力の欠片のペンダント

河原由虎

文字の大きさ
上 下
6 / 27

第6話 ペンダントの力と小さな少年

しおりを挟む
 まわりに誰もいないことを確認してから、そっと取り出してみました。するとなんと、ペンダントが昨日と同じように光っているではありませんか。

「また光ってる……」

 華奈がペンダントを見つめていると、その光が一瞬だけ強くなり、するとその直後、ザーザー降っていた雨がおさまりはじめました。

「もしかして、わたしの願いを叶えてくれているの……?」

 あっという間に雨がやんだので空を見上げてみると、あつい雲で暗かった空が明るくなっていました。雲に切れ間もできていて、間から青い空も見えています。

(こんな不思議なことってあるんだろうか……もしこのペンダントにそんな力があるのなら、本当に早く返さないと……!)

 そう思った華奈は、まだほんわりと光るペンダントを見ます。すると、まるで何かにとりつかれたかのように目が離せなくなり──

『自分の物にしてしまいたい』

 そんな言葉が華奈の頭にうかんできました。
 それは昨日『ほしい』と思ってしまった時よりもずっと強く、良くない感じがして……。自分の中にとつぜん現れたその言葉に華奈は驚き、怖くなりました。

(コレは拾った物! だから早く持ち主に返さなきゃ……!)

 目をつむってそう強く自分に言い聞かせた華奈は、ペンダントを急いでポケットに戻しました。
 やっぱり元あった場所に戻してこよう。そう決めて、急いでそこへと向かいます。

 青い空がどんどん広がっていき、残った白い雲が少し赤みを帯びてきた頃、華奈はその場所に着きました。公園で遊んでいた子供たちは、もうほとんど帰ったらしく、奥の砂場で小さな子が二人遊んでいるのが見えます。
 華奈は辺りを見回し、誰もいないことを確認してから、公園入り口の茂みに少しだけ近寄りました。

「この茂みの前で見つけたのよね……」

 朝、ガサガサと不自然に動いた茂みを、おそるおそる見つめてみますが、今は風で葉が少しゆれているだけのようでした。

「朝は何か動物でもいたのかな……」

 そう言いながら、ペンダントを元の場所に置くためにしゃがむと――

「おい! お前!」

 突然、どこからか怒っているような小さな声が聞こえてきました。
 華奈は驚いて、慌てて辺りを見回し、声の主を探します。ですが、周りには誰もいません。

「ここだ、ここ! 目の前にいるじゃないか、ちゃんと見ろ!」

 再び聞こえたその声に、華奈はまさかと思いながら、目の前の草を両手でよけてみました。
 するとそこには、とてもキレイな顔をした、金色にかがやく小さな少年が、両手を腰にあてて立っていました。

「見えたか⁈」
「手のひらサイズの……小人さん……?」

 よく見ると、金色にかがやいているのは彼の髪で、長くやわらかそうな三つ編みが、その右肩からたれています。
 服は白地に金の刺繍、金色のボタンがついていて、足首まである赤いマントはそよ風でなびいていて。まるで物語に出てくる王子様みたい、と華奈は思いました。

「小人じゃねぇ! 力が足りなくなって小さくなっちまっただけだ!」

 何やらものすごい怒った顔とその乱暴な物言いに、ちょっと驚いたけれど。なにせサイズが小さいので、怖くはありませんでした。

「小さくなっちゃっただけの……人……?
 私は華奈、あなたの名前は?」

 華奈は興味津々、自己紹介をして小さい少年に名前を聞きました。

「俺の名前はシオン!」

 少年はプリプリと怒りながらも教えてくれます。

「そんなことより、お前! 勝手に使っただろう、俺の力の結晶を!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

ぼくと、猫のいたずら ―きゃっちみー・いふゆーにゃん!🐾―

蒼生光希
児童書・童話
大事なものを猫にとられちゃった!追いかけようとしたぼくに、とんでもないことがおきたにゃん!

マサオの三輪車

よん
児童書・童話
Angel meets Boy. ゾゾとマサオと……もう一人の物語。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

勇者びーむ

ちありや
児童書・童話
むかしむかし、人々を苦しめる悪い魔王がいました。 王様は魔王を倒すべく、神に祝福された若者を勇者にしたのです……。

猫神学園 ~おちこぼれだって猫神様になれる~

景綱
児童書・童話
「お母さん、どこへ行っちゃったの」 ひとりぼっちになってしまった子猫の心寧(ここね)。 そんなときに出会った黒白猫のムムタ。そして、猫神様の園音。 この出会いがきっかけで猫神様になろうと決意する。 心寧は猫神様になるため、猫神学園に入学することに。 そこで出会った先生と生徒たち。 一年いわし組担任・マネキ先生。 生徒は、サバトラ猫の心寧、黒猫のノワール、サビ猫のミヤビ、ロシアンブルーのムサシ、ブチ猫のマル、ラグドールのルナ、キジトラのコマチ、キジ白のサクラ、サバ白のワサビ、茶白のココの十人。 (猫だから十匹というべきだけどここは、十人ということで) はたしてダメダメな心寧は猫神様になることができるのか。 (挿絵もあります!!)

突然、お隣さんと暮らすことになりました~実は推しの配信者だったなんて!?~

ミズメ
児童書・童話
 動画配信を視聴するのが大好きな市山ひなは、みんなより背が高すぎることがコンプレックスの小学生。  周りの目を気にしていたひなは、ある日突然お隣さんに預けられることになってしまった。  そこは幼なじみでもある志水蒼太(しみずそうた)くんのおうちだった。  どうやら蒼太くんには秘密があって……!?  身長コンプレックスもちの優しい女の子✖️好きな子の前では背伸びをしたい男の子…を見守る愉快なメンバーで繰り広げるドタバタラブコメ!  

どろんこたろう

ケンタシノリ
児童書・童話
子どもにめぐまれなかったお父さんとお母さんは、畑のどろをつかってどろ人形を作りました。すると、そのどろ人形がげんきな男の子としてうごき出しました。どろんこたろうと名づけたその男の子は、その小さな体で畑しごとを1人でこなしてくれるので、お父さんとお母さんも大よろこびです。 ※幼児から小学校低学年向けに書いた創作昔ばなしです。 ※このお話で使われている漢字は、小学2年生までに習う漢字のみを使用しています。

処理中です...