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第一部 星誕
第十五話 秘めし夜に幸あれ
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都に入ってから、すぐに官吏試験の準備として、玲陽は夜遅くまで、書物を読み漁っていた。
昼間は五亨庵で犀星たちの実務を手伝い、邸宅に戻れば、東雨を助けて家のことに奔走し、夜は自己研鑽のために費やす。眠るのは明け方近く、口にするのは冷菓子(ひやがし)と名づけた、あの血の塊と、水と茶がある程度。
体の傷を癒すために、今は体力を蓄え、無理を控えなければならない時期だというのに、その生活は正反対である。しかも、最近では剣術の基礎稽古まで、時間を作って行うようになっていた。
犀星の役に立つため、知識と官位、武術を身につけたいという玲陽の思いはよくわかったが、それでも、見ていて痛々しいほどである。これでは、体の方がもたないのではないか。今は、回復することに専念してほしい、と、周囲は思うのだが、犀星同様、玲陽も頑固なところは似たり寄ったりだ。
三日に一度ほど、涼景の診察と治療を続けている。
全身をあらゆる刃物や鈍器で傷つけられていたため、皮膚には数え切れないアザやみみず腫れ、火傷、えぐられたような傷、薬品による肌の変質など、どうしてそのようなことになったのか、理由もわからないような痕跡が白い肌に痛々しく残されている。
玲陽の最も重症だった傷は、その腹部にある。文字通り断腸の苦しみに、耐えてきた。
体内の傷は徐々に痛みが薄れ、涼景の処方する薬湯と、日々の食事の成果もあって思ったよりも回復が早い。
だが、問題は外傷だった。粗野と言うより、すでに苛虐嗜好の男たちによって皮膚も肉も裂かれていた秘部の傷は、塞がりはしていたが、健康な形状には戻らなかった。十年間、傷付けられては自然治癒を繰り返すうちに、傷口が塞がるたび不自然に癒着し、本来の弾力は失われた。かろうじてやわらかい便であれば排泄できるだろうが、表面の皮膚が硬く引き攣り、その下の筋肉はどうにかつながったようだったが、柔軟さは戻らない。体調に注意を払わなければ、排泄時に、再び裂ける恐れがある。そうなれば、傷口からの毒素によって、また、症状は全身に及ぶ悪化につながる。
傷が傷であるだけに、誰かれ構わず診せるのもはばかられ、このことは犀星と涼景、東雨しか知らない。医術の心得はあるものの、涼景は軍人であって医者ではない。本当ならば、典医にかからせたいのだが、そうなるとどうしても帝の許可が必要である。犀星も涼景も、宝順が玲陽に興味を抱き、何かを仕掛けてくることは予想がついている。こちらから、その機会を与えるような真似はしたくはない。
玲陽が眠ったことを確かめてから、犀星と涼景はほっと、息をついた。
治療の後は、眠気を誘う薬湯を使わないと、玲陽は痛みのために眠れない。
手当てできる傷はあらかた終わらせた。身体中、薬を塗り込んだ湿布や、化膿を防ぐための処置でさらしを巻き、素肌が見えるのは顔と首元だけである。それでも、もう、命を危ぶむ心配はない。後は、時間が癒してくれるだろう。
治療道具を片付けて、涼景は帰り支度をした。とっくに真夜中を過ぎている。
「俺にできるのはここまでだ」
悔しげに、涼景は玲陽を見た。
「はるか西方には、もっと進んだ医術があると聞く。それに頼れば、楽にしてやれるのかもしれないが」
「命を取り留めた」
犀星は玲陽の眠る顔を眺めた。
「感謝している。お前には、ここまで尽くす理由は無かったのに、すっかり巻き込んでしまって……」
「その話は、もうよせと言っているだろ」
「これで最後にするから」
犀星は立ち上がった涼景の前に、膝をついた。深く頭を垂れ、最拝する。こんなことは、今まで一度もない。いや、立場を考えれば、あるはずのない、あってはならない行為だ。
だが、涼景はそのまま、犀星の気持ちを受け入れた。
親王でも、将軍でもない。数奇な運命で巡り合い、苦楽を共にした親友の、心からの謝辞。それは同時に、玲陽が犀星にとって、どれほど大切な相手かも、重ねて示している。
「幸せになれ」
涼景はふっと、囁くように言葉をかけた。
「おい、泣くな」
ぽたりぽたりと、床に落ちる犀星の涙が、涼景を動かした。自分も片膝をついて、犀星を抱きしめる。小さな子供をあやすように、そっと背中を叩き、犀星が落ち着くのを待った。
思えば、このふた月の間、犀星の心中にはどれほどの嵐が吹き荒れていたことだろう。
玲陽のいない宮中で心を病み、歌仙に戻れば、その人の身に起きていた悲劇を知り、自分達の歩む未来の過酷さを突きつけられ、思慕していた母の恨み言に胸を痛め、父と慕っていた犀遠の凄まじい最期を看取った。
そして、再び帰った宮中は鬼千疋、半分血のつながる兄、宝順は玲家の末裔である玲陽を狙っているとの噂。
涼景は、犀星は昔から泣き虫だった、と玲陽が言っていたことを思い出す。現に今も、声を押し殺してはいるが、涙が止まらない。
だが、涼景にはわかっている。
犀星は決して弱くはない。涙を流しても、その目は真っ直ぐに未来を見ている。未来を見るからこそ、泣いてでも先へ進もうとする。逃げることは容易なはずなのに、あえて、自分の理想のために、なりふり構わず前進を試みる。
兄様は、自分の意志を貫く強い人です。
また、玲陽の言葉が蘇る。逃げるということをしない犀星だから、玲陽を救えたのだろう。
「星」
涼景は、静かに話しかけた。
「お前は、本当に強いな」
「…………泣いてばかりだ」
「泣かないことが、強さの証ではない。お前は誰よりも、強い。俺よりも……」
犀星は深呼吸を数度繰り返し、涼景を押し戻した。
涙に濡れた目で、間近に親友を見つめる。
「自分がどうなろうと、乗り越えてやる。でも、陽を思うと、無力な自分が情けなくて、くじけそうになる。俺は……陽のために生きたい。陽のためになら、こいつが望むなら、何だってしてやる」
「星」
涼景は友の両肩に手を置いた。
「気をつけろ。お前のその想いを、周りは利用する。つけ込まれるな」
「どうしたらいい?」
「わからない。だが、俺も一緒に考える。お前は、お前がしたいようにしろ。手に負えないことは、俺が引き受けてやる」
「俺は、お前に、何もできないのに……」
「見返りなどいらない。お前が自由に生きてくれたら、それでいい」
「涼景……」
「俺には、できないことだ……」
珍しく、息を詰まらせた涼景を、今度は犀星の方が慰めるように抱きしめた。
涼景は深くひとつ息をつくと、玲陽の様子を確認して、部屋を出ていく。
「ここでいい」
見送ろうとした犀星を、涼景は振り返らずに断った。
「そばにいてやれ」
「……わかった」
涼景の声が震えているのを聞き取って、犀星は追わなかった。今の自分を、見られたくないのだろう。
犀星は玲陽のそばに寄ると、寝台にそっと腰掛けた。
静かに上下する胸が、彼が生きていることを知らせてくれる。
犀星はその体に手を伸ばしたが、寸でのところで思いとどまる。
今は眠らせてやりたい。自分が玲陽にしてやれることは、彼の穏やかな眠りを守ること。
連日の疲労から、犀星も体力が限界に近い。自分も眠った方が良いのはわかっているが、どうしても、玲陽から目が離せなかった。
誰よりも、大切な人だ。
その人が、生きて、そばにいる。これ以上、どんな幸福がある?
それは気のせいだったのか、玲陽がかすかに自分を呼んだ気がした。
ゆっくりと顔を近づけると、暖かな吐息が唇をかすめる。
触れるだけなら……
犀星が唇を重ねようとしたとき、
『ダメ』
不意に、声がした。反射的に振り返ると、そこには誰もいない。
「……傀儡?」
思わず部屋を見回すが、犀星には、傀儡の声は聞こえても、姿は見えない。
声は、犀星の耳の奥に直接響いてくるため、声を頼りに位置を知ることもできない。
玲陽を起こさないよう、犀星は声を潜めた。
「俺の声は聞こえているのか」
うん、という肯定の返事が返ってくる。
「俺に取り憑く気か?」
その問いに、答えは無かった。空気が動き、気配が消える。
傀儡ならば、未練があるはず。だが、何もなく、自分を止めて消えただけとは。
「兄様……」
確かな呼び声に、犀星は玲陽を顧みた。
「兄様……」
薬が残っているため、意識が朦朧としたまま、玲陽は繰り返した。
金色の瞳が、灯籠の火に美しく揺れる。
「ここにいる」
たまらず、犀星は玲陽の頬を撫でた。玲陽も、その手に顔をすり寄せる。自分を求めてくれる優しい幼馴染への想いは、いつから、限りなく深いものへと変わったのだろう。愛しさが、犀星の血をほてらせ、心臓が震える。
「温かいです」
犀星の肌の温みを、玲陽は夢見るように感じ取って、ため息をつく。犀星は壊れてしまいそうなほど儚く柔らかい玲陽の頬をたどり、そっと撫でてゆく。これほど優しく、美しい人を、どうしてここまで残酷に傷つけることができたのだろう。玲陽を痛めつけた者たちの心中が、犀星には全く理解できない。この無垢な皮膚を、最初に切り裂いたのは、誰だったのか。見えない相手への憎悪が、犀星の心を乱していく。
「駄目ですよ」
玲陽が、歪んだ犀星の表情を読み取って、たしなめた。
「憎しみに、心を奪われてはいけない」
「……陽」
愛しい。
そうだ、今は誰かを憎むより、目の前の人を慈しむときだ。
犀星は一瞬、ためらってから、指先で玲陽の唇をなぞった。唇の間から漏れる熱い息が、犀星の自制心を揺るがし、鼓動が早まっていく。
本能が訴えるように伝えてくる。このまま接吻し、相手の温もりと優しさを交換したい。逆らい難い衝動に耐えるのは苦しい。視界に入る揺れる鎖の面纱が、命を守る頼りない一線だ。胸が締め付けられるというのは、こういう気持ちなのだろうか。愛し合う者同士なら、誰もがしていることではないのか?
歌仙で交わしたあの一度の接吻を、どうしても忘れられない。それ以上に淫らな姿を晒しても、犀星にとって、口づけは特別な意味を持つ。その求めは、永遠に得られない。満たされない。その渇望ゆえ、玲陽への想いはより激しく犀星を狂わせてゆく。愛する人のそばにいるのが、なぜ、これほど幸福であり、同時に辛いのか。
と、じっと犀星を見つめていた玲陽が、何を思ったか、そのまま、唇を開くと、犀星の指先に舌を伸ばす。
「あ……」
突然の感触に驚いて、犀星は手を引いた。
「嫌、ですか?」
玲陽はじっと犀星の目を見つめたままだ。
ぞくり、と犀星の全身に快感が走る。拒めるはずなど無かった。犀星は思わず目を伏せ、そらした。
それは、犀星の了解の仕草だ。こういう行為に慣れていない彼の初々しい反応が、玲陽には新鮮だった。穢したくない。けれど、欲しくてたまらない。複雑な想いに困惑しながら、それでも玲陽は自分を止めることはしない。この瞬間が有限であること、永遠には続かないことを、身をもって知っている。
玲陽は犀星の横顔を伺いながら、その指を咥えた。まるで子供が飴を舐めるように、舌で愛撫していく。
「ん……」
犀星の頬の紅が増し、目が潤む。
そうなのだ。
玲陽はいつも思う。
どんなに欲望が突き上げてきても、犀星は自分からそれを発しようとはしない。
互いに自然と流されていくことはあっても、必ず、自分の了解を得なければ、そこから先へは進まない。いつも誘うのは自分の方だ。求めれば、必ず応えてくれることはわかっているが、心のどこかで、寂しさを感じる。
愛する人と共にいて、なぜ、そんな感情が生まれるのだろう。
全てを忘れるように、玲陽はより深く、犀星の指を咥え、一本一本、丁寧に舐めていく。
犀星が硬く目を閉じ、肩で呼吸を殺す。
じれったい。
玲陽は犀星の第二指と三指をまとめて咥えこんだ。自分もその手首に手を添えて、喉の奥へと導く。
「陽!」
絡みついてくる舌の感触に、たまらず、犀星は声を上げた。
指をねぶられるなど、今までに経験したことなどない。しかも、その相手は、この世界で最も大切に想うたった一人の人だ。
熱く、柔らかな口内の感触が、犀星の芯をたかぶらせてゆく。触れたことのない、魅惑的な感触と熱とに、侵されていく。
指の震えを感じて、玲陽はより強く吸い上げた。甘く歯を立てて、緩急をつければ、犀星は瞬く間に嬌声を発して、自分の上に崩れ落ちる。
相変わらず、敏感だな、と玲陽は言いようのない高揚感を感じながら、動きを止めることはしない。
経験が浅いためだけではない。犀星の体が、そうできているのだろう。手指を愛撫されただけでこの調子では、この先、どんなことになるのか。
玲陽は犀星を案じながらも、それが見たい。
自分は、このような行為から、苦痛と屈辱しか与えられなかった。だが、犀星には、真に快楽と愛情を渡したい。感じてほしい。生きている喜びにつながる確かなものを、この愛しい人に刻みたい。
息を乱し、珍しく声を殺す余裕もない犀星に、玲陽の行為も激しさを増していく。もう一方の腕で、胸に重ねられた犀星の頭を抱き、触れるか触れないかの境目で、その外耳から中耳をくすぐる。
「あ……はぁ……ああっ……」
逃げるように、犀星が首を振る。玲陽は許さなかった。嫌がってはいない。ただ、快感に慣れない体を持て余して、悶える犀星の姿を、その目に焼き付ける。
もっと、もっとだ。こんなのは子供騙し。もっと深く、深淵まで、あなたを愛してあげたい。
玲陽の体調を心配して、犀星は顔や手に触れ、服越しに抱きしめることはあっても、それ以上は求めない。
一つの寝台で眠ったことは何度かあるが、いつも寄り添うだけで、深く繋がろうとはしなかった。
当然、玲陽の体は男を受け入れられる状態ではないのだが、それでも、もっと触れて感じたい。犀星の純潔に比べれば、玲陽は自分の淫乱さに吐き気がする。肉欲の道具とされてきた自分は、感覚が麻痺しているのか、それとも、正常な願望なのか。玲陽自身にもわからない。
たった一度、五亨庵で犀星から精を受けただけで、二人の関係は止まっている。あの時のことを、玲陽は何度も思い出しては、自らを慰めることすらあった。精通が起きるほど回復はしていないが、体が求めてたまらない。
やはり、自分は壊れているのか。
そう想うと、余計に犀星を欲してしまう。引き戻して欲しい。
本当に、愛する人とだけ、体を交わす時間が欲しくて耐えられない。
本当の愛を、こんな私にも人を愛せるのだと、教えて欲しい!
玲陽の複雑に絡む感情の渦は、どうしようもないほど、彼を突き動かし、敢えて犀星が感じる場所を見つけては、執拗に責め立ててしまう。
「陽っ! 待って! お願い! 待って!」
呼ばれて、玲陽はハッと我に返った。
犀星が膝を抱えて、激しく喘ぐ声に、玲陽は後悔した。
やりすぎた。
突然の行為に、犀星の心が追いついていない。だが、もう、遅い。ここで止めれば、逆に犀星を生殺しにする。
玲陽は全身の傷が痛むのも気にせず、体勢を変えると、犀星の下衣の中へ頭を突っ込んだ。
「陽! ああ! もう!」
「ん!」
手探りに、脈打つほどに張り詰めたものを口に含む。
犀星には抵抗する力も意思もなく、ただ、されるがままに寝台に倒れ込み、押し寄せる快感に我を忘れて艶めいた喘ぎを抑えることができずにいる。以前、初めて玲陽に精を渡した時、犀星は声を押し殺すことに全霊を傾けた。心構えをした上でのことであった。だが、今は違う。唐突に事態が急変し、気がつけば快楽の中に溺れてもがくより他にできなかった。どこかで、このままではいけないと思いつつも、一度喉を突いた声は止まらない。
必死にこらえようとしても、全ては徒労に終わる。解放の絶頂が悲鳴となって、犀星は全身を震わせた。
喉奥で受け止め、尚も口と手で根本から吸い出して、最後の一滴まで逃すまい、と、玲陽は夢中でしゃぶりついた。邪魔だ、と服をめくり、尚も動き続ける。
「陽っ! ああっ! またっ!」
あっという間に、二度目の射精を起こし、身体を弓なりにしならせ、犀星は嗚咽にも似た声でうめいた。
玲陽は柔らかな刺激を続けながら、犀星がおさまっていくのを見守る。
見たかったな、と、玲陽は視線を上げた。
激しく息を乱して余韻の中を彷徨う犀星の顔は、その快感の凄まじさと妖艶なまでの色気に溢れている。絶頂時はどんな表情を浮かべていたのか。
今度は、ちゃんと、顔を見ていたい。
玲陽はゆっくりと犀星の服を整え、寝台から降りた。
「水を持ってきます。待っていてください」
犀星は玲陽を見上げ、自分も行く、と起きあがろうとする。それを、玲陽は優しく押さえた。
「星、あなたは、休んで……」
と、言いかけて、玲陽は目の前が一瞬、真っ暗になり、その場に座り込んだ。
「陽!」
「大丈夫……ただの貧血です」
言って、玲陽は改めて大切な人の、自分を心配する顔を見た。
「すまない、俺が情けないから……」
息も絶え絶えに、犀星が枯れた声で言う。
「いいえ」
玲陽は穴が開くほど、犀星の顔を見つめ、
「あなたのその顔も、私だけのものでした」
「……どういう意味だ?」
「嬉しいんです」
言って、玲陽は子供のように犀星の首に抱きついた。先ほどまで淫らな行為をしていたとは信じられない純真な笑顔で。
あなたが、そんな顔で心配してくれるのは、私だけだから。
犀星はまだ、呼吸が落ち着かなかったが、玲陽の笑顔につられて、優しい笑みを見せる。
そう、この顔も、私だけのもの。
玲陽は思い切り犀星を抱きしめた。
治療したばかりの傷口が開いて、さらしに何箇所か血が滲んでいたが、そんなことはどうでもよかった。
同時刻、同じ場所、襖を一枚隔てたところ。
主人の大声を聞いて駆けつけた東雨が、じっと、立ち尽くしていた。
わずかに開かれたその襖の隙間から、別人のように痴態を晒す犀星を見つめ、彼は動くことができなかった。
触れずとも、達してしまったその彼を、慰めてくれる者はいない。
昼間は五亨庵で犀星たちの実務を手伝い、邸宅に戻れば、東雨を助けて家のことに奔走し、夜は自己研鑽のために費やす。眠るのは明け方近く、口にするのは冷菓子(ひやがし)と名づけた、あの血の塊と、水と茶がある程度。
体の傷を癒すために、今は体力を蓄え、無理を控えなければならない時期だというのに、その生活は正反対である。しかも、最近では剣術の基礎稽古まで、時間を作って行うようになっていた。
犀星の役に立つため、知識と官位、武術を身につけたいという玲陽の思いはよくわかったが、それでも、見ていて痛々しいほどである。これでは、体の方がもたないのではないか。今は、回復することに専念してほしい、と、周囲は思うのだが、犀星同様、玲陽も頑固なところは似たり寄ったりだ。
三日に一度ほど、涼景の診察と治療を続けている。
全身をあらゆる刃物や鈍器で傷つけられていたため、皮膚には数え切れないアザやみみず腫れ、火傷、えぐられたような傷、薬品による肌の変質など、どうしてそのようなことになったのか、理由もわからないような痕跡が白い肌に痛々しく残されている。
玲陽の最も重症だった傷は、その腹部にある。文字通り断腸の苦しみに、耐えてきた。
体内の傷は徐々に痛みが薄れ、涼景の処方する薬湯と、日々の食事の成果もあって思ったよりも回復が早い。
だが、問題は外傷だった。粗野と言うより、すでに苛虐嗜好の男たちによって皮膚も肉も裂かれていた秘部の傷は、塞がりはしていたが、健康な形状には戻らなかった。十年間、傷付けられては自然治癒を繰り返すうちに、傷口が塞がるたび不自然に癒着し、本来の弾力は失われた。かろうじてやわらかい便であれば排泄できるだろうが、表面の皮膚が硬く引き攣り、その下の筋肉はどうにかつながったようだったが、柔軟さは戻らない。体調に注意を払わなければ、排泄時に、再び裂ける恐れがある。そうなれば、傷口からの毒素によって、また、症状は全身に及ぶ悪化につながる。
傷が傷であるだけに、誰かれ構わず診せるのもはばかられ、このことは犀星と涼景、東雨しか知らない。医術の心得はあるものの、涼景は軍人であって医者ではない。本当ならば、典医にかからせたいのだが、そうなるとどうしても帝の許可が必要である。犀星も涼景も、宝順が玲陽に興味を抱き、何かを仕掛けてくることは予想がついている。こちらから、その機会を与えるような真似はしたくはない。
玲陽が眠ったことを確かめてから、犀星と涼景はほっと、息をついた。
治療の後は、眠気を誘う薬湯を使わないと、玲陽は痛みのために眠れない。
手当てできる傷はあらかた終わらせた。身体中、薬を塗り込んだ湿布や、化膿を防ぐための処置でさらしを巻き、素肌が見えるのは顔と首元だけである。それでも、もう、命を危ぶむ心配はない。後は、時間が癒してくれるだろう。
治療道具を片付けて、涼景は帰り支度をした。とっくに真夜中を過ぎている。
「俺にできるのはここまでだ」
悔しげに、涼景は玲陽を見た。
「はるか西方には、もっと進んだ医術があると聞く。それに頼れば、楽にしてやれるのかもしれないが」
「命を取り留めた」
犀星は玲陽の眠る顔を眺めた。
「感謝している。お前には、ここまで尽くす理由は無かったのに、すっかり巻き込んでしまって……」
「その話は、もうよせと言っているだろ」
「これで最後にするから」
犀星は立ち上がった涼景の前に、膝をついた。深く頭を垂れ、最拝する。こんなことは、今まで一度もない。いや、立場を考えれば、あるはずのない、あってはならない行為だ。
だが、涼景はそのまま、犀星の気持ちを受け入れた。
親王でも、将軍でもない。数奇な運命で巡り合い、苦楽を共にした親友の、心からの謝辞。それは同時に、玲陽が犀星にとって、どれほど大切な相手かも、重ねて示している。
「幸せになれ」
涼景はふっと、囁くように言葉をかけた。
「おい、泣くな」
ぽたりぽたりと、床に落ちる犀星の涙が、涼景を動かした。自分も片膝をついて、犀星を抱きしめる。小さな子供をあやすように、そっと背中を叩き、犀星が落ち着くのを待った。
思えば、このふた月の間、犀星の心中にはどれほどの嵐が吹き荒れていたことだろう。
玲陽のいない宮中で心を病み、歌仙に戻れば、その人の身に起きていた悲劇を知り、自分達の歩む未来の過酷さを突きつけられ、思慕していた母の恨み言に胸を痛め、父と慕っていた犀遠の凄まじい最期を看取った。
そして、再び帰った宮中は鬼千疋、半分血のつながる兄、宝順は玲家の末裔である玲陽を狙っているとの噂。
涼景は、犀星は昔から泣き虫だった、と玲陽が言っていたことを思い出す。現に今も、声を押し殺してはいるが、涙が止まらない。
だが、涼景にはわかっている。
犀星は決して弱くはない。涙を流しても、その目は真っ直ぐに未来を見ている。未来を見るからこそ、泣いてでも先へ進もうとする。逃げることは容易なはずなのに、あえて、自分の理想のために、なりふり構わず前進を試みる。
兄様は、自分の意志を貫く強い人です。
また、玲陽の言葉が蘇る。逃げるということをしない犀星だから、玲陽を救えたのだろう。
「星」
涼景は、静かに話しかけた。
「お前は、本当に強いな」
「…………泣いてばかりだ」
「泣かないことが、強さの証ではない。お前は誰よりも、強い。俺よりも……」
犀星は深呼吸を数度繰り返し、涼景を押し戻した。
涙に濡れた目で、間近に親友を見つめる。
「自分がどうなろうと、乗り越えてやる。でも、陽を思うと、無力な自分が情けなくて、くじけそうになる。俺は……陽のために生きたい。陽のためになら、こいつが望むなら、何だってしてやる」
「星」
涼景は友の両肩に手を置いた。
「気をつけろ。お前のその想いを、周りは利用する。つけ込まれるな」
「どうしたらいい?」
「わからない。だが、俺も一緒に考える。お前は、お前がしたいようにしろ。手に負えないことは、俺が引き受けてやる」
「俺は、お前に、何もできないのに……」
「見返りなどいらない。お前が自由に生きてくれたら、それでいい」
「涼景……」
「俺には、できないことだ……」
珍しく、息を詰まらせた涼景を、今度は犀星の方が慰めるように抱きしめた。
涼景は深くひとつ息をつくと、玲陽の様子を確認して、部屋を出ていく。
「ここでいい」
見送ろうとした犀星を、涼景は振り返らずに断った。
「そばにいてやれ」
「……わかった」
涼景の声が震えているのを聞き取って、犀星は追わなかった。今の自分を、見られたくないのだろう。
犀星は玲陽のそばに寄ると、寝台にそっと腰掛けた。
静かに上下する胸が、彼が生きていることを知らせてくれる。
犀星はその体に手を伸ばしたが、寸でのところで思いとどまる。
今は眠らせてやりたい。自分が玲陽にしてやれることは、彼の穏やかな眠りを守ること。
連日の疲労から、犀星も体力が限界に近い。自分も眠った方が良いのはわかっているが、どうしても、玲陽から目が離せなかった。
誰よりも、大切な人だ。
その人が、生きて、そばにいる。これ以上、どんな幸福がある?
それは気のせいだったのか、玲陽がかすかに自分を呼んだ気がした。
ゆっくりと顔を近づけると、暖かな吐息が唇をかすめる。
触れるだけなら……
犀星が唇を重ねようとしたとき、
『ダメ』
不意に、声がした。反射的に振り返ると、そこには誰もいない。
「……傀儡?」
思わず部屋を見回すが、犀星には、傀儡の声は聞こえても、姿は見えない。
声は、犀星の耳の奥に直接響いてくるため、声を頼りに位置を知ることもできない。
玲陽を起こさないよう、犀星は声を潜めた。
「俺の声は聞こえているのか」
うん、という肯定の返事が返ってくる。
「俺に取り憑く気か?」
その問いに、答えは無かった。空気が動き、気配が消える。
傀儡ならば、未練があるはず。だが、何もなく、自分を止めて消えただけとは。
「兄様……」
確かな呼び声に、犀星は玲陽を顧みた。
「兄様……」
薬が残っているため、意識が朦朧としたまま、玲陽は繰り返した。
金色の瞳が、灯籠の火に美しく揺れる。
「ここにいる」
たまらず、犀星は玲陽の頬を撫でた。玲陽も、その手に顔をすり寄せる。自分を求めてくれる優しい幼馴染への想いは、いつから、限りなく深いものへと変わったのだろう。愛しさが、犀星の血をほてらせ、心臓が震える。
「温かいです」
犀星の肌の温みを、玲陽は夢見るように感じ取って、ため息をつく。犀星は壊れてしまいそうなほど儚く柔らかい玲陽の頬をたどり、そっと撫でてゆく。これほど優しく、美しい人を、どうしてここまで残酷に傷つけることができたのだろう。玲陽を痛めつけた者たちの心中が、犀星には全く理解できない。この無垢な皮膚を、最初に切り裂いたのは、誰だったのか。見えない相手への憎悪が、犀星の心を乱していく。
「駄目ですよ」
玲陽が、歪んだ犀星の表情を読み取って、たしなめた。
「憎しみに、心を奪われてはいけない」
「……陽」
愛しい。
そうだ、今は誰かを憎むより、目の前の人を慈しむときだ。
犀星は一瞬、ためらってから、指先で玲陽の唇をなぞった。唇の間から漏れる熱い息が、犀星の自制心を揺るがし、鼓動が早まっていく。
本能が訴えるように伝えてくる。このまま接吻し、相手の温もりと優しさを交換したい。逆らい難い衝動に耐えるのは苦しい。視界に入る揺れる鎖の面纱が、命を守る頼りない一線だ。胸が締め付けられるというのは、こういう気持ちなのだろうか。愛し合う者同士なら、誰もがしていることではないのか?
歌仙で交わしたあの一度の接吻を、どうしても忘れられない。それ以上に淫らな姿を晒しても、犀星にとって、口づけは特別な意味を持つ。その求めは、永遠に得られない。満たされない。その渇望ゆえ、玲陽への想いはより激しく犀星を狂わせてゆく。愛する人のそばにいるのが、なぜ、これほど幸福であり、同時に辛いのか。
と、じっと犀星を見つめていた玲陽が、何を思ったか、そのまま、唇を開くと、犀星の指先に舌を伸ばす。
「あ……」
突然の感触に驚いて、犀星は手を引いた。
「嫌、ですか?」
玲陽はじっと犀星の目を見つめたままだ。
ぞくり、と犀星の全身に快感が走る。拒めるはずなど無かった。犀星は思わず目を伏せ、そらした。
それは、犀星の了解の仕草だ。こういう行為に慣れていない彼の初々しい反応が、玲陽には新鮮だった。穢したくない。けれど、欲しくてたまらない。複雑な想いに困惑しながら、それでも玲陽は自分を止めることはしない。この瞬間が有限であること、永遠には続かないことを、身をもって知っている。
玲陽は犀星の横顔を伺いながら、その指を咥えた。まるで子供が飴を舐めるように、舌で愛撫していく。
「ん……」
犀星の頬の紅が増し、目が潤む。
そうなのだ。
玲陽はいつも思う。
どんなに欲望が突き上げてきても、犀星は自分からそれを発しようとはしない。
互いに自然と流されていくことはあっても、必ず、自分の了解を得なければ、そこから先へは進まない。いつも誘うのは自分の方だ。求めれば、必ず応えてくれることはわかっているが、心のどこかで、寂しさを感じる。
愛する人と共にいて、なぜ、そんな感情が生まれるのだろう。
全てを忘れるように、玲陽はより深く、犀星の指を咥え、一本一本、丁寧に舐めていく。
犀星が硬く目を閉じ、肩で呼吸を殺す。
じれったい。
玲陽は犀星の第二指と三指をまとめて咥えこんだ。自分もその手首に手を添えて、喉の奥へと導く。
「陽!」
絡みついてくる舌の感触に、たまらず、犀星は声を上げた。
指をねぶられるなど、今までに経験したことなどない。しかも、その相手は、この世界で最も大切に想うたった一人の人だ。
熱く、柔らかな口内の感触が、犀星の芯をたかぶらせてゆく。触れたことのない、魅惑的な感触と熱とに、侵されていく。
指の震えを感じて、玲陽はより強く吸い上げた。甘く歯を立てて、緩急をつければ、犀星は瞬く間に嬌声を発して、自分の上に崩れ落ちる。
相変わらず、敏感だな、と玲陽は言いようのない高揚感を感じながら、動きを止めることはしない。
経験が浅いためだけではない。犀星の体が、そうできているのだろう。手指を愛撫されただけでこの調子では、この先、どんなことになるのか。
玲陽は犀星を案じながらも、それが見たい。
自分は、このような行為から、苦痛と屈辱しか与えられなかった。だが、犀星には、真に快楽と愛情を渡したい。感じてほしい。生きている喜びにつながる確かなものを、この愛しい人に刻みたい。
息を乱し、珍しく声を殺す余裕もない犀星に、玲陽の行為も激しさを増していく。もう一方の腕で、胸に重ねられた犀星の頭を抱き、触れるか触れないかの境目で、その外耳から中耳をくすぐる。
「あ……はぁ……ああっ……」
逃げるように、犀星が首を振る。玲陽は許さなかった。嫌がってはいない。ただ、快感に慣れない体を持て余して、悶える犀星の姿を、その目に焼き付ける。
もっと、もっとだ。こんなのは子供騙し。もっと深く、深淵まで、あなたを愛してあげたい。
玲陽の体調を心配して、犀星は顔や手に触れ、服越しに抱きしめることはあっても、それ以上は求めない。
一つの寝台で眠ったことは何度かあるが、いつも寄り添うだけで、深く繋がろうとはしなかった。
当然、玲陽の体は男を受け入れられる状態ではないのだが、それでも、もっと触れて感じたい。犀星の純潔に比べれば、玲陽は自分の淫乱さに吐き気がする。肉欲の道具とされてきた自分は、感覚が麻痺しているのか、それとも、正常な願望なのか。玲陽自身にもわからない。
たった一度、五亨庵で犀星から精を受けただけで、二人の関係は止まっている。あの時のことを、玲陽は何度も思い出しては、自らを慰めることすらあった。精通が起きるほど回復はしていないが、体が求めてたまらない。
やはり、自分は壊れているのか。
そう想うと、余計に犀星を欲してしまう。引き戻して欲しい。
本当に、愛する人とだけ、体を交わす時間が欲しくて耐えられない。
本当の愛を、こんな私にも人を愛せるのだと、教えて欲しい!
玲陽の複雑に絡む感情の渦は、どうしようもないほど、彼を突き動かし、敢えて犀星が感じる場所を見つけては、執拗に責め立ててしまう。
「陽っ! 待って! お願い! 待って!」
呼ばれて、玲陽はハッと我に返った。
犀星が膝を抱えて、激しく喘ぐ声に、玲陽は後悔した。
やりすぎた。
突然の行為に、犀星の心が追いついていない。だが、もう、遅い。ここで止めれば、逆に犀星を生殺しにする。
玲陽は全身の傷が痛むのも気にせず、体勢を変えると、犀星の下衣の中へ頭を突っ込んだ。
「陽! ああ! もう!」
「ん!」
手探りに、脈打つほどに張り詰めたものを口に含む。
犀星には抵抗する力も意思もなく、ただ、されるがままに寝台に倒れ込み、押し寄せる快感に我を忘れて艶めいた喘ぎを抑えることができずにいる。以前、初めて玲陽に精を渡した時、犀星は声を押し殺すことに全霊を傾けた。心構えをした上でのことであった。だが、今は違う。唐突に事態が急変し、気がつけば快楽の中に溺れてもがくより他にできなかった。どこかで、このままではいけないと思いつつも、一度喉を突いた声は止まらない。
必死にこらえようとしても、全ては徒労に終わる。解放の絶頂が悲鳴となって、犀星は全身を震わせた。
喉奥で受け止め、尚も口と手で根本から吸い出して、最後の一滴まで逃すまい、と、玲陽は夢中でしゃぶりついた。邪魔だ、と服をめくり、尚も動き続ける。
「陽っ! ああっ! またっ!」
あっという間に、二度目の射精を起こし、身体を弓なりにしならせ、犀星は嗚咽にも似た声でうめいた。
玲陽は柔らかな刺激を続けながら、犀星がおさまっていくのを見守る。
見たかったな、と、玲陽は視線を上げた。
激しく息を乱して余韻の中を彷徨う犀星の顔は、その快感の凄まじさと妖艶なまでの色気に溢れている。絶頂時はどんな表情を浮かべていたのか。
今度は、ちゃんと、顔を見ていたい。
玲陽はゆっくりと犀星の服を整え、寝台から降りた。
「水を持ってきます。待っていてください」
犀星は玲陽を見上げ、自分も行く、と起きあがろうとする。それを、玲陽は優しく押さえた。
「星、あなたは、休んで……」
と、言いかけて、玲陽は目の前が一瞬、真っ暗になり、その場に座り込んだ。
「陽!」
「大丈夫……ただの貧血です」
言って、玲陽は改めて大切な人の、自分を心配する顔を見た。
「すまない、俺が情けないから……」
息も絶え絶えに、犀星が枯れた声で言う。
「いいえ」
玲陽は穴が開くほど、犀星の顔を見つめ、
「あなたのその顔も、私だけのものでした」
「……どういう意味だ?」
「嬉しいんです」
言って、玲陽は子供のように犀星の首に抱きついた。先ほどまで淫らな行為をしていたとは信じられない純真な笑顔で。
あなたが、そんな顔で心配してくれるのは、私だけだから。
犀星はまだ、呼吸が落ち着かなかったが、玲陽の笑顔につられて、優しい笑みを見せる。
そう、この顔も、私だけのもの。
玲陽は思い切り犀星を抱きしめた。
治療したばかりの傷口が開いて、さらしに何箇所か血が滲んでいたが、そんなことはどうでもよかった。
同時刻、同じ場所、襖を一枚隔てたところ。
主人の大声を聞いて駆けつけた東雨が、じっと、立ち尽くしていた。
わずかに開かれたその襖の隙間から、別人のように痴態を晒す犀星を見つめ、彼は動くことができなかった。
触れずとも、達してしまったその彼を、慰めてくれる者はいない。
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