【一旦完結】回想モブ転生~ヒロインの過去回想に登場するモブに転生した~

ファスナー

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過去回想に映りこむモブ編

第27話 乱入者

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エドワードの前世である世渡 流よわたり ながれは、恋愛シミュレーションゲーム「レインボーワールド」(通称:ニジゲン)を周回プレイするほどハマっていた。

当然出てくるキャラに関してはかなり詳しく、登場する種族も把握済みである。
人間以外には魔人、悪魔、獣人といった種族がいる。

そしてゲームでは種族をアイコン化するために、種族毎にわかりやすい特徴を持っている。
魔人の場合は、身体に魔石が埋め込まれている。
悪魔の場合は、特徴的なツノが生えている。
獣人の場合は、獣人タイプによって異なるが、身体の一部に元となった動物の特徴を持っている。
例えばウサギ型獣人の場合はうさ耳がついている。といった具合である。
なお、うさ耳とは別に人間と同じ形状の耳があり、うさ耳の機能は退化しているため飾りでしか無い。
完全に製作スタッフの趣味を反映させた形だ。

そして、ニジゲンの世界では天使という種族は登場していなかった。
物語の中でも天使という種族の存在を仄めかす記述すら無かったのだ。
だから、世渡 流よわたり ながれの記憶をもつエドワードは天使という種族は存在しないものだと思い込んでいた。

だが、目の前にいる金髪美女によってそれが思い込みに過ぎないと否応なく分からされた。

ステータス

名前:オエエル
年齢:??歳
性別:女
種族:天使
状態:正常
HP:測定不能
MP:測定不能

オエエルというらしい金髪美女の背中に生えている白い翼は、前世の知識にある天使のイメージそのままの特徴であり、天使という種族が正しいことを物語っていた。

「あら、初対面の女性を覗き見るなんてマナーがなっちゃいないわね。」

まずい。スキル<鑑定>を使ったことがバレた。
エドワード予想外の状況と焦りによって、心を乱してしまった。

「悪い子にはお仕置きしなきゃね。
 天使たる私様《わたくしさま》が告《つ》げるわ。
 今すぐここから飛び降りなさい。」

オエエルの突然の宣言にダリウスもシドーも呆気にとられた。
何を言っているのか理解できなかったからだ。

「おい、あんた。自分が何言ってるか分かってんのか?」
ダリウスは思わずオエエルに尋ねていた。

「んふ。分かってるわよ~♪今から面白いショーを見せてあげるわ。」
オエエルは上機嫌にダリウスに答えた。
そして、オエエルの言葉に呼応するようにエドワードが動き出した。

ただし、その足取りには違和感があった。
乱入者であるオエエルに対して、くるりと反転し背中を向けたのだ。

敵に背中を向けることの危険性をイーレ村にいた時から口を酸っぱくして言われてきたダリウスにとって、エドワードの行動は信じられないものだった。

「何してんだ」
ダリウスの呼びかけに応答することなくエドワードはフェンスに向かって歩いていく。
まるで

「あんた、エドに何をした?」
ダリウスはオエエルを睨みつける。

「さっき言ったでしょ。ショーを見せてあげるって。
 観客は演者の邪魔しちゃだめよ。
 天使たる私様《わたくしさま》が告《つ》げるわ。
 あんた達は私《わたくし》がいいと言うまで動いてはダメよ。」

「んな。なんだ?身体が固まっちまった。動けないぞ。」
オエエルの宣言にシドーは戸惑い騒ぎ出す。

「おい、エド。はやく正気に戻れ。」
ダリウスが叫ぶがエドワードからの反応は無い。

「無駄よ♪あの子はもう私の言いなり。」
オエエルは嗤う。

チィッ
ダリウスは舌打ちし、エドワードに向けてコインを指で弾いて飛ばした。
コインが後頭部に命中したエドワードは倒れた。

「あらあら?あんた、ひょっとして動けるの?」

オエエルは今日初めて驚いた表情を見せた。
だが、ダリウスからすればなぜオエエルが驚いているのか分からない。

「ちょっと、気になるわね。
 天使たる私様《わたくしさま》が告《つ》げるわ。
 あんたは寝てなさい。」

「何言ってんだ。
 敵の目の前で寝る馬鹿がどこにいる?」

やはり目の前の少年に自分の能力が通じていない。
そのことを確信したオエエルはダリウスと距離を取り笑みを消した。

「ちょっとあんた。危険な感じがするわ。
 私《わたくし》は雑魚でも敵を侮ったりしないわ。」
 
オエエルが手をかざすと、複数の魔法陣が空中に展開した。
通常、魔法陣が現れるとすぐに発動される。
だが、オエエルが出した複数の魔法陣はそのままの状態を保っている。

「これは…、遅延魔法?」
ダリウスの呟きをオエエルは聞き逃さなかった。

「へぇ、良く知ってるじゃない。
 そうよ、これは遅延魔法。それがどういうことか分かる?」

オエエルが指を鳴らすと、魔法陣が発光し、火弾、風刃、水弾、石弾など属性の違う複数の魔法が一斉にダリウスを襲う。

ドガガガガガッ
突如、ダリウスの前に<土壁>が出現し、オエエルの魔法を防いだ。

「やれやれ、物量に物を言わせたごり押しとは、戦いの美学の欠片も無い。
 どこの愚か者かと思えば、汚らわしい雌猫ではありませんか。
 悪臭をまき散らすのやめてもらえませんかね。」

新たな乱入者が現れた。やってきたのは執事服を着た初老の男性。
浅黒い肌に赤い瞳、なにより特徴的なのは頭にくるりと巻いた2本のツノがある。

「何がどうなってるんだ?」
二転三転する事態に頭がついて行けないダリウスは呆気に取られていた。

「ダリウスごめん。油断した。」
そこにやってきたのはエドワードだった。
どうやら正気に戻ったようだ。先ほどまで操られている感じと違う。

「ダリウス、君のお陰だよ。痛みで目が覚めた。」
エドワードが言うには、オエエルという天使の<魅了>に掛かっていたそう。
動揺している隙に付け込まれたらしい。
痛みがきっかけとなって<魅了>が解けたようだ。

「そうか、それは良かった。それで、あの老人は何者だ?」

「ああ、彼はパルバフェット。
 僕と契約した悪魔だ。」


悪魔パルバフェットと天使オエエルの方では早くも舌戦が始まっていた。

「あら、あらあらあら?
 何かと思ったら飼い主のご機嫌取りしてるワンちゃんじゃない。
 ひょっとして迷っちゃったのかしら。
 でも安心して。地獄《おうち》に送り返してあげるから。」
オエエルは微笑みながらビキビキと額に青筋を浮かべている。

「いえいえお気遣いなく。それよりもこの悪臭を消臭しませんと周りに迷惑ですな。
 このままでは穢れてしまいますので、早速取り掛かりましょうか。」

「ご冗談でしょう?あなたの鼻ひん曲がってるんじゃありません。
 穢れているのはあなた自身でしょうに。
 まずはお風呂に入って自分磨きしてから来てくださる?」

「自分磨き(笑)ですか。
 あなたは磨くまえに自分の年を自覚することから始めたほうが良さそうですよ?
 年増が無理して若作りする様子は痛々しくて見ていられません。」
悪魔パフバフェットと天使オエエルは互いに笑顔を見せつつ挑発し合う。

「若作りの色ボケババァが、潰すぞ。」
「まぁ、枯れた駄犬風情が図が高い。躾けてあげますわ。」

やがて、天使オエエルと悪魔パルバフェットの戦いは舌戦から魔法戦へとシフトしていくのであった。
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