教室も図書室も人がいっぱいです。華奈は心の中でシオンに話しかけ続けていました。
『シオン、ごめん……人のいない場所が全然見つからないの……』
『そういう日もあるさ……気にするな!』
『もうちょっと探してみる……!』
華奈はスケッチブックと筆箱をかかえ、校舎の端から端まで、急ぎ足で人のいない場所を探しました。けれども見つからず、体育館の方まで行ってみると、そこではサッカーやバスケットを遊んでいる子達が沢山いました。
「やっぱりここも人でいっぱい……」
体育館の中を入り口からのぞいた華奈はつぶやきます。舞台の袖なら一人になれるかもしれませんが、様々な機材の置かれたそこは、入ることを禁じられています。
「どうしよう……」
少しながめて考えた後、華奈は教室の方へ戻ることにしました。くるりと振り向き校舎の方を見ると、絢音たち、グループの子たちが、わたり廊下を体育館の方に向かってきています。華奈は、笑顔で手を振りながら話しかけました。
「絢音ちゃんたち! 体育館で遊ぶの?」
絢音が華奈をじっと見つめ、手を軽く振ってから言います。
「少しでも人の少ない所を探しているだけよ。教室も他の所も人が多いし雨のせいでジメジメしているし」
その様子を見ていたグループの子たちが、絢音の頭をグリグリとなで回したり、背中をポンポンと叩いたりしています。絢音は「やめてよ、もう」といいながらも、本気で嫌がってはいないようでした。そして、
「華奈さんは?」
と、聞いてきます。そんな彼女たちの様子を、なぜだかうれしい気持ちで華奈は見ていました。そして、私もよ、と答えようとしたその時──
「──‼──」
華奈の後ろ、体育館の中からバスケットボールが飛んできて、なんと華奈の背中に当たってしまいました。
華奈は前のめりに倒れ、はずみで持っていた筆箱もスケッチブックも地面に落ちてしまいました。
「ごめーん! 大丈夫かー?」
ボールを投げたらしい上級生が、体育館の中の方から叫びます。
「だ……大丈夫です。背中とひざがちょっと痛いけど……」
華奈がなんとか立ち上がると、シオンの声が聞こえてきました。
「華奈! 大丈夫か⁈」
目をパチクリさせると華奈は、シオンの姿を探して落としてしまった筆箱を見ました。するとなんと、蓋が開いてしまっています。
急いで拾い確認すると、中は空でシオンもいません。鉛筆だけは筆箱のすぐ横に落ちていたので拾って戻しましたが、ペンダントもどこかに転がっていってしまったようで、見当たりません。
『俺はここだ。心配するな』
再びシオンの声が聞こえて、今度はそれが心に直接話しかけられているのだとわかりました。
『シオン、どこにいるの?』
『華奈の肩の上』
言われて少し首を振ると、何も見えないけれど、左肩の上に何かが乗っているような感じがすることに気がつきます。
『ゴメンね、転んじゃった……シオンは大丈夫?』
『俺は大丈夫。それよりペンダントが……』
シオンがそう言いかけた時、心配してやってきた絢音たちが華奈に話しかけました。
「華奈さん、大丈夫?」
「ほんとごめんな……」
先程大丈夫かと聞いてきた上級生も駆けつけて、すまなさそうにそう言いました。
「先輩たちは、もっとボールのコントロールを上手にしてくださいよー!」
わいわいと、集まってきた人たちに囲まれて、華奈は「大丈夫、ありがとう」と言いながらスケッチブックを拾い、さらに地面の上をキョロキョロと見ながらペンダントを探します。
「華奈ちゃん、何か落としたの?」
「う……うん……」
(どうしよう、学校に持ってきたらダメなペンダントを探してるなんて言えないし……)
華奈が暗い顔をして下を向いていると、絢音が華奈の手をつかんで言いました。
「華奈さん、念のため保健室に行くわよ!」
「え、あ……でも私……!」
絢音に問答無用でひっぱられ、グループの子達に囲まれた華奈は、保健室へと連れていかれました。
お昼休みも同じで、教室も図書室も人がいっぱいです。華奈は心の中でシオンに話しかけ続けていました。
『シオン、ごめん……人のいない場所が全然見つからないの……』
『そういう日もあるさ……気にするな!』
『もうちょっと探してみる……!』
華奈はスケッチブックと筆箱をかかえ、校舎の端から端まで、急ぎ足で人のいない場所を探しました。けれども見つからず、体育館の方まで行ってみると、そこではサッカーやバスケットを遊んでいる子達が沢山いました。
「やっぱりここも人でいっぱい……」
体育館の中を入り口からのぞいた華奈はつぶやきます。舞台の袖なら一人になれるかもしれませんが、様々な機材の置かれたそこは、入ることを禁じられています。
「どうしよう……」
少しながめて考えた後、華奈は教室の方へ戻ることにしました。くるりと振り向き校舎の方を見ると、絢音たち、グループの子たちが、わたり廊下を体育館の方に向かってきています。華奈は、笑顔で手を振りながら話しかけました。
「絢音ちゃんたち! 体育館で遊ぶの?」
絢音が華奈をじっと見つめ、手を軽く振ってから言います。
「少しでも人の少ない所を探しているだけよ。教室も他の所も人が多いし雨のせいでジメジメしているし」
その様子を見ていたグループの子たちが、絢音の頭をグリグリとなで回したり、背中をポンポンと叩いたりしています。絢音は「やめてよ、もう」といいながらも、本気で嫌がってはいないようでした。そして、
「華奈さんは?」
と、聞いてきます。そんな彼女たちの様子を、なぜだかうれしい気持ちで華奈は見ていました。そして、私もよ、と答えようとしたその時──
「──‼──」
華奈の後ろ、体育館の中からバスケットボールが飛んできて、なんと華奈の背中に当たってしまいました。
華奈は前のめりに倒れ、はずみで持っていた筆箱もスケッチブックも地面に落ちてしまいました。
「ごめーん! 大丈夫かー?」
ボールを投げたらしい上級生が、体育館の中の方から叫びます。
「だ……大丈夫です。背中とひざがちょっと痛いけど……」
華奈がなんとか立ち上がると、シオンの声が聞こえてきました。
「華奈! 大丈夫か⁈」
目をパチクリさせると華奈は、シオンの姿を探して落としてしまった筆箱を見ました。するとなんと、蓋が開いてしまっています。
急いで拾い確認すると、中は空でシオンもいません。鉛筆だけは筆箱のすぐ横に落ちていたので拾って戻しましたが、ペンダントもどこかに転がっていってしまったようで、見当たりません。
『俺はここだ。心配するな』
再びシオンの声が聞こえて、今度はそれが心に直接話しかけられているのだとわかりました。
『シオン、どこにいるの?』
『華奈の肩の上』
言われて少し首を振ると、何も見えないけれど、左肩の上に何かが乗っているような感じがすることに気がつきます。
『ゴメンね、転んじゃった……シオンは大丈夫?』
『俺は大丈夫。それよりペンダントが……』
シオンがそう言いかけた時、心配してやってきた絢音たちが華奈に話しかけました。
「華奈さん、大丈夫?」
「ほんとごめんな……」
先程大丈夫かと聞いてきた上級生も駆けつけて、すまなさそうにそう言いました。
「先輩たちは、もっとボールのコントロールを上手にしてくださいよー!」
わいわいと、集まってきた人たちに囲まれて、華奈は「大丈夫、ありがとう」と言いながらスケッチブックを拾い、さらに地面の上をキョロキョロと見ながらペンダントを探します。
「華奈ちゃん、何か落としたの?」
「う……うん……」
(どうしよう、学校に持ってきたらダメなペンダントを探してるなんて言えないし……)
華奈が暗い顔をして下を向いていると、絢音が華奈の手をつかんで言いました。
「華奈さん、念のため保健室に行くわよ!」
「え、あ……でも私……!」
絢音に問答無用でひっぱられ、グループの子達に囲まれた華奈は、保健室へと連れていかれました。
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