【一旦完結】回想モブ転生~ヒロインの過去回想に登場するモブに転生した~

ファスナー

文字の大きさ
上 下
49 / 56
過去回想に映りこむモブ編

第47話 辺境伯事変―対悪魔1

しおりを挟む
side:シドー

シドーはエドワードと同様に執事として潜入している。
それもこれもセーバスに巻き込まれたせいだ。

「シドーさんはめでたく巻き込まれます。」
闇ギルドに隣接するバーのカウンターでシドーは絶句した。
セーバスが珍しく悩んでるからフォローしてやろうと助言したら、何を思ったのかいきなり俺を巻き込む宣言してきやがった。

セーバスによると、パドレス家ではもうすぐ継承の儀が行われるらしく、そこで事件が起きる可能性が高いらしい。
で、当初は事件を未然に防ぐために動こうと考えていたらしい。
だけど俺の助言を受けて別の案を採用した。
それが、俺やエドワードを巻き込むという迷惑極まりない発想。

「大丈夫。リンダリン様に口利きして潜り込めるようにしておくから。」
爽やかな笑顔で言われても嬉しくない。

絶対に手伝わないと心に決めたシドーだったが、後日、闇ギルドから無慈悲な通達を受け取った。

「お前さんに指名依頼だ。」
依頼主はパドレス=リンダリン。明らかにセーバスの差し金だった。
依頼内容は執事として潜入し、モドキ=セーバスの指揮下で内偵捜査を行うこと。
なお詳細は指揮官の指示に従う事。

なんとも酷い依頼書だ。執事として潜入する以外のことは全て白紙じゃないか。
セーバスに振り回されて厄介事に巻き込まれる未来しか見えない。
そしてその予感は的中した。

マジか、悪魔だよ。
確か教会の奴等いわく、人間を堕落させて悪に誘惑するクソ野郎だっけ。
教会には炊き出しの時しかお世話になってねーからうろ覚えだわ。

あ、そういえばエドワードも悪魔飼ってたな。
セーバスの天使とまさに人外の戦いしてたっけか。
やだなー。あ、今日は何食べようかなー。(現実逃避)

余計なことを考えていると、チラチラとこっちを伺っているセーバスに気づいた。
嫌な予感がしたので無視する。

「いや、手伝ってもらうって…、無理でしょ?」
エドワードが呆れている。
ああ、全くバカげた発想だな。俺もそう思うぜ。

「ふふ、ちゃんと秘策があるんだよ。」
セーバスの奴、楽しんでやがる。
先の展開は読めたけど、全力で断りたい。

視線を合わせないようにそっぽを向いたままでいると肩を掴まれた。
振り向いた先にいるのはにっこり微笑むとセーバス。

「よろしくね。」
だよね。しってた。
一方、「シドーさんが秘策?」とエドワードは首を傾げる。

「そっ。シドーさんて凄いんだよ。
 なんたって『二枚舌のシドー』って呼ばれてるからね。」

「やめろ。その名を呼ぶな。」
ギロリとセーバスを睨んでみるものの効果は無い。
セーバスは嬉々として説明しだす。

「シドーさんはね、交渉事がすっごく上手いんだよ。
 どんな相手とも良い交渉ができるからね。
 あまりに凄すぎてまるで詐欺師じゃないかってことになってついたあだ名が二枚舌だからね。」
詐欺師とは酷い言われようだ。

「それでうまくいくんですかね?」
エドワードは疑心暗鬼でセーバスに尋ねる。

「ああ、多分勘違いしてると思うから敢えて言うけど。
 協力してもらう訳じゃないんだよ。
 僕とシドーさんで
 あ、もちろんエドワード君にも。」
にっこり微笑むセーバスから無言の圧力を感じる。

はいはい、分かってるよ。やることはやるさ。
まったく、本当の詐欺師は誰なんだかな。

 ***

side:悪魔

「ふむ、誰にしようか。」
悪魔は物色していた。

今回の契約は、ここにいる人間を皆殺しにすること。
最優先はパドレス=リップリングという男の殺害。
なんでも相当な恨みを持っていたのだとか。

風の障壁による邪魔が入ったものの魔力練度を上げれて破壊することでターゲットを仕留めることに成功。
威力が半端になったために、ターゲットは苦しみながら死んでいくことになったが、依頼主の女は愉しそうに笑っていたからいいか。

さて、じゃあ俺も愉しませてもらうとするかね。
俺は人間が好きだ。
脆弱で浅ましくて醜くて滑稽な人間てやつは見ていて飽きない。
特に、弱いくせに強いと勘違いしてるやつに現実を教えて絶望していく様を見るのはサイコーだ。

「誰か俺と戦うって気概のある奴はいねーか?
 もし俺を満足させることが出来たら皆殺しはやめてやってもいい。」

そう宣言すると、1人の執事が前に出てきた。
まだ10代前半に見える少年だ。

だが、その瞳には俺への怖れが見られない。
人間にしては魔力が高いな。おそらく魔法に自信があるのだろう。
思わず口角が上がる。

「お前を満足させる条件はなんだ?
 お前を倒すことか?」
少年は俺の言葉を確認してくる。
悪魔にちゃんと条件の確認をしてくるとは分かってるじゃないか。

悪魔が契約を重んじるのはそれが自身を縛ることになるからだ。
だが、契約外の場合は縛られることは無いため守る必要も無い。

「んー、俺を倒すか、俺が負けを宣言したらだな。
 その時点で俺はこの契約を破棄して帰る。
 こういう契約変更はどうだ、依頼主殿?」

「ええ、それで構わないわよ。
 私はかなり満足しちゃったから。」
依頼主の女が頷いた。

「了解だ。依頼主の同意を持ってここに契約の変更は完了した。
 さぁ、始めようか。」

「ああ、わかった。」
少年の瞳がギラついている。
ふふ、楽しみだなぁ。何を狙っているのやら。

「悪いが、速攻で決めさせてもらう。<雷撃>」

少年が魔法を発動した直後、体中がバリバリと痺れ動けなくなった。
何だ?何が起こっている?

気づけば少年は目の前に迫ってきていた。
少年が剣を横薙ぎに振るう。

「<風壁>」
風属性の障壁を展開することでその剣を防いだ。
少年はすぐにその場を離れる。

「<雷撃>」
再び先ほどと同じ魔法が俺を襲う。
身体は痺れたまま。

なんだこの魔法は。くそっ想定外だ。
人間のくせに小癪な真似をしやがって。

少年は再び俺の目の前に迫り、袈裟斬りに剣を振るう。

「くっ、<風壁>」
俺は風属性の障壁を展開することでその剣を防ぐ。
少年はすぐにその場を離れ、三度魔法を放つ。

「<雷撃>」
「がぁぁぁ。」
相変わらず身体がしびれてやがる。
なんでアイツは先ほどから同じことを繰り返す?
確かに痺れて動けねぇが有効打にはなってねぇ。

待て。
相手の狙いはそれか。

少年は三度俺の目の前に迫ると突きを放つ。
俺は風属性の障壁を展開して防ぐ。
少年はすぐにその場を離れた。

「今です。」
少年が叫ぶ。

「「汝の御魂を捕縛せん。」」
二人の執事が詠唱を唱えると鎖が出現し、俺に巻き付いた。
これは魂を縛るという捕縛術式で、悪魔をも拘束することが出来る代物。
こざかしい人間が悪魔契約のペナルティをヒントに開発したと言う古代魔法〈魂縛り〉。
まだ伝わっていたのか。

「ちっ、まさかそんな隠し玉を持ってたとはな。」

「さぁ、これであんたはもう動けない。
 素直に負けを認めなよ。」
少年は敗北宣言をしろと言ってくる。
だが甘すぎるぞ、少年。
この程度で我ら悪魔を止めれると思うなら大間違いよ。


俺は〈魂縛り〉をしている2人の術者を見る。
〈魂縛り〉の術者を潰せばいいだけの事。

「〈誘惑〉」
〈誘惑〉は悪魔の持つ能力で、対象者の負の感情を刺激することで思考誘導して操ることが出来る。

だが〈誘惑〉が発動しない。効いていないのか?
いや、既に別の精神魔法にやられてるのか。
ならば、魔力量で強引に上書きする。

「〈魂縛り〉を解け」
〈誘惑〉は正しく発動し、俺を縛っていた鎖が消えていく。

「ふぅ、かなり危なかったぞ。
 古代魔法〈魂縛り〉なんてものを仕込んでくるとは思いもしなかった。
 さらには〈誘惑〉対策までしてくるとはな。
 お前いいな。滾ってきたぜ。
 もっと楽しませてくれよ。
 さぁ、第二ラウンドといこうぜ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

ゲームの中に転生したのに、森に捨てられてしまいました

竹桜
ファンタジー
 いつもと変わらない日常を過ごしていたが、通り魔に刺され、異世界に転生したのだ。  だが、転生したのはゲームの主人公ではなく、ゲームの舞台となる隣国の伯爵家の長男だった。  そのことを前向きに考えていたが、森に捨てられてしまったのだ。  これは異世界に転生した主人公が生きるために成長する物語だ。

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

処理中です...