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-第26夜- そして議員は殺される
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そして、その日はやって来た。
夜が明け、限られた朝と昼がやって来る。
議員主催のパーティーが遂に開かれたのであった。
「いよいよですね先輩」
「あぁ」
『レーネは自分の任務をちゃんと覚えているのだろうか?』
生クリーム塗れの半切りされたイチゴをほっぺに付けながら、それに気付きもせずにもぐもぐとケーキに夢中の彼女に対し、私はそう感じたのだ。
「レーネ、お前は今日の……」
そう声を掛けようとした時には既に彼女の背中は小さくなっていた。埃を立てぬように静かに、とても軽やかに、それでいて彼女は足早にケーキを配っているシェフのテーブルへと戻って行ったのだ。
(あいつ、まだおかわりを貰う気なのか……)
「そういえばイアンは何処に……」
起きてから彼の姿を今日はまだ見ていなかった。てっきり先に会場入りを果たして、任務に当たっているとばかり思っていたけどさっきから彼の姿が見えない。まさかと思うが彼まで……。
この嫌な予感は見事に的中した。レーネの向かった先へと私も向かうとそこには他の人を差し置いて無邪気な子供みたいにケーキを催促している彼の姿があったのだ。
「「ケーキ!ケーキ!」」
彼らは「おかわりを早く寄越せ」と言わんばかりに息を揃えて同じ単語を何度も何度も繰り返していた。ケーキ配り担当の人は少し、動揺しながらもくしゃりと微笑み「そんなに慌てなくてもまだまだケーキはありますよ。厨房にはあと5つもこれと同じくらいのホールケーキが残っていますので。だから、どうか皆さん、慌てずに急かさずに」と彼らに言い聞かせていた。
(おいおい嘘だろ……いい歳した大人が子供みたいにケーキを欲しがって……そんなに美味しいのか?ここのケーキは)
私はまだこのパーティーの出し物には1つも手を触を触れていないがこの食い付き様は正直異常だ。自分の子供や孫を連れて来た者達が子供達と共にケーキを食べるならまだしも、独り身の大人までもが目を輝かせてケーキのおかわりを求めに来ている。
(まだ本パーティーは始まってないというのに……前祭でこの盛り上がりようか……ちょっと私も気になってきたな。あのケーキが……)
私も貰いに行こうかと思った時、後ろから声を掛けられた。
「漸くお目覚めですか?赤ずきん殿」
振り返るとそこには昨日の嫌な2人組が立ったいた。
「よおっ~す」
手を挙げて巫山戯た挨拶をしてくるショタ顔は今日もこの調子の様だ。嫌味な男の方も相変わらずクールを気取っている。
「羽振りがいいんだ白銀の議員は。普通のパーティーじゃなかなか見ないだろ?こんなお茶や珈琲みたいな感覚でケーキやワイン、シャンパンを参加者全員に振る舞う人は。これが富裕層の力量って奴なんだろうな」
「アルヴァロア議員ってメルエムの長者番付にも名前が載ってるみたいっすよ」
「ほぉ~そうなのか?だ、そうだ」
これはなんの嫌味なのだろうか?私はケーキおろか参加者全員に配られるワインやシャンパンすら手渡されていないというのに、この2人はその事をまるで気にも止めずに黄金の液体が注がれた細身のグラスをグラグラグラグラと揺らし、私に見せ付けてくる。本当になんなんだ……こいつらは……。
私は少しムッとしながらも「そう」と冷たい声で返し、加えて「それで?」と言った。
「それでって……なぁ?」
「ねぇ?」
私の問いに彼らは不思議そうな顔をして互いに見合う。
ワザとやっているのか知らないが、こういう態度も妙に私の気に触る。
「あ~そうですか。なんでもないですよ、もう。私はこんな嫌味に付き合ってる程、暇じゃないんで」
「え?見るからに暇そうじゃないか?」
「なんなら、今ちょっとムロールパティシエの作られたイチゴのホールケーキ気になってませんでした?」
覗き込むかの様にニヤニヤと私の顔を見つめてくるショタ顔のせいで食欲が失せた。私はケーキを諦め、この嫌な空気が支配する部屋から移動しようと動き出すとショタ顔が「あ、そうそう。後で追加でモンブランも来るみたいですよ~!しかも茶色いのと黄色いのが2種類!!」とデカデカと私の背中に投げ掛けてきたのだ。それだけには飽き足らずそのショタの先輩も「そうそう、モンブランだけじゃなくてイチゴのタルトやシャインマスカットのタルトに国産牛だけを使って作られた五つ星のチーズケーキも振る舞われるそうだな~」と嫌味ったらしい声で聞かせてきたのだった。
(あいつら……分かってて)
「今、ダイエット中だから!」
私は振り返ることなくそう言うと。両耳を両手で塞ぎ、その場を大きな足踏みで後にした。
そして、時は流れ正午。
まぁ予告通りと言えば予告通りだが、午前中は特に何も起こらなかった。何故ならばパーティーが本格的に始められてなかったからな。
私達は今、待機室の中へといる。どうやら他の参加者達も皆、別の待機室で待機させられているみたいだ。
「秘書のエリッサ氏から見せて貰った予告状には日付けと場所、そして殺害する対象の名は書かれていたが時間帯は特に記載されていなかった。そうすると奴らはこのパーティーが始まる12時半丁度から16時の間に議員の命を奪う筈だ」
「12時半から16時の間……この3時間半は一瞬足りとも気が抜けませんね」
レーネの言葉にイアンは「あぁ」とだけ答える。
こいつらはほっぺに生クリームを付けながら何を言っているのだろうか?私にはまるで説得力が感じられなかった。
「午後はしっかり頼むぞ2人共。午前中はケーキばっか食べていたんだから」
言い方が少し妬ましかったのかレーネが「あれ、先輩はケーキ食べなかったんですか?」と悪気無く尋ねてきた。
「そういえばお前は食ってなかったな。なんなら午前中は全くって程、見なかったぞ?お前、一体何処いたんだ?」
もしかしたら、こいつらに『思いやり』や『優しさ』、『気遣い』なんてものを心の何処かで期待していた私が馬鹿だったのかもしれない。
私はただ「今、ダイエット中だから」とだけ言い、「ははっ」と全く笑ってない笑い声を無理に作った。部屋を後にする際、私はなんとか外に出せた苦し紛れの声で「2人共、口周りをよく拭いておけ」とだけ言い残したのだ。
そして、パーティーは遂に開始される。
会場内は白銀の黎鳥達が警護するとの事で私達3人は施設内の巡回を任された。
「なぁこれって俺達が呼ばれた意味あったか~?」
不満を漏らすイアンに対しレーネは「そういうのは思っても言っちゃいけない決まりですよ!私までモチベ下がっちゃいます。組織全体の士気に掛かりますからね」と返す。
「んまぁ、そう言われればそうだけどさぁ」
彼は非常に退屈そうだ。
しかし不満が募っていたのは彼だけでは無かった。勿論、この私も凄く凄~く不満が溜まっていたのだから。
「なぁ、レーネ。お前らがさっき食べてたケーキってそんなに美味しかったのか?」
少し間を置いてからレーネは答えた。
「そりゃあ、勿論!凄く甘くてそれでいて柔らかくてとにかく美味しかったんですよ!!!」
彼女は目を輝かせてその魅力を伝えてきた。目の光ようから嫌でもケーキの魅力が伝わってくる。
「そうか、それは良かったな」
(なんなんだった、今の間は)
すると、今度はイアンまでもがその魅力について熱弁し出したではないか。
「俺は今まで生きてきた中であれ程、美味しいケーキを食べた事は無かった!!そんじょそこらの苺のショートケーキとは訳が違う。何が違うって言うとな……」
そこから先は思い出すだけでも虫唾が走る。あんなにも苺のケーキについて熱くそして強く。語る2人は初めて見た。聞けば聞くほど、そのケーキが食べたくなって仕方が無かった。
(まだケーキ残ってるかな……後で訊きに行ってみようかな)
そんな事を考えているとレーネが「でも、シャンパンは貰えて良かったですね!ここのシャンパン、うちがよく愛飲しているシャンパンと同じくらい美味しいんですよ!」と言って来る。私は「あぁ、まぁ、でも貰えたの昼休憩入ってからだったけど」と返した。レーネは「へぇ~そうだったんですね~!」と興味無さそうな反応だ。
こんな感じで私達は適当に喋りながら一通り巡回を終えると会場へと戻った。
「お疲れさん。気高き(笑)教会の聖職者殿」
出入り口の近くには今、一番会いたくない2人組がこれ見よがしにと待っていたのだ。
イアンは何か言いたそうだったが私が彼の顔の前に手を置き、黙らせる。
「それはどうも。政治家の狗のお2人さん」
向こうが嫌味を言ってくるならこっちもそれで返すだけだ。
嫌味大好きな男の方は特に動じなかったが彼の部下のショタ顔が顔を真っ赤にし過剰な反応を示した。
「くっ~、違うもん違うもん!誰が政治家の犬(?)だよ!僕らは人間だし……あ、黎鳥か。いや、人間か。ちゃ、ちゃんとした名前だってあるんだから!ね~先輩」
どうやら彼には比喩がまだ早かったみたいだ。それと嫌味の方も。もう少し解り安くてイメージしやすい言葉で言うべきだろうか?
「そういえば、あんたらの名前聞いてなかったな。なんだったっけ?」
「あ、私も知りたいです!教えてください!」
イアンが唐突にそんなことを言い始めるかと思いきや、レーネも彼に便乗した。
でも正直、これに関しては私もナイスと思った。だって、この嫌味な男の名前覚えておきたいから。まぁ、もう会う事はないと思うけど……。それと……この、嫌味な男に向かって「先輩、先輩」って懐いているショタ顔の男はなんて名前だったけ?確か……キュ……キュウリ?キューカンバー?キュー太郎?みたいな、キュから始まる名前だったと思うんだけど……。
ずっとショタ顔、ショタ顔って心の中で呼んでたせいか彼が嫌味男から何て呼ばれていたか忘れてしまっていた。
だから、これは絶好の機会。ナイスタイミングって訳だ。
「何故、俺らが貴様らに名を教えなければならない、俺らはな……」
「僕の名前はキュクロです!キュ・ク・ロ!!!政治家の犬なんかじゃありませんから!!!」
キュクロと名乗ったショタ顔が先輩の言葉を遮って自己紹介をしてくれたのだ。
(あ~そういえば、そんか名前だったけ)
私がモヤモヤからスッキリしていると、嫌味な男は「ちっ、なんで余計なこと言うんだよ、俺まで名乗らないといけないじゃないか」と舌打ちしながら部下のキュクロを軽く叱ると「俺はエルヴィス。“名”か“姓”かは言わない。好きなように捉えろ。じゃあな。もうお前らとは今後、会わないことを願っている」と言い残し、「行くぞ」とキュクロを連れて施設内の巡回へと向かった。
パーティーが始まって1時間半が経過した頃だろうか。
最初のアルヴァロア議員のスピーチ以来の大きな催し物が始まろうとしていた。
どうやら地元のミュージカル系劇団が見世物として1時間程の劇を見せてくれるそうだ。
その準備が今現在、私達の目の前で行われている。
「にしてもなんでこう貴族や政治家ってのはパーティーが好きなんだろうな。こういう出し物以外の時間はただ適当に酒飲んで美味しい飯食って、友達や偉い人と食っちゃべってるだけなのにな」
「私達には理解し難い世界なんだろうな。なんというか次元が違うって言うか……住んでいる領域が違うんだろうな」
私の返しにイアンは妬ましそうな顔で「あぁ~同じ人間で同じこの世界に住んでいる筈なのに、こうも格差が激しいだなんて……ホントつくづく思うよ。この世界って本当に理不尽で不公平で不平等だって……」と本音を漏らした。
こればかりは私も激しく共感出来るが「まぁ、仕方ないだろ。そういうものなんだ」としか返せなかった。
劇団員の準備が終わりに近付いてきたのか長い事、この部屋を照らしていた高級なシャンデリアがその明かりを消し、先程まで大賑わいだった会場が一気に静寂へと包まれて行く。
「そういえばお前はどうなんだ?レーネ。お前は上流階級の出身だからこういうパーティーなんて、もう慣れっこだろう?今までも結構、頻繁にやってきたんじゃないのか?」
「ん~どうでしょうね。まぁ、でもそこそこだと思いますよ。私からしたらこんなのビッフエみたいな感覚なんで!」
(なんでだろう。彼女は悪意無く言った筈なのに程よく私をイラつかせ、程よく殺意を湧かせてくれる。やっぱり、こいつとは合わないんじゃないのか?根本的に。見方とか考え方、価値観・世界観が彼女とはあまりにも合わなすぎる気がする)
そんな事を考えているとレーネは「あ、そうそう。良かったら先輩もケーキ食べます?さっきステーキを切り分けてる使用人に訊いたら、まだまだ予備のケーキが残ってるって言ってましたよ!今日中に食べ切れなかったら、廃棄処分するって言ってたので良かったら、貰ってきてあげましょうか?」と素晴らしい提案をしてきたのだ。
前言撤回。レーネは素晴らしい部下だ。いや、もう最高の相棒といっても過言では無いのかもしれない。私は勿論、頷き。「任せたぞ、レーネ」と両手を彼女の両肩に「ポン」と置き、この想いを託した。
「全く、子供だなお前は」
会話の一部始終を聞いていたイアンが私を横目に言う。
「悪かったなイアン。私はまだピチピチの16歳。あんたと違って子供なんだよ!まだ」
そう返すと「何処かの黒服の影響でも受けたか?嫌味な奴になってるぞ」と返してきた。
レーネが私のおつかいを頼まれている間に劇の準備は終わり、遂に始まった。アルヴァロア議員と彼と同じ政党の者が座る席は会場の中央に位置し、四方八方から彼の様子を監視出来るようにしてある。
また、毒味約を3名程付け、彼の元へと運ばれてくる料理は全てその毒味役を一度通した上で、テーブルの上に置かれるようになっている。
会場内にはパーティーの参加者の扮した聖職者や白銀の鴉がおり、それらも含めて24名が監視及び護衛に当たっている。それだけではなく、施設内のありとあらゆる所に巡回中の警務官や黎鳥。聖職者がいる為、到底、狼如きに彼を抹殺出来るような隙は無かった。
「にしても、遅いなレーネ」
私は小声で隣に立つイオンに言った。
「あいつは優秀だが、ちょっと抜けている所がある。どうせ道にでも迷ってるんだろ」
「まぁ、だといいがな」
そう、この状況でとても議員を殺せるとは思えない。前日から入念な持ち物検査や本人確認が細部にまで渡り、行われていたんだ。この中に狼がいるとも思えない。と、なると奴らはどのようにして議員を抹殺するつもりなんだ?
ここに来る前にトルグレム・アートから聞いた話を思い出す。あいつが言うには予告状を出された者は確実に殺されていると言う。殺害方法は様々で、なんらかの規則性があるとは思えないとの事だ。
それを踏まえた上で、私には何故か、こう言葉には出来ない嫌な予感がしていたのだ。
「どうした?赤ずきん。お前、顔色悪いぞ?それに汗も……」
イアンが私に気遣いの言葉を掛けてくれたその時だった。
会場の扉がとてつもない勢いで強く開かれる。
「敵襲!!人狼です!!!奴らが来ました!!!今、人狼は庭園内に複数います!!皆さんは何処か安全な所にっ、、」
そう告げた黒服の男は口から血を流し、目の前に倒れた。彼の後ろには汚らわしい狼が4体立っていた。
会場内が一気に悲鳴に変わる。だが本当の恐怖はこれからだった。
なんと既に会場内に狼が潜入していたのだ。そう、その殆どがさっきまで目の前で劇を繰り広げていた劇団の彼らだった。狼に姿を変えた奴らは無差別に人々に襲い掛かり、残虐の限りを続けた。
「赤ずきん行くぞ」
「あぁ」
突然の出来事で驚き、遅れをとった私達だったが共に戦ってくれた黎鳥や同じ教会の仲間のおかげで処理活動は思ったより、すぐに終わった。
だが、失われた命も決して少なくはなかった……。
「アルヴァロア議員……」
私とイアンは血溜まりに倒れている彼とその同士の元へと駆け寄った。
「クソっ、こんだけ見張りが付いていながら守り切れなかった……クソっ、」
イアンがイラついていると、この空気の中、レーネがケーキを皿に乗せて戻って来た。
「なんか凄い騒ぎが聞こえましたけど、どうかしましたか~?それと先輩、ケーキを……」
彼女もこの血塗れの光景を目の当たりにして、口を噤んだ。
「……人狼ですか?」
私は低い声で「あぁ」とだけ返す。
流石のレーネもこの状況でふざけてられないと悟ったのか、真剣な顔付きで「すみません……私がケーキを取りに厨房に行っていたばかりに」と懺悔し始めた。
激しさの後悔からか彼女はケーキを持っていた皿を斜めに傾けてしまい、私の為に持ってきてくれたそれを床に落とした。床に落ちたそれは崩れ落ち、頭の上に載せていた真っ赤な苺だけが転がって行った。
苺は転がるのやめ、議員の血溜まりの中で止まった。
そして、彼女はプルプルと拳を震わせ、持っていた皿さえも地に落とし、破片を分散させたしまった。
「ごめんなさい……私が付いていながら……ごめんなさい、本当にごめんなさい」
「大丈夫だ。仕方の無いことだ。私だって油断していた。出遅れたんだ、そう自分を責めるな」
「ごめんなさい、ごめんなさい……本当に」
「だから、いいって。そう自分を責めるな」
それでも謝ることを辞めない彼女に対し、私も痺れを切らし「勘違いするな。別にお前にそれ程の力は無いだろ?少し強いからって自惚れるな」と、言いたかった。そう、そう言うつもりだった。
だけどイアンが私の右肩に手を置き、私の顔を見ながら首を横に振ったのだ。だから彼の意図を理解した私は彼女にもう何も言えなかったのだ。
そして、今も尚、レーネは「ごめんなさいごめんなさい」とまるで何かに取り憑かれたかの様に懺悔の念を続けた。
すっかり静まり返った会場内は先程の盛り上がりようが嘘みたいだった。
これからどうしようかと考えている時にその2人組が派手に扉を蹴破り、帰って来る。
「なんだなんだ、なんだこのお通夜みたいな辛気臭い空気は」
「庭園にいた人狼や施設内に侵入した人狼達は僕達、白銀が屠ってきましたよ!」
返り血を浴びたショタが空気の読めないテンションでそう言い放った。
「おい、お前、この状況が見えないのか?なぁ、おい。お前らの最大の支援者だった議員が殺されたんだぞ?少しは『悲しい』とか『悔しい』とか『怒り』とかあんだろ?普通」
エルヴィスに近付いたイアンが彼の胸ぐらを掴んで大声でそう言った。すると、エルヴィスは特に表情を変えること無く「耳元でうるせぇよ、三下がよぉ。鼓膜破れんだろ馬鹿が。それに糞汚ぇ唾を至近距離で飛ばすな糞が」と言うと「いいからお前ら全員着いてこい。議員は無事だ」と意味の分からない言葉を続けた。
理解が追いつかなかった私達だったがレーネの問いにエルヴィスは今回のこの護衛作戦の真相を教えてくれたのだ。
「アルヴァロア議員が生きてるってどういうことですか?議員はあそこに……」
レーネの言葉に被せるように彼は言った。
「お前らが初めて議員と対面した時あったろ?昨日言ったじゃねぇか、俺らにはある秘策があるって」
「そう、その秘策によって僕達の議員は無事なのであります!エッヘン!」
彼の言葉に続くショタ野郎の相変わらずのテンションには少々、ムカつく所はあったが、私は彼らの言う秘策とやらに少々心当たりがあった。
だが、もしこの予想が真実だとするならば……私は白銀の事を今後、許せないかもしれない。
だって、何故ならば……。
私達が案内された場所は何も無い壁の真ん前だった。
「おい、なんだ。ここに何があるって言うんだ?」
イアンの問いに対しエルヴィスは「いいから見とけって」と言うと壁のあちこち強く押し始める。すると壁が壁の中(?)へと吸い込まれていくかのように後ろへ下がり初め、そこには地下室へと続く階段が現れた。
(また地下室か……)
どうやら私の予想は当たっていたみたいだ。
エルヴィスは得意げな顔で「隠し部屋だ。会場にはいつもいる筈の秘書がいなかったろ?彼女もそこにいる。安心しろ、議員は無事だ」と言ったのだ。
「おいおいどういう事だよ。説明しろよ」
まだ怒り狂っているイアンに対しショタ野郎のキュクロは「意外と聖導教会の聖職者って賢くないんですね!替え玉だよ~替え玉。よく似てたでしょ?アルヴァロア議員に」とタネを明かしてくれたのだ。
「替え玉?」
「あぁ、いいから着いてこい。降りながら、説明してやるよ熱血馬鹿」
私達はエルヴィスに言われた通り、薄暗い地下室へと続く階段を降りる。
地下へと続く階段の壁には一定間隔で蝋燭が灯されていたがどれも不安定で今にも突然、消えてしまいそうな程、弱々しかった。
「それで事の真相とは?」
「簡単な事だよ」
私の問いに答えたエルヴィスはまたしても何処か自信有気にこう語ってくれた。
「うちの支援者はあー見えても結構、面倒くさがりな性格でね。たまに表舞台に立つことを面倒に思って嫌うんだよ。だから、こうしてたまに親戚のオードモンドを使って、面倒な仕事を押し付けてるんだ。オードモンドはたまたまアルヴァロア議員と顔がそっくりで幼少期から双子って勘違いされる事も多々あったそうだ。そして、歳を取り、すっかり御老人顔となった2人を見た目だけで判断するのはかなり困難ということだ」
「つまり、私達が昨日会った議員はアルヴァロアでは無く、彼の親戚のオードモンドと?」
「あぁ。流石は赤ずきん。察しがいいな」
「そう!だから議員も秘書のエリッサさんも無事だよ!昨日から議員はずっと地下室の書斎に籠って本を読んでいたんだ。たまにエリッサさんや僕らが入って、一応様子を見に来たり、食事を持って来たりしてたけどね」
ショタが補足する。
「なるほど……でもそのせいでオードモンド氏は死んだ。それだけではなく、無関係な人々も……人狼の犠牲となった」
「仕方の無いことだ。そういうリスクがあるってこともオードモンドは分かっていた。彼は失業者なんだ。生憎、失業保険にも入ってなくてな。政治家の親戚だからって社会で特別扱いされることも無い。だから議員が彼に金をやり、影武者として彼の身代わりになって貰った訳だ……」
「…… 」
私にはどうにもそれが納得行かなかった。だけどもう、失われた命は戻ってこない……そう、失われた命はもう……。
「着いたぞ」
エルヴィスは『コンコン』と木で出来た扉をノックし「エルヴィスです。襲撃をした人狼共は片付けました。何人か身内に怪我人はいますが、無事、犠牲者は0です」と扉越しに報告したのだ。
彼の発言を聞くなり、イアンも限界が来たのが彼へ殴り掛かろうとするがここである異変に気付く。
「……あれ?どうされました?議員?お眠りですか?議員」
なんとエルヴィスの言葉に応答が無いのだ。
「おかしい何故、議員は反応をしない。議員だけならまだしもいつも出て来てくれる秘書のエリッサまで反応がないじゃないか?何故だと思う?キュクロ」
「そんなっ、突然、言われましても……」
部下に部屋の鍵を取りに行かすことも出来たと思うが彼も面倒なのか私達に向けて「少し下がってろ……邪魔にならないようにな」と促すと扉に向かって体当たりしたり、蹴っ飛ばしたりし始める。
「そんなんじゃ開かないって……」
ふとイアンが漏らした声にショタは「先輩の馬鹿力舐めない方がいいですよ」と言った。
彼の言うことは本当だった。エルヴィスは力任せの脳筋アタックで扉を破壊し、中へと入れるようにしたのだ。
「議員、議員。大丈夫ですか?ご無事で……」
彼の動きがピタリと止まるのが分かった。
「どうしたんだ?エルヴィス。おい、何とか言ったらどうだ?」
私の言葉にも反応を示さず彼はただ「嘘だろ……そんな、有り得ない」とただその場に立ち尽くしていた。
「どうしました?先輩、先輩……?」
そう彼に駆け寄るショタも部屋の中を見るなり、驚いた表情を見せ、駆け足で書斎へと入って行った。
「お、おい、何があったんだ?」
「さぁ?」
私の後ろで他の聖職者が呑気にもそんな会話をしている。
「どうしたんだろうな?」
イアンもこんなことを言い始める始末だ。
一先ず、私も見える位置へと移動しよう階段を降りて、開かれた扉へと立った。
すると、そこには胸部周辺を血で濡らした状態で椅子に座っている議員と床に仰向けで倒れている秘書のエリッサ氏と思しき姿が入って来た。
隣で立ち尽くす彼とは違い、先程まで巫山戯たテンションだったキュクロが血相を変えて議員の肩を揺らしている。
「脈だ、脈を測れ!」
私の言葉に我に戻ったキュクロが彼の手首を測った。すると、こちらを向きただ首を横に振った。
「そうか……」
私の様子に異変を感じたイアンとレーネも降りてくると部屋の中を見て、絶望した。
「おい、なんで……」
「嘘でしょ!」
こうして次々と人が地下書斎へと流れて行き、多くの者が彼とその秘書の死を目の当たりにする事となった。
一部、限られた者しか知らなかったこの事実。そして、この隠し部屋。
密閉空間で起きた殺人は果たして狼によるものなのか?それとも……。
事件発覚後、私達は議員の邸宅の庭へと居た。
レーネはもう大丈夫みたいだけど、今度はあっちの嫌味男がヤバそうだった。
外へ出てからも「俺は何も知らない、こんなことは有り得ない」と虚ろな目でボソボソと呟いていたのだ。
「聞いたかあの2人の死体。議員の方は比較的綺麗だっが、秘書のエリッサさんは顔が原型を留めない程、醜く潰されていたらしい。結構な美人だったのに酷ぇ話だよな」
「あぁ」
イアンに言葉に生返事になってしまった私は壊れた男の元へと駆け寄る。
「お、おい、赤ずきん?」
後ろで私のことを呼び止めようとしたイアンに対し、レーネが彼の裾を引っ張り、首を横に振って様子を見るように促していた。
未だにブツブツと気持ち悪いことを繰り返す男の前にたった私はこう言ってやった。
「お前ら、なんも守れていねぇじゃねぇか?「秘書がある」とか散々、いきまえてた癖にあっさり議員も殺されて、関係の無い者達の命までも奪われて……結局、お前らは何を守ったんだ?」
冷ややかな声で詰め寄った私の言葉に彼は何も返さなかった。ただ今もブツブツと言葉を呪文みたいに唱え続け、現実から逃避していた。
いや、これが彼にとっての一種の防衛本能なんだろう。
それから少しして天気が崩れ、大雨が降ってきた。私達は議員の敷地内を出てから、適当な所で馬車を拾い、本部へと戻ることにしたのだ。
「随分、降ってきましたね」
「あぁ」
「昼までは快晴だったのに」
「あぁ」
イアンは抜け殻みたいだった。レーネも相当、来ているだろうけど表面上は明るく努めているようだ。
その間、私は車の中である一つの仮説を立てていた。勿論、ただの仮説だ。妄想と言うか憶測の域を出ていない。
これはただの推理なのだけど、もしかしたら今回の事件の裏には何かとてつもないような陰謀を感じたのだった。
何故ならば、議員が死ぬことによって得をするのは狼だけでは無いと気付いたからだ。
(だとするならば……)
そして、私の読みは正しかった。
この事件から2日後に捜査線上に彼と対立していた政党の党首、メイビー・フラットが浮き出てきたからだ。近日、不倫疑惑が報じられたメイビー・フラット。彼の存在が後に私達の運命を加速させるとはこの時はまだ思わなかった……。
だけど、この話の続きはまた後日しようと思う。何故ならば今はまだ話すべき時では無いのだから。
雨粒の付着した窓から見える暗雲の隙間に黄色く光る稲妻を見た。
夜が明け、限られた朝と昼がやって来る。
議員主催のパーティーが遂に開かれたのであった。
「いよいよですね先輩」
「あぁ」
『レーネは自分の任務をちゃんと覚えているのだろうか?』
生クリーム塗れの半切りされたイチゴをほっぺに付けながら、それに気付きもせずにもぐもぐとケーキに夢中の彼女に対し、私はそう感じたのだ。
「レーネ、お前は今日の……」
そう声を掛けようとした時には既に彼女の背中は小さくなっていた。埃を立てぬように静かに、とても軽やかに、それでいて彼女は足早にケーキを配っているシェフのテーブルへと戻って行ったのだ。
(あいつ、まだおかわりを貰う気なのか……)
「そういえばイアンは何処に……」
起きてから彼の姿を今日はまだ見ていなかった。てっきり先に会場入りを果たして、任務に当たっているとばかり思っていたけどさっきから彼の姿が見えない。まさかと思うが彼まで……。
この嫌な予感は見事に的中した。レーネの向かった先へと私も向かうとそこには他の人を差し置いて無邪気な子供みたいにケーキを催促している彼の姿があったのだ。
「「ケーキ!ケーキ!」」
彼らは「おかわりを早く寄越せ」と言わんばかりに息を揃えて同じ単語を何度も何度も繰り返していた。ケーキ配り担当の人は少し、動揺しながらもくしゃりと微笑み「そんなに慌てなくてもまだまだケーキはありますよ。厨房にはあと5つもこれと同じくらいのホールケーキが残っていますので。だから、どうか皆さん、慌てずに急かさずに」と彼らに言い聞かせていた。
(おいおい嘘だろ……いい歳した大人が子供みたいにケーキを欲しがって……そんなに美味しいのか?ここのケーキは)
私はまだこのパーティーの出し物には1つも手を触を触れていないがこの食い付き様は正直異常だ。自分の子供や孫を連れて来た者達が子供達と共にケーキを食べるならまだしも、独り身の大人までもが目を輝かせてケーキのおかわりを求めに来ている。
(まだ本パーティーは始まってないというのに……前祭でこの盛り上がりようか……ちょっと私も気になってきたな。あのケーキが……)
私も貰いに行こうかと思った時、後ろから声を掛けられた。
「漸くお目覚めですか?赤ずきん殿」
振り返るとそこには昨日の嫌な2人組が立ったいた。
「よおっ~す」
手を挙げて巫山戯た挨拶をしてくるショタ顔は今日もこの調子の様だ。嫌味な男の方も相変わらずクールを気取っている。
「羽振りがいいんだ白銀の議員は。普通のパーティーじゃなかなか見ないだろ?こんなお茶や珈琲みたいな感覚でケーキやワイン、シャンパンを参加者全員に振る舞う人は。これが富裕層の力量って奴なんだろうな」
「アルヴァロア議員ってメルエムの長者番付にも名前が載ってるみたいっすよ」
「ほぉ~そうなのか?だ、そうだ」
これはなんの嫌味なのだろうか?私はケーキおろか参加者全員に配られるワインやシャンパンすら手渡されていないというのに、この2人はその事をまるで気にも止めずに黄金の液体が注がれた細身のグラスをグラグラグラグラと揺らし、私に見せ付けてくる。本当になんなんだ……こいつらは……。
私は少しムッとしながらも「そう」と冷たい声で返し、加えて「それで?」と言った。
「それでって……なぁ?」
「ねぇ?」
私の問いに彼らは不思議そうな顔をして互いに見合う。
ワザとやっているのか知らないが、こういう態度も妙に私の気に触る。
「あ~そうですか。なんでもないですよ、もう。私はこんな嫌味に付き合ってる程、暇じゃないんで」
「え?見るからに暇そうじゃないか?」
「なんなら、今ちょっとムロールパティシエの作られたイチゴのホールケーキ気になってませんでした?」
覗き込むかの様にニヤニヤと私の顔を見つめてくるショタ顔のせいで食欲が失せた。私はケーキを諦め、この嫌な空気が支配する部屋から移動しようと動き出すとショタ顔が「あ、そうそう。後で追加でモンブランも来るみたいですよ~!しかも茶色いのと黄色いのが2種類!!」とデカデカと私の背中に投げ掛けてきたのだ。それだけには飽き足らずそのショタの先輩も「そうそう、モンブランだけじゃなくてイチゴのタルトやシャインマスカットのタルトに国産牛だけを使って作られた五つ星のチーズケーキも振る舞われるそうだな~」と嫌味ったらしい声で聞かせてきたのだった。
(あいつら……分かってて)
「今、ダイエット中だから!」
私は振り返ることなくそう言うと。両耳を両手で塞ぎ、その場を大きな足踏みで後にした。
そして、時は流れ正午。
まぁ予告通りと言えば予告通りだが、午前中は特に何も起こらなかった。何故ならばパーティーが本格的に始められてなかったからな。
私達は今、待機室の中へといる。どうやら他の参加者達も皆、別の待機室で待機させられているみたいだ。
「秘書のエリッサ氏から見せて貰った予告状には日付けと場所、そして殺害する対象の名は書かれていたが時間帯は特に記載されていなかった。そうすると奴らはこのパーティーが始まる12時半丁度から16時の間に議員の命を奪う筈だ」
「12時半から16時の間……この3時間半は一瞬足りとも気が抜けませんね」
レーネの言葉にイアンは「あぁ」とだけ答える。
こいつらはほっぺに生クリームを付けながら何を言っているのだろうか?私にはまるで説得力が感じられなかった。
「午後はしっかり頼むぞ2人共。午前中はケーキばっか食べていたんだから」
言い方が少し妬ましかったのかレーネが「あれ、先輩はケーキ食べなかったんですか?」と悪気無く尋ねてきた。
「そういえばお前は食ってなかったな。なんなら午前中は全くって程、見なかったぞ?お前、一体何処いたんだ?」
もしかしたら、こいつらに『思いやり』や『優しさ』、『気遣い』なんてものを心の何処かで期待していた私が馬鹿だったのかもしれない。
私はただ「今、ダイエット中だから」とだけ言い、「ははっ」と全く笑ってない笑い声を無理に作った。部屋を後にする際、私はなんとか外に出せた苦し紛れの声で「2人共、口周りをよく拭いておけ」とだけ言い残したのだ。
そして、パーティーは遂に開始される。
会場内は白銀の黎鳥達が警護するとの事で私達3人は施設内の巡回を任された。
「なぁこれって俺達が呼ばれた意味あったか~?」
不満を漏らすイアンに対しレーネは「そういうのは思っても言っちゃいけない決まりですよ!私までモチベ下がっちゃいます。組織全体の士気に掛かりますからね」と返す。
「んまぁ、そう言われればそうだけどさぁ」
彼は非常に退屈そうだ。
しかし不満が募っていたのは彼だけでは無かった。勿論、この私も凄く凄~く不満が溜まっていたのだから。
「なぁ、レーネ。お前らがさっき食べてたケーキってそんなに美味しかったのか?」
少し間を置いてからレーネは答えた。
「そりゃあ、勿論!凄く甘くてそれでいて柔らかくてとにかく美味しかったんですよ!!!」
彼女は目を輝かせてその魅力を伝えてきた。目の光ようから嫌でもケーキの魅力が伝わってくる。
「そうか、それは良かったな」
(なんなんだった、今の間は)
すると、今度はイアンまでもがその魅力について熱弁し出したではないか。
「俺は今まで生きてきた中であれ程、美味しいケーキを食べた事は無かった!!そんじょそこらの苺のショートケーキとは訳が違う。何が違うって言うとな……」
そこから先は思い出すだけでも虫唾が走る。あんなにも苺のケーキについて熱くそして強く。語る2人は初めて見た。聞けば聞くほど、そのケーキが食べたくなって仕方が無かった。
(まだケーキ残ってるかな……後で訊きに行ってみようかな)
そんな事を考えているとレーネが「でも、シャンパンは貰えて良かったですね!ここのシャンパン、うちがよく愛飲しているシャンパンと同じくらい美味しいんですよ!」と言って来る。私は「あぁ、まぁ、でも貰えたの昼休憩入ってからだったけど」と返した。レーネは「へぇ~そうだったんですね~!」と興味無さそうな反応だ。
こんな感じで私達は適当に喋りながら一通り巡回を終えると会場へと戻った。
「お疲れさん。気高き(笑)教会の聖職者殿」
出入り口の近くには今、一番会いたくない2人組がこれ見よがしにと待っていたのだ。
イアンは何か言いたそうだったが私が彼の顔の前に手を置き、黙らせる。
「それはどうも。政治家の狗のお2人さん」
向こうが嫌味を言ってくるならこっちもそれで返すだけだ。
嫌味大好きな男の方は特に動じなかったが彼の部下のショタ顔が顔を真っ赤にし過剰な反応を示した。
「くっ~、違うもん違うもん!誰が政治家の犬(?)だよ!僕らは人間だし……あ、黎鳥か。いや、人間か。ちゃ、ちゃんとした名前だってあるんだから!ね~先輩」
どうやら彼には比喩がまだ早かったみたいだ。それと嫌味の方も。もう少し解り安くてイメージしやすい言葉で言うべきだろうか?
「そういえば、あんたらの名前聞いてなかったな。なんだったっけ?」
「あ、私も知りたいです!教えてください!」
イアンが唐突にそんなことを言い始めるかと思いきや、レーネも彼に便乗した。
でも正直、これに関しては私もナイスと思った。だって、この嫌味な男の名前覚えておきたいから。まぁ、もう会う事はないと思うけど……。それと……この、嫌味な男に向かって「先輩、先輩」って懐いているショタ顔の男はなんて名前だったけ?確か……キュ……キュウリ?キューカンバー?キュー太郎?みたいな、キュから始まる名前だったと思うんだけど……。
ずっとショタ顔、ショタ顔って心の中で呼んでたせいか彼が嫌味男から何て呼ばれていたか忘れてしまっていた。
だから、これは絶好の機会。ナイスタイミングって訳だ。
「何故、俺らが貴様らに名を教えなければならない、俺らはな……」
「僕の名前はキュクロです!キュ・ク・ロ!!!政治家の犬なんかじゃありませんから!!!」
キュクロと名乗ったショタ顔が先輩の言葉を遮って自己紹介をしてくれたのだ。
(あ~そういえば、そんか名前だったけ)
私がモヤモヤからスッキリしていると、嫌味な男は「ちっ、なんで余計なこと言うんだよ、俺まで名乗らないといけないじゃないか」と舌打ちしながら部下のキュクロを軽く叱ると「俺はエルヴィス。“名”か“姓”かは言わない。好きなように捉えろ。じゃあな。もうお前らとは今後、会わないことを願っている」と言い残し、「行くぞ」とキュクロを連れて施設内の巡回へと向かった。
パーティーが始まって1時間半が経過した頃だろうか。
最初のアルヴァロア議員のスピーチ以来の大きな催し物が始まろうとしていた。
どうやら地元のミュージカル系劇団が見世物として1時間程の劇を見せてくれるそうだ。
その準備が今現在、私達の目の前で行われている。
「にしてもなんでこう貴族や政治家ってのはパーティーが好きなんだろうな。こういう出し物以外の時間はただ適当に酒飲んで美味しい飯食って、友達や偉い人と食っちゃべってるだけなのにな」
「私達には理解し難い世界なんだろうな。なんというか次元が違うって言うか……住んでいる領域が違うんだろうな」
私の返しにイアンは妬ましそうな顔で「あぁ~同じ人間で同じこの世界に住んでいる筈なのに、こうも格差が激しいだなんて……ホントつくづく思うよ。この世界って本当に理不尽で不公平で不平等だって……」と本音を漏らした。
こればかりは私も激しく共感出来るが「まぁ、仕方ないだろ。そういうものなんだ」としか返せなかった。
劇団員の準備が終わりに近付いてきたのか長い事、この部屋を照らしていた高級なシャンデリアがその明かりを消し、先程まで大賑わいだった会場が一気に静寂へと包まれて行く。
「そういえばお前はどうなんだ?レーネ。お前は上流階級の出身だからこういうパーティーなんて、もう慣れっこだろう?今までも結構、頻繁にやってきたんじゃないのか?」
「ん~どうでしょうね。まぁ、でもそこそこだと思いますよ。私からしたらこんなのビッフエみたいな感覚なんで!」
(なんでだろう。彼女は悪意無く言った筈なのに程よく私をイラつかせ、程よく殺意を湧かせてくれる。やっぱり、こいつとは合わないんじゃないのか?根本的に。見方とか考え方、価値観・世界観が彼女とはあまりにも合わなすぎる気がする)
そんな事を考えているとレーネは「あ、そうそう。良かったら先輩もケーキ食べます?さっきステーキを切り分けてる使用人に訊いたら、まだまだ予備のケーキが残ってるって言ってましたよ!今日中に食べ切れなかったら、廃棄処分するって言ってたので良かったら、貰ってきてあげましょうか?」と素晴らしい提案をしてきたのだ。
前言撤回。レーネは素晴らしい部下だ。いや、もう最高の相棒といっても過言では無いのかもしれない。私は勿論、頷き。「任せたぞ、レーネ」と両手を彼女の両肩に「ポン」と置き、この想いを託した。
「全く、子供だなお前は」
会話の一部始終を聞いていたイアンが私を横目に言う。
「悪かったなイアン。私はまだピチピチの16歳。あんたと違って子供なんだよ!まだ」
そう返すと「何処かの黒服の影響でも受けたか?嫌味な奴になってるぞ」と返してきた。
レーネが私のおつかいを頼まれている間に劇の準備は終わり、遂に始まった。アルヴァロア議員と彼と同じ政党の者が座る席は会場の中央に位置し、四方八方から彼の様子を監視出来るようにしてある。
また、毒味約を3名程付け、彼の元へと運ばれてくる料理は全てその毒味役を一度通した上で、テーブルの上に置かれるようになっている。
会場内にはパーティーの参加者の扮した聖職者や白銀の鴉がおり、それらも含めて24名が監視及び護衛に当たっている。それだけではなく、施設内のありとあらゆる所に巡回中の警務官や黎鳥。聖職者がいる為、到底、狼如きに彼を抹殺出来るような隙は無かった。
「にしても、遅いなレーネ」
私は小声で隣に立つイオンに言った。
「あいつは優秀だが、ちょっと抜けている所がある。どうせ道にでも迷ってるんだろ」
「まぁ、だといいがな」
そう、この状況でとても議員を殺せるとは思えない。前日から入念な持ち物検査や本人確認が細部にまで渡り、行われていたんだ。この中に狼がいるとも思えない。と、なると奴らはどのようにして議員を抹殺するつもりなんだ?
ここに来る前にトルグレム・アートから聞いた話を思い出す。あいつが言うには予告状を出された者は確実に殺されていると言う。殺害方法は様々で、なんらかの規則性があるとは思えないとの事だ。
それを踏まえた上で、私には何故か、こう言葉には出来ない嫌な予感がしていたのだ。
「どうした?赤ずきん。お前、顔色悪いぞ?それに汗も……」
イアンが私に気遣いの言葉を掛けてくれたその時だった。
会場の扉がとてつもない勢いで強く開かれる。
「敵襲!!人狼です!!!奴らが来ました!!!今、人狼は庭園内に複数います!!皆さんは何処か安全な所にっ、、」
そう告げた黒服の男は口から血を流し、目の前に倒れた。彼の後ろには汚らわしい狼が4体立っていた。
会場内が一気に悲鳴に変わる。だが本当の恐怖はこれからだった。
なんと既に会場内に狼が潜入していたのだ。そう、その殆どがさっきまで目の前で劇を繰り広げていた劇団の彼らだった。狼に姿を変えた奴らは無差別に人々に襲い掛かり、残虐の限りを続けた。
「赤ずきん行くぞ」
「あぁ」
突然の出来事で驚き、遅れをとった私達だったが共に戦ってくれた黎鳥や同じ教会の仲間のおかげで処理活動は思ったより、すぐに終わった。
だが、失われた命も決して少なくはなかった……。
「アルヴァロア議員……」
私とイアンは血溜まりに倒れている彼とその同士の元へと駆け寄った。
「クソっ、こんだけ見張りが付いていながら守り切れなかった……クソっ、」
イアンがイラついていると、この空気の中、レーネがケーキを皿に乗せて戻って来た。
「なんか凄い騒ぎが聞こえましたけど、どうかしましたか~?それと先輩、ケーキを……」
彼女もこの血塗れの光景を目の当たりにして、口を噤んだ。
「……人狼ですか?」
私は低い声で「あぁ」とだけ返す。
流石のレーネもこの状況でふざけてられないと悟ったのか、真剣な顔付きで「すみません……私がケーキを取りに厨房に行っていたばかりに」と懺悔し始めた。
激しさの後悔からか彼女はケーキを持っていた皿を斜めに傾けてしまい、私の為に持ってきてくれたそれを床に落とした。床に落ちたそれは崩れ落ち、頭の上に載せていた真っ赤な苺だけが転がって行った。
苺は転がるのやめ、議員の血溜まりの中で止まった。
そして、彼女はプルプルと拳を震わせ、持っていた皿さえも地に落とし、破片を分散させたしまった。
「ごめんなさい……私が付いていながら……ごめんなさい、本当にごめんなさい」
「大丈夫だ。仕方の無いことだ。私だって油断していた。出遅れたんだ、そう自分を責めるな」
「ごめんなさい、ごめんなさい……本当に」
「だから、いいって。そう自分を責めるな」
それでも謝ることを辞めない彼女に対し、私も痺れを切らし「勘違いするな。別にお前にそれ程の力は無いだろ?少し強いからって自惚れるな」と、言いたかった。そう、そう言うつもりだった。
だけどイアンが私の右肩に手を置き、私の顔を見ながら首を横に振ったのだ。だから彼の意図を理解した私は彼女にもう何も言えなかったのだ。
そして、今も尚、レーネは「ごめんなさいごめんなさい」とまるで何かに取り憑かれたかの様に懺悔の念を続けた。
すっかり静まり返った会場内は先程の盛り上がりようが嘘みたいだった。
これからどうしようかと考えている時にその2人組が派手に扉を蹴破り、帰って来る。
「なんだなんだ、なんだこのお通夜みたいな辛気臭い空気は」
「庭園にいた人狼や施設内に侵入した人狼達は僕達、白銀が屠ってきましたよ!」
返り血を浴びたショタが空気の読めないテンションでそう言い放った。
「おい、お前、この状況が見えないのか?なぁ、おい。お前らの最大の支援者だった議員が殺されたんだぞ?少しは『悲しい』とか『悔しい』とか『怒り』とかあんだろ?普通」
エルヴィスに近付いたイアンが彼の胸ぐらを掴んで大声でそう言った。すると、エルヴィスは特に表情を変えること無く「耳元でうるせぇよ、三下がよぉ。鼓膜破れんだろ馬鹿が。それに糞汚ぇ唾を至近距離で飛ばすな糞が」と言うと「いいからお前ら全員着いてこい。議員は無事だ」と意味の分からない言葉を続けた。
理解が追いつかなかった私達だったがレーネの問いにエルヴィスは今回のこの護衛作戦の真相を教えてくれたのだ。
「アルヴァロア議員が生きてるってどういうことですか?議員はあそこに……」
レーネの言葉に被せるように彼は言った。
「お前らが初めて議員と対面した時あったろ?昨日言ったじゃねぇか、俺らにはある秘策があるって」
「そう、その秘策によって僕達の議員は無事なのであります!エッヘン!」
彼の言葉に続くショタ野郎の相変わらずのテンションには少々、ムカつく所はあったが、私は彼らの言う秘策とやらに少々心当たりがあった。
だが、もしこの予想が真実だとするならば……私は白銀の事を今後、許せないかもしれない。
だって、何故ならば……。
私達が案内された場所は何も無い壁の真ん前だった。
「おい、なんだ。ここに何があるって言うんだ?」
イアンの問いに対しエルヴィスは「いいから見とけって」と言うと壁のあちこち強く押し始める。すると壁が壁の中(?)へと吸い込まれていくかのように後ろへ下がり初め、そこには地下室へと続く階段が現れた。
(また地下室か……)
どうやら私の予想は当たっていたみたいだ。
エルヴィスは得意げな顔で「隠し部屋だ。会場にはいつもいる筈の秘書がいなかったろ?彼女もそこにいる。安心しろ、議員は無事だ」と言ったのだ。
「おいおいどういう事だよ。説明しろよ」
まだ怒り狂っているイアンに対しショタ野郎のキュクロは「意外と聖導教会の聖職者って賢くないんですね!替え玉だよ~替え玉。よく似てたでしょ?アルヴァロア議員に」とタネを明かしてくれたのだ。
「替え玉?」
「あぁ、いいから着いてこい。降りながら、説明してやるよ熱血馬鹿」
私達はエルヴィスに言われた通り、薄暗い地下室へと続く階段を降りる。
地下へと続く階段の壁には一定間隔で蝋燭が灯されていたがどれも不安定で今にも突然、消えてしまいそうな程、弱々しかった。
「それで事の真相とは?」
「簡単な事だよ」
私の問いに答えたエルヴィスはまたしても何処か自信有気にこう語ってくれた。
「うちの支援者はあー見えても結構、面倒くさがりな性格でね。たまに表舞台に立つことを面倒に思って嫌うんだよ。だから、こうしてたまに親戚のオードモンドを使って、面倒な仕事を押し付けてるんだ。オードモンドはたまたまアルヴァロア議員と顔がそっくりで幼少期から双子って勘違いされる事も多々あったそうだ。そして、歳を取り、すっかり御老人顔となった2人を見た目だけで判断するのはかなり困難ということだ」
「つまり、私達が昨日会った議員はアルヴァロアでは無く、彼の親戚のオードモンドと?」
「あぁ。流石は赤ずきん。察しがいいな」
「そう!だから議員も秘書のエリッサさんも無事だよ!昨日から議員はずっと地下室の書斎に籠って本を読んでいたんだ。たまにエリッサさんや僕らが入って、一応様子を見に来たり、食事を持って来たりしてたけどね」
ショタが補足する。
「なるほど……でもそのせいでオードモンド氏は死んだ。それだけではなく、無関係な人々も……人狼の犠牲となった」
「仕方の無いことだ。そういうリスクがあるってこともオードモンドは分かっていた。彼は失業者なんだ。生憎、失業保険にも入ってなくてな。政治家の親戚だからって社会で特別扱いされることも無い。だから議員が彼に金をやり、影武者として彼の身代わりになって貰った訳だ……」
「…… 」
私にはどうにもそれが納得行かなかった。だけどもう、失われた命は戻ってこない……そう、失われた命はもう……。
「着いたぞ」
エルヴィスは『コンコン』と木で出来た扉をノックし「エルヴィスです。襲撃をした人狼共は片付けました。何人か身内に怪我人はいますが、無事、犠牲者は0です」と扉越しに報告したのだ。
彼の発言を聞くなり、イアンも限界が来たのが彼へ殴り掛かろうとするがここである異変に気付く。
「……あれ?どうされました?議員?お眠りですか?議員」
なんとエルヴィスの言葉に応答が無いのだ。
「おかしい何故、議員は反応をしない。議員だけならまだしもいつも出て来てくれる秘書のエリッサまで反応がないじゃないか?何故だと思う?キュクロ」
「そんなっ、突然、言われましても……」
部下に部屋の鍵を取りに行かすことも出来たと思うが彼も面倒なのか私達に向けて「少し下がってろ……邪魔にならないようにな」と促すと扉に向かって体当たりしたり、蹴っ飛ばしたりし始める。
「そんなんじゃ開かないって……」
ふとイアンが漏らした声にショタは「先輩の馬鹿力舐めない方がいいですよ」と言った。
彼の言うことは本当だった。エルヴィスは力任せの脳筋アタックで扉を破壊し、中へと入れるようにしたのだ。
「議員、議員。大丈夫ですか?ご無事で……」
彼の動きがピタリと止まるのが分かった。
「どうしたんだ?エルヴィス。おい、何とか言ったらどうだ?」
私の言葉にも反応を示さず彼はただ「嘘だろ……そんな、有り得ない」とただその場に立ち尽くしていた。
「どうしました?先輩、先輩……?」
そう彼に駆け寄るショタも部屋の中を見るなり、驚いた表情を見せ、駆け足で書斎へと入って行った。
「お、おい、何があったんだ?」
「さぁ?」
私の後ろで他の聖職者が呑気にもそんな会話をしている。
「どうしたんだろうな?」
イアンもこんなことを言い始める始末だ。
一先ず、私も見える位置へと移動しよう階段を降りて、開かれた扉へと立った。
すると、そこには胸部周辺を血で濡らした状態で椅子に座っている議員と床に仰向けで倒れている秘書のエリッサ氏と思しき姿が入って来た。
隣で立ち尽くす彼とは違い、先程まで巫山戯たテンションだったキュクロが血相を変えて議員の肩を揺らしている。
「脈だ、脈を測れ!」
私の言葉に我に戻ったキュクロが彼の手首を測った。すると、こちらを向きただ首を横に振った。
「そうか……」
私の様子に異変を感じたイアンとレーネも降りてくると部屋の中を見て、絶望した。
「おい、なんで……」
「嘘でしょ!」
こうして次々と人が地下書斎へと流れて行き、多くの者が彼とその秘書の死を目の当たりにする事となった。
一部、限られた者しか知らなかったこの事実。そして、この隠し部屋。
密閉空間で起きた殺人は果たして狼によるものなのか?それとも……。
事件発覚後、私達は議員の邸宅の庭へと居た。
レーネはもう大丈夫みたいだけど、今度はあっちの嫌味男がヤバそうだった。
外へ出てからも「俺は何も知らない、こんなことは有り得ない」と虚ろな目でボソボソと呟いていたのだ。
「聞いたかあの2人の死体。議員の方は比較的綺麗だっが、秘書のエリッサさんは顔が原型を留めない程、醜く潰されていたらしい。結構な美人だったのに酷ぇ話だよな」
「あぁ」
イアンに言葉に生返事になってしまった私は壊れた男の元へと駆け寄る。
「お、おい、赤ずきん?」
後ろで私のことを呼び止めようとしたイアンに対し、レーネが彼の裾を引っ張り、首を横に振って様子を見るように促していた。
未だにブツブツと気持ち悪いことを繰り返す男の前にたった私はこう言ってやった。
「お前ら、なんも守れていねぇじゃねぇか?「秘書がある」とか散々、いきまえてた癖にあっさり議員も殺されて、関係の無い者達の命までも奪われて……結局、お前らは何を守ったんだ?」
冷ややかな声で詰め寄った私の言葉に彼は何も返さなかった。ただ今もブツブツと言葉を呪文みたいに唱え続け、現実から逃避していた。
いや、これが彼にとっての一種の防衛本能なんだろう。
それから少しして天気が崩れ、大雨が降ってきた。私達は議員の敷地内を出てから、適当な所で馬車を拾い、本部へと戻ることにしたのだ。
「随分、降ってきましたね」
「あぁ」
「昼までは快晴だったのに」
「あぁ」
イアンは抜け殻みたいだった。レーネも相当、来ているだろうけど表面上は明るく努めているようだ。
その間、私は車の中である一つの仮説を立てていた。勿論、ただの仮説だ。妄想と言うか憶測の域を出ていない。
これはただの推理なのだけど、もしかしたら今回の事件の裏には何かとてつもないような陰謀を感じたのだった。
何故ならば、議員が死ぬことによって得をするのは狼だけでは無いと気付いたからだ。
(だとするならば……)
そして、私の読みは正しかった。
この事件から2日後に捜査線上に彼と対立していた政党の党首、メイビー・フラットが浮き出てきたからだ。近日、不倫疑惑が報じられたメイビー・フラット。彼の存在が後に私達の運命を加速させるとはこの時はまだ思わなかった……。
だけど、この話の続きはまた後日しようと思う。何故ならば今はまだ話すべき時では無いのだから。
雨粒の付着した窓から見える暗雲の隙間に黄色く光る稲妻を見た。
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