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-第13夜- 拠点へ
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人狼がこの街に居るのはほぼ間違いがない。だがこの街の警務局はなかなかの腐れ具合だ。捜査状況を聞いたが殆ど進展はしていないそうだ。資料も一通り、目を通したが無いに等しい。つまりは私が警務局に立ち寄ったのは限りなく無に等しかったのだ。
(にしても、何故、街を閉鎖しないんだ?人狼が街の外へ逃げないという確信があるからか?それとも……)
「はいどうぞ~」
「どうも」
私は女店員がクレープを受け取った。考えるより先に食事だ。ここ最近、任務の連続で疲れが溜まりに溜まっていた。そんな時はこの甘いクレープで疲れを取ろうって事だ。
パクリと一口、続いて二口、止まらず三口、堪らず四口、こうして抑えれずに五口、六口と無我夢中で食べてしまった。
イチゴのクレープを堪能した後、私は街の住民に聞き込み調査を行った。正直、一人でこの作業をしていると思うと馬鹿らしく思って来る。
こんな時にこそ、イアンらの応援が欲しいものだ。
「一先ずは今夜の宿泊先を見つけなければ。それと本部への連絡を」
宿泊先として訪れたホテルの中に入り、エントランスで電話を借りた。
「トルグレムか?私だ」
『おぉ、“赤ずきん”か。立て続けに任務を押し付けて済まないな』
「問題ない。それに今に始まった事じゃないしな。所でそっちの方はどうだ?」
『今、我々特務課は最近、勢力を拡大している“オルドレイド”と名乗る組織的人狼の一掃に向けて準備をしている所だ』
「何?“オルドレイド”だと?」
『あぁ。悪いな、お前が一番好きそうな事を俺らがやる事になってしまってな』
こっちは単独で群れの人狼の拠点を調査してると言うのに……ズルい奴らだトルグレム達は。羨ましいものだ。
「……別に構わない。その代わり狼の拠点を見つけても連絡はしない。私、一人で奴らを一掃するからな」
それだけを言い残して私は銅色の受話器を戻した。
(早く見つけなくては)
泊まる部屋の鍵の受け取りを済ました私は再び、地道な目撃情報を収集する。その道中で有益な情報を得る事が出来た。
「それで、その場所は何処に?」
「そ、それは……」
「知ってるなら早く教えてくれ。出来れば近くまで案内して欲しい」
「……」
私に情報提供をしてくれた彼は何処か様子がおかしい。奴らの拠点を知っているという割にはそれをすぐに教えない。それだけじゃない、何処か怯えているようにも思える。何か後ろめたい事でもあるのだろうか?
「大丈夫、安心して。万が一の時は私が守るから」
私の一言で安心したのか、彼はそれらしき拠点へと導いてくれた。道中、私は問う。
「その拠点はいつ頃?」
「2日前くらい。夜遅くまで飲み屋で飲んでて、それで酔ってふらついてた帰りに、それらしき影を見て、そのまま後をついていったら…」
「そう。でも、何故それを局や教会には?」
「局は話した所でまともには取り合ってくれない」
「そうかもね」
彼の言う通りだ。この街の警務局は腐っている。ここまで治安を維持出来ているのが奇跡というくらいだ。
「聖導教会は駄目なんだ…」
「?」
彼はそう言うなり、裾に隠れていた手首に入った刻印を見せてくれた。それは反教会同盟の証を示すものであった。
「そういう事ね」
「はい……祖父代からそうで。だから、今、貴女と僕がこうして歩いている事すら本当は許されない行為なんです」
「そうね。なら、場所だけ教えてもらえるかしら?」
「分かりました」
彼は少し間を置いてから、そう言った。小さくなっていく彼の背中を見ながら私は一人呟く。
「まだ、過去の産物が残っていたか……」
外は既に暗くなりつつある。時間がない、急がなければ。
「さっさと、一掃してやる」
この時、私は遠くで私の背中を心配そうに見つめる彼の表情に気付かなかった。
(にしても、何故、街を閉鎖しないんだ?人狼が街の外へ逃げないという確信があるからか?それとも……)
「はいどうぞ~」
「どうも」
私は女店員がクレープを受け取った。考えるより先に食事だ。ここ最近、任務の連続で疲れが溜まりに溜まっていた。そんな時はこの甘いクレープで疲れを取ろうって事だ。
パクリと一口、続いて二口、止まらず三口、堪らず四口、こうして抑えれずに五口、六口と無我夢中で食べてしまった。
イチゴのクレープを堪能した後、私は街の住民に聞き込み調査を行った。正直、一人でこの作業をしていると思うと馬鹿らしく思って来る。
こんな時にこそ、イアンらの応援が欲しいものだ。
「一先ずは今夜の宿泊先を見つけなければ。それと本部への連絡を」
宿泊先として訪れたホテルの中に入り、エントランスで電話を借りた。
「トルグレムか?私だ」
『おぉ、“赤ずきん”か。立て続けに任務を押し付けて済まないな』
「問題ない。それに今に始まった事じゃないしな。所でそっちの方はどうだ?」
『今、我々特務課は最近、勢力を拡大している“オルドレイド”と名乗る組織的人狼の一掃に向けて準備をしている所だ』
「何?“オルドレイド”だと?」
『あぁ。悪いな、お前が一番好きそうな事を俺らがやる事になってしまってな』
こっちは単独で群れの人狼の拠点を調査してると言うのに……ズルい奴らだトルグレム達は。羨ましいものだ。
「……別に構わない。その代わり狼の拠点を見つけても連絡はしない。私、一人で奴らを一掃するからな」
それだけを言い残して私は銅色の受話器を戻した。
(早く見つけなくては)
泊まる部屋の鍵の受け取りを済ました私は再び、地道な目撃情報を収集する。その道中で有益な情報を得る事が出来た。
「それで、その場所は何処に?」
「そ、それは……」
「知ってるなら早く教えてくれ。出来れば近くまで案内して欲しい」
「……」
私に情報提供をしてくれた彼は何処か様子がおかしい。奴らの拠点を知っているという割にはそれをすぐに教えない。それだけじゃない、何処か怯えているようにも思える。何か後ろめたい事でもあるのだろうか?
「大丈夫、安心して。万が一の時は私が守るから」
私の一言で安心したのか、彼はそれらしき拠点へと導いてくれた。道中、私は問う。
「その拠点はいつ頃?」
「2日前くらい。夜遅くまで飲み屋で飲んでて、それで酔ってふらついてた帰りに、それらしき影を見て、そのまま後をついていったら…」
「そう。でも、何故それを局や教会には?」
「局は話した所でまともには取り合ってくれない」
「そうかもね」
彼の言う通りだ。この街の警務局は腐っている。ここまで治安を維持出来ているのが奇跡というくらいだ。
「聖導教会は駄目なんだ…」
「?」
彼はそう言うなり、裾に隠れていた手首に入った刻印を見せてくれた。それは反教会同盟の証を示すものであった。
「そういう事ね」
「はい……祖父代からそうで。だから、今、貴女と僕がこうして歩いている事すら本当は許されない行為なんです」
「そうね。なら、場所だけ教えてもらえるかしら?」
「分かりました」
彼は少し間を置いてから、そう言った。小さくなっていく彼の背中を見ながら私は一人呟く。
「まだ、過去の産物が残っていたか……」
外は既に暗くなりつつある。時間がない、急がなければ。
「さっさと、一掃してやる」
この時、私は遠くで私の背中を心配そうに見つめる彼の表情に気付かなかった。
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