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第11話 ペンダントに力が移される理由
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「……良い行いをすると、力がペンダントに入るのよね?」
華奈はもう一度確認しました。
「半分だけ、な」
「半分だけ?」
「あぁ。このペンダントは俺の力の入れ物ではあるんだが、常に、俺の持つ力の半分が自動で入るように調整されているんだ」
全部ではないんだ、と華奈は少し不思議に思いました。けれど、先程シオンが言っていたことを思い出し、その理由が少しわかりました。
「細い糸のようなものでつながってるって言っていたのは、そのため?」
「そう。『良い行い』をすると、助かった人の心に『ありがとう』っていう、感謝の気持ちとかが生まれるだろう? それが、俺の力となり、その半分がペンダントに送られる。
そして、何か願いを叶えるのに力を使えば、ペンダントと俺の両方から、同じだけ力が減るんだ」
「なるほど……」
華奈は話を聞いて、考えました。
きっと、ペンダントから力をどんどん使われることで、シオンの力も減り、バランスを取るように体もどんどん小さくなっていってしまったのね……。
そう気づいた華奈は、心が沈んで暗くなってしまいます。けれど、そのままじゃいけないと思い直し、勇気を出して聞きました。
「気になったことがあるのだけど……」
「なんだ?」
「どうしてペンダントに力が行くようになっているの? シオンとペンダントがつながっていなければ、はじめからペンダントなんかなければ……落としてしまって慌てることも、勝手に力を使われてしまうこともなかったのに……」
自分のしてしまったことに胸が痛く、穴があったら入りたいくらいの気持ちで華奈はシオンに聞きました。
「それはだな。無事に行き来するため、だ」
シオンは、とても真剣な表情で話します。
「世界を越えるための扉とその道は、とても繊細なんだそうだ。俺たち子供は、まだ力を上手く封じることができない。そして、そのまま通ったら、漏れ出ている力の影響で道も扉も壊れてしまうと言われている。
そして壊れたら、二度とその世界とは行き来する事ができなくなってしまう。
このペンダントは、力が外に出ないよう、周りに影響しないよう封じてくれる物なんだ」
大人たちは本当にすごいんだぞ、道具を使わずその身一つで、自ら力を封じ、世界を越えることが出来るのだから。そうシオンはうれしそうに言いました。
「そうなんだ……」
華奈は、目を閉じてつぶやきます。そして、もう一度、手伝うという決意をシオンに伝えました。
「シオンが良いことをしていったら……力は貯まるのよね……。私、頑張って手伝うわ!」
「……そう言ってくれるのはありがたいけど……手伝うのは本当にむずかしいと思うぞ? だって、人は無欲ではいられないものだろう?」
たしかに。華奈が雨に濡れるのが嫌だなと思った時にもペンダントは反応しました。そんなささやかな願いにも反応してしまうのだから……
「わたし以外にできそうな人を探す……?」
「それも多分無理だ。そもそもこれは、俺以外の者が使うことはできないはずなんだ」
「じゃあ、なんで私は……」
使えてしまったのか。その疑問にはシオンがすぐに答えてくれました。
「相性とやらが良いと、使用できてしまうこともあると教わった……」
ごくまれな事ではあるが、注意しろと言われていたのに、とシオンは頭を抱えました。
「だから、力がどんどんなくなっていった時は、びっくりしたぞ。まさか自分がそんな、万に一つのレアケースに当てはまるとは思ってなかったからな」
「そうなのね……」
ぐうぜんに、ぐうぜんが重なったとはいえ、本当に大変なことをしてしまったのだと、華奈は悩みます。
「体が縮み始めてすぐ『良い行い』を一つしてみたが、力が減るスピードには追いつかなかったし……」
「良い行いって、何をしたの?」
「落とし物を探していたご婦人がいてな。人の姿に変身して、彼女の落としたという小さな袋を見つけてあげたんだ」
そういうお手伝いも『良い行い』になるのね、と華奈は心のメモに記録しました。
「その後、さらに良い行いをしようと出来る事を探していたんだが……なぜかすれ違う者が皆こちらを見てくるし……」
ゆるくウェーブのかかった美しい金髪、まるで御伽噺にでも出てきそうなほどにキレイな顔立ちに燃えるような赤い目のシオン。そのうえ王子様みたいな服を着た彼が、本来の大きさだったなら、確かに目立つだろうと華奈は思いました。
「そのうち、話しかけられたと思ったらあっという間に沢山の女の人たちに囲まれるし……何だか光を発する薄い板のようなものは向けられるし…………」
うつむき、ふるえながら言うシオン。向けられたという板は多分スマホだろうけれど、きっとすごく怖かったのだろうな……と、華奈はますます申し訳なくなってきて、もう一度謝りました。
「本当にごめんなさい……」
華奈はもう一度確認しました。
「半分だけ、な」
「半分だけ?」
「あぁ。このペンダントは俺の力の入れ物ではあるんだが、常に、俺の持つ力の半分が自動で入るように調整されているんだ」
全部ではないんだ、と華奈は少し不思議に思いました。けれど、先程シオンが言っていたことを思い出し、その理由が少しわかりました。
「細い糸のようなものでつながってるって言っていたのは、そのため?」
「そう。『良い行い』をすると、助かった人の心に『ありがとう』っていう、感謝の気持ちとかが生まれるだろう? それが、俺の力となり、その半分がペンダントに送られる。
そして、何か願いを叶えるのに力を使えば、ペンダントと俺の両方から、同じだけ力が減るんだ」
「なるほど……」
華奈は話を聞いて、考えました。
きっと、ペンダントから力をどんどん使われることで、シオンの力も減り、バランスを取るように体もどんどん小さくなっていってしまったのね……。
そう気づいた華奈は、心が沈んで暗くなってしまいます。けれど、そのままじゃいけないと思い直し、勇気を出して聞きました。
「気になったことがあるのだけど……」
「なんだ?」
「どうしてペンダントに力が行くようになっているの? シオンとペンダントがつながっていなければ、はじめからペンダントなんかなければ……落としてしまって慌てることも、勝手に力を使われてしまうこともなかったのに……」
自分のしてしまったことに胸が痛く、穴があったら入りたいくらいの気持ちで華奈はシオンに聞きました。
「それはだな。無事に行き来するため、だ」
シオンは、とても真剣な表情で話します。
「世界を越えるための扉とその道は、とても繊細なんだそうだ。俺たち子供は、まだ力を上手く封じることができない。そして、そのまま通ったら、漏れ出ている力の影響で道も扉も壊れてしまうと言われている。
そして壊れたら、二度とその世界とは行き来する事ができなくなってしまう。
このペンダントは、力が外に出ないよう、周りに影響しないよう封じてくれる物なんだ」
大人たちは本当にすごいんだぞ、道具を使わずその身一つで、自ら力を封じ、世界を越えることが出来るのだから。そうシオンはうれしそうに言いました。
「そうなんだ……」
華奈は、目を閉じてつぶやきます。そして、もう一度、手伝うという決意をシオンに伝えました。
「シオンが良いことをしていったら……力は貯まるのよね……。私、頑張って手伝うわ!」
「……そう言ってくれるのはありがたいけど……手伝うのは本当にむずかしいと思うぞ? だって、人は無欲ではいられないものだろう?」
たしかに。華奈が雨に濡れるのが嫌だなと思った時にもペンダントは反応しました。そんなささやかな願いにも反応してしまうのだから……
「わたし以外にできそうな人を探す……?」
「それも多分無理だ。そもそもこれは、俺以外の者が使うことはできないはずなんだ」
「じゃあ、なんで私は……」
使えてしまったのか。その疑問にはシオンがすぐに答えてくれました。
「相性とやらが良いと、使用できてしまうこともあると教わった……」
ごくまれな事ではあるが、注意しろと言われていたのに、とシオンは頭を抱えました。
「だから、力がどんどんなくなっていった時は、びっくりしたぞ。まさか自分がそんな、万に一つのレアケースに当てはまるとは思ってなかったからな」
「そうなのね……」
ぐうぜんに、ぐうぜんが重なったとはいえ、本当に大変なことをしてしまったのだと、華奈は悩みます。
「体が縮み始めてすぐ『良い行い』を一つしてみたが、力が減るスピードには追いつかなかったし……」
「良い行いって、何をしたの?」
「落とし物を探していたご婦人がいてな。人の姿に変身して、彼女の落としたという小さな袋を見つけてあげたんだ」
そういうお手伝いも『良い行い』になるのね、と華奈は心のメモに記録しました。
「その後、さらに良い行いをしようと出来る事を探していたんだが……なぜかすれ違う者が皆こちらを見てくるし……」
ゆるくウェーブのかかった美しい金髪、まるで御伽噺にでも出てきそうなほどにキレイな顔立ちに燃えるような赤い目のシオン。そのうえ王子様みたいな服を着た彼が、本来の大きさだったなら、確かに目立つだろうと華奈は思いました。
「そのうち、話しかけられたと思ったらあっという間に沢山の女の人たちに囲まれるし……何だか光を発する薄い板のようなものは向けられるし…………」
うつむき、ふるえながら言うシオン。向けられたという板は多分スマホだろうけれど、きっとすごく怖かったのだろうな……と、華奈はますます申し訳なくなってきて、もう一度謝りました。
「本当にごめんなさい……」
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