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プロローグ

天界にて

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「…ん…ここは…?」

私は急に光に包まれたと思ったら、今度はヨーロッパの王宮のような場所にいた。

え…?なんなのここ?
ヨーロッパ風のメイドカフェ…?
それにしては広すぎるし装飾が豪華すぎる…


そして、目の前には私が探して回ってた兄弟の後ろ姿が見えた。


「いやー!!秋葉原は楽しかったなー!地球のアニメを見て、ずっと行きたいと思っていたんだ…!天使達に仕事を投げて強行したが、行って正解だったぞ!!」

「兄さんは天使たちの事ももう少し考えてあげてください…。まぁ、でも働き詰めでしたもんね。たまにはいいでしょう。僕も楽しめましたし!」

「お前もなかなかに楽しんでたな!よし、またすぐ行くぞ!」

「たまにはって言ったでしょう。この前作った世界についても色々と調整してあげないといけないですし」

「あー、あの世界な。気に入ってるんだが、いかんせんまだ娯楽があまりないからなー。見ててもつまらないんだよなぁ」

「それをどうにかしてあげるのが神の仕事でしょう…それに」


「あのー…」


「なんですか兄さん?」

「ん?俺じゃないぞ?」

「あの…天使くん?お兄さん?」


そう話しかけると、兄弟は驚いた顔をしてこちらを振り返る。

「なっ…!?」

「えっ…!?」

「梨々香…!?」「梨々香さん…!?」



---------


「えーっと…つまりあれか、梨々香は俺にクリアニャンダムを返そうとして、俺達を探していた。そして俺達を見つけて声をかけようと近づいたら…ここに来ていたと」

「うん。そうなんだよね…。ここはいったいどこなの…?私が急に倒れてしまって、2人がここに連れてきてくれたとか…?秋葉原にこんな場所あったっけ…」

「………」「………」

「あー、なんだ…えーっと、信じられないかも知れないが、……ここは天界だ。」

「…天界?」

「そう、天界。俺達はここで世界の神みたいな事をしている」

「…神?」

「ここは…なんて言ったらいいのか…。
えーっと、お前もオタクならわかるだろうけど、日本で異世界転生もののアニメとか小説が流行ってるだろう?
あれによく出てくる、死んだら白い空間にいて神に転生させられる…みたいな事が起こる場所だ」

「…ふぁ…?」

「そして俺達はそこによく登場する神…みたいなもんだ」

「…んんんん??つまり君達が神で、私を異世界転生させるために呼んだってこと…?」

「いや、呼んだわけではないんだ」

「んん??」

「梨々香、お前は俺達が天界に帰る時にんだよ…。」



巻き込まれ…??


なんか小説で読んだことあるぞ。

勇者召喚の儀式に横にいた凡人が巻き込まれて異世界に召喚されちゃう的なあれ。


え…それで私は召喚とかでもトラックにはねられてとかでもなく…

神様(兄弟)の帰還に巻き込まれただけってこと…?


「マジ…で?」

「マジだ」「本当です」


わぁお。

これは夢???

ってか夢じゃない???

この前みたいにすぐ目を覚ますパターンじゃない??


あー!そうかそうか!夢か!!良かったー!
てか私まだ会社の机で寝てたりとか?

あり得るあり得るぅ!



「ちなみにこれは夢じゃないぞ」

お兄さんがそう言って私のオデコにデコピンをしてきた。


「……い、痛い」

「だから夢じゃないと言っただろう」

「梨々香さんすみません、現実です…」


げ…ん…じつ??
現実!?


この美形兄弟が神で、私が~(以下略)っていうアニメや小説であり得そうなこの展開が…まさかの現実…。

この前夢を見たときは疲れてたのもあって、テンションで異世界じゃ!キャラメイクだ!ってやってたけど…



「マジか…。」



信じられないという顔で私がそう言うと、しばらく沈黙が流れた。



「ねぇ…私は元の場所には帰れるの?」

「それは…」

「ごめんなさい…一度天界に来た方は、地上では死亡扱いになってしまい…元の世界には帰れません…。」


そして再び流れる沈黙。


「た、ただな!流行りの異世界転生ってやつはさせてやれるぞっ…!!」

「そ、そうです!希望の世界にチートな能力をつけて転生させる事が出来るので、元の世界よりいい生活が出来るかも知れません…!!」

「………」


黙り込む私を、2人はとても申し訳なさそうな顔で見ている。


「すまない…秋葉原観光が楽しくてテンションが上がっていたから、あまり周りも確認せずに天界に転移をしてしまった…」

「僕ももっとちゃんと確認すれば良かったです…」

「……」


どんどん空気が重くなっていく。


「梨々香…」

そう言ってお兄さんが梨々香の肩に手を置こうとした時


「チートは…」

「「え?」」

「チートはつけ放題なんでしょうか!!!」

「「ん?」」

「チートはつけ放題なのかどうかを聞いています!!!」

「え、あ、まぁ、転生先の世界のバランスをあまり崩さない範囲であればだが…」

「なら良し!!!!!」

「「は?」」

「もー戻れないもんは仕方ないですし、憧れてた異世界転生が実際に出来るのであれば、こちらとしても嬉しい限りですよ!!」

「お、おう…!?」


そう、これが現実だという実感はまだないが、仮にこれが現実だったとして
何に嘆く必要があるのだろうか!!!


両親とはあまり仲良くないから未練はない。
仕事に関しても、やりがいはあったがあんな社畜生活を続けていたらそのうち過労死してたであろう。
(労働法ガン無視だったからな…)

仲良い友達はいたが、最近の社畜生活であまり連絡もとれていなかったから、まぁいいだろう。(ちょっと寂しいけど帰れないなら仕方ない)


「では!さっそく転生についての相談を始めましょう!!!」


落ち込んでるかと思いきや、キラキラした笑顔を転生について進めようとする私をみて、2人は苦笑いをするのであった。
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