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過去回想に映りこむモブ編
第47話 辺境伯事変―対悪魔1
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side:シドー
シドーはエドワードと同様に執事として潜入している。
それもこれもセーバスに巻き込まれたせいだ。
「シドーさんはめでたく巻き込まれます。」
闇ギルドに隣接するバーのカウンターでシドーは絶句した。
セーバスが珍しく悩んでるからフォローしてやろうと助言したら、何を思ったのかいきなり俺を巻き込む宣言してきやがった。
セーバスによると、パドレス家ではもうすぐ継承の儀が行われるらしく、そこで事件が起きる可能性が高いらしい。
で、当初は事件を未然に防ぐために動こうと考えていたらしい。
だけど俺の助言を受けて別の案を採用した。
それが、俺やエドワードを巻き込むという迷惑極まりない発想。
「大丈夫。リンダリン様に口利きして潜り込めるようにしておくから。」
爽やかな笑顔で言われても嬉しくない。
絶対に手伝わないと心に決めたシドーだったが、後日、闇ギルドから無慈悲な通達を受け取った。
「お前さんに指名依頼だ。」
依頼主はパドレス=リンダリン。明らかにセーバスの差し金だった。
依頼内容は執事として潜入し、モドキ=セーバスの指揮下で内偵捜査を行うこと。
なお詳細は指揮官の指示に従う事。
なんとも酷い依頼書だ。執事として潜入する以外のことは全て白紙じゃないか。
セーバスに振り回されて厄介事に巻き込まれる未来しか見えない。
そしてその予感は的中した。
マジか、悪魔だよ。
確か教会の奴等いわく、人間を堕落させて悪に誘惑するクソ野郎だっけ。
教会には炊き出しの時しかお世話になってねーからうろ覚えだわ。
あ、そういえばエドワードも悪魔飼ってたな。
セーバスの天使とまさに人外の戦いしてたっけか。
やだなー。あ、今日は何食べようかなー。(現実逃避)
余計なことを考えていると、チラチラとこっちを伺っているセーバスに気づいた。
嫌な予感がしたので無視する。
「いや、手伝ってもらうって…、無理でしょ?」
エドワードが呆れている。
ああ、全くバカげた発想だな。俺もそう思うぜ。
「ふふ、ちゃんと秘策があるんだよ。」
セーバスの奴、楽しんでやがる。
先の展開は読めたけど、全力で断りたい。
視線を合わせないようにそっぽを向いたままでいると肩を掴まれた。
振り向いた先にいるのはにっこり微笑むとセーバス。
「よろしくね。」
だよね。しってた。
一方、「シドーさんが秘策?」とエドワードは首を傾げる。
「そっ。シドーさんて凄いんだよ。
なんたって『二枚舌のシドー』って呼ばれてるからね。」
「やめろ。その名を呼ぶな。」
ギロリとセーバスを睨んでみるものの効果は無い。
セーバスは嬉々として説明しだす。
「シドーさんはね、交渉事がすっごく上手いんだよ。
どんな相手とも良い交渉ができるからね。
あまりに凄すぎてまるで詐欺師じゃないかってことになってついたあだ名が二枚舌だからね。」
詐欺師とは酷い言われようだ。
「それでうまくいくんですかね?」
エドワードは疑心暗鬼でセーバスに尋ねる。
「ああ、多分勘違いしてると思うから敢えて言うけど。
協力してもらう訳じゃないんだよ。
僕とシドーさんで彼らを巻き込んでそういう状況に追い込むんだ。
あ、もちろんエドワード君にも頑張ってもらうからね。」
にっこり微笑むセーバスから無言の圧力を感じる。
はいはい、分かってるよ。やることはやるさ。
まったく、本当の詐欺師は誰なんだかな。
***
side:悪魔
「ふむ、誰にしようか。」
悪魔は物色していた。
今回の契約は、ここにいる人間を皆殺しにすること。
最優先はパドレス=リップリングという男の殺害。
なんでも相当な恨みを持っていたのだとか。
風の障壁による邪魔が入ったものの魔力練度を上げれて破壊することでターゲットを仕留めることに成功。
威力が半端になったために、ターゲットは苦しみながら死んでいくことになったが、依頼主の女は愉しそうに笑っていたからいいか。
さて、じゃあ俺も愉しませてもらうとするかね。
俺は人間が好きだ。
脆弱で浅ましくて醜くて滑稽な人間てやつは見ていて飽きない。
特に、弱いくせに強いと勘違いしてるやつに現実を教えて絶望していく様を見るのはサイコーだ。
「誰か俺と戦うって気概のある奴はいねーか?
もし俺を満足させることが出来たら皆殺しはやめてやってもいい。」
そう宣言すると、1人の執事が前に出てきた。
まだ10代前半に見える少年だ。
だが、その瞳には俺への怖れが見られない。
人間にしては魔力が高いな。おそらく魔法に自信があるのだろう。
思わず口角が上がる。
「お前を満足させる条件はなんだ?
お前を倒すことか?」
少年は俺の言葉を確認してくる。
悪魔にちゃんと条件の確認をしてくるとは分かってるじゃないか。
悪魔が契約を重んじるのはそれが自身を縛ることになるからだ。
だが、契約外の場合は縛られることは無いため守る必要も無い。
「んー、俺を倒すか、俺が負けを宣言したらだな。
その時点で俺はこの契約を破棄して帰る。
こういう契約変更はどうだ、依頼主殿?」
「ええ、それで構わないわよ。
私はかなり満足しちゃったから。」
依頼主の女が頷いた。
「了解だ。依頼主の同意を持ってここに契約の変更は完了した。
さぁ、始めようか。」
「ああ、わかった。」
少年の瞳がギラついている。
ふふ、楽しみだなぁ。何を狙っているのやら。
「悪いが、速攻で決めさせてもらう。<雷撃>」
少年が魔法を発動した直後、体中がバリバリと痺れ動けなくなった。
何だ?何が起こっている?
気づけば少年は目の前に迫ってきていた。
少年が剣を横薙ぎに振るう。
「<風壁>」
風属性の障壁を展開することでその剣を防いだ。
少年はすぐにその場を離れる。
「<雷撃>」
再び先ほどと同じ魔法が俺を襲う。
身体は痺れたまま。
なんだこの魔法は。くそっ想定外だ。
人間のくせに小癪な真似をしやがって。
少年は再び俺の目の前に迫り、袈裟斬りに剣を振るう。
「くっ、<風壁>」
俺は風属性の障壁を展開することでその剣を防ぐ。
少年はすぐにその場を離れ、三度魔法を放つ。
「<雷撃>」
「がぁぁぁ。」
相変わらず身体がしびれてやがる。
なんでアイツは先ほどから同じことを繰り返す?
確かに痺れて動けねぇが有効打にはなってねぇ。
待て。俺は一歩も動いてない。
相手の狙いはそれか。
少年は三度俺の目の前に迫ると突きを放つ。
俺は風属性の障壁を展開して防ぐ。
少年はすぐにその場を離れた。
「今です。」
少年が叫ぶ。
「「汝の御魂を捕縛せん。」」
二人の執事が詠唱を唱えると鎖が出現し、俺に巻き付いた。
これは魂を縛るという捕縛術式で、悪魔をも拘束することが出来る代物。
こざかしい人間が悪魔契約のペナルティをヒントに開発したと言う古代魔法〈魂縛り〉。
まだ伝わっていたのか。
「ちっ、まさかそんな隠し玉を持ってたとはな。」
「さぁ、これであんたはもう動けない。
素直に負けを認めなよ。」
少年は敗北宣言をしろと言ってくる。
だが甘すぎるぞ、少年。
この程度で我ら悪魔を止めれると思うなら大間違いよ。
俺は〈魂縛り〉をしている2人の術者を見る。
〈魂縛り〉の術者を潰せばいいだけの事。
「〈誘惑〉」
〈誘惑〉は悪魔の持つ能力で、対象者の負の感情を刺激することで思考誘導して操ることが出来る。
だが〈誘惑〉が発動しない。効いていないのか?
いや、既に別の精神魔法にやられてるのか。
ならば、魔力量で強引に上書きする。
「〈魂縛り〉を解け」
〈誘惑〉は正しく発動し、俺を縛っていた鎖が消えていく。
「ふぅ、かなり危なかったぞ。
古代魔法〈魂縛り〉なんてものを仕込んでくるとは思いもしなかった。
さらには〈誘惑〉対策までしてくるとはな。
お前いいな。滾ってきたぜ。
もっと楽しませてくれよ。
さぁ、第二ラウンドといこうぜ。」
シドーはエドワードと同様に執事として潜入している。
それもこれもセーバスに巻き込まれたせいだ。
「シドーさんはめでたく巻き込まれます。」
闇ギルドに隣接するバーのカウンターでシドーは絶句した。
セーバスが珍しく悩んでるからフォローしてやろうと助言したら、何を思ったのかいきなり俺を巻き込む宣言してきやがった。
セーバスによると、パドレス家ではもうすぐ継承の儀が行われるらしく、そこで事件が起きる可能性が高いらしい。
で、当初は事件を未然に防ぐために動こうと考えていたらしい。
だけど俺の助言を受けて別の案を採用した。
それが、俺やエドワードを巻き込むという迷惑極まりない発想。
「大丈夫。リンダリン様に口利きして潜り込めるようにしておくから。」
爽やかな笑顔で言われても嬉しくない。
絶対に手伝わないと心に決めたシドーだったが、後日、闇ギルドから無慈悲な通達を受け取った。
「お前さんに指名依頼だ。」
依頼主はパドレス=リンダリン。明らかにセーバスの差し金だった。
依頼内容は執事として潜入し、モドキ=セーバスの指揮下で内偵捜査を行うこと。
なお詳細は指揮官の指示に従う事。
なんとも酷い依頼書だ。執事として潜入する以外のことは全て白紙じゃないか。
セーバスに振り回されて厄介事に巻き込まれる未来しか見えない。
そしてその予感は的中した。
マジか、悪魔だよ。
確か教会の奴等いわく、人間を堕落させて悪に誘惑するクソ野郎だっけ。
教会には炊き出しの時しかお世話になってねーからうろ覚えだわ。
あ、そういえばエドワードも悪魔飼ってたな。
セーバスの天使とまさに人外の戦いしてたっけか。
やだなー。あ、今日は何食べようかなー。(現実逃避)
余計なことを考えていると、チラチラとこっちを伺っているセーバスに気づいた。
嫌な予感がしたので無視する。
「いや、手伝ってもらうって…、無理でしょ?」
エドワードが呆れている。
ああ、全くバカげた発想だな。俺もそう思うぜ。
「ふふ、ちゃんと秘策があるんだよ。」
セーバスの奴、楽しんでやがる。
先の展開は読めたけど、全力で断りたい。
視線を合わせないようにそっぽを向いたままでいると肩を掴まれた。
振り向いた先にいるのはにっこり微笑むとセーバス。
「よろしくね。」
だよね。しってた。
一方、「シドーさんが秘策?」とエドワードは首を傾げる。
「そっ。シドーさんて凄いんだよ。
なんたって『二枚舌のシドー』って呼ばれてるからね。」
「やめろ。その名を呼ぶな。」
ギロリとセーバスを睨んでみるものの効果は無い。
セーバスは嬉々として説明しだす。
「シドーさんはね、交渉事がすっごく上手いんだよ。
どんな相手とも良い交渉ができるからね。
あまりに凄すぎてまるで詐欺師じゃないかってことになってついたあだ名が二枚舌だからね。」
詐欺師とは酷い言われようだ。
「それでうまくいくんですかね?」
エドワードは疑心暗鬼でセーバスに尋ねる。
「ああ、多分勘違いしてると思うから敢えて言うけど。
協力してもらう訳じゃないんだよ。
僕とシドーさんで彼らを巻き込んでそういう状況に追い込むんだ。
あ、もちろんエドワード君にも頑張ってもらうからね。」
にっこり微笑むセーバスから無言の圧力を感じる。
はいはい、分かってるよ。やることはやるさ。
まったく、本当の詐欺師は誰なんだかな。
***
side:悪魔
「ふむ、誰にしようか。」
悪魔は物色していた。
今回の契約は、ここにいる人間を皆殺しにすること。
最優先はパドレス=リップリングという男の殺害。
なんでも相当な恨みを持っていたのだとか。
風の障壁による邪魔が入ったものの魔力練度を上げれて破壊することでターゲットを仕留めることに成功。
威力が半端になったために、ターゲットは苦しみながら死んでいくことになったが、依頼主の女は愉しそうに笑っていたからいいか。
さて、じゃあ俺も愉しませてもらうとするかね。
俺は人間が好きだ。
脆弱で浅ましくて醜くて滑稽な人間てやつは見ていて飽きない。
特に、弱いくせに強いと勘違いしてるやつに現実を教えて絶望していく様を見るのはサイコーだ。
「誰か俺と戦うって気概のある奴はいねーか?
もし俺を満足させることが出来たら皆殺しはやめてやってもいい。」
そう宣言すると、1人の執事が前に出てきた。
まだ10代前半に見える少年だ。
だが、その瞳には俺への怖れが見られない。
人間にしては魔力が高いな。おそらく魔法に自信があるのだろう。
思わず口角が上がる。
「お前を満足させる条件はなんだ?
お前を倒すことか?」
少年は俺の言葉を確認してくる。
悪魔にちゃんと条件の確認をしてくるとは分かってるじゃないか。
悪魔が契約を重んじるのはそれが自身を縛ることになるからだ。
だが、契約外の場合は縛られることは無いため守る必要も無い。
「んー、俺を倒すか、俺が負けを宣言したらだな。
その時点で俺はこの契約を破棄して帰る。
こういう契約変更はどうだ、依頼主殿?」
「ええ、それで構わないわよ。
私はかなり満足しちゃったから。」
依頼主の女が頷いた。
「了解だ。依頼主の同意を持ってここに契約の変更は完了した。
さぁ、始めようか。」
「ああ、わかった。」
少年の瞳がギラついている。
ふふ、楽しみだなぁ。何を狙っているのやら。
「悪いが、速攻で決めさせてもらう。<雷撃>」
少年が魔法を発動した直後、体中がバリバリと痺れ動けなくなった。
何だ?何が起こっている?
気づけば少年は目の前に迫ってきていた。
少年が剣を横薙ぎに振るう。
「<風壁>」
風属性の障壁を展開することでその剣を防いだ。
少年はすぐにその場を離れる。
「<雷撃>」
再び先ほどと同じ魔法が俺を襲う。
身体は痺れたまま。
なんだこの魔法は。くそっ想定外だ。
人間のくせに小癪な真似をしやがって。
少年は再び俺の目の前に迫り、袈裟斬りに剣を振るう。
「くっ、<風壁>」
俺は風属性の障壁を展開することでその剣を防ぐ。
少年はすぐにその場を離れ、三度魔法を放つ。
「<雷撃>」
「がぁぁぁ。」
相変わらず身体がしびれてやがる。
なんでアイツは先ほどから同じことを繰り返す?
確かに痺れて動けねぇが有効打にはなってねぇ。
待て。俺は一歩も動いてない。
相手の狙いはそれか。
少年は三度俺の目の前に迫ると突きを放つ。
俺は風属性の障壁を展開して防ぐ。
少年はすぐにその場を離れた。
「今です。」
少年が叫ぶ。
「「汝の御魂を捕縛せん。」」
二人の執事が詠唱を唱えると鎖が出現し、俺に巻き付いた。
これは魂を縛るという捕縛術式で、悪魔をも拘束することが出来る代物。
こざかしい人間が悪魔契約のペナルティをヒントに開発したと言う古代魔法〈魂縛り〉。
まだ伝わっていたのか。
「ちっ、まさかそんな隠し玉を持ってたとはな。」
「さぁ、これであんたはもう動けない。
素直に負けを認めなよ。」
少年は敗北宣言をしろと言ってくる。
だが甘すぎるぞ、少年。
この程度で我ら悪魔を止めれると思うなら大間違いよ。
俺は〈魂縛り〉をしている2人の術者を見る。
〈魂縛り〉の術者を潰せばいいだけの事。
「〈誘惑〉」
〈誘惑〉は悪魔の持つ能力で、対象者の負の感情を刺激することで思考誘導して操ることが出来る。
だが〈誘惑〉が発動しない。効いていないのか?
いや、既に別の精神魔法にやられてるのか。
ならば、魔力量で強引に上書きする。
「〈魂縛り〉を解け」
〈誘惑〉は正しく発動し、俺を縛っていた鎖が消えていく。
「ふぅ、かなり危なかったぞ。
古代魔法〈魂縛り〉なんてものを仕込んでくるとは思いもしなかった。
さらには〈誘惑〉対策までしてくるとはな。
お前いいな。滾ってきたぜ。
もっと楽しませてくれよ。
さぁ、第二ラウンドといこうぜ。」
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